hellog〜英語史ブログ     ChangeLog 最新    

global_language - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-11-22 17:50

2013-05-11 Sat

#1475. 英語と言語に関する地図のサイト [internet][link][timeline][hel_education][map][global_language][elf][vexillology]

 Map of the World という,様々な地図を提供する良サイトを見つけた.探してみると,英語やその他の言語に関する地図やヴィジュアル資料による説明も豊富で,本ブログとして紹介する価値があると思ったので,以下にリンクを張っておきたい.地図の一般的な用途にも便利に使える.

 ・ English Language --- Facts & Infographic: 英語の特徴や英語の歴史を大雑把に解説.そのなかの English Speaking Countries の地図は有用.
 ・ Should English Be The Official Language Of The World --- Facts & Infographic: 世界語としての現代英語の地位を客観的に記述.データの典拠はわからないが The Web of Words では,ウェブ上のコンテンツの英語比率は56%(圧倒的首位),ウェブ上のコミュニケーションの英語比率は26.8%(中国語について2位)となっている.英語が公用語となっている56カ国の国旗が示されている.アルファベット順に挙げると,Antigua and Barbuda, Bahamas, Barbados, Belize, Botswana, Cameroon, Canada, Dominica, Eritrea, Ethiopia, Federated States of Micronesia, Fiji, Gambia, Ghana, Grenada, Guyana, India, Ireland, Jamaica, Kenya, Kiribati, Lesotho, Liberia, Malawi, Malta, Marshall Islands, Mauritius, Namibia, Nauru, New Zealand, Nigeria, Pakistan, Palau, Papua New Guinea, Philippines, Rwanda, Saint Kitts and Nevis, Saint Lucia, Saint Vincent and the Grenadines, Samoa, Seychelles, Sierra Leone, Singapore, Solomon Islands, South Africa, South Sudan, Sudan, Swaziland, Tanzania, Tonga, Trinidad and Tobago, Tuvalu, Uganda, Vanuatu, Zambia, Zimbabwe.関連して,「#177. ENL, ESL, EFL の地域のリスト」 ([2009-10-21-1]) や「#376. 世界における英語の広がりを地図でみる」 ([2010-05-08-1]) も参照.
 ・ Top Ten English Speaking Countries: 地図で英語話者(母語話者とは限らない)人口の世界トップ10の国が示されている.データソースと凡例に不明な点があるが,アルファベット順に挙げると,Australia, Canada, France, Germany, India, Italy, Nigeria, Philippines, United Kingdom, United States.本当だろうか・・・.
 ・ Top Ten Daily Newspapers in English: これも地図で示されるが,英米とインドのみ.1日の平均発行部数順に,The Sun (UK), USA Today (USA), The Daily Mail (UK), The Mirror (UK), Times of India (India), Wall Street Journal (USA), New York Times (USA), The Daily Telegraph (UK), Daily Express (UK), Los Angeles Times (USA) .

 ・ Language Map of the World: 25言語とその他というくくりで色分けの地図がある.

 ・ UK Map --- United Kingdom: イギリスの地図をざっと示すときに使える.Physical Map はこちら.  *  
 ・ USA Map: アメリカ地図をざっと示すときに使える.Physical Map はこちら.  *  
 ・ Europe Map: ヨーロッパ地図をざっと示すときに使える.Physical Map はこちら.  *  
 ・ Map of the World: 世界地図をざっと示すときに使える.  *  *  *

 ほかにオンラインの言語地図としては,「#715. Britannica Online で参照できる言語地図」 ([2011-04-12-1]) で張ったリンクや,EthnologueBrowse by Map Title を参照.

Referrer (Inside): [2014-02-07-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2013-02-16 Sat

#1391. lingua franca (4) [elf][global_language][pidgin][creole][esperanto][artificial_language][basic_english][contact][sociolinguistics][koine]

 英語とエスペラント語の共通点は何か.言語的には,分析的であるとか,ロマンス系言語の語根をもつ語彙が多いとか,個々の言語項目について指摘することができるだろうが,大づかみに共通点を1つ挙げるというのは難しい.社会言語学的にいえば,単純である.いずれの言語も lingua franca である,ということだ.英語とピジン語の共通点,スワヒリ語と俗ラテン語の共通点にしても同じ答えである.
 [2012-04-17-1], [2012-04-18-1], [2012-04-19-1]の記事で lingua franca という用語について調べたが,社会言語学的な見地からこの用語と概念にもう一度迫りたい.Wardhaugh (55) によれば,UNESCO が lingua franca を "a language which is used habitually by people whose mother tongues are different in order to facilitate communication between them" と定義している.この定義では,その言語が通用する範囲の広さについては言及していないので,小さな共同体でのみ用いられているような言語も上の条件を満たせば lingua franca ということになる."used habitually" も程度問題だが,緩く解釈すれば,上の段落で挙げた言語は確かにいずれも lingua franca の名に値するだろう.
 lingua franca はいくつかの種類に分けることができる (Wardhaugh 56) .

 (1) 西アフリカのハウサ語や東アフリカのスワヒリ語のように交易目的で用いられる "trade language"
 (2) 古代ギリシア世界における koiné (コイネー)や中世ヨーロッパにおける俗ラテン語のように諸方言が接触した結果としての "contact language"
 (3) 英語のように国際的に用いられる "international language"
 (4) Esperanto ([2011-12-15-1]) や Basic English ([2011-12-13-1]) のような補助言語(人工言語)たる "auxiliary language"
 (5) カナダの小共同体で話されている,クリー語の文法とフランス語の語彙を融合させた,民族的アイデンティティを担った Michif のような "mixed language"

 ほかにも上記の定義に当てはまる言語を挙げれば,地中海世界の交易共通語となった Sabir,世界の各地域で影響を誇る Arabic, Mandarin, Hindi の各言語,19世紀後半に北米 British Columbia から Alaska にかけて広く通用した Chinook Jargon などがある.

 ・ Wardhaugh, Ronald. An Introduction to Sociolinguistics. 6th ed. Malden: Blackwell, 2010.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2012-07-17 Tue

#1177. EU 仏語の退潮 [french][global_language][elf][statistics]

 7月15日(日)の読売新聞朝刊6面の「ワールドビュー」に標題の記事があった.EU は英仏独の3言語を作業言語に指定しているが,報告書はまず最初に英語で出版されるのが常態となっている.
 第2次世界大戦後の統合欧州の歴史を振り返れば,当初は,英語圏抜きで歩み始めたために,仏語の支配的地位は盤石だった.しかし,英語の急速な世界化に伴い,仏語の相対的な地位は,世紀後半に向けて落ちていった.特に2004年のEU東方拡大では,仏語よりも英語の得意な中東欧諸国など10カ国が一気に加盟したことにより,仏語の退潮に拍車がかかった.欧州委員会翻訳総局によると,1997年に起草された文書のうち,原文が仏語だったものは40.5%であり,英語は45%だった.ところが,2010年には,その比は7%対77%となり,英語の圧倒的優勢が示された.
 最近の欧州財政・金融危機を巡る報道でも,英語メディアの優勢が目立っている.市場への影響力の大きさを考慮したEU官僚が英語メディアに情報を流しているというのが理由のようだ.
 ある言語が世界化すればするほど,周囲の環境がその世界化を後押しするために,スパイラル状に世界化が進行する.上で見た例でいえば,2004年のEU東方拡大や現在のEU財政情勢の報道が,部分的に英語の世界化を後押しする社会的要因となっている.
 ほかに ELF (English as a Lingua Franca) の統計に関しては,statistics elf の各記事を参照.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2012-04-19 Thu

#1088. lingua franca (3) [elf][model_of_englishes][global_language][bnc]

 この2日間の記事[2012-04-17-1], [2012-04-18-1]に引き続き,lingua franca という語の意味と用法についての話題.昨日は主に辞書の定義を参考にしたが,今日はコーパスに現われる用例から lingua franca の現行の意味に迫りたい.
 BNCWeb で "lingua franca" を単純検索すると,34例がヒットした.KWIC出力を眺めてみると,英語が主題となっている例文は予想されるほど多くない.ピジン英語などを含めると英語のシェアが相対的に高いことは認めるにせよ,ラテン語,ギリシア語,フランス語,スワヒリ語などの諸言語に関する例文も決して少なくない.昨日は学習者用英英辞書が,lingua franca の例文において英語びいきであることを見たが,現行の lingua franca の使用では,そのような英語へのバイアスは特にないことが,コーパスの例から明らかだろう.また,lingua franca に対して「世界語」という訳をつけることが不適切であることも,改めて理解できるだろう.
 コーパス検索からは,次のように比喩的で広義の「意思伝達の役割を果たすもの」の用例も見られた.

 ・ Mr Tsurumaki was successful at 315 million francs, generally translated into lingua franca dollars at $51.4 million.
 ・ . . . the user has to resort to good old ASCII, the lingua franca of all computer systems . . . .


 このように専門語から一般語への転身も着実に進んでいるようである.語の意味が広く一般的になるということは,それが本来もっていた意味上の区別を失うということである.この種の意味変化は日常茶飯事であり,言語学的には非難の対象とも推奨の対象ともならない.しかし,専門用語としての lingua franca のもつ繊細な含蓄は保つ価値があるように思う.それは,昨日も指摘した,lingua franca の「母語話者のイメージを喚起しない」性質である.ELF (English as a Lingua Franca) に,母語話者は関わってこない.一方で,母語話者の参加の有無にかわかわらず国際的に用いられる共通語としての英語を話題にするには EIL (English as an International Language) という用語がより適切だろうし,これらすべてを超越する用語として (English as a) Global Language という用語も頻繁に聞かれるようになってきた.
 厳密さを要しない一般的な文脈で現在の英語の地位に言及する場合には,lingua franca も global language も大差なく使われているように思われるが,上記のように,両者の区別はつけておくのがよいと考える.母語話者の不関与を押し出す lingua franca と,母語話者の関与・不関与を超越する global language ―――この対立には,単なる定義上の区別のみならず,背景にある英語観の違い,英語の役割のどの側面に力点を置くかの違いが反映されているように思われる.

Referrer (Inside): [2021-11-04-1] [2013-02-16-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2012-04-18 Wed

#1087. lingua franca (2) [elf][model_of_englishes][global_language][koine]

 昨日の記事[2012-04-17-1]を受けて,lingua franca という用語について詳しく調べてゆくことにする.まずは,学習要英英辞書の定義と例文を眺めてみよう.

 ・ OALD8: a shared language of communication used between people whose main languages are different: English has become a lingua franca in many parts of the world.
 ・ LDOCE5: a language used between people whose main languages are different: English is the lingua franca in many countries.
 ・ LAAD2: a language used between people whose main languages are different: Swahili is the lingua franca of East Africa.
 ・ COBUILD English Dictionary: A lingua franca is a language or way of communicating which is used between people who do not speak one another's native language: English is rapidly becoming the lingua franca of Asia.
 ・ CALD3: a language which is used for communication between groups of people who speak different languages but which is not used between members of the same group: The international business community sees English as a lingua franca.
 ・ MED2: a language that people use to communicate when they have different first languages: German is a useful lingua franca for tourists in the Czech Republic.
 ・ MWALED: a language that is used among people who speak various different languages: English is used as a lingua franca among many airline pilots.


 いずれも似たり寄ったりで「母語や主要言語が互いに異なる者どうしの間でコミュニケーション手段として用いられる言語」ほどの意味である.学習者英英辞書だけに,例文では圧倒的に英語を主題とするものが多いが,LAAD2MED2 では Swahili や German が主語である.英語だけを念頭に置いてしまうと,場合によっては lingua franca を汎用国際語といったイメージで捉えてしまいがちだが,このように英語以外の言語が主題とされている例文を見ると,その語義を理解する上でバランスがとれる.次に,一般の英英辞書等の記述を見てみよう.

 ・ OED2: 2b. lingua franca [It., = 'Frankish tongue']: a mixed language or jargon used in the Levant, consisting largely of Italian words deprived of their inflexions. Also transf. any mixed jargon formed as a medium of intercourse between people speaking different languages.
 ・ Web3: 2. any of various hybrid or other languages that are used over a wide area as common or commercial tongues among peoples of diverse speech (as Hindustani, Swahili).
 ・ AHD4: 1. A medium of communication between peoples of different languages.
 ・ WordNet 2.0: a common language used by speakers of different languages: Koine is a dialect of ancient Greek that was the lingua franca of the empire of Alexander the Great and was widely spoken throughout the eastern Mediterranean area in Roman times.


 ここでは,必ずしも英語びいきではなく,言語学的に精密な定義が目立つ.しかし,OED の定義の後半で一般的に転用された語義として "any mixed jargon . . ." と与えているのは,現行の用法を反映していない古い記述というべきだろう.Web3 の趣旨に添って,"any language or (mixed) jargon . . ." 辺りが適当のように思われる.
 さて,lingua franca の意味が少しずつ浮き彫りになってきた.最も重要な点は,lingua franca の話者には,それを母語とする話者が含まれていないということである.つまり,英語がリンガフランカとして言及される文脈では,英語母語話者のイメージが喚起されない.この意味では,ELF (English as a Lingua Franca) とは ENL (English as a Native Language) に対する用語となる.そして,現代の英語使用を ELF の観点から見ると,lingua franca は「英語母語話者外し」という様相すら帯びることになる.私が適切と評価した「仲介語」や「補助言語」という訳語は響きこそ穏やかだが,lingua franca は,辞書の定義を丁寧に追って行くと,このような強い主張にもつながりうる.英語母語話者外しの潮流については,[2009-10-07-1]の記事「#163. インドの英語のっとり構想!?」や[2010-01-24-1]の記事「#272. 国際語としての英語の話者を区分する新しいモデル」を参照されたい.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2011-04-25 Mon

#728. 世界語が世界に与える影響 [global_language][elf]

 いうまでもなく,英語は世界語 (a global language or world language) あるいはリンガ・フランカ (a lingua franca) と称される一級の言語の1つである.人類史上,これほど多くの場所でこれほど多くの人に話されている言語はなかった.現代世界でもっとも通用度の高い言語であり,事実上 "the global language" と定冠詞をつけて呼ばれたとしても,多くの日本人にとって違和感がないだろう.しかし,世界語としての現代英語を論じる際には,不定冠詞で "a global language" あるいは複数形の環境で "one of the global languages" として用いるのが適切である.
 多くの言語学者が英語を「世界語の1つ」と控えめに表現しているが,1つには勝利主義的な英語観の含意を避けるという目的がある.もっと具体的にいえば,反英語論者を意識して中立的な言葉遣いを選んでいるとも考えられる.言語(特に世界語としての英語)を語る際には必然的になにがしかの政治的スタンスを伴わざるを得ないが,その政治的含意をなるべく少なくするための(それ自体がある意味で政治的な)レトリックの1つとみなすことができる.
 しかし,それ以上に「世界語の1つ」という表現には学問的な謙虚さが感じられる.過去にも現在にも,程度の差はあれ「世界語」と呼びうる言語は複数あった.将来も,同じように複数の世界語の存在する可能性がある.世界語としての英語の性質を理解するためには,他の世界語の性質と比較対照し,異同を取ることが必要である.世界語としての英語の研究は,是非とも "global languages" という pluralist な文脈でなされなければならない.
 英語ならずとも世界語の立場にある言語は,およそ似たような影響を世界に及ぼすだろうと仮定できる.Crystal, The English Language 10--11 を参考に,現在,世界語としての英語が世界に及ぼしている影響のいくつかを指摘したい.

 (1) 世界語は未曾有の詳細さをもって学習され,研究される.その結果として,規範的な文法書や辞書が書かれ,語学教育や語学施設が充実し,言語研究が発展する.
 (2) 世界語(やその他の言語)に対する人々の意識が高まり,言語に関する書籍や雑誌,ラジオ番組やテレビ番組を通じて,世界が言語的に啓発される.
 (3) 世界語(やその他の言語)に対する意識が高まり,言語的に啓発される一方で,人々は逆に言語の問題について批判的で心配性になる.言語変化を言語の堕落とみなして不安を覚えたり,他の言語や変種に対して排他的で不寛容な態度が生じることもある.

 世界語の潜在的な影響は,他にもいくつか指摘できる.

 ・ 当然のことながら,世界語は世界のコミュニケーションを容易にし,活発にする
 ・ 世界語の学習に取り残された者が "linguistic divide" の社会的不利や差別に苦しむということも生じるかもしれない
 ・ 世界語の圧力により,少数言語の消滅する傾向が加速される(ただし,これには異論もある.例えば Crystal, English as a Global Language 20--25 を参照.)
 ・ 世界語の変種(ピジン語やクレオール語も含む)が各地に生まれ,次第に互いに理解不能の言語へと分かれてゆく

 上記の項目の多くが,かつての世界語の1つであるラテン語にも当てはまるだろう.「世界」の規模は,現代の世界語である英語と異なるが,世界語の立場にある言語がもつ影響力には,共通の特徴があることが分かる.しかし,現代における重要な問題は,英語に特有の特徴が何か,である.その答えを知るためには,過去そして現在の他の世界語(の候補)との比較対照が欠かせない.
 ELF (English as a Lingua Franca) については,elf の各記事で取り上げてきたが,特に以下の記事を参照.

 ・ #177. ENL, ESL, EFL の地域のリスト: [2009-10-21-1]
 ・ #272. 国際語としての英語の話者を区分する新しいモデル: [2010-01-24-1]
 ・ #372. 国際語としての英語の趨勢についての気になる事実(2005年版): [2010-05-04-1]
 ・ #376. 世界における英語の広がりを地図でみる: [2010-05-08-1]

 ・ Crystal, David. The English Language. 2nd ed. London: Penguin, 2002.
 ・ Crystal, David. English As a Global Language. 2nd ed. Cambridge: CUP, 2003.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow