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triphthong - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-11-22 17:50

2022-09-10 Sat

#4884. 英語の2重母音と3重母音 [diphthong][triphthong][vowel][phoneme][phonology][sound_change]

 英語の2重母音 (diphthong) と3重母音 (triphthong) は,歴史のなかで種類・数ともに変化し続けてきた.様々な変化を遂げてきた結果,現代英語(標準変種)では計13種が確認されている.音韻論的な観点から整理すると,以下のような体系的な図となる.この図は Crystal (251) の図を改変したものである(SVG版もあり).

diphthong

 2重母音は,第2モーラの母音が (1) 曖昧母音 /ə/ で終わるか,(2) 高母音 /ɪ/, /ʊ/ で終わるか,の計3種に限られるという特徴がある.
 3重母音は,上記の高母音で終わる2重母音の後に,第3モーラとして曖昧母音 /ə/ が付される5種に限られる.
 歴史的にみると,2重母音や3重母音のみならず単母音 (monophthong) もおおいに変化してきた.英語は全体として母音を激しくかき回してきたという経緯がある.どのように変化してきたのか,なぜそれほど変化してきたのかについては,以下の記事を参照.

 ・ 「#1402. 英語が千年間,母音を強化し子音を弱化してきた理由」 ([2013-02-27-1])
 ・ 「#2052. 英語史における母音の主要な質的・量的変化」 ([2014-12-09-1])
 ・ 「#2181. 古英語の母音体系」 ([2015-04-17-1])
 ・ 「#3387. なぜ英語音韻史には母音変化が多いのか?」 ([2018-08-05-1])
 ・ 「#4108. boy, join, loiter --- 外来の2重母音の周辺的性格」 ([2020-07-26-1])
 ・ 「#4521. 英語史上の主要な母音変化」 ([2021-09-12-1])

 ・ Crystal, D. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. CUP, 2018.

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2020-06-15 Mon

#4067. 「長母音+ /r/」が経た音変化 [rhotic][r][vowel][diphthong][triphthong][sound_change][gvs]

 後期中英語の「長母音+ /r/」あるいは「2重母音+ /r/」の音連鎖は,近代英語期にかけていくつかの互いに密接な音変化を経てきた.以下,Minkova (279) が挙げている一覧を再現しよう.ここで念頭にあるタイムスパンは,後期中英語から18?19世紀にかけてである.

Late ME to EModESchwa-insertionLength adjustment/-r/-lossExamples
-əir ? -ʌir-aiər-aɪər-aɪəfire (OE fȳr)
-eː̝r ? -iːr-iːər-ɪər-ɪədeer (OE dēor)
-ɛːr ? -e̝ːr ? -iːr-iːər-ɪər-ɪəear (OE ēare)
-ɛːr ? -eːr-eːər-ɛər-ɛəpear (OE pere)
-æːr ? -ɛːr-ɛːər-ɛər-ɛəhare (OE hara)
-ɔːr-ɔː(ə)r-ɔ(ː)(ə)r-ɔ(ː)(ə)oar (OE ār)
-oːr-ɔː(ə)r-ɔ(ː)(ə)r-ɔ(ː)(ə)floor (OE flōr)
-oː̝r ? -uːr-uːər-ʊər-ʊəpoor (AN pover, pour)
-əur ? -ʌur-auər-aʊər-aʊəbower (OE būr)


 このように Minkova (278) は,(1) schwa-insertion, or breaking, (2) pre-shwa-laxing, or length adjustment, (3) /-r/-loss という3つの音過程が関与したことを前提としている.また,厳密に上記の順序で音過程が進行したかどうかは確定できないものの,non-rhotic 変種が辿った経路のモデルとして,上記を提示したとも述べている.
 non-rhotic 変種では,これらの音変化の結果として,いくつかの新種の2重母音や3重母音が現われたことになる.

 ・ Minkova, Donka. A Historical Phonology of English. Edinburgh: Edinburgh UP, 2014.

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