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barbados - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-11-22 17:50

2021-12-02 Thu

#4602. Barbados が立憲君主制から共和制へ [barbados][caribbean][history][creole][map]

 昨日12月1日付けで,西インド諸島の小アンティル諸島にあるバルバドスが共和国となった.英連邦には残るものの,イギリスのエリザベス女王を元首とする立憲君主制から共和制に移行したことになる(cf. 「#1676. The Commonwealth of Nations」 ([2013-11-28-1])).同日,「女王の代理人」として総督を務めてきたサンドラ・メイソン氏が,バルバドスの初代大統領として就任した.就任式にはイギリスのチャールズ皇太子も参加し,平和な祝賀ではあったが,背景にはイギリス植民地としての歴史認識の見直しがあった.

Map of Barbados

 この地へのイギリス人およびアイルランド人による入植は,4世紀ほど前の1627年にさかのぼる.当初は白人年季奉公労働者によるタバコ栽培で繁栄し,1642年には人口は3万7千人まで増えていた.しかし,疫病の流行と栽培品のサトウキビへの転換により,様相が一変した.サトウキビは広いプランテーションで栽培され,労働も過酷だったために,労働力がアフリカ出身の黒人奴隷によって置き換えられたのである.結果として,1685年には白人2万人に対して黒人4万6千人という人口比となっていた.現在,バルバドスの人口約29万人のうち,9割以上が黒人である.
 17世紀後半に生じたこの人口構成の急激な変化は,バルバドスの言語状況にも多大な影響を及ぼした.それまでイギリス人とアイルランド人の話す英語が根づいていたが,この時期以降それがクレオール化したのである.Barbadian Creole (あるいは Bajun)と呼ばれるこのクレオール語は,現在,バルバドスにおいて標準英語とともに用いられている.バルバドスの英語事情の歴史は,この地域全体の英語事情の歴史を代表しているといってよい (Sand 2121) .
 バルバドスは1966年にイギリスから独立したが,今回の共和制への移行は「第2の独立」という象徴的な意義をもつ.ほかにもエリザベス女王を元首とする立憲君主国はイギリス以外には世界に14カ国残っており,その多くが中米・カリブ海地域に位置する.今回のバルバドスの共和制移行を契機に,周辺諸国も続いていくのではないかという観測もなされている.
 カリブ海地域における英語の歴史は,たいへんに複雑である.本ブログでも「#1679. The West Indies の英語圏」 ([2013-12-01-1]),「#1700. イギリス発の英語の拡散の年表」 ([2013-12-22-1]),「#1702. カリブ海地域への移民の出身地」 ([2013-12-24-1]),「#1711. カリブ海地域の英語の拡散」 ([2014-01-02-1]) ほか caribbean の各記事で取り上げてきたので,そちらを参照されたい.

 ・ Sand, Andrea. "Second-Language Varieties: English-Based Creoles." Chapter 135 of English Historical Linguistics: An International Handbook. 2 vols. Ed. Alexander Bergs and Laurel J. Brinton. Berlin: Mouton de Gruyter, 2012. 2120--34.

Referrer (Inside): [2021-12-03-1]

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