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2024 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2023 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
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2021 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2020 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2019 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2018 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2017 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2016 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2015 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
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2010 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2009 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2024年度も,いろいろな折に,さまざまな形式で英語史の学びを深めることができます.そのなかでもイチオシが寺澤盾先生(青山学院大学教授,東京大学名誉教授)による,NHKカルチャー青山教室のオンライン講座です.講座「世界の英語 その多様性と拡大の歴史」が,来たる5月18日(土) 15:30--17:00 に幕開きとなります(リアルタイムオンライン講義形式で「見逃し配信」もあり).
1年間かけて5回,指定の土曜日の 15:30--17:00 に開講される予定です.予定とラインナップは次の通りです.
・ 第1回:2024年5月18日(土) 「ブリテン諸島における英語変種 (1)」
・ 第2回:2024年7月13日(土) 「ブリテン諸島における英語変種 (2)」
・ 第3回:2024年9月21日(土) 「オセアニアにおける英語変種」
・ 第4回:2024年11月16日(土) 「アジアにおける英語変種」
・ 第5回:2025年1月18日(土) 「アフリカにおける英語変種」
シリーズ全体の趣旨を,HP より引用します.
皆さんの多くがこれまで学んできた英語は,おそらく標準英語(標準アメリカ英語または標準イギリス英語)ではないでしょうか.この講義では,昨年に引き続き,「世界の英語:その多様性と拡大の歴史」というテーマで,世界のさまざまな地域で使用されている多様な英語変種について考察していきます.今年度は,まず,ブリテン諸島で話されているイギリス英語以外の英語変種,具体的にはスコットランド英語,ウェールズ英語,アイルランド英語について,それらの英語変種の背後にある社会文化史もあわせて学んでいきます.その後は,オセアニア,アジア,アフリカなどで話されている英語変種にも着目します.
世界英語 (world_englishes) の話題は私も本ブログや Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 などで多く取り上げてきましたが,今や英語史の1領域として確立しつつあると言ってよいでしょう.英語史の学び,英語の学び,世界情勢の理解にも役立つ重要なテーマとして,関心を寄せてみてはいかがでしょうか.
以上,(寺澤先生ご本人の許可もいただきつつ)今年度の注目の英語史関連講座をご紹介いたしました.関連して,Voicy heldio/helwa のコアリスナーで,note 上でめざましいhel活 (helkatsu) を展開されている Grace さんも,寺澤先生の同講座を紹介されています.「~heldioガイド~【J】Jun Terasawa(寺澤盾)先生」をご覧いただければ.
一昨日4月27日の 17:30--19:00 に,予定通り朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」をオープンしました.全12回のシリーズとして毎月1回,指定の土曜日の夕方に開講していきます.
シリーズ初回だったこともあると思いますが,一昨日の第1回はたいへん盛況でした.数年来,朝カル講座を開いてきましたが,これまでで最も多くの方々にご参加いただいたように思われます.ハイブリッド形式でしたので,対面で参加された方もいればオンラインで参加された方もいました.講義後の質問タイムでは,多くの有益なご質問やコメントもいただき,ありがとうございました.本日から1週間登録者に開かれる「見逃し配信」にて講義を視聴される方も,多くいらっしゃるかと思います.
第1回は「英語語源辞典を楽しむ」と題して,シリーズ全体のイントロ回となりました.まずシリーズ全体の狙いをお話しした後,寺澤芳雄(編)『英語語源辞典』(研究社,1997年)(= kdee) を紹介しました.次に,ケーススタディとして具体的に (1) male と female の語源,(2) cow と beef の語源を取り上げながら辞典の記述を精読しました.最後は "Every word has its own history." と締めくくりました.
次回は,まだシリーズ全体のイントロ続編という色彩が強いですが,5月18日(土) 17:30--19:00 に「英語語彙の歴史を概観する」と題してお話しする予定です.シリーズ講座ではありますが,各回はそれなりに独立していますし,過去回の復習も適宜含めていきますので,シリーズ途中回からのご参加もまったく問題ありません.ぜひご参加いただければと思います.
今後,様々な英語語源辞典の比較などにも力を入れていきたいと思いますが,中心となるのはやはり『英語語源辞典』(研究社,1997年)です.お手元にご用意していただくと,講座が何倍もおもしろくなるはずです.
シリーズ全体と第1回の予告編として,先日,以下のコンテンツを公表していますので参考まで.
・ hellog 「#5453. 朝カル講座の新シリーズ「語源辞典でたどる英語史」が4月27日より始まります」 ([2024-04-01-1])
・ heldio 「#1058. 朝カル講座の新シリーズ「語源辞典でたどる英語史」が4月27日より月一で始まります」
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.
1年半ほど前のことになりますが,2022年12月10日に日本歴史言語学会にてシンポジウム「日中英独仏・対照言語史ー語彙の近代化をめぐって」が開かれました(こちらのプログラムを参照).学習院大学でのハイブリッド開催でした.同年に出版された,高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館,2022年)が J-STAGE 上で公開されました.PDF形式で自由にダウンロードできますので,ぜひお読みいただければと思います.セクションごとに分かれていますので,以下にタイトルとともに抄録へのリンクを張っておきます.
・ 趣旨説明 「日中英独仏・対照言語史 --- 語彙の近代化をめぐって」(高田博行,学習院大学)
・ 講演1 「日本語語彙の近代化における外来要素の受容と調整」(田中牧郎,明治大学)
・ 講演2 「中国語の語彙近代化の生態言語学的考察 --- 新語の群生と「適者生存」のメカニズム」(彭国躍,神奈川大学)
・ 講演3 「初期近代英語における語彙借用 --- 日英対照言語史的視点から」(堀田隆一,慶應義塾大学)
・ 講演4 「ドイツ語の語彙拡充の歴史 --- 造語言語としてのアイデンティティー ---」(高田博行,学習院大学)
・ 講演5 「アカデミーフランセーズの辞書によるフランス語の標準化と語彙の近代化 ---フランス語の標準化への歩み」(西山教行,京都大学)
・ ディスカッション 「まとめと議論」
講演3を担当した私の抄録は次の通りです.
初期近代英語期(1500--1700年)は英国ルネサンスの時代を含み,同時代特有の 古典語への傾倒に伴い,ラテン語やギリシア語からの借用語が大量に英語に流れ込んだ.一方,同時代の近隣ヴァナキュラー言語であるフランス語,イタリア語,スペイン語,ポルトガル語などからの語彙の借用も盛んだった.これらの借用語は,元言語から直接英語に入ってきたものもあれば,他言語,典型的にはフランス語を窓口として,間接的に英語に入ってきたものも多い.さらには,借用要素を自前で組み合わせて造語することもしばしば行なわれた.つまり,初期近代英語における語彙の近代化・拡充は,様々な経路・方法を通じて複合的に実現されてきたのである.このような初期近代英語期の語彙事情は,実のところ,いくつかの点において明治期の日本語の語彙事情と類似している.本論では,英語と日本語について対照言語史的な視点を取りつつ,語彙の近代化の方法と帰結について議論する.
先に触れた編著書『言語の標準化を考える』で初めて対照言語史 (contrastive_language_history) というアプローチを導入しましたが,今回の論考はそのアプローチによる新たな挑戦として理解していただければと思います.
・ 高田 博行・田中 牧郎・彭 国躍・堀田 隆一・西山 教行 「日中英独仏・対照言語史ー語彙の近代化をめぐってー」『歴史言語学』第12号(日本歴史言語学会編),2024年.89--182頁.
・ 高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』 大修館,2022年.
Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」では,この木・金・土と連日 "3Ms" をお迎えして,賑やかに対談回(単なるおしゃべり?)をお届けしています.ちなみに "3Ms" とは,五所万実さん(目白大学),北澤茉奈さん(杉野服飾大学),尾崎萌子さん(慶應義塾大学大学院生;共立女子大学)のお三方のことです.実は小河舜さん(上智大学)も収録に部分的に同席しています.
とりわけ金・土の配信会は,聞き手ベースの言語学理論というべき Allan Bell による audience_design の導入回となっており,同理論に楽しく入っていくことができます.
(1) 「#1061. 聞き手ベースの言語学 --- 北澤茉奈さんとオーディエンス・デザインを導入します」(2024年4月26日配信)
(2) 「#1062. 21世紀のオーディエンスデザイン with 3Ms & 小河舜さん」(2024年4月27日配信)
同理論については,この hellog でも「#1934. audience design」 ([2014-08-13-1]) で紹介していますし,「いのほた言語学チャンネル」(旧「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」)でも北澤さんをお招きした回「#84. 新しい時代のオーディエンス・デザイン論・歴史言語学にも導入!---水曜言語学雑談飲み会」で導入しています.そちらもぜひご参照ください.
・ Bell, Allan. "Language Style as Audience Design." Language in Society 13 (1984): 145--204.
英語の姓には,原則として定冠詞 the の付くものがない.また,前置詞 of を含む名前もほとんどない.この点で,他のいくつかのヨーロッパ諸語とは異なった振る舞いを示す.
しかし歴史を振り返ると,中英語期には,職業名などの一般名詞に由来する姓は一般名詞として用いられていた頃からの惰性で定冠詞が付く例も皆無ではなかったし,of などの前置詞付きの名前なども普通にあった.中英語期の姓は,しばしばフランス語の姓の慣用に従ったこともあり,それほど特別な振る舞いを示していたわけでもなかったのだ.
ところが,中英語期の中盤から後半にかけて,地域差もあるようだが,この定冠詞や前置詞が姓から切り落とされるようになってきたという.Fransson (25) の説明を読んでみよう.
Surnames of occupation and nicknames are usually preceded by the definite article, le (masc.) or la (fem.); the two forms are regularly kept apart in the earlier rolls, but in the 15th century they are often confused. Those names in this book that are preceded by the have all been taken from rolls translated into English, and the has been inserted by the editor instead of le or la. The case is that the hardly ever occurs in the manuscripts; cf the following instances, which show the custom in reality: Rose the regratere 1377 (Langland: Piers Plowman 226). Lucia ye Aukereswoman 1275 1.RH 413 (L. la Aukereswomman ib. 426).
Sometimes de occurs instead of le; this is due to an error made either by the scribe or the editor. The case is that de has an extensive use in local surnames, e.g. Thom. de Selby. Other prepositions (in, atte, of etc.) are not so common, especially not in early rolls.
The article, however, is often left out; this is rare in the 12th and 13th centuries, but becomes common in the middle of the 14th century. There is an obvious difference between different parts of England: in the South the article precedes the surname almost regularly during the present period, while in the North it is very often omitted. The final disappearance of le takes place in the latter half of the 14th century; in most counties one rarely finds it after c1375, but in some cases, e.g. in Lancashire, le occurs fairly often as late as c1400. De is often retained some 50 years longer than le: in York it disappears in the early 15th century, in Lancashire it sometimes occurs c1450, while in the South it is regularly dropped at the end of the 14th century.
歴史的な過程は理解できたが,なぜ定冠詞や前置詞が切り落とされることになったのかには触れられていない.検討すべき素朴な疑問が1つ増えた.名前における前置詞については「#2366. なぜ英語人名の順序は「名+姓」なのか」 ([2015-10-19-1]) で少しく触れたことがある.そちらも参照されたい.
・ Fransson, G. Middle English Surnames of Occupation 1100--1350, with an Excursus on Toponymical Surnames. Lund Studies in English 3. Lund: Gleerup, 1935.
*
今年度,白水社の月刊誌『ふらんす』に「英語史で眺めるフランス語」というシリーズタイトルで連載記事を寄稿しています.一昨日『ふらんす』5月号が刊行されました.シリーズ第2回の記事は「なぜ仏英語には似ている単語があるの?」です.今回の記事は以下の小見出しで構成しています.
・ 単語が似ているのにはワケがある
・ 借用の方向に基づく3つのパターン
・ 言語学的な観点に基づく3つのパターン
・ 似ている単語を見つけたときには要注意
仏英語には似ている単語が多く見られます.背景には1066年のノルマン征服とその後の歴史があります.しかし,理由はこれに尽きません.歴史的および言語学的に検討すると,両言語に類似単語が存在する背景には6つのパターンがあるのでス.今回の記事では,具体例を交えつつ,この点を解説しています.
新年度に新しい外国語としてフランス語を学び始めている方も多いかと思います.そのなかには,すでに英語について知識のある方も少なくないはずです.英語とフランス語の学習は,連動させるのが吉です.その上で英語史の知見も連動させると,学び全体に何倍もの相乗効果が生み出されることを強調したいと思います.この観点から,以下の Voicy 配信回もお聴きいただければ.
・ 「#26. 英語語彙の1/3はフランス語!」
・ 「#329. フランス語を学び始めるならば,ぜひ英語史概説も合わせて!」
・ 「#327. 新年度にフランス語を学び始めている皆さんへ,英語史を合わせて学ぶと絶対に学びがおもしろくなると約束します!」
シリーズの初回記事については,hellog 記事「#5449. 月刊『ふらんす』で英語史連載が始まりました」 ([2024-03-28-1]) で取り上げていますので,そちらもご覧ください.
(以下,後記:2024/05/08(Wed))
5月8日に heldio で「#1073. 『ふらんす』5月号で「なぜ仏英語には似ている単語があるの?」を書いています」を配信しました.
・ 堀田 隆一 「英語史で眺めるフランス語 第2回 なぜ仏英語には似ている単語があるの?」『ふらんす』2024年5月号,白水社,2024年4月23日.62--63頁.
4月18日(木)の夜,Voicy heldio にて「#1057. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (2)」をお届けしました.ライヴでお聴きいただいたリスナーの方々には,盛り上げていただき感謝いたします.
前回に引き続き,精読対象となったテキストは,Bede によりラテン語で著わされた『英国民教会史』 (Historia Ecclesiastica Gentis Anglorum [= Ecclesiastical History of the English People]) の古英語訳からの1節です.3人で60分ほどかけてわずか1.5文しか進みませんでしたが,それだけ「超」精読・解説したということでお許しいただければと思います.同テキストは hellog の「#5444. 古英語の原文を読む --- 597年,イングランドでキリスト教の布教が始まる」 ([2024-03-23-1]) に掲載しています.
Bede については,heldio 「#1029. 尊師ベーダ --- The Venerable Bede」にて解説していますので,そちらもお聴きください.
復習のために,これまでの「はじめての古英語」シリーズ回を一覧しておきます.
(1) 「#822. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 1 with 小河舜さん and まさにゃん」
(2) 「#829. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 2 with 小河舜さん and まさにゃん」
(3) 「#836. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 3 with 小河舜さん and まさにゃん」
(4) 「#1030. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む」
(5) 「#1057. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (2)」
今回の第5弾の収録の舞台裏については,プレミアム限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) のほうで「【英語史の輪 #111】「はじめての古英語」生放送の反省会&アフタートーク」としてお話ししていますので,ご関心のある方はぜひ helwa へお入りください.
最後に,本シリーズ出演者の小河舜さん(上智大学)と「まさにゃん」こと森田真登さん(武蔵野学院大学)については,以下の記事をご覧ください.
・ 「#5445. 小河舜さんとのhel活(まとめ)」 ([2024-03-24-1])
・ 「#5446. まさにゃんとのhel活(まとめ)」 ([2024-03-25-1])
今後も応援のほどよろしくお願い致します! 本シリーズ第6弾もお楽しみに!
4月18日(木)の午前11時より,事前に大学生より回収していた「英語に関する素朴な疑問」に英語史の観点から回答する「千本ノック」 (senbonknock) のイベントを開催しました.同イベントは Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の公開収録生放送としてお届けしましたが,その音源はその翌日に heldio の通常配信として公開されており,アーカイヴとしても残っています.「#1054. 年度初めの「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」生放送 with 小河舜さん」です.私のほか,もう一人の英語史研究者小河舜先生(上智大学)にも回答者としてお付き合いいただき,おおいに盛り上がりました.60分ほどの長尺ですが,内容は充実しています.お時間のあるときにお聴きください.
今回の千本ノックも,回答しがいのある素朴な疑問が多かったと思います.今回は17件の質問に回答しました.以下に本編(第2チャプター)の分秒を挙げておきます.
(1) 02:50 --- なぜ英語話者はめったに噛まないのか.
(2) 05:01 --- 筆記体がなぜ使われているのか.日本語において筆記体に値するくずし字なるものはすでに消失しているが,英語においては筆記体が残っている.成立の起源や使いやすさの違いがあるのか.
(3) 10:22 --- 外国の方が話す日本語や,日本人が話す韓国語などはたどたどしくても伝わりますが,非ネイティブが話す英語はネイティブの人々にどう捉えられているのでしょうか.
(4) 14:35 --- 疑問詞は how を除いてなぜ wh- で始まるのですか.(この疑問については hellog-radio 「#2. 疑問詞は「5W1H」といいますが,なぜ how だけ h で始まるのでしょうか?」もお聴きください.)
(5) 17:37 --- "hello" の L のようにアルファベットが2つ並ぶことがあるのはなぜか.
(6) 22:02 --- 英語は日本語よりも表現の幅や慣用表現が狭い/少ない気がするのですが本当のところはどうですか.洋楽をきいていると同じような言い回しが多い気がします.
(7) 25:26 --- どうして would や could などの過去形を使うと丁寧な意味になるのか.
(8) 29:15 --- 仮定法で現在の話でも過去形を使う理由.また,If I was ではなく If I wereである理由.
(9) 31:39 --- 英語学習ではアクセントに重点が置かれますが,いつ誰が今のアクセントを決めたのですか.
(10) 36:30 --- 「--ない?」という質問に対して答えが「ある」だった場合,なぜ Yes と答えるのか.
(11) 39:47 --- 翻訳アプリ技術の発達が目覚ましいので,外国語の勉強をあまりしなくても外国語をある程度運用できるようになってきています.今後の日本では外国語教育の時間を減らすべきでしょうか.
(12) 44:09 --- 「群れ」を表す英単語の種類が多いのはなぜか.(pack, flock, school, etc.)
(13) 46:30 --- 方角の in ですが,なぜ英語圏では方角を「空間」として捉えるのか.
(14) 48:52 --- 日本の英語訛りについて,GHQ をはじめアメリカ人に支配された過去があるにもかかわらず,なぜイギリス訛り(カタカナ英語?)に近い音なのか.
(15) 51:25 --- なぜ英語では疑問文でクエスチョンマークを使うのか.語順だけで疑問文だということがわかるのに.
(16) 55:45 --- 「風呂に入る」が「take a bath」となり bath が可算名詞であるのはなぜか.
(17) 57:45 --- なぜ時・条件を表す副詞節の中では未来のことを現在形で表すのか?
生放送後,小河先生とは振り返りの会を開き,そちらも heldio 収録しました.ぜひ「#1055. 「千本ノック with 小河舜さん」のアフタートーク」も聴いていただければ.
昨日の記事「#5473. 中英語における職業を表わす by-name の取り扱い (2) --- ラテン語形の干渉」 ([2024-04-21-1]) に続き,今回は英語の by-name に対するフランス語形からの干渉について.Fransson (24--25) より引用する.
Besides in English, surnames also occur very frequently in French; I have made a calculation and found that one third of the surnames of occupation treated in this book is of French origin. The reason for this is to be found in the predominating position that the French language had during this period. French was spoken by all educated people, and English by the lower classes. Those who spoke French had, of course, surnames in French, and probably also used the French forms of English names when speaking with each other. It is possible, too, that those people who spoke English were influenced by this and used the French forms of their names, which, of course, were finer. During this period a large number of French names came into the language, and a great many of these have survived to the present day, whereas the corresponding substantives have often died out.
There is also another reason, however, for the frequent occurrence of French names; the case is that the scribe often translated English names into French, especially in early rolls. These translations, which are most common in assize rolls, are principally due to the fact that the court proceedings were generally held in French. I have found some instances in which both the English and French forms occur of the same person's surname, e.g.: Humfrey le Syur 1270 Ass 144, H. le Sawyere ib. 139 (So). --- Ric. le Charpentir 1327 SR 211, R. le Wryth 1332 SR 96 (St).
当時のイングランド人の姓が職業名に基づくものであり,かつそれがフランス語に語源をもつ単語だった場合,その取り扱い方は少なくとも3種類ある.
(1) 英単語として取り入れられておらず,生粋のフランス単語の使用例である
(2) 英単語として取り入れられているが,ここではフランス単語の使用例である
(3) 英単語として取り入れられており,ここでは英単語の使用例である
(1) であると確信をもって述べるためには,当時の英語文献のどこを探しても,英単語として取り込まれている形跡がないことを示す必要がある.しかし,今後の調査によって英単語として取り込まれている形跡が1例でも見つかれば,確信が揺らぐことになろう.
(2) か (3) のケースでは,英単語として取り入れられていることは確認できたとしても,当該箇所におけるその単語が,フランス語単語として使用されているのか,あるいは英単語として使用されているのかを判別するのは難しい.というのは,その語形はフランス語の語形かフランス語に由来する語形かであり,いずれにせよきわめて似ているからである.
職業名に限らず,法律・裁判・税金に関する公的な文書のなかに現われるフランス単語らしきものについては,常にこの問題が生じることに注意しておきたい.今目にしている単語は,フランス単語なのか,あるいはフランス語に由来する英単語なのか.あるいは,その両方であるという答えもあるのか.悩ましい問題である.
・ Fransson, G. Middle English Surnames of Occupation 1100--1350, with an Excursus on Toponymical Surnames. Lund Studies in English 3. Lund: Gleerup, 1935.
「#5470. 中英語における職業を表わす by-name の取り扱い」 ([2024-04-18-1]) で,英語の by-name の取り扱いの難しさは,ラテン語やフランス語からの干渉にあることを紹介した.今回はラテン語との関わりについて,Fransson (23--24) を引用して事情を解説したい.
The medieval rolls were written in Latin, and Christian names and surnames were also, when practicable, often translated into Latin. This was especially the case in the early Middle Ages (12--13th cent.), and surnames in English are therefore rarely met with so early. The surnames that appear in Latin are chiefly those names that are in common use, e.g. Carpentarius, Cissor, Cocus, Faber, Fullo, Marescallus, Medicus, Mercator, Molendinarius, Pelliparius, Pistor, Sutor, Tannator, Textor, Tinetor. The surnames, however, that were rare and difficult to translate, e.g. Wirdragher, Chesewright, Heyberare, Geldehirde, generally occur in English, even in early rolls.
In the 14th century these translations gradually pass out of use, and the native or French form becomes predominant. Thus, for instance, there is a considerable difference between SR [= Lay Subsidy Rolls] 1275 and SR 1327 (Wo); in the former there are a large number of names in Latin, but in the latter there are hardly any translations at all.
There surnames in Latin seem to have had some influence on the later development; the case is that some of them still exist as surnames, e.g. Faber, Pistor, Sutor.
初期中英語の公的名簿などはラテン語で書かれることが多かったために,本来は英語の語形としての姓が,しばしばラテン語に翻訳された形で記載されているという複雑な事情がある.英語としての姓を知りたい私のような研究者にとっては,なぜわざわざラテン語に翻訳してくれてしまっているのか,と実に歯がゆい.うまくラテン語に翻訳できないという場合にのみ,運よく英語名がしみ出てきて表面化している,という次第なのだ.
それが14世紀以降,後期中英語に入ると,ラテン語へ翻訳するという慣習は影を潜め,背後に隠れていた本来の英語名が浮上してくるのだ.私のような研究者にとっては,ニヤニヤせざるを得ない時代となる.
しかし,安心するのはまだ早い.ラテン語の干渉という問題は解決していくものの,中英語期にはもっとややこしいフランス語の干渉という別の問題があるのだ.この頭の痛い事情については明日の記事で.
・ Fransson, G. Middle English Surnames of Occupation 1100--1350, with an Excursus on Toponymical Surnames. Lund Studies in English 3. Lund: Gleerup, 1935.
「#5346. 中英語期に英語人名へ姓が導入された背景」 ([2023-12-16-1]) と「#5451. 中英語期に英語人名へ姓が導入された背景 (2)」 ([2024-03-30-1]) に続き,この話題についての第3弾.昨日の記事「#5471. 中英語の職業 by-name 研究の価値」 ([2024-04-19-1]) で引用・参照した Fransson が,"The Rise of Surnames" と題する節でこの問題を取り上げている.古英語から初期中英語にかけて surname (あるいは by-name)の使用が一般化してきた経緯と背景を読んででみよう (20--21) .
In Old English times people generally had only one name, the Christian name, and there were a great many such names. But already during this period the need of a second name began to be felt, and a number of such names have been delivered to us . . . . How common these by-names were, is impossible to decide, as we have not sufficient material for this. What we especially want are rolls or books containing the names of the lower people. It is possible, therefore, that by-names were in fairly common use at the end of the Old English period. In the Charters, however, people usually appear without any second names throughout the period.
In Domesday Book there are many instances of second names, but most persons still appear with a Christian name only. In the beginning of the Middle English period the development advances rapidly, and in the documents from this time second names become more and more common; in the 13th century one rarely finds a person mentioned only by his Christian name.
The reason why the need of second names became stronger after the conquest is that Christian names were completely changed. Most of those that existed in Old English died out, and instead the Christian names of the Normans came into common use, but there were not so numerous. Thus there were only about 25 male names that were common: it is true that others existed, but they rarely occurred. Within the same village, therefore, one very often meets with persons who have the same Christian name. Owing to this an extra name was required to distinguish such persons; the next stage was to give other persons, too, a second name.
The Normans had second names when they came to England, and these were added to those that already existed, thus accelerating the development.
先の記事で触れたのとおおよそ同じ点が指摘されている.ノルマン征服後,洗礼名が英語系からノルマン系に置き換わったが,後者の種類が貧弱だったことが大きく影響している.ある村をランダムに取り上げた調査によると,Willelmus (7回),Robertus (5回),Johannes (3回),Ricardus (3回),Radulphus (3回),Adam (3回),Petrus (3回)等の状況である (Fransson 21fn) .
また,古英語期より姓を付す習慣は思いのほか定着していた可能性が高く,そこへ同じ習慣をもつノルマン文化が入ってきて,その習慣をより強固なものとした,という事情もあったろう.
ちなみに,姓を付す慣習の発達は,イングランドでは上記の通り初期中英語期のことだったが,ドイツではもっとずっと遅く,地域によっては14世紀まで稀だったというから驚きだ (Fransson 20fn) .改めてノルマン征服の大きな効果を感じさせる.
・ Fransson, G. Middle English Surnames of Occupation 1100--1350, with an Excursus on Toponymical Surnames. Lund Studies in English 3. Lund: Gleerup, 1935.
昨日の記事「#5470. 中英語における職業を表わす by-name の取り扱い」 ([2024-04-18-1]) に続く話題.中英語の職業 by-name の分野で影響力のある単著を出した Fransson によると,同分野を研究する意義は多岐にわたる (18--19) .
The value of an investigation such as the present one is manifold. Besides explaining modern surnames, as has already been mentioned, it gives us many new words not previously found and furthermore early and often numerous instances of other common or rare words. By means of these early examples new light is not seldom thrown on the etymology, and the signification may sometimes be altered. In contradistinction to the literature of this period, the time and the place of the occurrence of each instance of a surname are well fixed, and thus the material gives a contribution to Middle English phonology. This material has hitherto not been used by linguists, but it is of the greatest value for the determination of the extension of the different dialects, as the same word can be followed in the different parts of England; there is hardly any other material that can be compared with that of surnames in this respect. --- The distribution is also shown not only of surnames, but also of the various names that a trade may have; the case is that a trade often had different names in different parts of England. Last, but not least, the civilization of this period is elucidated; we are informed what trades existed, how common they were in relation to each other, in what parts of England they flourished, and how specialized they were.
まとめると次の7点.
・ 現代の by-name を説明する
・ 新語の発見,あるいはすでに知られている語の早期の文証例の発掘が見込める
・ 早期の例を通じて,語源や語義の理解が深まることがある
・ 生起例の時期と場所が分かっているので,中英語の音韻論研究に寄与する
・ 同一の名前が異なる方言に現われるので,中英語方言研究に資する
・ 同一の職業名も異なる地域で異なる呼ばれ方をするので,やはり中英語方言研究に貢献する
・ 当時の職業文化が明らかになる
同分野の研究は,言語学的な観点に限っても,上記のほかに形態論,意味論,語彙論,統語論,言語接触,多言語使用状況などに新たな光を与えてくれると期待される.
・ Fransson, G. Middle English Surnames of Occupation 1100--1350, with an Excursus on Toponymical Surnames. Lund Studies in English 3. Lund: Gleerup, 1935.
「#5452. 英語人名史における by-name と family name の違い」 ([2024-03-31-1]) などで取り上げてきた,英語人名を構成する by-name の歴史研究について.初期中英語期に by-name を付ける慣習が徐々に発達していたとき,典型的な名付けのパターンの1つが職業名 (occupational terms) を利用するものだった.この方面の研究は,尽くされてはいないものの,それなりに知見の蓄積がある.Clark (294--95) は,カンタベリーにおける by-name を調査した論文のなかで,文証された by-name の解釈にまつわる難題に触れている.証拠をそのまま信じることは必ずしもできない理由が多々あるという.
The simplest of these Canterbury surnames offer supplementary records, mainly antedatings, of straightforward occupational terms. Yet all is not wholly straightforward. To begin with, we cannot be sure whether the occupational terms used in administrative documents were in fact all current as surnames, that is, in daily use among neighbours, or whether some were supplied by the scribes as formal specifiers, just as occupations and addresses are in legal documents of the present day. Nor can we be sure in what form neighbours would have used such terms as they did. With those examples that are latinized --- a proportion varying in the present material from three-quarters to nine-tenths --- scribal intervention is patent, although sometimes reconstruction of the vernacular base seems easy (such forms, and other speculative cases, are cited in square brackets). With those given in a French form matters are more complex. On the one hand, scribes had a general bias away from English and towards French, as though the latter were, as has been said, 'a sort of ignoble substitute for Latin'; therefore, use of a French occupational term guarantees neither its currency in the English speech of the time nor, alternatively, any currency of French outside the scriptorium: in so far as such terms appear neither in literary sources nor as modern surnames MED is justified in excluding them. On the other hand, many 'French' terms were adopted into English very early; use of these would by no means imply currency of French as such, either in the community at large or in the scriptorium itself.
証拠解釈が難題である背景は多様だが,とりわけラテン語やフランス語が関わってくる状況が厄介である.この時代の税金名簿などに記されている人名はラテン語化されているものが多く,英語名はその陰に隠されてしまっている.また,フランス語で書かれていることも多く,問題の職業名そのものがフランス語由来の場合,それがすでに英語に同化している単語なのか,それともフランス単語のままなのかの判断も難しい.
職業を表わす by-name は,そもそも文献学的に扱いにくい素材なのである.そして,これは職業を表わす by-name に限らず,中英語の固有名全般に関わる厄介な事情でもある.
・ Clark, Cecily. "Some Early Canterbury Surnames." English Studies 57.4 (1976): 204--309.
3月31日に発行された新刊書のご紹介です.山口美知代先生(京都府立大学)による,別名「ハリウッド映画の英語史」というべき本です.映画(の英語)に関心のある方,映画史の観点から英語の社会史を覗いてみたいという方,そして英語史を愛する方,すべてにお薦めできる書籍が登場しました.
以下,目次を掲載します.この目次を眺めているだけで,映画史と英語史の交差点の多様さが理解できると思います.
第1章 概説
1.1. 本書の目的
1.2. 映画の英語の変化
1.3. 先行研究
1.4. 本書の校正
第2章 サイレント映画からトーキーへ --- 『ジャズ・シンガー』 (1927)
2.1. はじめに
2.2. 『ジャズ・シンガー』の英語
2.3. 『ジャズ・シンガー』のサイレント映画的要素
2.4. 『ジャズ・シンガー』の特徴的な語彙
2.5. ブラックフェイスの演出について
第3章 ギャング映画の英語 --- 『民衆の敵』 (1931)
3.1. はじめに
3.2. ギャング映画の系譜と『民衆の敵』,『暗黒街の顔役』
3.3. ギャング映画と倫理規定「プロダクション・コード」
3.4. 初期ギャング映画の語彙
3.5. 『民衆の敵』の用例
3.6. 銃声の効果
3.7. 機関銃の使用 --- 『暗黒街の顔役』
第4章 ハリウッド映画と間大西洋アクセント --- 『ローマの休日』 (1952)
4.1. はじめに
4.2. トーキーの登場とイギリス英語の影響
4.2.1. 演劇の言語の影響
4.2.2. 『雨に唄えば』の発音矯正場面
4.2.3. ブロードウェイの演劇界を描いた『イヴの総て』
4.3. 社会的権威を表す間大西洋アクセント
4.3.1. キューカーの回想
4.3.2. 『ローマの休日』の「ニュース速報」
4.3.3. 『西部戦線異状なし』と古典教師のイギリス英語
4.4. 非英語圏という設定を示す間大西洋アクセント
4.5. 間大西洋アクセントの使用の現象と存続
第5章 トーキーの登場とサイレント映画スターの命運
5.1. はじめに
5.2. 「外国訛りのある英語は観客に通じるのか」
5.3. 「訛りの英語は役柄にふさわしいか」
5.4. 「外国訛りの英語は滑稽である」
5.5. 「外国訛りの英語は非標準的綴り字で表せる」
5.6. 「訛りを直す努力」
5.7. 「訛りは長所であり資産である」
5.8. トーキーにふさわしい英語の模索
5.9. 「訛りは資産」とハリウッドの海外戦略
第6章 トーキーの登場とイギリスの反応
6.1. はじめに
6.2. アメリカ映画がイギリス英語に与えた影響
6.3. ロンドンへのトーキー到来
6.4. トーキーの英語へのイギリスの反応
6.4.1. 「娯楽産業雑誌アーカイヴ」
6.4.2. トーキーのアメリカ英語へのイギリス人の反応
6.4.3. アメリカ映画が役に合わないときの批判
6.4.4. イギリス英語のトーキーへの期待
6.4.5. イギリス庶民院での発言
6.4.6. アメリカ英語批判は不当だという用語
コラム (1) 英語ができない悔しさを描くインド映画『マダム・イン・ニューヨーク』
第7章 プロダクション・コードによる規制 --- 『風と共に去りぬ』 (1939)
7.1. はじめに
7.2. 問題視されたタブー語 damn
7.3. 言語に関する規定
7.4. 『オックスフォード英語辞典』と damn
7.5. プロダクション・コードと「映画の英語の影響力」の論理
7.6. 『風と共に去りぬ』への批判
第8章 タブー語と戦争映画 --- 『7月4日に生まれて』 (1989)
8.1. はじめに
8.2. 『7月4日に生まれて』のタブー語使用
8.2.1. 概観
8.2.2. タブー語の多用される場面
8.2.3. タブー語の用いられない場面
8.2.4. タブー語の使用を咎める場面
8.3. タブー語のない戦争映画 --- 『西部戦線異状なし』
8.4. タブー語使用と登場人物の描き方 --- 『グリーンブック』
コラム (2) ハリウッド映画の中の sushi
第9章 アメリカ南部を描いた映画の英語 --- オーセンティシティと「わざとらしさ」の間
9.1. はじめに
9.2. アメリカ南部英語らしさを表す音声特徴
9.2.1. アメリカ南部英語とは
9.2.2. アメリカ南部英語の特徴
9.3. オーセンティックな南部英語を用いている映画
9.3.1. 『歌え!ロレッタ 愛のために』
9.3.2. 『ヘルプ 心がつなぐストーリー』
9.4. オーセンティックな南部英語を用いない映画
9.4.1. 『風と共に去りぬ』
9.4.2. 『アラバマ物語』
9.5. オーセンティシティと「わざとらしさ」の間
コラム (3) 『レディ・キラーズ』における南部英語の衒学的文体
第10章 言語観,言語景観の変化 --- 『ウェスト・サイド・ストーリー』 (2021)
10.1. はじめに
10.2. スペイン語のある言語景観
10.3. 英語とスペイン語の併用
10.4. 言語態度の描き方
10.4.1. 「英語で話せ」という圧力
10.4.2. 「英語を話そう」という意識
10.5. 聞き手への好意を示す言語選択
参考文献と索引もついています.それぞれの映画を観(直し)たくなったのではないでしょうか.
先日,heldio でも同書を紹介する「#1046. 山口美知代『ハリウッド映画と英語の変化』(開拓社,2024年)」を配信しました.本記事と合わせて,そちらもお聴きいただければ.
・ 山口 美知代 『ハリウッド映画と英語の変化』 開拓社,2024年.
とあるきっかけで piggyback という英単語について調べ始めている.語源不詳ということで語源的に関心をもったからだ.
ところが,語源以前の問題がある.というのは,日本語でいうところの「おんぶ;肩車」に相当するようなのだが,まずもって「おんぶ」と「肩車」は日本語ではまったく異なる2つの姿勢ではないか,と疑念を抱かざるを得ないからだ.英語の piggyback とは何を指すのか,まずそこから迫らなければならない.
まず,先日「#5464. 『ライトハウス英和辞典 第7版』のオンライン版が公開」 ([2024-04-12-1]) で紹介した辞書の記述をみてみよう.語義が端的に「おんぶ,肩車」と併記されている.
続けて,学習者用英英辞書を覗いてみよう.OALD8 の "piggyback" の項より,関係する一部のみ抜き出す.これは「おんぶ」の定義と理解してよいだろうか.
a ride on sb's back, while he or she is walking
- Give me a piggyback, Daddy!
- a piggyback ride
-> pig・gy・back adverb
- to ride piggyback
次に CALD3 では明らかに「おんぶ」の意味である.実際,おんぶしている絵も描かれているので間違いない.
a ride on someone's back with your arms round their neck and your legs round their waist
I gave her a piggyback ride.
ところが,LDOCE5 では次のようにあり,これは「肩車」を指すようなのである.
if you give someone, especially a child, a piggyback, you carry them high on your shoulders, supporting them with your hands under their legs
---piggyback adverb
COBUILD English Dictionary も同じく「肩車」のことをいっているようである.しかし「高いおんぶ」と解せないこともない(だが,もしおんぶと肩車の中間の中途半端な高さを指すとなると,背負う側の負担が著しく大きいだろう).
If you give someone a piggyback, you carry them high on your back, supporting them under their knees.
* They give each other piggy-back rides.
はて,困った.孫に対して「おんぶならしてあげられるけれど肩車は無理」というおじいちゃんは,英語でなんと表現すれば良いのやら.サピア=ウォーフの仮説 (sapir-whorf_hypothesis),再び.
OED Online は3ヶ月に一度のペースでアップデートがなされています.最新のアップデートは先月(2024年3月)のもので,Updates の一覧よりアクセスできます.
今回のアップデートを特徴づけるのは,なんと日本語からの借用語です.関連記事として "Words from the land of the rising sun: new Japanese borrowings in the OED" が公開されていますが,これは必読です.
今回 OED のアップデートで日本語からの借用語が注目されたのは,たまたまというわけではなく,とある背景があったようです.上記記事によると,OED 編纂チームが,昨年建学150周年を迎えた東京外国語大学(←私の出身大学です,おめでとう!)のパートナー研究者とコラボし,その研究成果に基づいて,これらの日本語単語を収録したということのようです.今回だけで23語の日本語単語が OED に新しく収録されるに至ったのですが,この数は1回のアップデートとしてはなかなかのものです.その23語とは,具体的には以下の通り.
donburi (n.), hibachi (n.), isekai (n.), kagome (n.), karaage (n.), katsu (n.), katsu curry (n.), kintsugi (n.), kirigami (n.), mangaka (n.), okonomiyaki (n.), omotenashi (n.), onigiri (n.), santoku (n.), shibori (n.), takoyaki (n.), tokusatsu (n.), tonkatsu (n.), tonkatsu sauce (n.), tonkotsu (n./1), tonkotsu (n./2), washi tape (n.), yakiniku (n.)
日本語母語話者としてはツッコミどころが満載で楽しいです.じっくり掘ってみてください.
・ tonkotsu という語はなんと2つの見出しが立っている.我々の知る「豚骨」(スープ,ラーメン)は tonkotsu2 だが,別に tonkotsu1 もあるという.皆さん,後者は何のことだか分かりますか?
・ donburi の語源解説で,日本語「どんぶり」は「ざぶんと」を意味した副詞用法と関係するのではないかとあり,日本語の語源まで学べてしまうスゴさが.
・ katsu 「カツ」は "boomerang word"
・ kintsugi 「金継ぎ」が,工芸技術の意にとどまらず美学的世界観へと昇華されていた!
・ isekai 「異世界」と tokusatsu 「特撮」は,さすが日本のサブカルというべき採録.
OED における日本語借用語の話題としては,OED 公式の以下の記事も参照.
・ Words of Japanese origin
・ From anime to zen: Japanese words in the OED
「#5460. heldio 2024年第1四半期のベスト回を決めるリスナー投票 --- 4月11日までオープン」 ([2024-04-08-1]) でご案内したとおり,4月5日(金)から11日(木)まで,今年第1四半期におけるベスト配信回を決めるリスナー投票(1人10票まで)を開催しました.「hel活」 (helkatsu) の一環としてのイベントでした.投票いただいた方々には,ご協力に感謝申し上げます.ありがとうございました.
投票結果をまとめましたので,本記事にて報告いたします.上位9位までの計14回分を掲載しています.詳しくは Slido での投票結果をご覧ください.
1. 「#1030. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む」 (58%)
2. 「#950. アングル人 (Angles) は天使 (angels) か? --- 教皇グレゴリウス1世のダジャレで始まったイングランドのキリスト教」 (35%)
2. 「#977. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (7) --- khelf 藤原くんと同音異義語 bank の項を精読する」 (35%)
4. 「#945. なぜ言語は変化するのか?」 (27%)
4. 「#968. マジック e の起源 --- name, five, cute の語末の <e> は何?」 (27%)
4. 「#991. while の文法化」 (27%)
4. 「#1011. 「変なアルファベット表」の完成と公開 with 寺澤志帆さん」 (27%)
4. 「#1022. トートロジー --- khelf 会長,青木くんの研究テーマ」 (27%)
9. 「#956. 非人称構文とは?」 (23%)
9. 「#983. B&Cの第42節「文法性」の対談精読実況生中継 with 金田拓さんと小河舜さん」 (23%)
9. 「#1026. なぜ now と know は発音が違うの?」 (23%)
9. 「#1027. 通時的変化と共時的変異 --- 言語変化を考える際の2つの軸」 (23%)
9. 「#1031. 英語は数量を表わすのに属格を好む? --- 前置詞 of を理解するために」 (23%)
9. 「#1032. なぜ subject が「主語」? --- 「ゆる言語学ラジオ」からのインスピレーション」 (23%)
第1位は「はじめての古英語」シリーズでした! このシリーズは小河舜先生(上智大学)および「まさにゃん」こと森田真登先生(武蔵野学院大学)とともに3人でお届けしている,真面目オモシロの古英語入門で,昨年1年のリスナー投票でも第1位に輝いています(cf. 「#5363. 2023年のリスナー投票による heldio の推し配信回ベスト10が決定!」 ([2024-01-02-1])).シリーズの更新は鈍めなのですが,今回の皆さんからの支持は,継続のためにお尻をたたいていただいているものと理解しました.何とか近日中にシリーズ続編をお届けしたいと思います.
第2位は古英語のダジャレ回.リスナーさんにはダジャレ好きの方が多いので,その界隈にウケたものと想像されます.同率2位を勝ち取ったのは,研究社の『英語語源辞典』を khelf の藤原郁弥さんとともに精読していくシリーズの1回.このシリーズも回を重ね,ご愛聴いただいています.
この後,同率4位が5本,同率9位が6本と続きます.素朴な疑問あり,英語史用語の解説あり,Baugh and Cable の対談精読実況生中継ありと様々です.
今回のランキングをきっかけに,まだお聴きでない回がありましたら,ぜひ聴取いただければと思います.
以上,投票結果報告でした.
khelf(慶應英語史フォーラム)では,学びの意欲が高まる毎年度始まりに,様々なお祭りイベントを企画しています.その第1弾が,一昨日4月10日にスタートした「英語史コンテンツ50+」です.現役の大学院生と学部生を中心とする khelf メンバーの各々が,休日を除く毎日,順次1つずつ英語史に関するコンテンツを khelf HP 上に公開していくというイベントです.駅伝式のバトンリレーなので途中で息切れしてしまう可能性が常にあり,企画運営側としてはハラハラなのですが,何とかつないでいきたいと思います.
2021年度に始まった季節イベントで今年度で4年目となりますが,今年度はコンテンツ提供者が khelf 外にも広がっていきます.バトンリレーの後半戦での掲載になると思いますが,khelf 外の大学(院)生も英語史コンテンツを貢献してくれることになっています.これにより最終的には50件以上のコンテンツが公開となる見込みです.したがって「英語史コンテンツ50+」とタイトルの終わりに「+」がついています.
2024年度の「英語史コンテンツ50+」のトップバッターは,khelf 会長の青木輝さんです.続いて khelf シニアメンバーの大学院生が続いています.本日までに公開されている最初の4本のコンテンツへリンクを張ります.
・ 「#1. "A" History of the English Language」(4月10日, 青木輝さん(慶應義塾大学大学院生)によるコンテンツ)
・ 「#2. 欲しいもの,買えますか?」(4月11日, 慶應義塾大学大学院生によるコンテンツ)
・ 「#3. ある地図から考える言語についてのあれこれ」(4月12日, 高山真梨子さん(慶應義塾大学大学院生)によるコンテンツ)
・ 「#4. iPhoneはスマホになるか?」(4月13日, 慶應義塾大学大学院生によるコンテンツ)
こちら4本を含め今後公開されてくるコンテンツも,新年度に英語史に初めて触れる読者を意識した導入的な話題が多くなってくると思います.英語史コンテンツはいずれも気軽に読める短いエッセイで,「英語史」を日常化するための素材としても最適です.hellog や heldio とともに「英語史コンテンツ50+」を訪問することを,ぜひ日々の習慣にしていただければ幸いです.日々のコンテンツ公開情報は khelf の公式ツイッターアカウント @khelf_keio からもお知らせしていきます.ぜひフォローいただき,リマインダーとしてご利用ください.
前述の通り,本イベントの実施は,今回で4年目となります.第1回は「英語史導入企画2021」として49本のコンテンツが,第2回は「英語史コンテンツ50 (2022)」として59本のコンテンツが,第3回は「英語史コンテンツ50 (2023)」として50本のコンテンツが公開されてきました.アーカイヴとしていつでも閲覧・ダウンロード可能ですので,英語史成分の摂取がまだ足りないという方は,そちらもご覧ください.また,以下の記事では過年度のベスト10コンテンツを紹介しています.
・ 2021年度のベスト10:「#4726. 昨年度のコンテンツ企画のベスト10」 ([2022-04-05-1])
・ 2022年度のベスト10:「#5102. 2022年度の英語史コンテンツのベスト10 --- 昨年度の振り返り」 ([2023-04-16-1])
・ 2023年度のベスト10:「#5447. 2023年度の英語史コンテンツ企画のベスト10 --- 昨年度の振り返り」 ([2024-03-26-1])
学生による英語史活動の一環としてのイベントですので温かく見守っていただければ幸いです.学びの応援のほど,どうぞよろしくお願いいたします.
「英語史コンテンツ50+」の企画については,先日の heldio でもご紹介しました.音声で聴きたいという方は,ぜひ「#1047. khelf 企画「英語史コンテンツ50+」が今年度もスタート」もどうぞ.
昨年秋に研究社より出版された『ライトハウス英和辞典 第7版』のオンライン版が先日公開となりました.冊子版(に含まれるパスワード)をお持ちの方は,研究社のウェブサイトの「ライトハウス英和辞典 オンライン版」よりアクセスできます.
例えば and を検索すると,次のように冊子版と同じ紙面が表示されます. *
辞書を「引く」「調べる」だけではなく「読む」習慣をつけると,常に新たな発見があるので刺激的です.この4月から,辞書とお友達になりましょう!
『ライトハウス英和辞典 第7版』関連の記事として以下もご一読を.
・ 「#5438. 紙の辞書の魅力 --- 昨秋出版の『ライトハウス英和辞典 第7版』より」 ([2024-03-17-1])
・ 「#5442. 『ライトハウス英和辞典 第7版』の付録「つづり字と発音解説」」 ([2024-03-21-1])
・ 赤須 薫(編) 『ライトハウス英和辞典 第7版』 研究社,2023年.
本日,慶應義塾大学文学部英米文学専攻の必修科目の1つ「英語史」の講義が開講します.主に専攻の2年生が履修する科目です,1年間(2セメスター)かけて,英語という言語の有為転変の歴史を紡いでいきます.
重要な初回講義は,主に本ブログの記事を組み合わせることで英語史への導入を図ります.以下のセクションには多くの情報が詰め込まれていますが,履修生の皆さんは,今回の講義ですべてを消化できなくても,いつでもこの記事に戻ってきてください.
また,一般の hellog 読者の方々も,以下のリンクを通じて,初回講義を部分的・擬似的に体験できるかと思います.特に年度始まりの4, 5, 6月は khelf(慶應英語史フォーラム)活動の一環として「英語史コンテンツ50+」企画も始まっていますし,ほかにも様々な形で英語史の学びを促す活動「hel活」 (helkatsu) を展開していく予定です.英語史に関心のあるすべての方々の学びを応援しますので,ぜひ以下のリンクを1つひとつたどっていただければ.
1. イントロ
1.1. 不定冠詞 a と an について: 「#831. Why "an apple"?」 ([2011-08-06-1]),heldio 「#1. なぜ A pen なのに AN apple なの?」
1.2. 「英語史」講義担当者の紹介: note 「堀田隆一のプロフィール」,heldio 「#408. 自己紹介:英語史研究者の堀田隆一です」,「#2. 自己紹介」 ([2009-05-01-2])
2. 英語史の世界へようこそ
2.1. 英語史の魅力4点: 「#4546. 新学期の始まりに,英語史の学び方」 ([2021-10-07-1])
(1) 英語の見方が180度変わる
(2) 英語と歴史(社会科)がミックスした不思議な感覚の科目
(3) 素朴な疑問こそがおもしろい
(4) 現代英語に戻ってくる英語史
2.2. 「#4361. 英語史は「英語の歴史」というよりも「英語と歴史」」 ([2021-04-05-1]): 魅力 (2) に通じます
2.3. 「なぜ英語史を学ぶのか」の記事セット: 様々な角度から「なぜ学ぶのか」を検討してみました(cf. heldio 「#444. 英語史を学ぶとこんなに良いことがある!」や heldio 「#112. 英語史って何のため?」でも取り上げています)
3. 英語に関する素朴な疑問
3.1. 「#1093. 英語に関する素朴な疑問を募集」 ([2012-04-24-1]): 魅力 (3) に通じます
3.2. 3166件の素朴な疑問
3.3. これまで hellog で取り上げてきた素朴な疑問集
3.4. 知識共有サービス「Mond」で英語・言語に関する素朴な疑問に回答しています
3.5. この講義で Slido (質疑応答サービス)を利用して英語に関する素朴な疑問を募集します(こちらからアクセスしてください)
4. 英語史を日常の風景に
4.1. 「#5097. hellog の読み方(2023年度版)」 ([2023-04-11-1]): 2009年5月1日より毎日更新している英語史のブログです.この hellog の効果的な使い方の tips をどうぞ.
4.2. 音声コンテンツ一覧 (heldio & hellog-radio): hellog の音声版というべき Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) .2021年6月2日より毎朝6時に1本10分ほどで英語史の話題をお届けしています.日々の英語史の学びのためにフォローしてください.英語史の話題が日常になります.「#5093. heldio の聴き方(2023年度版)」 ([2023-04-07-1]) および「#5098. 英語史を学び始めようと思っている方へ hellog と heldio のお薦め回一覧(2023年度版)」 ([2023-04-12-1]) も参照.
4.3. 「#5091. khelf の沿革,活動実績,ミッションステートメント」 ([2023-04-05-1]): khelf HPと公式ツイッターアカウント @khelf_keio より情報を発信しています.
4.4. 「#5426. 『英語史新聞』第8号が発行されました」 ([2024-03-05-1]): 世界初の英語史を主題とする新聞の第8号です.
4.5. khelf イベント「英語史コンテンツ50+」が始まっています: 昨日4月10日より休日を除く毎日,英語史を専攻するゼミ生・院生から手軽に読める「英語史コンテンツ」がウェブ上にアップされてきます.上記だけでは足りないという方は,過年度の同企画もどうぞ.
4.6. 「いのほた言語学チャンネル」(旧「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」): 2022年2月26日より同専攻の井上逸兵先生(英語学・言語学)と一緒に週2回(水)と(日)の午後6時に動画を公開しています
5. 講義の進め方
5.1. 講義スライド,テキスト,課題,試験,評価
5.2. 指定テキストは英語史の古典的名著 Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.:「#5205. Baugh and Cable の英語史概説書を1節ずつ読み進めながら Voicy heldio で自由にコメントしていく試みを始めています」 ([2023-07-28-1])
5.3. 英語史の読書案内:「#5462. 英語史概説書等の書誌(2024年度版)」 ([2024-04-10-1]),「#4557. 「英語史への招待:入門書10選」」 ([2021-10-18-1]),heldio 「対談 英語史の入門書」
5.4. 過年度に「英語史」を履修した先輩たちの言葉: 「#5393. 2023年度,1年間の「英語史」の講義を終えて」 ([2024-02-01-1]),heldio 「#974. 1年間の「英語史」の講義を終えて --- 2023年度版」
6. ライヴで寄せられた英語の素朴な疑問に即興で答える「千本ノック」
1年間,楽しい英語史ライフをお送りください!
毎年度初めの恒例となっていますが,英語史の学習・研究に役立つ書誌の最新版を公表します.
初学者にお薦めの図書に◎を,初学者を卒業した段階のお薦めの図書に○を付してあります.各図書の巻末などには,たいてい解題書誌や参考文献一覧が含まれていますので,さらに学習を続けたい方は芋づる式にたどっていってください.
印刷用のPDFをこちらに用意しましたので,自由に閲覧・印刷・配布していただいて結構です.
関連して以下の記事,および bibliography の記事群もご参照ください.
・ 「#4557. 「英語史への招待:入門書10選」」 ([2021-10-18-1])
・ 「#4731. 『英語史新聞』新年度号外! --- 英語で書かれた英語史概説書3冊を紹介」 ([2022-04-10-1])
・ 「#4870. 英語学入門書の紹介」 ([2022-08-27-1])
・ 「#5237. 大阪大学総合図書館発行の「英語史について調べる」」 ([2023-08-29-1])
[英語史(日本語)]
◎ 家入 葉子 『ベーシック英語史』 ひつじ書房,2007年.
・ 宇賀治 正朋 『英語史』 開拓社,2000年.
・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.
◎ 唐澤 一友 『多民族の国イギリス --- 4つの切り口から英国史を知る』 春風社,2008年.
○ 唐澤 一友 『英語のルーツ』 春風社,2011年.
○ 唐澤 一友 『世界の英語ができるまで』 亜紀書房,2016年.
・ 島村 宣男 『新しい英語史 --- シェイクスピアからの眺め ---』 関東学院大学出版会,2006年.
◎ 寺澤 盾 『英語の歴史』 中央公論新社〈中公新書〉,2008年.
・ 高橋 英光 『英語史を学び英語を学ぶ --- 英語の現在と過去の対話』 開拓社,2020年.
・ 中尾 俊夫,寺島 廸子 『図説英語史入門』 大修館書店,1988年.
・ 橋本 功 『英語史入門』 慶應義塾大学出版会,2005年.
◎ 堀田 隆一 『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』 中央大学出版部,2011年.
○ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』 研究社,2016年.
・ サイモン・ホロビン(著),堀田 隆一(訳) 『スペリングの英語史』 早川書房,2017年.
・ 松浪 有(編),小川 浩・小倉 美知子・児馬 修・浦田 和幸・本名 信行(著) 『英語の歴史』 大修館書店,1995年.
・ 柳 朋宏 『英語の歴史をたどる旅』 中部大学ブックシリーズ Acta 30,風媒社,2019年.
・ 渡部 昇一 『英語の歴史』 大修館,1983年.
[英語史(英語)]
○ Algeo, John, and Thomas Pyles. The Origins and Development of the English Language. 5th ed. Thomson Wadsworth, 2005.
◎ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.
・ Blake, N. F. A History of the English Language. Basingstoke: Macmillan, 1996.
◎ Bradley, Henry. The Making of English. London: Macmillan, 1955.
○ Bragg, Melvyn. The Adventure of English. New York: Arcade, 2003.
○ Brinton, Laurel J. and Leslie K. Arnovick. The English Language: A Linguistic History. Oxford: OUP, 2006.
・ Bryson, Bill. Mother Tongue: The Story of the English Language. London: Penguin, 1990.
・ Crystal, David. The Stories of English. London: Penguin, 2005.
◎ Fennell, Barbara A. A History of English: A Sociolinguistic Approach. Malden, MA: Blackwell, 2001.
○ Gelderen, Elly van. A History of the English Language. Amsterdam, John Benjamins, 2006.
・ Görlach, Manfred. The Linguistic History of English. Basingstoke: Macmillan, 1997.
○ Gooden, Philip. The Story of English: How the English Language Conquered the World. London: Quercus, 2009.
・ Gramley, Stephan. The History of English: An Introduction. Abingdon: Routledge, 2012.
・ Hogg, R. M. and D. Denison, eds. A History of the English Language. Cambridge: CUP, 2006.
○ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.
◎ Horobin, Simon. How English Became English: A Short History of a Global Language. Oxford: OUP, 2016.
・ Jespersen, Otto. Growth and Structure of the English Language. 10th ed. Chicago: U of Chicago, 1982.
○ Knowles, Gerry. A Cultural History of the English Language. London: Arnold, 1997.
・ McCrum, Robert, William Cran, and Robert MacNeil. The Story of English. 3rd rev. ed. London: Penguin, 2003.
・ Mugglestone, Lynda, ed. The Oxford History of English. Oxford: OUP, 2006.
・ Smith, Jeremy J. An Historical Study of English: Function, Form and Change. London: Routledge, 1996.
○ Strang, Barbara M. H. A History of English. London: Methuen, 1970.
○ Svartvik, Jan and Geoffrey Leech. English: One Tongue, Many Voices. Basingstoke: Palgrave Macmillan, 2006.
[英語史関連のウェブサイト]
・ 家入 葉子 「英語史全般(基本文献等)」 https://iyeiri.com/569 .
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「YouTube 井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」 2022年2月26日~,https://www.youtube.com/channel/UCth3mYbOZ9WsYgPQa0pxhvw .
・ 菊地 翔太 「菊地翔太 (Shota Kikuchi) のHP」 https://sites.google.com/view/shotakikuchi .
・ khelf (慶應英語史フォーラム) 「Keio History of the English Language Forum のHP」 https://sites.google.com/view/khelf-hotta .
・ 堀田 隆一 「hellog~英語史ブログ」 2009年5月1日~,http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog .
・ 堀田 隆一 「連載 現代英語を英語史の視点から考える」 2017年1月~12月,http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/history_of_english/series.html .
・ 堀田 隆一 「Voicy 英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 2021年6月2日~,https://voicy.jp/channel/1950 .
・ 三浦 あゆみ 「A Gateway to Studying HEL」 https://sites.google.com/view/gatewaytohel .
・ 矢冨 弘 「矢冨弘 homepage」 https://yadomi1989.wixsite.com/my-site-1 .
[英語史・英語学の参考図書]
・ 荒木 一雄・安井 稔(編) 『現代英文法辞典』 三省堂,1992年.
・ 家入 葉子・堀田 隆一 『文献学と英語史研究』 開拓社,2022年.
・ 石橋 幸太郎(編) 『現代英語学辞典』 成美堂,1973年.
・ 大泉 昭夫(編) 『英語史・歴史英語学:文献解題書誌と文献目録書誌』 研究社,1997年.
・ 大塚 高信・中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.
・ 小野 茂(他) 『英語史』(太田 朗・加藤 泰彦(編) 『英語学大系』 8--11巻) 大修館書店,1972--85年.
・ 佐々木 達・木原 研三(編) 『英語学人名辞典』,研究社,1995年.
・ 寺澤 芳雄(編) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.
・ 寺澤 芳雄(編) 『英語史・歴史英語学 --- 文献解題書誌と文献目録書誌』 研究社,1997年.
・ 寺澤 芳雄(編) 『英語学要語辞典』 研究社,2002年.
・ 寺澤 芳雄・川崎 潔 (編) 『英語史総合年表 --- 英語史・英語学史・英米文学史・外面史 ---』 研究社,1993年.
・ 服部 義弘・児馬 修(編) 『歴史言語学』 朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.
・ 松浪 有・池上 嘉彦・今井 邦彦(編) 『大修館英語学事典』 大修館書店,1983年.
・ Bergs, Alexander and Laurel J. Brinton, eds. English Historical Linguistics: An International Handbook. 2 vols. Berlin: Mouton de Gruyter, 2012.
・ Bergs, Alexander and Laurel J. Brinton, eds. The History of English. 5 vols. Berlin/Boston: Gruyter, 2017.
・ Biber, Douglas, Stig Johansson, Geoffrey Leech, Susan Conrad, and Edward Finegan, eds. Longman Grammar of Spoken and Written English. Harlow: Pearson Education, 1999.
・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. Cambridge: CUP, 1995. 2nd ed. 2003.
・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of Language. Cambridge: CUP, 1995. 2nd ed. 2003. 3rd ed. 2019.
・ Hogg, Richard M., ed. The Cambridge History of the English Language. 6 vols. Cambridge: CUP, 1992--2001.
・ Huddleston, Rodney and Geoffrey K. Pullum, eds. The Cambridge Grammar of the English Language. Cambridge: CUP, 2002.
・ McArthur, Tom, ed. The Oxford Companion to the English Language. Oxford: OUP, 1992.
・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.
・ van Kemenade, Ans and Bettelou Los, eds. The Handbook of the History of English. Malden, MA: Blackwell, 2006.
1年のなか最も力強く学びの意欲が湧き出す4月.私の周囲でも英語史の学びを奨励する「hel活」 (helkatsu) が著しくなってきています.皆さんには,ご自身で驚くほどの精力でhel活を推進していただいている,あるいは他の方々のhel活に側面から支援していただいています.
今回は,3ヶ月ほど前に「#5373. Voicy heldio を通じて「hel活」仲間が増えてきました」 ([2024-01-12-1]) としてすでにご紹介している方々も含め,パワーアップしたhel活支援者のラインナップの抜粋を示します.
・ khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバー:私の身近なところでは最大の「hel活」推進団体です.『英語史新聞』を季刊で発行しています.HP での広報のほか,X(旧ツイッター)アカウント @khelf_keio からも日々元気にhel活中.
・ heldio/helwa のリスナーの皆さん:日々の配信回へのコメント,SNS を通じての広報,企画回や生放送への参加,その他のhel活でお世話になっています.とりわけ最近注目すべき note 上での活動をご紹介します.
- リスナー umisio さんの note 「heldio の風に乗って」.heldio を聴いて気づいたことをコラムや論文にして投稿されています.
- リスナー lacolaco さんの note 「英語語源辞典通読ノート」.『英語語源辞典』を A から読み,おもしろい項目のみを抜き出してコメントしていくという,たいへん勉強になるシリーズ記事です.
- リスナー Grace さんの note 「Voicy で英語の語源が身につくラジオ (heldio) を聴き,言葉についてあれこれ考えることを日課としています」.強力な heldio 推し活が展開されています.
- リスナー り~みん さんの note 「工学と言語学との狭間にハマってみた」.heldio を推していただいています.
- ほかには「#5459. 「はじめての古英語」シリーズのオマケとしての古英語音読投稿企画が続いています」 ([2024-04-07-1]) で触れたリスナーさんも.
・ heldio/helwa 対談出演者の研究者や学生の皆さんにもお世話になっています.特に最近ご出演いただいた方々を中心にまとめてみます.
- 菊地翔太先生(専修大学)の HP
- 矢冨弘先生(熊本学園大学)の HP
- 小河舜先生(上智大学)の HP
- 「まさにゃん」こと森田真登先生(武蔵野学院大学)の HP
・ そしてもちろん本ブログを毎日お読みいただいている皆さんにも感謝いたします.私の公式 X アカウント @chariderryu からも情報を発信していますので,ぜひフォローをお願い致します.
hel活に,この4月という絶好のタイミングを利用しない手はありません.hel活のますますの盛り上がりに期待しています.皆さん,どんな形でもけっこうですので,ぜひhel活にご参加いただければと思います.SNS などではぜひ「#hel活」のハッシュタグをご活用ください.私からも,見つけられる限り反応していきたいと思います.
ちなみに今朝の heldio 「#1044. リスナーさんの著しいhel活をご紹介」でも同じ話題をお届けしています.
heldio 2024年第1四半期のベスト回を決めるリスナー投票を,2024年4月5日(金)より4月11日(木) 23:59 までこちらの投票コーナーにて受け付けています(あるいは以下のQRコードよりどうぞ).ぜひ皆さんのマイベスト10を選んでいただければ幸いです.
上記の通り,本ブログの音声版・姉妹版ともいえる毎朝配信の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の,今年第1四半期におけるベスト配信回を決めるリスナー投票イベントを開催中です.投票会場は4月11日(木)23:59 までオープンしていますので,この機会に聴き逃した過去配信回などをお聴きいただき,マイベストの10件をじっくり選んでいただければ.各配信回へのアクセスは,音声コンテンツ一覧よりどうぞ.1月1日配信の「#945. なぜ言語は変化するのか?」から3月31日配信の「#1035. コメント返し 2024/03/31(Sun)」までの91回分が投票の対象となります.
今回のリスナー投票企画は,前回の「2023年 heldio の推し配信回」を決める投票に続いての企画です.前回は昨年中のほぼすべての配信回を対象にしたので選ぶのが大変ではありましたが,おかげさまで多くの方々に投票いただきました.その結果は「#5363. 2023年のリスナー投票による heldio の推し配信回ベスト10が決定!」でご報告していますので,ぜひご覧いただければ.
皆さんにおかれましては,今回も奮ってご投票ください.一昨日には投票を呼びかける「#1040. heldio 2024年第1四半期のベスト回を決めるリスナー投票(1人10票,4月11日まで投票受付)も配信しています.
3月25日(月)に Voicy heldio の生放送としてお届けした「#1030. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む」に対して,多くの反響をいただいています.本ブログでも「#5450. heldio の人気シリーズ復活 --- 「ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 4 with 小河舜さん and まさにゃん」」 ([2024-03-29-1]) にて振り返った通りです.
上記配信回では「#5444. 古英語の原文を読む --- 597年,イングランドでキリスト教の布教が始まる」 ([2024-03-23-1]) で公開した古英語テキストの一部を,小河舜先生(上智大学)および「まさにゃん」こと森田真登先生(武蔵野学院大学)と3人で精読・解説しました.
その後,復習用のオマケ・遊びとして,問題の古英語原文を音読・収録し,X(旧ツイッター)上に投稿する "The First Take" の企画を展開しました.3人による一発録り音読を投稿した後,熱心なお2人のリスナーさんにバトンを継いでいただきました.
(1) まさにゃんによる音読投稿
(2) 小河舜さんによる音読投稿
(3) 堀田隆一による音読投稿
(4) リスナーのり~みんさんによる音読投稿
(5) リスナーのりりみさんによる音読投稿
学びのための遊び企画として,ぜひ他の方々にもバトンを継いでいただければ幸いです.何度か音読を練習した上で,本番として動画録音し,その動画を X 上で投稿していただくだけです.その際に,上記の既存の投稿への引用ポストとしていただくか,あるいは #はじめての古英語 とハッシュタグを付けて投稿していただければ,皆さんがすぐに認識できます.
この古英語音読投稿企画は,今後の同シリーズでも継続していきたいと思っています.年度初めの「hel活」 (helkatsu) の一環として,一人でも多くの方に乗っていただければ.
昨日の記事「#5457. 主語をめぐる論点」 ([2024-04-05-1]) に続き,別の言語学用語辞典からも主語 (subject) の項目を覗いてみよう.Crystal の用語辞典より引用する.
subject (n.) (S, sub, SUB, Subj, SUBJ) A term used in the analysis of GRAMMATICAL FUNCTIONS to refer to a major CONSTITUENT of SENTENCE or CLAUSE structure, traditionally associated with the 'doer' of an action, as in The cat bit the dog. The oldest approaches make a twofold distinction in sentence analysis between subject and PREDICATE, and this is still common, though not always in this terminology; other approaches distinguish subject from a series of other elements of STRUCTURE (OBJECT, COMPLEMENT, VERB, ADVERBIAL, in particular. Linguistic analyses have emphasized the complexity involved in this notion, distinguishing, for example, the grammatical subject from the UNDERLYING or logical subject of a sentence, as in The cat was chased by the dog, where The cat is the grammatical and the dog the logical subject. Not all subjects, moreover, can be analyzed as doers of an action, as in such sentences as Dirt attracts flies and The books sold well. The definition of subjects in terms of SURFACE grammatical features (using WORD-ORDER or INFLECTIONAL criteria) is usually relatively straightforward, but the specification of their function is more complex, and has attracted much discussion (e.g. in RELATIONAL GRAMMAR). In GENERATIVE grammar, subject is sometimes defined at the NP immediately DOMINATED by S. While NP is the typical formal realization of subject, other categories can have this function, e.g. clause (S-bar), as in That oil floats on water is a fact, and PP as in Between 6 and 9 will suit me. The term is also encountered in such contexts as RAISING and the SPECIFIED-SUBJECTION CONDITION.
昨日引用・参照した McArthur の記述と重なっている部分もあるが,今回の Crystal の記述からは,拠って立つ言語理論に応じて主語の捉え方が異なることがよく分かる.関係文法では主語の果たす機能に着目しており,生成文法ではそもそも主語という用語を常用しない.あらためて主語とは伝統文法に基づく緩い用語であり,そしてその緩さ加減が適切だからこそ広く用いられているのだということが分かる.
・ Crystal, David, ed. A Dictionary of Linguistics and Phonetics. 6th ed. Malden, MA: Blackwell, 2008. 295--96.
昨日の記事「#5456. 主語とは何か?」 ([2024-04-04-1]) に引き続き,主語 (subject) についての本質的な疑問に迫りたい.この問題を論じるに際し,まず用語辞典などに当たってみるのが良さそうだ.McArthur の項目を引用しよう.主要な論点が見えてくる.
SUBJECT [13c: from Latin subjectum grammatical subject, from subiectus placed close, ranged under]. A traditional term for a major constituent of the sentence. In a binary analysis derived from logic, the sentence is divided into subject and predicate, as in Alan (subject) has married Nita (predicate). In declarative sentences, the subject typically precedes the verb: Alan (subject) has married (verb) Nita (direct object). In interrogative sentences, it typically follows the first or only part of the verb: Did (verb) Alan (subject) marry (verb) Nita (direct object)? The subject can generally be elicited in response to a question that puts who or what before the verb: Who has married Nita?---Alan. Where concord is relevant, the subject determines the number and person of the verb: The student is complaining/The students are complaining; I am tired/He is tired. Many languages have special case forms for words in the subject, the subject requires a particular form (the subjective) in certain pronouns: I (subject) like her, and she (subject) likes me.
Kinds of subject. A distinction is sometimes made between the grammatical subject (as characterized above), the psychological subject, and the logical subject: (1) The psychological subject is the theme or topic of the sentence, what the sentence is about, and the predicate is what is said about the topic. The grammatical and psychological subjects typically coincide, though the identification of the sentence topic is not always clear: Labour and Conservative MPs clashed angrily yesterday over the poll tax. Is the topic of the sentence the MPs or the poll tax? (2) The logical subject refers to the agent of the action; our children is the logical subject in both these sentences, although it is the grammatical subject in only the first: Our children planted the oak sapling; The oak sapling was planted by our children. Many sentences, however, have no agent: Stanley has back trouble; Sheila is a conscientious student; Jenny likes jazz; There's no alternative; It's raining
Pseudo-subjects. The last sentence also illustrates the absence of a psychological subject, since it is obviously not the topic of the sentence. This so-called 'prop it' is a dummy subject, serving merely to fill a structural need in English for a subject in a sentence. In this respect, English contrasts with languages such as Latin, which can omit the subject, as in Veni, vidi, vici (I came, I saw, I conquered: with no need for the Latin pronoun ego, I). Like prop it, 'existential there' in There's no alternative is the grammatical subject of the sentence, but introduces neither the topic nor (since there is no action) the agent.
Non-typical subjects. Subjects are typically noun phrases, but they may also be finite and non-finite clauses: 'That nobody understands me is obvious'; 'To accuse them of negligence was a serious mistake'; 'Looking after the garden takes me several hours a week in the summer.' In such instances, finite and infinitive clauses are commonly post and anticipatory it takes their place in subject position: 'It is obvious that nobody understands me'; 'It was a serious mistake to accuse them of negligence.' Occasionally, prepositional phrases and adverbs function as subjects: 'After lunch is best for me'; 'Gently does it.'
Subjectless sentences. Subjects are usually omitted in imperatives, as in Come here rather than You come here. They are often absent from non-finite clauses ('Identifying the rioters may take us some time') and from verbless clauses ('New filters will be sent to you when available'), and may be omitted in certain contexts, especially in informal notes (Hope to see you soon) and in coordination (The telescope is 43 ft long, weighs almost 11 tonnes, and is more than six years late).
項目の書き出しは標準的といってよく,おおよそ文法的な観点から主語の概念が導入されている.主部・述部の区別に始まり,主語の統語論的振る舞いや形態論的性質が紹介される.
次の節では,主語が文法的な観点のみならず心理的,論理的な観点からもとらえられるとして,別のアングルが提供される.心理的な観点からは「テーマ,主題」,論理的な観点からは「動作の行為者」に対応するのが主語なのだと説かれる.現実の文に当てはめてみると,3つの観点からの主語が必ずしも互いに一致しないことが示される.
続けて,擬似的な主語,いわゆる形式主語やダミーの主語と呼ばれるものが紹介される.そこでは there is の存在文 (existential_sentence) も言及される.この構文では there はテーマではありえないし,動作の行為者でもないので,あくまで文法形式のために要求されている主語とみなすほかない.
通常,主語は名詞句だが,それ以外の統語カテゴリーも主語として立ちうるという話題が導入されたあと,最後に主語がない(あるいは省略されている)節の例が示される.
ほかにも様々に論点は挙げられそうだが,今回は手始めにここまで.
・ McArthur, Tom, ed. The Oxford Companion to the English Language. Oxford: OUP, 1992.
3月31日に配信した YouTube 「いのほた言語学チャンネル」の第219回は,「古い文法・新しい文法 There is 構文まるわかり」と題してお話ししています.本チャンネルとしては,この4日間で視聴回数3100回越えとなり,比較的多く視聴されているようです.ありがとうございます.
There is a book on the desk. のような存在文 (existential_sentence) における there は,意味的には空疎ですが,文法的には主語であるかのような振る舞いを示します.一方,a book は何の役割をはたしているかと問われれば,これこそが主語であると論じることもできます.さらに be 動詞と数の一致を示す点でも,a book のほうが主語らしいのではないかと議論できそうです.
これまで当たり前のように受け入れてきた主語 (subject) とは,いったい何なのでしょうか.考え始めると頭がぐるぐるしてきます.存在文の主語の問題,および「主語」という用語に関しては,heldio でも取り上げてきました.
・ 「#1003. There is an apple on the table. --- 主語はどれ?」
・ 「#1032. なぜ subject が「主語」? --- 「ゆる言語学ラジオ」からのインスピレーション」
もちろんこの hellog でも,存在文に関連する話題は以下の記事で取り上げてきました.
・ 「#1565. existential there の起源 (1)」 ([2013-08-09-1])
・ 「#1566. existential there の起源 (2)」 ([2013-08-10-1])
・ 「#4473. 存在文における形式上の主語と意味上の主語」 ([2021-07-26-1])
主語とは何か? 簡単に解決する問題ではありませんが,ぜひ皆さんにも考えていただければ.
先日,英語史研究者である矢冨弘先生(熊本学園大学)とお会いする機会がありました.「名前プロジェクト」 (name_project) の一環として,他のプロジェクトメンバーのお二人,五所万実先生(目白大学)と小河舜先生(上智大学)もご一緒でした.
そこで主に「名前」の問題をめぐり Voicy heldio/helwa の生放送をお届けしたり収録したりしました.以下の3本をアーカイヴより配信しています.いずれも長めですので,お時間のあるときにでもお聴きいただければ.
(1) heldio 「#1034. 「名前と英語史」 4人で生放送 【名前プロジェクト企画 #3】」(59分)
(2) helwa 「【英語史の輪 #113】「名前と英語史」生放送のアフタートーク生放送」(←こちらの回のみ有料のプレミアム限定配信です;60分)
(3) heldio 「#1038. do から提起する新しい英語史 --- Ya-DO-me 先生(矢冨弘先生)教えて!」(20分)
その後,矢冨先生がご自身のブログにて,上記の収録と関連する内容の記事を2本書かれていますので,ご紹介します.
・ 「3月末の遠征と4月の抱負」
・ 「日英の口の可動域」
2つめの「日英の口の可動域」は,上記 (2) の helwa 生放送中に,名前の議論から大きく逸れ,発音のトークに花が咲いた折に飛びだした話題です.トーク中に,矢冨先生が日本語と英語では口の使い方(母音の調音点)が異なることを日頃から意識されていると述べ,場が湧きました.英語で口の可動域が異なることを示す図をお持ちだということも述べられ,その後リスナーの方より「その図が欲しい」との要望が出されたのを受け,このたびブログで共有していただいた次第です.皆さん,ぜひ英語の発音練習に活かしていただければ.
ちなみに,矢冨先生についてもっと詳しく知りたい方は,khelf 発行の『英語史新聞』第6号と第7号をご覧ください.それぞれ第3面の「英語史ラウンジ by khelf」にて,2回にわたり矢冨先生のインタビュー記事を掲載しています.
矢冨先生,今後も様々な「hel活」 (helkatsu) をよろしくお願いします!
フレッシュな書籍,田地野彰(編著)『小学生から知っておきたい英語の?ハテナ』(Jリサーチ出版,2024年)が出版されています.共著者の一人である高橋佑宜氏(神戸市外国語大学)よりご恵投いただきました(ありがとうございます!).
本書では,7名の著者が小学生に向けて分かりやすい言葉で英語に関する素朴な疑問に答えています.絵本といってもよいイラストの数々に彩られ,大人でも楽しめる異色の本です.本編を構成する7章の見出しを掲げます.
赤字で示した第2章の執筆者が,「ゆうき先生」こと,英語史を専門とする高橋佑宜氏です.次の5つのハテナが取り上げられています.
・ 英語はいつ,どこから来たの?
・ 英語って昔から変わらないの?
・ 英語はいつから世界中に広まったの?
・ どうして英語は世界中で使われているの?
・ アメリカ英語とイギリス英語は違うの?
この第2章は「ゆうき先生からの応援メッセージ」で締められています.この応援メッセージが実に熱いのです.ぜひ皆さんにも手に取っていただきたいと思います.
私自身「英語史をお茶の間に」をモットーにhel活 (helkatsu) を展開していますが,その観点から本書の出版企画と作りには興奮しました.まさか英語史を(中学生にであればまだしも)小学生にまで届けるとは! まずこの発想にたまげました.しかも,大人にも味わえるイラスト本として作り込まれている点にも感激しました.
取り上げられているハテナは35個と決して多いわけではありませんが,むしろ小学生のために厳選されたハテナリストとして解釈できます.このような本質的な疑問に,専門家たちがどのように端的に答えるのか,もし自分が回答者だったらどのように答えるか.このように考えながら読みなおしてみると,すべてのハテナが難問に思えてきました.なるほど,このような形で英語史(そして英語学習)について子供たちに導入できるのかと一本取られた感があります.新しいです.
高橋佑宜氏については,hellog でも「#4527. 英語の語順の歴史が概観できる論考を紹介」 ([2021-09-18-1]) および「#5059. heldio 初の「英語史クイズ」」 ([2023-03-04-1]) で言及しています.ぜひ今後もhel活でご一緒していければ!
・ 田地野 彰(編著),加藤 由崇・川原 功司・笹尾 洋介・高橋 佑宜・ハンフリー 恵子・山田 浩(著),りゃんよ(イラスト) 『小学生から知っておきたい英語の?ハテナ』 Jリサーチ出版,2024年.
本日,新年度の幕開きです.2024年度も「英語史をお茶の間に」広げていく活動,hel活 (helkatsu) を積極的に展開していきたいと思います.hellog を読まれている皆さんにおかれましては,hel活にご協力いただけますと幸いです.年度の切り替わりの機会に,note 上の「堀田隆一のプロフィール(2024年4月1日現在)」も更新しました.ご覧ください.
この4月には様々なhel活企画を展開していきますが,そのうちの1つをご紹介します.4週間ほど後,4月27日(土)の 17:30--19:00 に,朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」がスタートします.全12回のシリーズとして月1回,指定の土曜日に開講していく予定です.
シリーズの趣旨は以下の通りです.
英語は歴史上さまざまな言語と接触し,豊かな語彙を蓄えてきました.英単語の語源を探ると,そこには常に新たな発見があります.その宝庫といえるのが,数多く存在する英語の語源辞典です.本講座では,英語語源辞典の記述を頼りに具体的な単語の語源を読み解きながら,丁寧に英語史をたどっていきます.資料は毎回配布します.
全12回のタイトル(第4回以降は予定タイトル)は以下の通りです.
1. 英語語源辞典を楽しむ(2024年4月27日)
2. 英語語彙の歴史を概観する(2024年5月18日)
3. 英単語と「グリムの法則」(2024年6月8日)
4. 現代の英語に残る古英語の痕跡(日付未定)
5. 英語,ラテン語と出会う(日付未定)
6. 英語,ヴァイキングの言語と交わる(日付未定)
7. 英語,フランス語に侵される(日付未定)
8. 英語,オランダ語と交流する(日付未定)
9. 英語,ラテン・ギリシア語に憧れる(日付未定)
10. 英語,世界の諸言語と接触する(日付未定)
11. 英語史からみる現代の新語(日付未定)
12. 勘違いから生まれた英単語(日付未定)
4月27日(土)の第1回は「英語語源辞典を楽しむ」と題して,シリーズ全体のイントロとなる話しをします.とりわけ英語語源辞典の読み解き方に注目します.余裕のある方はぜひ『英語語源辞典』(研究社,1997年)(= KDEE) を入手し,それを手元に置きつつ受講していただければ.
受講の仕方は,従来通り新宿教室での対面でも可能ですし,Vimeo を利用したオンライン・リアルタイムも可能です.また,1週間限定の見逃し配信サービスも提供されています.ご都合のよい方法でご参加いただければと思います.
英語の語源を調べるための資料としては KDEE をはじめとして様々な(語源)辞典がありますので,そちらも紹介していく予定です.KDEE を基本に据えつつ,注目した単語(語彙)の語源をじっくり読み解くことによって英語(語彙)史の流れをたどるのが本シリーズの狙いです.特に KDEE は私が強力に推してきた参考資料でもあり,本ブログでも「#5436. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年3月15日版」 ([2024-03-15-1]) などの記事でたびたび取り上げてきました.そちらから関連コンテンツもご参照ください
新シリーズ「語源辞典でたどる英語史」へ,多くの皆様の参加をお待ちしています!
(以下,後記:2024/04/24(Wed))
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.
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最終更新時間: 2024-12-16 08:44
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