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kenning - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2025-06-06 08:58

2024-07-28 Sun

#5571. 朝カル講座「現代の英語に残る古英語の痕跡」のまとめ [asacul][notice][lexicology][vocabulary][oe][kenning][beowulf][compounding][derivation][word_formation][celtic][contact][borrowing][etymology][kdee]

 先日の記事「#5560. 7月27日(土)の朝カル新シリーズ講座第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」のご案内」 ([2024-07-17-1]) でお知らせした通り,昨日朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」を開講しました.今回も教室およびオンラインにて多くの方々にご参加いただき,ありがとうございました.
 古英語と現代英語の語彙を比べつつ,とりわけ古英語のゲルマン的特徴に注目した回となっています.古英語期の歴史的背景をさらった後,古英語には借用語は比較的少なく,むしろ自前の要素を組み合わせた派生語や複合語が豊かであることを強調しました.とりわけ複合 (compounding) からは kenning (隠喩的複合語)と呼ばれる詩情豊かな表現が多く生じました.ケルト語との言語接触に触れた後,「#1124. 「はじめての古英語」第9弾 with 小河舜さん&まさにゃん&村岡宗一郎さん」で注目された Beowulf からの1文を取り上げ,古英語単語の語源を1つひとつ『英語語源辞典』で確認していきました.
 以下,インフォグラフィックで講座の内容を要約しておきます.

古英語の語彙を探る 1 古英語の時代 ・ 449年:アングロサクソン人のブリテン島到来 ・ 597年:キリスト教の導入 ・ 8世紀末:ヴァイキングの侵攻開始 ・ 1066年:ノルマン征服(古英語時代の終わり) 2 古英語の語彙 ・ 約3万語 ・ 97%が固有語彙,3%が借用語 ・ 現代英語の基本語彙の大半が古英語起源 ・ ラテン語からの借用語は450--600語 3 古英語の語形成 ・ 派生と複合が豊か ・ 接頭辞は主に意味を変化,接尾辞は品詞を変化 ・ kenning (隠喩的複合語(例:「海の木」=船) ・ 頭韻が詩で広く使用される 4 古英語へのケルト語の影響 ・ ケルト語からの一般的な借用語は少ない ・ キリスト教を通じて一部の宗教用語を採用 ・ 例:ass(ロバ),cross(十字架),curse(呪い),dun(暗色の) ・ 地名には大きな影響(例:Cumberland, Exeter) 5 Beowulf より: Wyrd oft nereð unfǣgne eorl, þonne his ellen dēah. ・ 訳:「運命はしばしば死すべき運命にない勇士を救う, 彼の勇気が役立つ時に」 ・ wyrd(運命):印欧祖語の語根 *wer-(回す,曲げる)から,weird と関係 ・ oft(しばしば):歴史的に often と競合 ・ unfǣgne(死すべき運命にない):fey に否定の接頭辞 un- を付加 ・ eorl(伯爵):元々は「貴族」,後に「伯爵」に特化 ・ þonne(〜の時):<þ>(ソーン)は中英語で <th>に置き換わる ・ ellen(勇気):初期中英語後に廃語となる ・ dēah(良い/強い):古英語 "dugan" から,doughty と関連

 次回第5回は8月24日の開講となります.「英語,ラテン語と出会う」と題して,古英語期のラテン語との接触に注目します.お申し込みはこちらからどうぞ.多くの方々のご参加をお待ちしています.

Referrer (Inside): [2025-01-01-1] [2024-10-04-1]

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2023-04-01 Sat

#5087. 「英語史クイズ with まさにゃん」 in Voicy heldio とクイズ問題の関連記事 [masanyan][helquiz][link][silent_letter][etymological_respelling][kenning][oe][metonymy][metaphor][gender][german][capitalisation][punctuation][trademark][alliteration][sound_symbolism][goshosan][voicy][heldio]

 新年度の始まりの日です.学びの意欲が沸き立つこの時期,皆さんもますます英語史の学びに力を入れていただければと思います.私も「hel活」に力を入れていきます.
 実はすでに新年度の「hel活」は始まっています.昨日と今日とで年度をまたいではいますが,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて「英語史クイズ」 (helquiz) の様子を配信中です.出題者は khelf(慶應英語史フォーラム)会長のまさにゃん (masanyan),そして回答者はリスナー代表(?)の五所万実さん(目白大学; goshosan)と私です.ワイワイガヤガヤと賑やかにやっています.

 ・ 「#669. 英語史クイズ with まさにゃん」
 ・ 「#670. 英語史クイズ with まさにゃん(続編)」



 実際,コメント欄を覗いてみると分かる通り,昨日中より反響をたくさんいただいています.お聴きの方々には,おおいに楽しんでいただいているようです.出演者のお二人にもコメントに参戦していただいており,場外でもおしゃべりが続いている状況です.こんなふうに英語史を楽しく学べる機会はあまりないと思いますので,ぜひ hellog 読者の皆さんにも聴いて参加いただければと思います.
 以下,出題されたクイズに関連する話題を扱った hellog 記事へのリンクを張っておきます.クイズから始めて,ぜひ深い学びへ!

 [ 黙字 (silent_letter) と語源的綴字 (etymological_respelling) ]

 ・ 「#116. 語源かぶれの綴り字 --- etymological respelling」 ([2009-08-21-1])
 ・ 「#192. etymological respelling (2)」 ([2009-11-05-1])
 ・ 「#1187. etymological respelling の具体例」 ([2012-07-27-1])
 ・ 「#580. island --- なぜこの綴字と発音か」 ([2010-11-28-1])
 ・ 「#1290. 黙字と黙字をもたらした音韻消失等の一覧」 ([2012-11-07-1])

 [ 古英語のケニング (kenning) ]

 ・ 「#472. kenning」 ([2010-08-12-1])
 ・ 「#2677. Beowulf にみられる「王」を表わす数々の類義語」 ([2016-08-25-1])
 ・ 「#2678. Beowulf から kenning の例を追加」 ([2016-08-26-1])
 ・ 「#1148. 古英語の豊かな語形成力」 ([2012-06-18-1])
 ・ 「#3818. 古英語における「自明の複合語」」 ([2019-10-10-1])

 [ 文法性 (grammatical gender) ]

 ・ 「#4039. 言語における性とはフェチである」 ([2020-05-18-1])
 ・ 「#3647. 船や国名を受ける she は古英語にあった文法性の名残ですか?」 ([2019-04-22-1])
 ・ 「#4182. 「言語と性」のテーマの広さ」 ([2020-10-08-1])

 [ 大文字化 (capitalisation) ]

 ・ 「#583. ドイツ語式の名詞語頭の大文字使用は英語にもあった」 ([2010-12-01-1])
 ・ 「#1844. ドイツ語式の名詞語頭の大文字使用は英語にもあった (2)」 ([2014-05-15-1])
 ・ 「#1310. 現代英語の大文字使用の慣例」 ([2012-11-27-1])
 ・ 「#2540. 視覚の大文字化と意味の大文字化」 ([2016-04-10-1])

 [ 頭韻 (alliteration) ]

 ・ 「#943. 頭韻の歴史と役割」 ([2011-11-26-1])
 ・ 「#953. 頭韻を踏む2項イディオム」 ([2011-12-06-1])
 ・ 「#970. Money makes the mare to go.」 ([2011-12-23-1])
 ・ 「#2676. 古英詩の頭韻」 ([2016-08-24-1])

Referrer (Inside): [2024-11-21-1] [2024-03-04-1]

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