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hellog〜英語史ブログ / 2024-07

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2024-07-17 Wed

#5560. 7月27日(土)の朝カル新シリーズ講座第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」のご案内 [asacul][notice][kdee][etymology][hel_education][helkatsu][link][lexicology][vocabulary][oe][voicy][heldio]


asacul_20240427.png



 今年度,朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」を月に一度のペースで開講しています.4,5,6月と3回の春期クールを終え,この7月からは夏期クールが始まります.
 第4回は来週末の7月27日(土)の夕方 17:30--19:00 に開講されます.お申し込み窓口が開いておりますので,ぜひこちらより詳細をご確認ください.講座形式はいわゆるハイブリッド形式で,新宿教室での対面受講,あるいはリアルタイム・オンラインでの受講が可能です.また申込みされた方は,「見逃し配信」として,その後1週間,講座を視聴できます.ご都合の良い方法でご参加ください.以下の通り,本シリーズは全12回を予定していますが,各回,各クールの独立性は高いので,夏期クールより初めての受講であっても,まったく問題ありません.

 1. 英語語源辞典を楽しむ(2024年4月27日)
 2. 英語語彙の歴史を概観する(2024年5月18日)
 3. 英単語と「グリムの法則」(2024年6月8日)
 4. 現代の英語に残る古英語の痕跡(2024年7月27日)
 5. 英語,ラテン語と出会う(2024年8月24日)
 6. 英語,ヴァイキングの言語と交わる(2024年9月28日)
 7. 英語,フランス語に侵される(日付未定)
 8. 英語,オランダ語と交流する(日付未定)
 9. 英語,ラテン・ギリシア語に憧れる(日付未定)
 10. 英語,世界の諸言語と接触する(日付未定)
 11. 英語史からみる現代の新語(日付未定)
 12. 勘違いから生まれた英単語(日付未定)

 7月以降の夏期クールも毎月1回,指定の土曜日の夕方 17:30--19:00 に開講する予定です.春期クールから続いているシリーズではありますが,各クール,各回とも独立性の高い講座ですので,夏期クールより初めてのご参加であっても,まったく問題ありません.
 春期クール3回の広い意味での「イントロ」を終え,夏期クールはいよいよ英語語彙史の具体的な記述が始まります.第4回は「現代の英語に残る古英語の痕跡」と題して,英語史の幕開きとなる古英語 (Old English) の時代に注目します.古英語とは紀元449--1100頃の英語を指しますが,語彙においても,そして発音,文字,文法においても,現代英語とは驚くほど異なる言語でした.現代の観点からみると,例えば古英語の語彙は,その多くの割合が現代まで生き延びずに,死語となっています.古英語と現代英語の語彙は,内容も規模も大きく異なるのです.
 確かに語彙の断続性は著しいのですが,語彙の継続性にも注目したいところです.第4回講座の目標は,古英語と現代英語の語彙が間違いなくつながっているという事実を確認することです.
 第4回のお知らせと概要は,先日 Voicy heldio でもお話ししました.「#1140. 7月27日(土),朝カルのシリーズ講座第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」が開講されます」をお聴きください.



 シリーズでは『英語語源辞典』(研究社)を頻繁に参照します.同辞典をお持ちの方は,講座に持参されると,より楽しく受講できるかと思います(もちろん手元になくとも問題ありません).


寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.



 本シリーズに関する hellog の過去記事へリンクを張っておきますので,ご参照ください.

 ・ 「#5453. 朝カル講座の新シリーズ「語源辞典でたどる英語史」が4月27日より始まります」 ([2024-04-01-1])
 ・ 「#5481. 朝カル講座の新シリーズ「語源辞典でたどる英語史」の第1回が終了しました」 ([2024-04-29-1])
 ・ 「#5486. 5月18日(土)の朝カル新シリーズ講座第2回「英語語彙の歴史を概観する」のご案内」 ([2024-05-04-1])
 ・ 「#5511. 6月8日(土)の朝カル新シリーズ講座第3回「英単語と「グリムの法則」」のご案内」 ([2024-05-29-1])
 ・ 「#5528. 朝カル講座の新シリーズ「語源辞典でたどる英語史」の春期3回が終了しました」 ([2024-06-15-1])

 春期クールは,私の歴代朝カル講座のなかで最も多くの方々に受講していただきました.第4回から始まる夏期クールも,多くの方々のご参加をお待ちしております!

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.

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2024-07-16 Tue

#5559. 古英語の形容詞の弱変化・強変化屈折はどこから来たのか? [oe][adjective][inflection][germanic][noun][personal_pronoun][suffix][indo-european][terminology]

 「#2560. 古英語の形容詞強変化屈折は名詞と代名詞の混合パラダイム」 ([2016-04-30-1]) でみたように,古英語の形容詞の屈折には統語意味的条件に応じて弱変化 (weak declension) と強変化 (strong declension) が区別される.
 それぞれの形態的な起源は,先の記事で述べた通りで,名詞の弱変化と強変化にストレートに対応するわけではなく,やや込み入っている.形容詞の弱変化は,確かに名詞の弱変化と対応する.n-stem や子音幹とも言及される通り,屈折語尾に n 音が目立つ.Fertig (38) によると,弱変化の屈折語尾は,もともとは個別化機能 (= "individualizing function") を有する派生接尾辞に端を発するという.個別化して「定」を表わすからこそ,ゲルマン語派では "definiteness" と結びつくようになったのだろう.
 一方,形容詞の強変化の屈折語尾は,必ずしも名詞の強変化のそれに似ていない.むしろ,形態的には代名詞のそれに類する.いかにして代名詞的な屈折語尾が形容詞に侵入し,それを強変化となしたのかはよく分からない.しかし,これによって形容詞が形態的には名詞と一線を画する語類へと発展していったことは確かだろう.
 Fertig (39--40) より,関連する説明を引いておこう.

   Originally, the function of this new distinction in Germanic involved definiteness (recall the original 'individualizing' function of the -en suffix in Indo-European): strong = indefinite, blinds guma 'a blind man'; weak = definite, blinda guma 'the blind man').
   The other Germanic innovation which may not be entirely separable from the first one, is that many of the endings on the strong forms of adjectives do not correspond to strong noun forms, as they had in Indo-European. Instead, they correspond largely to pronominal forms . . . .


 古英語の名詞,形容詞,そして動詞でいうところの「弱変化」と「強変化」は,それぞれ意味合いが異なることに改めて注意したい.

 ・ Fertig, David. Analogy and Morphological Change. Edinburgh: Edinburgh UP, 2013.

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2024-07-15 Mon

#5558. helwa リスナーさんとの熱い英文読解スレッド [heldio][helwa][bchel]

 先日,Voicy heldio のプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) にて「【英語史の輪 #146】 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (52) Old English Literature --- 和田忍さんとの実況中継(後半)」をお届けしました.B&C による英語史の名著を1節ずつ精読していく有料シリーズの一環で,古英語文学を概説する第52節を読み終えたところです.
 精読した英文は「#5525. 古英語文学 --- Baugh and Cable の英語史の第52節より」 ([2024-06-12-1]) で紹介した通りですが,p. 67 の中程に,次のような文章が現われます.

All of these poems have their counterparts in other literatures of the Middle Ages. They show England in its cultural contact with Rome and being drawn into the general current of ideas on the continent, no longer simply Germanic, but cosmopolitan.


 この第2文 "They show . . . ." をめぐって,helwa リスナーさんの間で,数日間にわたりコメント欄にて熱い英文読解スレッドが展開されました.皆さんはこの文を読み解けますか? ただし正確に解釈するにはもっと前の文脈から追っていく必要がありそうです.
 スレッドを展開している登場人物は,ぷりっつさん,umisio さん,川上さん(←高校の英語教員でいらっしゃいます),そして堀田隆一の4名です.以下,有料配信回のコメントなので一般には公開されていないのですが,関係者各位の許可も得て,読みやすく編集した上で公開します.議論を追いかけて問題の1文を正確に解釈してみてください.



ぷりっつさん
  umisioさん.この第52節,長いですよね~.私も最近,やっと読み終えました.umisioさんも,頑張って下さい!(私は,67ページの They show England ~ の文章の構造がイマイチ腑に落ちず,2日程悩みました.)

umisioさん 
  いや,返信嬉しい~.そうなんです! 長くて少々息切れ気味です.仲間の声掛けで頑張れそうです.それとご指摘の箇所,すぐに分かりました.私もしばらく考えて分からなかったのですが,難しい構文でもないし,と川上さんにも質問せずに先に進んでいました.they は先の詩を指すと思うのですが show England をどう訳すのか?? 川上さん,これ目に留まったら教えてください

  22:00 ころから重要な問題提起あり.日常語は散文?韻文?→文学語と日常語の区分があり,文学語に散文と韻文があるとしたら,In the development of 以下2行は不十分ではないか?

  32:00 ころ,さらに示唆深い指摘が続いています!

川上さん
  見ましたよ.SVOC の構文かと.They show {=V} England {=O} in its cultural contact with Rome and being drawn ... the continent {=C},{=同格} no longer simply Germanic, but cosmopolitan.

  訳は,O が C する様子を V 示している,の型がいいと思います.私のはこんなです.「ここにあげた詩の数々は,イングランドがローマと文化的に接触し,ヨーロッパ大陸の一般的な思想の潮流に引き込まれていく様子を,つまりイングランドがもはや単にゲルマン的なだけではなくその枠組みを超えていく様子を捉えている.」 current は前と違ってここでは名詞「潮流」です.

ぷりっつさん
  umisio さん.この節は長いですが,お陰で,ベオウルフのカッコ良さ,Deor の悲哀(私も結構なおばさんなので共感.),アルフレッド大王の凄さ(自国民に文化を与える)が判り,スゴく勉強になりました! ので,頑張って! フレーフレー.先生方の日常語に関する考察や英語が(ラテン語と比べて)方言だったから独自進化したのでは?の議論も興味深かったですね.

  わ,川上先生だ! 私もこんなコメントを書いていたところでした.
  因みに,They show~ は,they を「古英語のキリスト教風味の詩 these poems」,in の目的語は「contact と being drawn」,no longer 以下は being が省略された分詞構文として,こんな風に考えました.

  直訳「これらの詩は,その文化的なローマとの接触と大陸における考えの一般的な動向に引き込むことに,イングランドを招き入れた.つまり,それらの詩は,もはや単にゲルマン的なだけでなく,コスモポリタン(ヨーロッパ大陸的)なものとなったのだ」
  意訳「これらの詩によって,イングランドはローマと文化面での接触を持ち,大陸での一般的な考え方を取り入れるようになったのだ.つまり~」
  川上先生,どうでしょう?

umisioさん 
  川上さん&ぷりっつさん
  川上さんの SVOC のご指摘でようやく訳が進み始めた次第です.振り返ると壁になっていたのは show だったような.前回質問した equally しかり,私の場合,一つ一つの単語の意味を疎かにしているところがあるような気がします.今回配信 (52) での大きな反省点であり大いになる気づきでした.で,以上を踏まえてこう訳しました.

  「ここにあげた詩の数々は,イングランドがローマとの文化的接触,並びに大陸の一般的な思想の潮流からの吸引を経る中で,もはや(イングランドは)単にゲルマン的であるだけではなく,大陸的であることを show 示している.」としましたがどんなもんでしょうか?

川上さん
  umisio さん,大変結構でございます.

  ぷりっつさん.show を「招き入れる」ととる,ということですね.私としては show = reveal 「明らかにする,示す」ではないかと.
読み返したら,前段落末尾の In its ... ではじまる文は Old English literature reveals (at ...) the outlook and temper of the Germanic mind. 「古英語の文学はゲルマン的見方と考え方を示している」とあり,今話題にしている文と呼応してて「おおっ」てなりました.並べて見てください!

ぷりっつさん
  川上さん,umisio さん
  川上先生,ご返信ありがとうございます.show は reveal の意味かぁ.私は England の後ろの in にこだわり過ぎていたのかも.
  こんな風に同じ英文について語り合って精読するの楽しいですね.(先週は一人でウニャウニャ考えてました.)川上さんが教えて下さった箇所ももう一度読んでみます!

堀田隆一
  盛り上がっていて楽しそうですね!
  この文の構文理解の助けにもなるような意訳的パラフレーズを作ってみました.いかがでしょうか.
  All of these poems let us see England in a new way; that is, something that had been in contact with Rome and now was being drawn into the general current of ideas on the continent. In other words, England in the Old English period was no longer a simply Germanic nation, but a cosmopolitan one.
  以上です.

川上さん
  先生,なるほど明快です.see in a new way というのはどのあたりに由来するものでしょうか?

ぷりっつさん
  わ,堀田先生も! 先生方,本当にありがとうございます.先生方の解説で納得できました!私の読み方だと,(まず先に)cosmopolitan なのは poems ですが,本当は England なんですね.書物によって外国文化(大陸的なもの)を取り入れる,という流れなのかと思い,poems → England で大陸の影響を受けたのかと思い込んでしまいました.

  でも,poems は口で伝わるので,cosmopolitan な poems があるということは,既に国民が cosmopolitan であるということなんですね.
  お陰様で大変理解が深まりました.引き続き精読,頑張ります!

堀田隆一
  ぷりっつさん,統語的には no longer 以降はやはりこの文の目的語である England の記述なのだろうと考えます.もちろん,おっしゃるとおり,結果的に主語の They (= these poems) にも及んでいくわけではありますが.

  川上さん,in a new way は意訳という以上に,私の解釈を多分に入れた部分です.読者は,B&C のこれまでの記述から,英語はゲルマン語派に属する言語であり,古英語やアングロサクソンといえばまだ十分にゲルマン的な言語であるという印象を強く抱いてきたはずです.ところが England = simply Germanic というわけでもない,実は cosmopolitan なのだ,とここで新機軸を打ち出してきているように読み込んだ,という次第です.

川上さん
  なるほど,後続の but cosmopolitan を先取りする in a new way という「パラフレーズ」ですね.

umisioさん 
  B&C もそろそろ一年.先生の着想とご尽力でここまで続きましたね.めでたしめでたし.ここらあたりでひとプッシュいかがでしょうか? あ,プシュではありません.プッシュです.念のために.

  いや,とても有意義で楽しい時間となりました.ぷりっつさんの問題提起からはじまり川上さん,さらに痺れを切らして先生がご登場とは.なんと贅沢なコンテンツ!このスレッドを見て B&C 参加者が増えるといいですね.あっこれは helwa か~(>_<)




 このスレッドを読んで関心を抱いた皆さんは,ぜひ B&C の精読シリーズにご参加ください.バックナンバーは「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) よりどうぞ.

 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

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2024-07-14 Sun

#5557. 秋元実治(著)『増補 文法化とイディオム化』(ひつじ書房,2014年) [toc][grammaticalisation][idiomaticisation][idiom][composite_predicate][syntax][lexicology][frequency][lexicalisation][preposition][phrasal_verb][voicy][heldio]


秋元 実治 『増補 文法化とイディオム化』 ひつじ書房,2014年.



 先日,秋元実治先生(青山学院大学名誉教授)と標記の書籍を参照しつつ対談しました.そして,その様子を一昨日 Voicy heldio で「#1139. イディオムとイディオム化 --- 秋元実治先生との対談 with 小河舜さん」として配信しました.中身の濃い,本編で22分ほどの対談回なっております.ぜひお時間のあるときにお聴きください.



 秋元実治(著)『増補 文法化とイディオム化』(ひつじ書房,2014年)については,これまでもいくつかの記事で取り上げてきており,とりわけ「#1975. 文法化研究の発展と拡大 (2)」 ([2014-09-23-1]) で第1章の目次を挙げましたが,今回は今後の参照のためにも本書全体の目次を掲げておきます.近日中に対談の続編を配信する予定です.



改訂版はしがき
はしがき

理論編
  第1章  文法化
    1.1  序
    1.2  文法化とそのメカニズム
      1.2.1  語用論的推論 (Pragmatic inferencing)
      1.2.2  漂白化 (Bleaching)
    1.3  一方向性 (Unidirectionality)
      1.3.1  一般化 (Generalization)
      1.3.2  脱範疇化 (Decategorialization)
      1.3.3  重層化 (Layering)
      1.3.4  保持化 (Persistence)
      1.3.5  分岐化 (Divergence)
      1.3.6  特殊化 (Specialization)
      1.3.7  再新化 (Renewal)
    1.4  主観化 (Subjectification)
    1.5  再分析 (Reanalysis)
    1.6  クラインと文法化連鎖 (Grammaticalization chains)
    1.7  文法化とアイコン性 (Iconicity)
    1.8  文法化と外適応 (Exaptation)
    1.9  文法化と「見えざる手」 (Invisible hand) 理論
    1.10  文法化と「偏流」 (Drift) 論
  
  第2章  イディオム化
    2.1  序
    2.2  イディオムとは
    2.3  イディオム化
    2.4  イディオム化の要因
      2.4.1  具体的から抽象的
      2.4.2  脱範疇化 (Decategorialization)
      2.4.3  再分析 (Reanalysis)
      2.4.4  頻度性 (Frequency of occurrence)
    2.5  イディオム化,文法化及び語彙化

分析例
  第1章  初期近代英語における複合動詞の発達
    1.1  序
    1.2  先行研究
    1.3  データ
    1.4    複合動詞のイディオム的特徴
      1.4.1  Give
      1.4.2  Take
    1.5  ジャンル間の比較: The Cely LettersThe Paston Letters
    1.6  結論

  第2章  後期近代英語における複合動詞
    2.1  序
    2.2  先行研究
    2.3  データ
    2.4  構造の特徴
    2.5  関係代名詞化
    2.6  各動詞の特徴
      2.6.1  Do
      2.6.2  Give
      2.6.3  Have
      2.6.4  Make
      2.6.5  Take
    2.7  複合動詞と文法化
    2.8  結論
  
  第3章  Give イディオムの形成
    3.1  序
    3.2  先行研究
    3.3  データ及び give パタンの記述
    3.4  本論
      3.4.1  文法化とイディオム形成
      3.4.2  再分析と意味の漂白化
      3.4.3  イディオム化
      3.4.4  名詞性
      3.4.5  構文と頻度性
    3.4  本論
      3.4.1  文法化とイディオム形成
      3.4.2  再分析と意味の漂白化
      3.4.3  イディオム化
      3.4.4  名詞性
      3.4.5  構文と頻度性
    3.5  結論

  第4章  2つのタイプの受動構文
    4.1  序
    4.2  先行研究
    4.3  データ
    4.4  イディオム化
    4.5  結論

  第5章  再帰動詞と関連構文
    5.1  序
    5.2  先行研究
    5.3  データ
      5.3.1  Content oneself with
      5.3.2  Avail oneself of
      5.3.3  Devote oneself to
      5.3.4  Apply oneself to
      5.3.5  Attach oneself to
      5.3.6  Address oneself to
      5.3.7  Confine oneself to
      5.3.8  Concern oneself with/about/in
      5.3.9  Take (it) upon oneself to V
    5.4  再帰動詞と文法化及びイディオム化
    5.5  再起動し,受動化及び複合動詞
      5.5.1  Prepare
      5.5.2  Interest
    5.6  結論

  第6章  Far from の文法化,イディオム化
    6.1  序
    6.2  先行研究
    6.3  データ
    6.4  文法化とイディオム化
      6.4.1  文法化
      6.4.2  意味変化と統語変化の関係:イディオム化
    6.5  結論

  第7章  複合前置詞
    7.1  序
    7.2  先行研究
    7.3  データ
    7.4  複合前置詞の発達
      7.4.1  Instead of
      7.4.2  On account of
    7.5  競合関係 (Rivalry)
      7.5.1  In comparison of/in comparison with/in comparison to
      7.5.2  By virtue of/in virtue of
      7.5.3  In spite of/in despite of
    7.6  談話機能の発達
    7.7  文法化,語彙化,イディオム化
    7.8  結論

  第8章  動詞派生前置詞
    8.1  序
    8.2  先行研究
    8.3  データ及び分析
      8.3.1  Concerning
      8.3.2  Considering
      8.3.3  Regarding
      8.3.4  Relating to
      8.3.5  Touching
    8.4  動詞派生前置詞と文法化
    8.5  結論
  
  第9章  動詞 pray の文法化
    9.1  序
    9.2  先行研究
    9.3  データ
    9.4  15世紀
    9.5  16世紀
    9.6  17世紀
    9.7  18世紀
    9.8  19世紀
    9.9  文法化
      9.9.1  挿入詞と文法化
      9.9.2  丁寧標識と文法化
    9.10  結論

  第10章  'I'm afraid' の挿入詞的発達
    10.1  序
    10.2  先行研究
    10.3  データ及びその文法
    10.4  文法化---Hopper (1991) を中心に
    10.5  結論

  第11章  'I dare say' の挿入詞的発達
    11.1  序
    11.2  先行研究
    11.3  データの分析
    11.4  文法化と文体
    11.5  結論

  第12章  句動詞における after と forth の衰退
    12.1  序
    12.2  For による after の交替
      12.2.1  先行研究
      12.2.2  動詞句の選択と頻度
      12.2.3  After と for の意味・機能の変化
    12.3  Forth の衰退
      12.3.1  先行研究
      12.3.2  Forth と共起する動詞の種類
      12.3.3  Out による forth の交替
    12.4  結論

  第13章  Wanting タイプの動詞間に見られる競合 --- desire, hope, want 及び wish を中心に ---
    13.1  序
    13.2  先行研究
    13.3  昨日変化
      13.3.1  Desire
      13.3.2  Hope
      13.3.3  Want
      13.3.4  Wish
    13.4  4つの動詞の統語的・意味的特徴
      13.4.1  従属節内における法及び時制
        13.4.1.1  Desire + that/Ø
        13.4.1.2  Hope + that/Ø
        13.4.1.3  Wish + that/Ø
      13.4.2  Desire, hope, want 及び wish と to 不定詞構造
      13.4.3  That の省略
    13.5  新しいシステムに至る変化及び再配置
    13.6  結論

結論

補章

参考文献

索引
  人名索引
  事項索引




 ・ 秋元 実治 『増補 文法化とイディオム化』 ひつじ書房,2014年.

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2024-07-13 Sat

#5556. kh の綴字をもつ単語とその外来性 [spelling][loan_word][digraph][h][digraph][silent_letter][orthography]

 昨日の記事「#5555. kh の綴字」 ([2024-07-12-1]) に引き続き,2重字 (digraph) の <kh> について.Upward and Davidson (257) にまとまった記述があるので引用する.

          KH

The KH spelling reflects an aspirated consonant (somewhat like [k] + [h]) or a fricative (like [x] as in Scottish loch) in the source or carrier languages, all from the Middle East or Indian subcontinent. In English, there is no difference in pronunciation between KH and K.

・ In initial position: khaki (< Hindi); khamsin 'hot wind' (< Arabic); khan (spelt caan when first borrowed in the 15th century; < a Turkic language)
  - Khazi, a slang word for 'toilet' dating from the 19th century, is not, despite its spelling, of eastern origin, but probably derives from Italian or Spanish casa 'house'. It has various spellings in English (kazi, kharzie, karsey, etc.).
・ In medial position: astrakhan 'fabric' (< Russian place-name); bakhshish 'tip or bribe' (a spelling baksheesh --- see under 'K'); burkha (a spelling of burka/burqa --- see under 'K'); gymkhana (< Urdu gend-khana, altered by influence of gymnastics); kolkhoz 'collective farm in USSR' (< Russian).
・ In final position: ankh 'emblem of life' (< Egyptian 'nh); lakh '100,000' (also lac; < Hindi and Hindustani); rukh 'mythical bird' (another spelling of roc, which is the more common spelling in English; < Arabic rokh, rukhkh, Persian rukh); sheikh (< Arabic shaikh).


 ほぼすべての単語が中東,インドア大陸,ロシアの諸言語に由来し,その原語の風味を保持するために,本来的には英語に馴染みのない <kh> という綴字が用いられているのだろう.書き言葉の綴字には,話し言葉の発音では標示し得ない,単語の由来を示唆する機能が部分的であれ備わっているという点が重要である.

 ・ Upward, Christopher and George Davidson. The History of English Spelling. Malden, MA: Wiley-Blackwell, 2011.

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2024-07-12 Fri

#5555. kh の綴字 [spelling][loan_word][digraph][h][khelf][acronym][digraph][silent_letter][orthography]

khelf banner



 khelf(慶應英語史フォーラム)では『英語史新聞』を発行するなど,英語史を振興する「hel活」 (helkatsu) を様々に展開しています.
 khelf という呼称は "Keio History of the English Language Forum" の頭字語 (acronym) で,私自身の造語なのですが,日本語発音では「ケルフ」,英語発音では /kɛlf/ となるのだろうと思います.khelf の <kh> の綴字連続が見慣れないという声が寄せられましたので,英語の綴字における 2重字 (digraph) について本記事で取り上げます.
 <kh> は,英語においては決して頻度の高い文字の組み合わせではありませんが,khaki (カーキ色),khan (カーン,ハーン,汗),Khmer (クメール人),Khoisan (コイサン語族),Sikh (シク教徒)などに見られ,いずれの単語でも <kh> ≡ /k/ の対応関係を示します.ただし,すべて借用語や固有名であり,英語正書法に完全に同化しているかといえば怪しいところです.Carney (221) では,<kh> に言及しつつ astrakhan (アストラカン織), gymkhana (野外競技会), khaki, khan, khedive (エジプト副王)が挙げられています.
 Carney (328) では,<h> を2文字目としてもつ,子音を表わす他の2重字とともに <kh> が扱われています.関連箇所を引用しましょう.

The clusters <ch>, <ph>, <sh>, <th>, <wh>, are treated as spelling units. So are the clusters <gh>, <kh>, <rh>, but there is a difference. In the first group, the <h> has the natural function of indicating the features 'voiceless and fricative' in representing [ʧ], [f], [ʃ], [ʍ]; <th> represents only 'fricative' for both voiceless [θ] and voiced [ð]. In the group <gh>, <kh>, <rh>, the <h> is empty and arbitrary; there is some marking, however: <rh> is §Greek, <kh> is exotic.


 <kh> の <h> は音声的には動機づけのない黙字 (silent_letter) といってしかるべきだが,最後に触れられているとおり,その単語が "exotic" であることを標示する機能は有しているようだ.khelf もユニークで魅惑的という意味での "exotic" な活動を目指したい.

 ・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.

Referrer (Inside): [2024-07-13-1]

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2024-07-11 Thu

#5554. リスナー投票による heldio 2024年第2四半期のランキング [voicy][heldio][notice][ranking][link][helkatsu]

Slido_results_20240711


 「#5546. heldio 2024年第2四半期のベスト回を決めるリスナー投票 --- 7月9日までオープン」 ([2024-07-03-1]) でご案内したとおり,「hel活」 (helkatsu) の一環として,今年第2四半期における Voicy heldio のベスト配信回を決めるリスナー投票(1人10票まで)を実施しました.29名よりご投票いただきました.ご協力ありがとうございました.
 投票結果をまとめましたので,本記事にて報告いたします.上位10位までの計14回分を掲載しています.詳しくは Slido での投票結果をご覧ください.



 1. 「#1124. 「はじめての古英語」第9弾 with 小河舜さん&まさにゃん&村岡宗一郎さん」 (48%)
 2. 「#1066. ノルマン征服 --- Ten Sixty-Six」 (34%)
 3. 「#1064. eavesdrop 「盗み聞きする」」 (31%)
 3. 「#1115. 言語にはムダが多すぎる --- 言語の余剰性」 (31%)
 5. 「#1039. 英語発音は日本語よりも「口の可動域」が広い! 矢冨弘先生のブログ記事より」 (28%)
 5. 「#1096. あなたの推し前置詞を教えてください with 小河舜さん&まさにゃん」 (28%)
 5. 「#1125. 「はじめての古英語」第9弾のアフタートーク」 (28%)
 8. 「#1043. ある用途のために発達してきたものを別の用途のために用いる「外適応」」 (24%)
 8. 「#1126. 世にも奇妙な「過去現在動詞」」 (24%)
 10. 「#1057. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (2)」 (21%)
 10. 「#1085. hamburger の形態論」 (21%)
 10. 「#1088. 企業の対外的なメッセージについて語る --- 北澤茉奈さんとの対談 (1)」 (21%)
 10. 「#1104. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 山本忠行先生とのアフリカの英語をめぐる対談 (2)」 (21%)
 10. 「#1109. 『法と言語』第9章 --- 五所万実さんの「商標言語学」」 (21%)




 第1位には,「はじめての古英語」シリーズより「#1124. 「はじめての古英語」第9弾 with 小河舜さん&まさにゃん&村岡宗一郎さん」が選ばれました! 過去2回のリスナー投票に引き続き3連覇です.本シリーズを人気シリーズに押し上げてくださったリスナーの方々に感謝致します.普段は小河舜先生(上智大学)および「まさにゃん」こと森田真登先生(武蔵野学院大学)とのトリオでお送りしている古英語入門シリーズですが,今回は村岡宗一郎先生(日本大学)にもご同席いただき,いつもよりさらに賑やかな回となりました.小河さんによる Beowulf からの渾身の選文も効いていたと思います.なお,そのアフタートークも第5位に付けているので,合わせて多くのリスナーの方々に楽しんで聴いていただいたものと受け取っております.
 第2位の「#1066. ノルマン征服 --- Ten Sixty-Six」も嬉しい入賞です.配信回番号を歴史年号に見立てた初めての回でしたが,これ自体は実はリスナーさんのアイディアでした.おかげさまです.
 第3位には,「英語の語源が身につくラジオ」としては正当なトピックである「#1064. eavesdrop 「盗み聞きする」」と,言語の本質に迫った「#1115. 言語にはムダが多すぎる --- 言語の余剰性」が得票率タイで入賞しています.後者はコメント欄も非常に盛り上がりました(ぜひ覗いてみてください).
 第5位タイの3回のうち2回は「はじめての古英語」シリーズのメンバーによる雑談回です.もう1回は矢冨弘先生(熊本学園大学)のコンテンツにあやかった「#1039. 英語発音は日本語よりも「口の可動域」が広い! 矢冨弘先生のブログ記事より」でした.
 第8位以下の詳細は省略しますが,今年の heldio の大テーマである言語変化 (language_change) に関連する回や,ゲスト対談回も上位に入りました.
 ぜひ今回のランキング結果全体を眺めていただき,まだお聴きでない回がありましたら,ぜひ聴取いただければと思います.以上,投票結果の報告でした.

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2024-07-10 Wed

#5553. 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)の新装版 --- 「いのほた言語学チャンネル」でも紹介しました [notice][kdee][youtube][link][etymology][review][voicy][heldio][lexicography]


寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.



 同僚の井上逸兵さんと YouTube 「いのほた言語学チャンネル」を運営しています.毎週水・日の18:00に最新回を公開し続けて,そろそろ250回に届きそうです.
 日曜日にアップされた最新回は「#247. 堀田が1年間推してきた,日本語だが内容的には英語語源辞典の世界ベスト・寺澤芳雄編集主幹『英語語源辞典』(研究社)」です.1年にわたり推し活を展開してきた日本の誇るべき辞典を改めて紹介したいと思います.ちょうど先月,その新装版が刊行されたばかりというタイミングでもあります.



 動画内でお話ししている通り,『英語語源辞典』,あるいは KDEE (= The Kenkyusha Dictionary of English Etymology) は,研究社最後の活版印刷による辞典であり,日本の英語系出版史上の金字塔ともいうべき存在です.同社のご協力により,昨年の夏,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて,同辞典の編集・印刷に携わった方々にインタビューさせていただきました.今回の YouTube 動画で触れた内容の深掘りとなっていますので,ぜひ合わせてお聴きいただければ.

 ・ 「#828. 『英語語源辞典』(研究社,1997年)ってスゴい --- 研究社会議室での対談 (1)」
 ・ 「#834. 『英語語源辞典』(研究社,1997年)ってスゴい --- 研究社会議室での対談 (2)」
 ・ 「#842. 『英語語源辞典』(研究社,1997年)ってスゴい --- 研究社会議室での対談 (3)」

 関連して,2023年8月1日に「研究社note」上に「『英語語源辞典』と活版印刷裏話」と題する社内の方による記事も公開されていますので,そちらもお読みください.
 同辞典については,hellog や heldio で関連するコンテンツを多く公開してきました.そのリンク集として,以下の2点を紹介しておきましょう.

 ・ 「#5436. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年3月15日版」 ([2024-03-15-1])
 ・ 「#5522. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年6月9日版」 ([2024-06-09-1])

 YouTube 動画内で井上さんが発した,語源は「教室から酒場まで」使えるネタですね,というくだりは素敵なキャッチフレーズとなっていますね.使っていきたいと思います.

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.

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2024-07-09 Tue

#5552. 宗宮喜代子(著)『歴史をたどれば英語がわかる --- ノルマン征服からの復権と新生』(開拓社,2024年) [review][toc][history_f_o\di[hel_education][language_change]


寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.



 5月に開拓社より出版された一般向けの英語史書,宗宮喜代子(著)『歴史をたどれば英語がわかる --- ノルマン征服からの復権と新生』(開拓社,2024年)を紹介します.外面史と内面史の均衡の取れた7章からなる英語史書で,内面史については文法の話題が多いものの,標準的な内容はしっかり押さえられています.以下,章節のレベルまで目次を掲載します.



はじめに
第1章 紀元前7世紀からノルマン征服まで
  ケルト人のブリテン島
  ローマ人による支配
  ゲルマン民族の大移動
  七王国時代
  English (英語)と England (イングランド)
  アングロ・サクソン社会
  ケルト人の無念
  キリスト教の浸透
  デーン人の襲撃
  アルフレッド大王の善政
  ノルマン征服
第2章 古英語
  インド・ヨーロッパ語族
  文献の始まり
  名詞
  代名詞・数詞
  形容詞・副詞
  動詞
  前置詞
  文の構造
  本来語と借用語
  古英語はどんな言語だったのか
第3章 百年戦争と英語の復権
  英語の没落
  無関心が招いた衰退
  百年戦争
  黒死病と庶民
  英語の復権
  英国王室の系譜
第4章 中英語
  屈折の単純化
  名詞
  代名詞・冠詞・数詞
  形容詞・副詞
  動詞
  前置詞
  文の構造
  本来語と借用語
  分析的言語への道
第5章 ルネサンスから1900年まで
  社会の変化
  知的なラテン語と粗野な英語
  ルネセンスと言語
  シェイクスピアの演劇
  清教徒革命
  王立学会とフランシス・ベーコン
  科学革命の波
  ジョン・ロックの世界観
  規範主義の時代
  アメリカ大陸の植民地
第6章 近代英語
  大母音推移
  名詞
  代名詞・冠詞・数詞
  形容詞・副詞
  動詞
  助動詞
  前置詞
  文の構造
  本来語と借用語
  アメリカの英語
  近代英語はどこまで来たか
第7章 現代英語
  800年の歩み
  捨てたもの・残したもの
  冠詞
  法助動詞
  名詞
  内と外の論理
  人称化という事件
  文型
  直線の論理
  必要十分の美学
  時制と相の体系
  共感指向
  イギリス英語とアメリカ英語
  現代英語はどんな言語になったのか
おわりに 
参考文献
索引




 本書の最大の魅力は,最終第7章の節タイトルから示唆されるように,結局,千数百年の変化の結果,英語はどんなタイプの言語になったのか,という問いに対する著者なりの答えが与えられていることです.現代英語は主に近代英語期に生じた言語変化の結果として出力されたものですが,その言語変化の背景に何があったがのが重要な問いとなります.
 英語史書は多々出版されていますが,それぞれに独自性があります.いろいろ読み比べてみることをお薦めします.ぜひ「#5462. 英語史概説書等の書誌(2024年度版)」 ([2024-04-10-1]) をご参照ください.
 なお,今回紹介した本については,Voicy heldio にて「#1131. 宗宮喜代子(著)『歴史をたどれば英語がわかる』(開拓社,2024年)」でも取り上げています.そちらもぜひお聴きいただければ.



 ・ 宗宮 喜代子 『歴史をたどれば英語がわかる --- ノルマン征服からの復権と新生』 開拓社,2024年.

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2024-07-08 Mon

#5551. 英語綴字に関心があるなら,まず Cook の The English Writing System (2004) を [review][spelling][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][writing][orthography][punctuation][toc][typography]

 本ブログでは英語の綴字と発音の乖離 (spelling_pronunciation_gap) の話題を多く取り上げてきた.私の専門領域の1つだからということもあるが,とりわけ日本の英語学習者が関心を抱きやすいトピックだということを経験上知っているからでもある.
 英語の綴字とその歴史をめぐっては,さまざまな研究書や一般書が出版されてきた.最近の目立ったところでは Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013. があり,これは『スペリングの英語史』(早川書房,2017年)として私自身が翻訳書として出版してきた経緯もある.
 今回は,読みやすい英書として本ブログでも何度も引用・参照してきた Vivian Cook による The English Writing System (Hodder Education, 2004) を紹介したい.書き言葉全般の話題から説き起こし,英語の綴字と正書法,その歴史,句読法,そして綴字学習にも話題が及ぶ.例示,課題,規則表,キーワード,参考文献,索引が完備されており,読み手に優しい.以下に目次を示す.


Cook, Vivian. ''The English Writing System.'' London: Hodder Education, 2004.





1 Ways of writing
1.1 Meaning-based and sound-based writing
1.2 Two ways of processing written language

2 The multi-dimensions of spoken and written English
2.1 Differences between the visual and acoustic media
2.2 Special features of written English

3 Approaches to English spelling
3.1 Basic rules for English
3.2 Venezky: correspondence rules and markers
3.3 Albrow: three systems of English spelling
3.4 Noam and Carol Chomsky: lexical representation

4 Punctuation and typography
4.1 Grammatical and correspondence punctuation
4.2 The typography of English

5 Learning the English writing system
5.1 English-speaking children's acquisition of spelling
5.2 Acquisition of English spelling by speakers of other languages

6 Historical changes
6.1 Before English
6.2 Old English
6.3 Middle English
6.4 From Early Modern English to Modern English

7 Variation in the English writing system
7.1 Differences of region: 'British' and 'American' spelling styles
7.2 Novel spellings of pop groups and business names
7.3 Adapting English to modern means of communication

References

IPA transcription of English phonemes

Index




 英語綴字の見方が変わる本です.

 ・ Cook, Vivian. The English Writing System. London: Hodder Education, 2004.
 ・ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.
 ・ サイモン・ホロビン(著),堀田 隆一(訳) 『スペリングの英語史』 早川書房,2017年.

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2024-07-07 Sun

#5550. Fertig による Sturtevant's Paradox への批判 [sound_change][analogy][neogrammarian][phonetics][phonology][morphology][language_change][phonotactics][prosody]

 昨日の記事「#5549. Sturtevant's Paradox --- 音変化は規則的だが不規則性を生み出し,類推は不規則だが規則性を生み出す」 ([2024-07-06-1]) の最後で,Fertig が "Sturtevant's Paradox" に批判的な立場であることを示唆した.Fertig (97--98) の議論が見事なので,まるまる引用したい.

   Like a lot of memorable sayings, Sturtevant's Paradox is really more of a clever play on words than a paradox, kind of like 'Isn't it funny how you drive on a parkway and park on a driveway.' There is nothing paradoxical about the fact that phonetically regular change gives rise to morphological irregularities. Similarly, it is no surprise that morphologically motivated change tends to result in increased morphological regularity. 'Analogic creation' would be even more effective in this regard if it were regular, i.e. if it always applied across the board in all candidate forms, but even the most sporadic morphologically motivated change is bound to eliminate a few morphological idiosyncrasies from the system.
   If we consider analogical change from the perspective of its effects on phonotactic patterns, it is sometimes disruptive in just the way that one would expect . . . . At one point in the history of Latin, for example, it was completely predictable that s would not occur between vowels. Analogical change destroyed this phonological regularity, as it has countless others. Carstairs-McCarthy (2010: 52--5) points out that analogical change in English has been known to restore 'bad' prosodic structures, such as syllable codas consisting of a long vowel followed by two voiced obstruents. Although Carstairs-McCarthy's examples are all flawed, there are real instances, such as believed < beleft, of the kind of development he is talking about (§5.3.1).
   What the continuing popularity of Sturtevant's formulation really reveals is that one old Neogrammarian bias is still very much with us: When Sturtevant talks about changes resulting in 'regularity' and 'irregularities', present-day historical linguists still share his tacit assumption that these terms can only refer to morphology. If we were to revise the 'paradox' to accurately reflect the interaction between sound change and analogy, we would wind up with something not very paradoxical at all:
   
   
Sound change, being phonetically/phonologically motivated, tends to maintain phonological regularity and produce morphological irregularity. Analogic creation, being morphologically motivated, tends to produce phonological irregularity and morphological regularity. Incidentally, the former tends to proceed 'regularly' (i.e. across the board with no lexical exceptions) while the latter is more likely to proceed 'irregularly' (word-by-word).

   
I realize that this version is not likely to go viral.


 一言でいえば,言語学者は,言語体系の規則性を論じるに当たって,音韻論の規則性よりも形態論の規則性を重視してきたのではないか,要するに形態論偏重の前提があったのではないか,という指摘だ.これまで "Sturtevant's Paradox" の金言を無批判に受け入れてきた私にとって,これは目が覚めるような指摘だった.

 ・ Fertig, David. Analogy and Morphological Change. Edinburgh: Edinburgh UP, 2013.
 ・ Carstairs-McCarthy, Andrew. The Evolution of Morphology. Oxford: OUP, 2010.

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2024-07-06 Sat

#5549. Sturtevant's Paradox --- 音変化は規則的だが不規則性を生み出し,類推は不規則だが規則性を生み出す [sound_change][analogy][neogrammarian][phonetics][phonology][morphology][language_change]

 標題は,さまざまに言い換えることができる.「音法則は規則的だが不規則性を生み出し,類推による創造は不規則だが規則性を生み出す」ともいえるし,「形態論において規則的な音声変化はエントロピーを増大させ,不規則的な類推作用はエントロピーを減少させる」ともいえる.音変化 (sound_change) と類推 (analogy) の各々の特徴をうまく言い表したものである(昨日の記事「#5548. 音変化類推の峻別を改めて考える」 ([2024-07-05-1]) を参照).この謂いについては,以下の関連する記事を書いてきた.

 ・ 「#1693. 規則的な音韻変化と不規則的な形態変化」 ([2013-12-15-1])
 ・ 「#838. 言語体系とエントロピー」 ([2011-08-13-1])
 ・ 「#1674. 音韻変化と屈折語尾の水平化についての理論的考察」 ([2013-11-26-1])

 この金言を最初に述べたのは誰だったかを思い出そうとしていたが,Fertig を読んでいて,それは Sturtevant であると教えられた.Fertig (96) より,関連する部分を引用する.

Long before there was a Philosoraptor, historical linguists had 'Sturtevant's Paradox': 'Phonetic laws are regular but produce irregularities. Analogic creation is irregular but produces regularity' (Sturtevant 1947: 109). It is catchy and memorable. It has undoubtedly helped generations of linguistics students remember the battle between sound change and analogy, and, on the tiny scale of our subdiscipline, it is no exaggeration to say that it has 'gone viral', making appearances in numerous textbooks . . . and other works . . . .


 確かにキャッチーな金言である.しかし,Fertig はこのキャッチーさゆえに見えなくなっている部分があるのではないかと警鐘を鳴らしている.

 ・ Fertig, David. Analogy and Morphological Change. Edinburgh: Edinburgh UP, 2013.
 ・ Sturtevant, Edgar H. An Introduction to Linguistic Science. New Haven: Yale UP, 1947.

Referrer (Inside): [2024-07-07-1]

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2024-07-05 Fri

#5548. 音変化類推の峻別を改めて考える [sound_change][analogy][neogrammarian][phonetics][phonology][morphology][language_change][history_of_linguistics][comparative_linguistics][lexical_diffusion][terminology]

 比較言語学 (comparative_linguistics) の金字塔というべき,青年文法学派 (neogrammarian) による「音韻変化に例外なし」の原則 (Ausnahmslose Lautgesetze) は,音変化 (sound_change) と類推 (analogy) を峻別したところに成立した.以来,この言語変化の2つの原理は,相容れないもの,交わらないものとして解釈されてきた.この2種類を一緒にしたり,ごっちゃにしたら伝統的な言語変化論の根幹が崩れてしまう,というほどの厳しい区別である.
 しかし,この伝統的なテーゼに対する反論も,断続的に提出されてきた.例外なしとされる音変化も,視点を変えれば一律に適用された類推として解釈できるのではないか,という意見だ.実のところ,私自身も語彙拡散 (lexical_diffusion) をめぐる議論のなかで,この2種類の言語変化の原理は,互いに接近し得るのではないかと考えたことがあった.
 この重要な問題について,Fertig (99--100) が議論を展開している.Fertig は2種類を峻別すべきだという伝統的な見解に立ってはいるが,その議論はエキサイティングだ.今回は,Fertig がそのような立場に立つ根拠を述べている1節を引用する (95) .単語の発音には強形や弱形など数々の異形 (variants) があるという事例紹介の後にくる段落である.

The restriction of the term 'analogical' to processes based on morpho(phono)logical and syntactic patterns has long since outlived its original rationale, but the distinction between changes motivated by grammatical relations among different wordforms and those motivated by phonetic relations among different realizations of the same wordform remains a valid and important one. The essence of the Neogrammarian 'regularity' hypothesis is that these two systems are separate and that they interface only through the mental representation of a single, citation pronunciation of each wordform. The representations of non-citation realizations are invisible to the morphological and morphophonological systems, and relations among different wordforms are invisible to the phonetic system. If we keep in mind that this is really what we are talking about when we distinguish analogical change from sound change, these traditional terms can continue to serve us well.


 言語変化を論じる際には,一度じっくりこの問題に向き合う必要があると考えている.

 ・ Fertig, David. Analogy and Morphological Change. Edinburgh: Edinburgh UP, 2013.

Referrer (Inside): [2024-07-06-1]

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2024-07-04 Thu

#5547. father の語形について再び [phonetics][grimms_law][verners_law][analogy][etymology][relationship_noun][analogy][hybrid][contamination][sound_change][consonant][fricativisation]

 father という単語は,比較言語学でよく引き合いにだされる語の代表格だ.ところがなのか,だからこそなのか,この語形を音韻論・形態論的に説明するとなるとかなり難しい.現在の語形は音変化の結果なのか,あるいは類推の結果なのか.おそらく両方が複雑に入り交じった,ハイブリッドの例なのか.基本語ほど,語源解説の難しいものはない.
 ここでは Fertig (78) の contamination 説を引用しよう.ただし,これは1つの説にすぎない.

The d > ð change in English father (<OE fæder is a popular example of contamination). (The parallel case of mother is cited less often in this context, for reasons that are not entirely clear to me.) The claim is that, by regular sound change, this word should have -d- rather than -ð- both in Old English (as it apparently did) and in Modern English (as is clearly does not). The -ð- in Modern English is thus attributed to contaminating from the semantically related word brother, which has had -ð- throughout the history of English . . . .


 father の第2子音を説明するというのは,英語史上最も難しい問題の1つといってよい.なぜ fatherfather なのか,その答えはまだ出ていない.以下,関連する記事を参照.

 ・ 「#480. father とヴェルネルの法則」 ([2010-08-20-1])
 ・ 「#481. father に起こった摩擦音化」 ([2010-08-21-1])
 ・ 「#698. father, mother, brother, sister, daughter の歯音 (1)」 ([2011-03-26-1])
 ・ 「#699. father, mother, brother, sister, daughter の歯音 (2)」 ([2011-03-27-1])
 ・ 「#703. 古英語の親族名詞の屈折表」 ([2011-03-31-1])
 ・ 「#2204. dth の交替・変化」 ([2015-05-10-1])
 ・ 「#4230. なぜ father, mother, brother では -th- があるのに sister にはないのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-11-25-1])

 ・ Fertig, David. Analogy and Morphological Change. Edinburgh: Edinburgh UP, 2013.

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2024-07-03 Wed

#5546. heldio 2024年第2四半期のベスト回を決めるリスナー投票 --- 7月9日までオープン [voicy][heldio][notice][khelf][link][ranking]

 上記の通り,本ブログの音声版・姉妹版ともいえる毎朝配信の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」より,今年第2四半期にお届けしてきた配信回のなかからベスト10を決めるリスナー投票イベントを開催中です.投票会場は7月9日(火)23:59 までオープンしていますので,この機会に聴き逃した過去配信回などを聴取いただき,マイベストの10件をじっくり選んでいただければと思います.
 各配信回へのアクセスは,音声コンテンツ一覧よりどうぞ.4月1日配信の「#1036. 月刊『ふらんす』で英語史の連載を始めています」 から6月30日配信の「#1127. 助動詞の英語史アレコレ」までの91回分が投票の対象となります.
 今回のリスナー投票企画は,前々回の「2023年 heldio の推し配信回」および前回の「2024年第2四半期のベスト回」に続いての企画です.前回の結果は「#5466. リスナー投票による heldio 2024年第1四半期のランキング」でご報告していますので,ぜひご覧いただければ.
 皆さん,今回も奮ってご投票ください.一昨日には投票を呼びかける「#1129. heldio 2024年第2四半期のベスト回を決めるリスナー投票(1人10票,7月9日まで投票受付)を配信しました.なお,この配信回で事情を話していますが,#1113 は欠番回(幻の配信回!)となっています.



Referrer (Inside): [2024-07-11-1]

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2024-07-02 Tue

#5545. 古英語の定冠詞・疑問詞の具格 [oe][article][determiner][interrogative_pronoun][case][instrumental][inflection][etymology][comparative_linguistics][germanic]

 昨日の記事「#5544. 古英語の具格の機能,3種」 ([2024-07-01-1]) に引き続き,具格 (instrumental) について.古英語の定冠詞(あるいは決定詞) (definite article or determiner) の屈折表を「#154. 古英語の決定詞 se の屈折」 ([2009-09-28-1]) で示した.それによると,þȳ, þon といった独自の形態をとる具格形があったことがわかる.同様に疑問(代名)詞 (interrogative_pronoun) についても,その屈折表を「#51. 「5W1H」ならぬ「6H」」 ([2009-06-18-1]) に示した.そこには hwȳ という具格形が見られる.
 Lass (144) によると,これらの具格形は比較言語学的にも,直系でより古い形に遡るのが難しいという.純粋な語源形が突きとめにくいようだ.この辺りの事情を,直接 Lass に語ってもらおう.

There are remains of what is usually called an 'instrumental' in the masculine and neuter sg; this term as Campbell remarks 'is traditional, but reflects neither their origin nor their prevailing use' (1959: §708n). The two forms are þon, þȳ, neither of which is historically transparent. In use they are most frequent in comparatives, e.g. þȳ mā 'the more' (cf. ModE the more, the merrier), and as alternatives to the dative in expressions like þȳ gēare '(in) this year'. There is probably some relation to the 'instrumental' interrogative hwȳ 'why?', which in sense is a real one (= 'through/by what?'), but the /y:/ is a problem; hwȳ has an alternative form hwī, which is 'legitimate' in that it can be traced back to the interrogative base */kw-/ + deictic */ei/.


 比較言語学の手に掛かっても,すべての語源を追いかけて明らかにすることは至難の業のようだ.

 ・ Lass, Roger. Old English: A Historical Linguistic Companion. Cambridge: CUP, 1994.
 ・ Campbell, A. Old English Grammar. Oxford: OUP, 1959.

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2024-07-01 Mon

#5544. 古英語の具格の機能,3種 [oe][noun][pronoun][adjective][article][demonstrative][determiner][case][inflection][instrumental][dative][comparative_linguistics]

 古英語には名詞,代名詞,形容詞などの実詞 (substantive) の格 (case) として具格 (instrumental) がかろうじて残っていた.中英語までにほぼ完全に消失してしまうが,古英語ではまだ使用が散見される.
 具格の基本的な機能は3つある.(1) 手段や方法を表わす用法,(2) その他,副詞としての用法,(3) 時間を表わす用法,である.Sweet's Anglo-Saxon Primer (47) より,簡易説明を引用しよう.

          Instrumental
   88. The instrumental denotes means or manner: Gāius se cāsere, ōþre naman Iūlius 'the emperor Gaius, (called) Julius by another name'. It is used to form adverbs, as micle 'much, by far', þȳ 'therefore'.
   It often expresses time when: ǣlċe ȝēare 'every year'; þȳ ilcan dæȝe 'on the same day'.


 具格はすでに古英語期までに衰退してきていたために,古英語でも出現頻度は高くない.形式的には与格 (dative) の屈折形に置き換えられることが多く,残っている例も副詞としてなかば語彙化したものが少なくないように思われる.比較言語学的な観点からの具格の振る舞いについては「#3994. 古英語の与格形の起源」 ([2020-04-03-1]) を参照されたい.ほかに具格の話題としては「#811. the + 比較級 + for/because」 ([2011-07-17-1]) と「#812. The sooner the better」 ([2011-07-18-1]) も参照.

 ・ Davis, Norman. Sweet's Anglo-Saxon Primer. 9th ed. Oxford: Clarendon, 1953.

Referrer (Inside): [2024-07-02-1]

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最終更新時間: 2024-07-17 10:28

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