英語史のアウトリーチ活動を続けていると、自分自身の肩書きについて考えさせられることがある.私は英語史の研究者であり専門家である.専門家といえば,英語では professional であり「プロ」だ.
professional 「専門職(の)」は名詞・形容詞ともに profession 「専門職」から派生した語だ.遡ればラテン語の動詞 profitērī 「公言する,公然と述べる」に行き着く.pro- 「前へ,公然と」と fatērī 「認める,述べる」(fārī 「話す」に由来)の組み合わせであり,字義通りには「前面に出て言い表わす」という発想である.英語の動詞 profess も同根に遡り,語義はやはり「公言する」である.
後期中英語期にフランス語を経由して英語に借用された profession(al) の最初期の語義は,「(信仰を公言して)修道会に正式に入ること,誓願を立てること」という,きわめてキリスト教的なものだった.修道士・修道女になるとは,信仰を人前で「公言する」ことにほかならなかった.つまり,かつての profession とは,職業的聖職者になる誓いそのものを指した.
この宗教的な語義はやがて世俗化し,中英語末から近代英語期にかけて,神学・法律・医学という「学識ある専門職」を指すようになる.さらに後期近代英語期には形容詞 professional が「その道を生業とする」の意で確立し,対義語 amateur 「愛好家」(ラテン語で「愛する」を意味する動詞 amāre と語根を共有)との対比のなかで,現在おなじみの語感が定着していった.
こうして語史をたどってみると,professional の根底には,「公言する」という行為があったことがわかる.「プロ」とは,単に生計を立てる手段であるだけでなく,「自分はこれを専門とする者だ」と社会に向けて宣言する行為でもあったのだ.アウトリーチ活動という文脈に立ち戻るならば,専門家が自らの専門性を看板に掲げ,それを広く外へ表明していく営みこそが,professional の語源に忠実な姿ともいえる.
有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 9月号が,8月28日に公開されました.通算第23号となります.
今号は,Galois さんによる秋の涼しさを感じさせる見出し画像とともに,早速本編の寄稿ラインナップが始まります.
今号も圧倒的な記事量を誇る ari さんからスタートです.犬に絡めたシリウスの話題に始まり,ベルギーの街ブリュッヘと結びつけた英語史のネタ,チーズフォンデュをめぐる一件(タイトルからは何のトピックか分かりませんが,そこは読んでのお楽しみ)など,いつもの通り縦横無尽です.拙著『なぜさんたんげん』と関連付けた記事や,heldio や Helvillian に注目したファンサイト「Helvillain Heal」を公開されたとの報告までなされ,まさに八面六臂のhel活振りです.
mozhi_gengo さんは今号でも多作です,迂言的な do の文法化から,turnstile と urchin の語源,ヴェルネルの法則とグリムの法則を絡めたヒンディー語探訪まで,比較言語学的な視点が冴えわたっています.「青椒肉絲の美味しい店」と関連づけたトピックも要注目です.
辞書通読勢も健在です.lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート」は D ゾーンの dice, dictionary, die まで到達しています.あまねちゃんはこの1ヶ月で通読ノートを第6弾から第9弾まで一気に4本更新し,ひそかに同辞典の「読み解き」にまで手を広げています.August の語源を遡る回や古英語 guma に迫る回も見逃せません.
教育現場からは,sorami さんの中学生向け語源クイズが第14弾,第15弾を数え,和製英語や不定冠詞 a/an,interested と interesting の使い分けといった実践的なテーマを取り上げています.みーさんの「小学生と学ぶ英語史」も引き続き絶好調で,kendama_player さんも英語史におけるヴァイキングの位置づけに関する仮説の紹介や,服部義弘先生への heldio オープンマイク企画の予告など,教育と研究の橋渡し役を果たしてくれています.
ドイツ語と英語史の定点観測を続ける ykagata さんは,rain と salad の語源記事に加え,連載「『英語語源ハンドブック』にこじつけて学ぶドイツ語」が開始から1年を迎えたことを報告しています.ドイツ語 gleich 「同じ,すぐに」と英語 alike が同語源であること,そして Zum Wohl 「乾杯」の Wohl と古英語 Wes hal 「乾杯」の hal が実は別語源だという指摘と考察は刺激的でした.川上さんは「英語と歴史」シリーズを続けられ,「英語のなぜ」やってます通信も積み重ね,地道な連載の強みを見せつけています.
Grace さんは festival という語の成り立ちと「花子」の記号論を論じ,Lilimi さんは仏検準1級の2次試験を振り返り,しーさんは「1000年前にタイムトラベルするなら何を持っていくか」というユニークな視点から「たべっ子どうぶつ」を語り,佐久間さんは梅毒がかつて「フランス病」と呼ばれた歴史を紹介するなど,語学と歴史のはざまを行き来する寄稿が並びます.こじこじ先生の3篇のオリジナル曲も,今号に彩りを添えています.
umisio さんは今号も多く寄稿しています.学校教育での英語史導入の可能性を論じた記事に始まり,「伏線(未)回収」論シリーズも展開しています.酷暑のなかで頻発する「ボケ」への対処法を熱く語る一篇も,umisio さんらしい肩の力の抜けた味わいです.巻末は,Grace さんによる「あゆみ(2026年9月)」と,umisio さんによる「編集後記(2026年9月)」で締めくくられています.
今号もまた,寄稿者それぞれの視点から英語史の奥深さを味わえる充実の号に仕上がっています.ぜひ Helvillian 9月号をじっくりとお楽しみください.そして,この hel活の輪に加わりたいと思われた方は,ぜひ Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」へお越しください.
(以下,後記:2026/09/02(Wed))
今回紹介した Helvilian 9月号については,heldio 配信回「#1921. Helvillian 9月号公開 --- Helvillian 校了後の編集室からで,編集委員のお2人が直々に紹介していますので,ぜひそちらもお聴きください.
「#6324. アウトリーチ活動とは何か? --- 英単語 outreach の発展」 ([2026-08-20-1]) で触れたように,私や周囲の人々による「英語史をお茶の間に」の活動,通称「hel活」 (helkatsu) は,英語史という学問分野に関するアウトリーチ活動である.
学術的な話題に関するアウトリーチ活動の根幹には,share 「シェア」の発想があるのではないかと,私は考えている.share は「分け前,取り分」という名詞であるとともに「分ける,分かち合う,共有する,共に用いる」を意味する動詞でもある.アウトリーチの文脈で「知識や知恵のシェア」という場合には,日本語の「お裾分け」の語感が近いように感じている.
share の語源を遡ると,おおもとは印欧祖語の *(s)ker- "to cut" にたどり着く.そこから,「切り分ける;切り分けられた断片」ほどに語義が展開し,現代的な名詞や動詞の意味に到達した.同音異綴字異義語の shear 「大ばさみ(で刈る)」も同根である.
ただし,おもしろいことに古英語 sċearu は「刈り込み;剃髪」などの比較的特殊な意味で,現代的な「分け前,シェア」的な語義が発達するのは中英語期になってからのことだ.私たちが注目しているアウトリーチに直接関連する語義は,それなりに新しいものということになる.
では,古英語では「分け前,シェア」という「意味の場」は存在しなかったのかといえば,そうでもない.別の単語 dǣl (名詞)や dǣlan (動詞)がその意味を担っていた.現代でいうところの deal である.この語は現代では「取引;取り扱い」の語義が前面に出てきている感があるが,原義ははほぼ share と重なるといってよい.語根も share とは異なるとはいえ,印欧祖語 *dail- "to divide" に遡るとされ,ここにはやはり「分け与える」の発想が入っている.中英語以降,名詞も動詞も独自の語義を発展させて現代に至るが,原義に比較的近いところを残しているものとして dealer 「(トランプのカードを)配る人」,a great deal of などの表現における「一部,部分」を挙げておこう.なお,「取引」関連の語義の発達は,取引や交渉というものが,2者が同じ目的を共有する作業だからだろう.
ここまでのところを考えると,古英語で deal が担っていた意味の場を,中英語では share が担当するようになった,という風に見える.そして,この英語本来語ペアの動きに介入して来ているように見えるのが,ラテン語由来にしてフランス語経由で中英語期に借用されてきた part という単語だ.「分け前;一部」といった先の2語と共通する語義を持っており,語根こそいずれとも異なるが,起源を遡ると印欧祖語 *perə "to grant, allot" に行き着く.根本的な発想はここでも「分け与える」なのだ.現代英語で part の関連語としては,participate 「参加する」や partake 「参加する;共にする」にその原義が感じられる.
share, deal, part の3つの基本語は,英語史を通じてそれぞれ守備範囲を調整しながら現代まで生きながらえてきたわけだが,いずれも発想の根幹に共通のものがあるのがおもしろい.アウトリーチ活動と相性のよい「お裾分け」系の語彙を構成している.
関連して,hellog 「#4941. partner と parcener」 ([2022-11-06-1]) および「#524. deal と part のイメージは「分け与えて共有する」」を参照.
Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 のオープンマイク企画の一環として,heldio/helwa コアリスナーの kendama_player さんが,大学院時代の恩師である静岡大学名誉教授・服部義弘先生(専門は英語音韻論・英語史)にインタビューをしてくださいました.
服部先生といえば,日本の英語音韻論および英語史研究を長年牽引されてきた重鎮です.その服部先生が heldio にご出演いただけるとは,驚くやら嬉しいやらで,私も感激いたしました.kendama_player さんがヘルメイトとして素晴らしいご縁をつないでくれました.企画は3回にわたる対談となっており,すでに heldio にて配信済みです.リンクを以下に掲げますので,ぜひお聴きください.
・ 「#1909. 静岡大学名誉教授・服部義弘先生に聞く! --- ご経歴,そして堀田との関係は?」
・ 「#1912. 静岡大学名誉教授・服部義弘先生に聞く! --- 大母音推移は本当にあったのか?」
・ 「#1915. 静岡大学名誉教授・服部義弘先生に聞く! --- お薦めの英語史の本は?」
初回配信回では,服部先生のご経歴とともに,服部先生と私との学術的な関係について触れていただきました.お話しの中で言及された論著やシンポジウムの情報を,年代順に整理して掲載しておきます.
・ 中野 弘三・服部 義弘・小野 隆啓・西原 哲雄(監修) 『最新英語学・言語学用語辞典』 開拓社,2015年.
・ 堀田 隆一 「英語史における音・書記の相互作用 --- 中英語から近代英語にかけての事例から ---」近代英語協会第34回大会シンポジウム「英語音変化研究の課題と展望」(青山学院大学),2017年6月24日.
・ 服部 義弘・児馬 修(編) 『歴史言語学』 朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.
・ 堀田 隆一 「英語における may 祈願文の発生と発達」『歴史言語学』第8号(日本歴史言語学会編),2020年.67--80頁.
・ 堀田 隆一 「英語の発音と綴字の乖離と GVS」 日本音声学会主催 第35回音声学セミナー(青山学院大学京都大学),2025年9月28日.
第2回では,英語史における音変化としては最も著名な大母音推移 (gvs) の話題を掘り下げていただきました.服部先生が対談のなかで言及・示唆された文献一覧は以下の通りです.
・ Jespersen, Otto. A Modern English Grammar on Historical Principles. Part 1. Copenhagen: Munksgaard, 1909.
・ Sapir, Edward. Language. New York: Hartcourt, 1921.
・ Smith, Jeremy J. An Historical Study of English: Function, Form and Change. London: Routledge, 1996.
・ Minkova, Donka and Robert Stockwell. "Phonology: Segmental Histories." A Companion to the History of the English Language. Ed. Haruko Momma and Michael Matto. Chichester: Wiley-Blackwell, 2008. 29--42.
・ Stenbrenden, Gjertrud Flermoen. Long-Vowel Shifts in English, c. 1150--1700: Evidence from Spelling. Cambridge: CUP, 2016.
・ 服部 義弘 「第3章 音変化」服部 義弘・児馬 修(編) 『歴史言語学』朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.47--70頁.
・ 米倉 綽・中村 芳久 (編) 『英語学が語るもの』 くろしお出版,2018年.
対談のなかで服部先生は,大母音推移を構成する個々の音変化が一貫した連鎖反応として生じたわけではないとする「バラバラ説」を支持されつつも,Sapir のいう drift(駆流)の概念を引き合いに出しながら,全体としては大きな音変化の潮流をなしていたと捉える見解を示されました.一方で,現代の英語教育・英語学習の観点から見れば,GVS を一枚岩の現象として整理して捉えることにも十分に教育的利点がある,と柔軟な視点から述べられていたのが印象的でした.
第3回では,服部先生選りすぐりのお薦め英語史書を挙げていただきました.英書と和書の,専門性の高い推薦書です.
・ Mugglestone, Lynda, ed. The Oxford History of English. Oxford: OUP, 2006.
・ Hogg, R. M. and D. Denison, eds. A History of the English Language. Cambridge: CUP, 2006.
・ Fulk, R. D. A Comparative Grammar of the Early Germanic Languages. Benjamins, 2018.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 寺澤 芳雄・川崎 潔 (編) 『英語史総合年表 --- 英語史・英語学史・英米文学史・外面史 ---』 研究社,1993年.
とりわけ『英語史総合年表』の選書にはしびれました.重厚かつ多角的に英語史の歩みを鳥瞰できる名著です.本書は現在でも入手可能ですので,関心を抱いた方はぜひ書棚に揃えてみてください.
服部先生,刺激的なお話を本当にありがとうございました.ぜひ次回は,kendama_player さんも含めて3人で直接お会いして,さらに深くお話ししたいと思いました.ありがとうございました!
heldio/helwa コアリスナーの sorami さんによる『英語語源ハンドブック』に基づいた「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ」シリーズが,回を重ねるごとにますます充実の内容となっています.隔週土曜日に新作が公開されており,8月22日に公開された最新回は,「授業で使える! 中学生向け英語語源クイズ#16~often/和製英語IV~」と題する第16弾です.
今回は全6問と,例によってボリューム満点の構成です.発音の変化に始まり,語形成,数詞の語源,そして恒例の和製英語シリーズへと,バラエティ豊かな話題が展開していきます.あまり細かく紹介するとネタバレになってしまいますので,ここではいくつかの問いを厳選してお伝えします.
まずは,often の t を発音するかどうかという,現代英語の発音をめぐる身近な疑問から幕を開けます.学校では長らく無音とされてきた t ですが,近年ではむしろ発音する話者が増えているとも言われています.規範として教わる発音と,実際に使われている発音とが必ずしも一致しないという事実に触れることは,「発音は一度決まったら変わらない」という思い込みを崩す良いきっかけになるはずです.
続いて,letter から email へと連なる通信手段をめぐる語彙の移り変わりや,接尾辞 -able の働きを問う問題,さらには port という部品を含む単語群を,接頭辞ごとに整理して考えさせる問題が並びます.基本的な語彙の背後に潜む形態論的な規則性に気づかされる,知的好奇心をくすぐる構成です.
後半のハイライトは,数詞 twelve の語源です.ten と「余り」を意味する語の組み合わせに由来するという成り立ちを知ると,現代の10進法とは異なる数え方の名残が,日常的に使う数詞のなかにひっそりと刻み込まれていることに気づかされます.
そして締めくくりは,恒例となった和製英語クイズの第4弾.「リベンジ」「スマート」「マンション」など,すっかり日本語化してしまった外来語的表現を,英語圏で通じる形にどう言い換えればよいかを問う,実践的な8題が用意されています.学校の授業はもちろん,日常会話でもすぐに役立つ内容です.
今回も sorami さんは,「授業の小ネタ,ウォームアップ,グループ活動などに自由に使っていただければ幸いです.ALTの先生を巻き込むのもありですね!」と呼びかけています.印刷してそのまま配布できる pdf 資料も用意されていますので,学校現場ですぐに活用できますね.
sorami さんのクイズ・シリーズの主な典拠となっているのは,刊行から1年2ヶ月ほどが経つ『英語語源ハンドブック』(研究社)です.2ヶ月ほど前の6月30日には物書堂より『英語語源ハンドブック』アプリ版 (iOS) も発売されていますので,ぜひこちらよりチェックしてみてください.
8月9日に,Voicy heldio で「#1897. heldio オープンマイク」と題する配信回をお届けした.
英語史をお茶の間に届けるべく,2021年6月に開始した Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」は,おかげさまで5年を超え,1日も休まず毎朝の配信を続けてこられた.本ブログ「hellog~英語史ブログ」については,2009年5月以来,かれこれ17年以上にわたって毎日更新を継続している.この間,各種メディアでの発信,YouTube「いのほた言語学チャンネル」,雑誌連載,書籍の執筆,市民講座の開講など,英語史の裾野を広げるアウトリーチ活動,すなわち「hel活」 (helkatsu) に注力してきた.
しかしながら,率直に告白すれば,私ひとりの力で毎日休まず新たなコンテンツを生み出し続けることには,物理的・時間的な限界が訪れつつある.近年は各種プロジェクトが目白押しで,日々の発信に追われるあまり,インプットが枯渇し,カラカラの状態になっているのである.アウトプット過多による質の低下は,何より私自身が日々痛感している.heldio について番組の継続を断念するか,あるいは配信頻度を下げるか,悩む日々が続いていた.
そこで heldio について思いついたのが,マイクをコアリスナーの皆さんに開放する「オープンマイク企画」である.折しも Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」や月刊ウェブマガジン Helvillian では,熱心なリスナー(「ヘルメイト」と呼んでいる)の皆さんが主に note などのプラットフォームで自主的なhel活を繰り広げてくださっている.私ひとりで抱え込むのではなく,英語史を愛するリスナーの皆さんに番組制作の一翼を担っていただく体制へと移行できないかと考えたのである.
当初は向こう1,2年をかけた中長期的なマイク委譲計画を思い描いていたのだが,7月下旬に helwa 内で協力を呼びかけたところ,わずか数週間のうちに驚くべきスピードで企画が動き出した.ヘルメイトの皆さんが自発的に対談やインタビューなどの音声コンテンツを次々と制作・提供してくださり,瞬く間にチャンネルを支えていただく体制が整ったのである.この熱気と実行力には,ただただ圧倒され,感謝の念に堪えない.
オープンマイク企画には,大きく3つの狙いがある.第1に,私自身にかかっていた負担を適度に緩和すること.第2に,ヘルメイトの皆さんのフレッシュな熱量と多彩な知見を番組に吹き込むこと.そして第3に,発信者の多様化によってリスナーにとっても飽きのこない,より重層的で魅力的なチャンネルへと進化させることである.
Voicy に代表される音声配信は,本来誰もが発信者となりうるウェブ時代のメディアである.英語史のアウトリーチ活動も,研究者からの一方通行の啓発という段階を終え,コミュニティ全体で楽しみながら知を共有するフェーズに入りつつあると考えている.私自身もメインのパーソナリティとして発信を継続しつつ,ヘルメイトの皆さんとともにこの場をサステイナブルに育てていきたい.日頃お聴きいただいているリスナーの皆さんにも,ぜひコメントなどでオープンマイク企画を応援していただき,さらには helwa への参加を通じてチャンネル制作の輪に加わっていただければ.よろしくお願いします.
近年,学術界をはじめ教育,福祉,医療,文化活動などの現場で「アウトリーチ(活動)」というカタカナ語を頻繁に耳にするようになった.私自身も英語史を広める活動,「hel活」 (helkatsu) を展開するなかで,このアウトリーチという概念を強く意識するようになってきた.本ブログでも「#6161. 『中央評論』の特集「アウトリーチ活動の多様な見方」を読んで」 ([2026-03-10-1]) などで関連する話題に関心を寄せてきた.
しかし,そもそも英単語の outreach とは何なのか.今回はこの単語の意味変化 (semantic_change) と品詞転換 (conversion) の歴史を振り返ってみたい.
動詞としての outreach の歴史は古く,古英語期にまで遡る.接頭辞 out- に基本動詞 reach が結合したもので,きわめて古英語らしい典型的な複合語である.原義としては「渡す,提示する」から始まり,そこから「超える,延伸する」,さらには「手を届かせる,手を伸ばす」へと発展し,比喩的に「手を差し伸べる」という語義を獲得するに至った.なお,後期近代英語期には,句動詞としての reach out も同様に比喩的な語義での使用が見られるようになる.
一方,品詞転換によって生まれた名詞としての用法は,動詞に比べるとぐんと新しいものである.OED (Oxford English Dictionary) によると,名詞用法の初例は1835年のことだ.名詞としての語義の広がりも動詞の発展経路とおおむね軌を一にしており,使われ始めた当初から「届く範囲」という物理的な原義から,比喩的な「手を差し伸べること」に至るまで,幅広い意味で用いられていた.
私たちの「アウトリーチ」に近い語義に接近するのは,19世紀末のことである.1899年以降,「ある組織が,支援や教育のために,あるいは自らの目的を広く伝えるために,それを知らない人々に向けて働きかけをする活動」という特殊な語義を発展させてきた.OED より該当の定義を引いてみよう.
2.b. spec. The activity of an organization in making contact and fostering relations with people unconnected with it, esp. for the purpose of support or education and for increasing awareness of the organization's aims or message; the fact or extent of this activity. (1899--)
そして,20世紀中に,福祉・医療・介護・心理・教育といった幅広い分野でこの「手を差し伸べる」の語義が定着し,形容詞的にも用いられ,outreach programs, a YMCA outreach worker, outreach effort, outreach activity などの表現が現われるようになった.
日本語におけるカタカナ語の「アウトリーチ(活動)」は,英語において後発的に発達したこの名詞・形容詞の語義を近年になって借用したものである.その語感としては,『現代用語の基礎知識2008』の解説が参考になる.そこでは「福祉サービスで規定や通常の限度を超えて手を差しのべようとする活動」と説明されている.アウトリーチ活動の本質は自主性や積極性にあるということだろう.
言ってみれば「誰からも明示的に求められてもいないのに,自ら枠を飛び越えて行なう活動」であり,見方によっては一種の「お節介」に近い性格をもっているとも考えられる.あるいは,利潤を追求しない企業家精神,とも言えるかもしれない.
閉じた領域にとどまらず,まだその価値を知らない人々に向けて積極的に手を伸ばしていくことこそが,現在使われている「アウトリーチ」という語の核心なのだろうと解釈している.意味変化の歴史や用法の広がりをたどってみると,単語の輪郭がより鮮明に見えてくる.

昨今,hel活の熱気が各所で高まりを見せているが,また1つ,まことにありがたく貴重なウェブサイトが誕生した.8月14日,heldio/helwa のコアリスナーでhel活界隈でも精力的に活動されている ari さん さんが,heldio/helwa のファンサイト「Helvillain Heal」を開設してくださった.ari さん,ありがとうございます!
このサイトは,私の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」,およびプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」を応援する有志(= ari さん)によって編集・公開されているポータルサイトである.サイトトップの案内にもある通り,リスナーコミュニティ「Helvillian の中でも,こっそりと行動する Helvillain の館」というコンセプトだそうだ.Helvillian ではなく Helvillain であるところに注目である(ダジャレなのだが,一応これを述べておかないと,微妙すぎて読者が混乱する恐れがある).
サイトを覗いてみると,現時点で大きく分けて2つの主要コンテンツが整理されている
・ Voicy heldio での古英語・中英語音読回へのリンク集:heldio で配信してきた古英語・中英語のテキストを読み上げる「音読回」が,学びやすいように整理されている.素朴に古英語や中英語の音声に触れてみたい学習者にとって,絶好のガイドとなる.
・ 月刊ウェブマガジン Helvillian 各号へのリンク集:有志ヘルメイトの皆さんが制作してくださっている英語史とhel活に関する月刊ウェブマガジン Helvillian について,創刊号から最新号に至るまでの表紙画像および各記事へのリンクがずらりと並んでいる.
過去の記事でも触れてきた通り,Helvillian の毎号の充実ぶりには目を見張るものがある.このようにバックナンバーも含めて一覧・アクセスできる環境を整えていただき,hel活コミュニティ全体にとっても大きな財産となる.まさに「英語史をお茶の間に」広めるhel活の真骨頂だ.
有志ヘルメイトの ari さんによ自発的な広報・アーカイブ活動が,こうして素晴らしい形を取って立ち上がったことに,身近な者として深い感謝と敬意を表したい.このような仲間の情熱に支えられながら英語史の輪が広がっていくのを実感するのは,本当に嬉しい.
このサイトの今後の更なる展開やコンテンツの拡充も,大変楽しみにしている.hellog 読者の皆さんも,ぜひ「Helvillain Heal」を訪問し,ブックマークの上,日々の英語史の学びに活用していただければ.
heldio/helwa コアリスナーの sorami さんによる「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ」シリーズが,抜群の出題センスにより人気を博しています.隔週土曜日に新作が公開されており,8月8日に公開された最新回は第15弾となります.
今回も,日常語彙,現在分詞か過去分詞かという文法に関わる単語語源の問題,和製英語・カタカナ語シリーズ,英語史クイズなど,非常にバランスの取れた構成で飽きさせません.
日常的な英語語彙の話題からスタートし,ドイツ語・オランダ語・イタリア語などとの比較を通じて,とある英単語の語源に迫る問題へと展開していきます.基本語の比較から印欧祖語の系譜にまで思いを馳せさせる流れは見事です.
また,文法項目として重要な interesting と interested の使い分けを,感情誘発動詞の原義から丁寧に紐解く問題や,文房具を中心とした和製英語・カタカナ語のクイズなど,英語学習者が直面しやすいポイントが,今回も巧みに織り交ぜられています.
後半には,新しくシリーズ化されつつある「英語史クイズ」が控えています.英語史クイズとはいっても,季節語という日常的な語彙を話題にしているので,たいへんに取っつきやすい構成になっています.かつての英語において1年がどのように区切られていたのか,そして fall や winter にまつわる語誌など,厳しい猛暑が続く今の季節だからこそ味わい深く感じられる歴史的なトピックが散りばめられています.
作者の sorami さん自身も,毎回推している通り,「授業の小ネタ、ウォームアップ、グループ活動などに自由に使っていただければ幸いです.ALTの先生を巻き込むのもありですね!」とのことなので,皆さん,ぜひ様々な形でクイズをご活用ください.印刷してそのまま配れるPDFファイルも用意されており,現場への気配りも万全です.
sorami さんのクイズ・シリーズの主な典拠となっているのは,刊行から1年2ヶ月ほどが経つ『英語語源ハンドブック』(研究社)です.今年の6月30日に物書堂より『英語語源ハンドブック』アプリ版 (iOS) も発売されていますので,ぜひこちらよりチェックしてみてください.手軽に引けるアプリ版の登場で,さらに身近に語源の世界へアクセスできるようになっています.
今回紹介した第15弾については,heldio 配信回「#1902. 現在分詞と過去分詞 --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズ第15弾」でも案内していますので,ぜひそちらもお聴きいただければ.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

来週末の8月22日(土) 15:30--17:00 に,朝日カルチャーセンター新宿教室にてオンライン講座が開講されます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」の夏期第2回(通算第17回)となります.今回は「riddle を探って古英語原文の世界へ」と題して,「謎」を意味する単語に迫ります.
現代英語の riddle は「謎,なぞなぞ」を意味する単語ですが,英語史・語源学の観点から紐解くと,アングロサクソン人の「読み書き文化」の原点につながる,文字通り謎に満ちた世界が広がっています.今回の講座では,主に3つの切り口からこの単語を解読していきます.
第1のポイントは,riddle と read の語源的関係です.riddle は,動詞 read に接尾辞が付加された派生語にすぎません.古英語の rǣdan (to read) は本来「解釈する;助言する」などを意味していました.つまり,古代人にとって「読む」とは,与えられた暗号や謎を「解読する」行為そのものだったのです.さらに視野を広げて,write (原義は「引っ掻く」),book (ブナの木),rune (秘密・囁き)などの語源もあわせて紹介します.これらの単語の語源をつなぎ合わせていくと,ゲルマン民族が文字や書物,そして読み書き文化をどのように受容し発展させてきたのか,その文化的背景が見えてきます.
第2のポイントとして,(次の第3のポイントを見据えて)古英詩 (Old English poetry) の世界と頭韻 (alliteration) の役割,そしてルーン文字の文化を覗いてみます.先日,私自身が現地で実物を見てきたスコットランド Dumfriesshire の Ruthwell Cross は,古英詩 The Dream of the Rood の断片がルーン文字で刻まれた,8世紀初頭のものと考えられている有名な石碑です.その訪問体験談や写真を紹介しつつ,アングロサクソン人の詩的言語生活の一端を感じてみます.古英詩は現代詩のような脚韻 (rhyme) ではなく,音節頭の子音を揃える頭韻によってリズムを取っていました.この頭韻が,単なる音の装飾にとどまらず,詩の構造や記憶,さらには解読の鍵としていかに決定的な役割を果たしていたかを解説します.
第3のポイントは,古英語文学における「謎詩」 (Riddles) という独特のジャンルの鑑賞です.古英語期には,事物や自然現象が自ら「私は誰でしょう?」と語りかける詩が数多く残されました.今回の講座では,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)の IX. RIDDLES より,(3) Bookworm (Riddle XLVII) を古英語原文で解読してみます.「本を食う虫」を描いた短い詩ですが,頭韻の配置に注意しながら丁寧に読んでいきます.あわせて,かつては「竜;蛇」を指していた worm の意味変化についても取り上げます.
講義資料で原文や文法解説をしっかりサポートしますので,テキストをお持ちでなくても問題ありません.古英語原文に触れたことがない方でも安心してご参加いただけます.
講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.なお,次回(夏期第3回)の日程と内容は次の通りです.
・ 夏期第3回(2026年9月26日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "through" を探って中英語原文の世界へ
皆様のご受講をお待ちしています.
(以下,後記:2026/08/19(Wed))
今回の講座については Voicy heldio でも案内を放送しています.ぜひ「#1907. 8月22日(土)の朝カル講座は riddle を深掘り」をお聴きください.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
本日は,khelf(慶應英語史フォーラム)によるhel活 (helkatsu) の貴重なウェブ上の資産について,お知らせです.
khelf では,2021年度から2025年度にかけての5年間にわたり,春から夏にかけての風物詩的な名物企画として「英語史コンテンツ」(初年度の2021年度は「英語史導入企画」と呼んでいた)という催しを継続してきました.これは,主として khelf に所属する慶應英語史ゼミの現役学部生・大学院生を中心とし,卒業生やその他の関係者も少数加わったメンバーが日替わりで執筆を担当し,英語史に関する様々な話題をウェブ上に公開していくという熱量あふれる企画です.
企画概要や各年度のコンテンツのタイトル一覧については,khelf HP のこちらのセクションにまとめられており,これまで本ブログでも毎年度の恒例行事としてたびたび関連する話題を取り上げてきました.
しかし,ここ1年ほどの間,過去コンテンツへのアクセスについて問題が生じていました.khelf HP 上に掲載されているコンテンツのうち,最新の2025年度分についてはすべてのコンテンツおよびリンクが正常に機能しているものの,2024年度以前の過去のコンテンツへのリンクが切れてしまっていたのです.
このリンク切れの背景には,所属大学が契約していたオンラインストレージのサービス Box が,諸事情により契約打ち切り・運用終了となったという事情がありました.これにより,もともと Box 上に置かれていたファイル群へのリンクが無効化されるに至りました.
幸いコンテンツのデータ自体は散逸することなく,Google Drive 上に退避させておいたため無事でした.しかし,個々のコンテンツファイルの各々に再びリンクを張り直す作業には膨大な手間がかかるため,リンク切れのまま放置せざるを得ない心苦しい状態が続いていました.
このたび,年度単位でのアクセス環境を再整備しました.個別の各コンテンツファイルへの直リンクの完全復元とまではいきませんが,年度ごとの全体フォルダへの共有リンクを新たに公開・設置しました.これにより,過年度の特定のコンテンツをご覧になりたい場合に,khelf HP 上でタイトルと公開年度さえ確認していただければ,該当する年度のフォルダへアクセスして,お目当てのコンテンツにたどり着けるようになりました.
khelf メンバーが知恵と情熱を絞って作成してきた「英語史コンテンツ」は,英語史の素朴な疑問 (sobokunagimon) に答える教育的・啓蒙的な資産であり,英語史をお茶の間に広めるための宝の山です.これが再びみなさんの手元で閲覧可能な状態に戻ったことは,khelf のhel活にとっても大きな一歩であると感じています.
以下に,2021年度から2025年度までの各年度の「英語史コンテンツ」企画について,(1) コンテンツにアクセスできる年度別オンラインフォルダへのリンク,(2) khelf HP 上の公式ページ,(3) hellog での関連記事集へのリンク,の3点を一覧として掲げます.ぜひ過去の名作コンテンツの数々を探索してみてください.
・ 2021年度の「英語史導入企画」
1. 2021年度コンテンツフォルダ(Google Drive)
2. khelf HP 上の公式ページ
3. khelf_hel_intro_2021
・ 2022年度の「英語史コンテンツ50」
1. 2022年度コンテンツフォルダ(Google Drive)
2. khelf HP 上の公式ページ
3. hel_contents_50_2022
・ 2023年度の「英語史コンテンツ50」
1. 2023年度コンテンツフォルダ(Google Drive)
2. khelf HP 上の公式ページ
3. hel_contents_50_2023
・ 2024年度の「英語史コンテンツ50+」
1. 2024年度コンテンツフォルダ(Google Drive)
2. khelf HP 上の公式ページ
3. hel_contents_50_2024
・ 2025年度の「英語史コンテンツ50」
1. 2025年度コンテンツフォルダ(Google Drive)
2. khelf HP 上の公式ページ
3. hel_contents_50_2025
復旧した過年度のコンテンツをきっかけに,新たな学びや素朴な疑問への発見があれば幸いです.今後とも khelf の活動と英語史コンテンツをよろしくお願いします.

1年前の今日,「#5942. 『英語語源ハンドブック』のランディングページ (LP) を作成しました --- 7月29日の重版出来記念」 ([2025-08-03-1]) の記事を公開しました.この1年間,『英語語源ハンドブック』は好評をいただき,ハンドブックをめぐる環境も変化してきました.そこで,本書の特設HPをリニューアルしました.
単なる書籍紹介のための特設HPという枠組みを超えて,アプリ,公式コンテンツ,読者コミュニティ,そして関連書籍が有機的につながり合う『英語語源ハンドブック』エコシステムのポータルサイトへと進化を遂げてのリニューアルとなります.
今回の特設HPの改変・追加ポイントは多岐にわたりますが,特にアピールしたい要点をいくつか紹介します.
・ 物書堂アプリ版(iOS)発売 & 公式無料特典の集約:デジタルならではの検索・コピー機能にご注目ください.さらに本書掲載の4,083語・表現を網羅した「公式索引データ(Excel/PDF)」の無料配布や,最新正誤表へも案内します.
・ 広がる「読者の輪(hel活・教育実践)」のアーカイブ化:刊行後に読者,教育者,研究者の皆さんがウェブ上で展開してくださったコンテンツ群を,カテゴリ整理しました.sorami さんやみーさんによる note 連載,ykagata さん,り~みんさんによる他言語比較,天野優未さん,やるせな語学さん,khelf の寺澤志帆さんらによる専門的・実践的アプローチなど,熱量あふれるhel活の広がりを一覧できます.
・ 学びのロードマップ「英語史の塔 (Tower of HEL)」の新設: 『はじめての英語史』,『英語語源ハンドブック』,『英語語源辞典』,『古英語・中英語初歩』という研究社の英語史4書籍の相互関係を示しました.
・ Amazon カスタマーレビューの掲載:現場の中高英語教員から寄せられた「一生使える虎の巻」といった絶賛の声をはじめ,熱いメッセージを多く掲載しています.
・ メディア・YouTube・講座実績の集約:本書に注目した「ゆる言語学ラジオ」出演回,「いのほた言語学チャンネル」出演回,各種ラジオ出演回,朝日カルチャーセンター新宿教室での講座などを挙げています.
・ モバイル閲覧の完全最適化:スマホやタブレットからでも快適に巡回できるよう,レスポンシブデザインへ刷新しました.
この1年間で本書の周りに生まれた温かい読者の輪と,広がり続ける英語史コンテンツの循環には,感謝の念に堪えません.まさに読者の皆さんとともに作り上げてきたポータルサイトだと実感しています.
新しくなった『英語語源ハンドブック』特設HPを,ぜひ訪問してみてください.アプリ版のチェックや公式索引データのダウンロード,そして本書の通読・活用に向けて,ワクワクするような学びのヒントが見つかるはずです.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
7月28日,有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 8月号が公開されました.通算第22号となります.
まず,編集委員の Galois さんによる素晴らしい表紙デザインが目を引きます.今号の「表紙のことば」を担当されたのは,佐久間さん(helwa のハンドルネーム「無職さん」)です.上海の外灘(ワイタン)に建つ旧中国税関の時計塔を取り上げ,イギリス帝国の領土拡大と英語の世界進出の歴史を重ね合わせて解説してくれています.ロンドンの Big Ben をモデルとし,かつて「ウェストミンスターの鐘」を響かせていた時計塔が,現在では革命歌「東方紅」を奏でているという歴史の皮肉は,まさに英語史が世界史の一部であることを思い出させてくれます.専門家である佐久間さんは,日本歯科医史学会や救急蘇生法教育の歴史に関する記事も寄稿されています,
今号の収載記事も,多種多様で魅力的なラインナップが揃っています.前号に引き続き熱を帯びているのが『なぜさんたんげん』関連の記事です.ari さんによる「英子さんたんげん」や「3単現」関連の記事,しーさんによる「日本語で読もう!『なぜさんたんげん』」,あまねちゃんさんによる「載りそうで載らなかったトピックを想像してみた」シリーズなど,多角的なアプローチで『なぜさんたんげん』を盛り上げています.
語源や英語史の深掘り記事も百花繚乱です.mozhi gengo さんは plaster, pairing, bear などいつもながらに様々な語源を取り上げられていますが,他のヘルメイトのhel活と互いに影響を与え合う話題選びも目立ち,「hel活の輪」を体現しています.同じように,ykagata さんの house や ghost やドイツ語に絡めた多様なコンテンツも,「hel活の輪」を回し続ける動力源です.lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート D」は職人技の域に達していますね.sorami さんの「中学生向け英語語源クイズ」,川上さんの「homework と housework の違い」をはじめとする素朴な疑問系のトピック,みーさんによる「小学生と学ぶ英語史」シリーズなど,教育現場や日常に即したコンテンツが目白押しです.
さらに,Lilimi さんの『古文と漢文』読書記,rei さんの ghost から spirit への「helwa 論」,こじこじ先生によるオリジナル曲の披露,kendama_player さんによる英語史講座報告など,ヘルメイト個々の関心と創造性が炸裂しています.
新刊書,宮嵜 由美・八木橋 宏勇(編)『響き合うことばと社会』(開拓社)を記事で紹介された Grace さんは,「helwa のあゆみ」も執筆されています,北千住オフ会での Baugh and Cable 精読会や,急遽開催され大盛況となった「ダブリン・ギネス収録会」の熱気が記録されています.
そして,研究者論や helwa 論にも関心の強い umisio さんによる「編集後記」は必読です.井上逸兵先生の「ゆる言語学ラジオ」出演に端を発した酷暑の「ボケ」大ブームと,ari さんの極上 note 記事「青椒肉絲の美味しい店」をめぐりリスナーや私の大混乱をユーモアたっぷりに語ってくれています.
今号の目次を取りまとめてくださった Lilimi さん,そして編集委員の Galois さん,Grace さん,umisio さん,本当にありがとうございました.
hellog 読者の皆さんも,ぜひ Helvillian 8月号を開いて,この熱気あふれる学びの場を体験してみてください.そして,この熱いhel活の輪に加わりたいと思われた方は,ぜひ Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」 へお越しください.その日からあなたもヘルメイトです!
今朝の Voicy heldio にて「#1888. deer と animal --- 『英語語源辞典』読み解きシリーズ by 寺澤さん&lacolacoさん」を配信しました.前回の beast 編に対応する hellog 記事「#6301. beast を『英語語源辞典』で読み解く by 寺澤志帆さん&lacolacoさん」 ([2026-07-28-1])) に続く,『英語語源辞典』 (= KDEE) 読み解きシリーズの後半戦となります.
今回も khelf(慶應英語史フォーラム)の寺澤志帆さんと,heldio/helwa コアリスナーの lacolaco さんによる対談形式でお届けしています.研究社さんのご許可のもと,今回の精読対象である2語の辞典項目画像を以下に掲載します.

今回の後半戦は,beast の記事の白ダイヤ(注釈部)に突如現れた2つの重要語 deer と animal へと接続・深掘りしていく展開となりました.
まず,lacolaco さんがリード役となり deer の項目を読み解いていきます.古英語の本来語 dēor は,もともと一般的な「動物」を意味していました.それが中英語期にフランス語から入ってきた beast に押され,やがて「鹿」という特定の動物へと語義が特殊化していった経緯が紐解かれます.lacolaco さんの精読を受け,寺澤さんが補足やコメントを加える形で解説と議論が深まっていきます.
後半では,寺澤さんがリード役を務めて animal の項目を精読していきます.ラテン語 anima 「空気,息,命,魂」に由来するこの語が,16世紀の近代英語期に(再)導入され,やがて beast に代わって「動物」の代表表現の座に就いていくプロセスの記述を読み解きます.その後,お二人による beast, deer, animal 全体を俯瞰した総合的なディスカッションへと発展していきます.意味変化が実際にはストレートな過程ではなく,複雑な現象であるという重要な洞察も得られました.
「本来語 deer > フランス借用語 beast > ラテン借用語 animal」という勢力図の遷移と意味変化のグラデーションが,辞書記述を通じて立体的に浮かび上がってきます.「動物」とはいったい何なのか,という悩ましい問いも立ち上がってきました.解説の最後で突如現れた古英語の家畜を表す単語 nēat に,お二人が「これは何だ?」と困惑する一幕もあり,精読のライブ感が伝わってきます.
なお,lacolaco さんはご自身の note 過去記事でで deer と animal について整理されていますので,合わせてお読みください.
・ 「英語語源辞典通読ノート D (deduce-deictic)」
・ 「英語語源辞典通読ノート A (angle-animal)」
語源辞典を1項目ずつ丁寧に読み解くことで,単なる単語の暗記を超えた英語史のドラマが立ち現れてきますね.ぜひお手元に『英語語源辞典』をご用意の上,または本配信をきっかけに1部入手していただき,この知的な冒険の音源をお楽しみください!

・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
heldio/helwa コアリスナーの sorami さんによる「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ」シリーズが人気です.隔週土曜日に新作が公開されていますが,今日は7月25日に公開された第14弾を紹介します.
今回も,授業のウォームアップや親子の雑学タイム,さらには脳トレ(!?)にそのまま活用できる充実したラインナップとなっています.テーマは,意味が似ていて紛らわしい英単語の区別,和製英語の第2弾,そして数詞と不定冠詞 a/an にまつわる語源問題です.
前半では,put on と wear の「動作」と「状態」の違い,日本語では様々な動詞に訳し分けられる wear の万能性,さらには large と big の客観/主観のニュアンスの違いや,laugh と smile の対比など,英語学習者が直面しやすい類義語・類義表現の使い分けが丁寧に扱われています.
続く中盤では,日本語のある乗り物に由来する rickshaw のような英語化された日本語単語のトピックや,「ワイシャツ」「SNS」「ドンマイ」といった英語圏では通じにくい和製英語・カタカナ語を自然な英語でどう表現するかという実践的なクイズが並びます.
そして後半のハイライトは,数にまつわる語源問題です.only, alone, lonely, between の中に潜む数詞の形跡を探る問いから,不定冠詞 a/an が数詞 one (古英語 ān)からどのように分化・発達したかという英語史の核心へとつながっていきます.母音・子音の環境による n の脱落について,単なる発音の便宜という誤解を解き明かす歴史的事実が紹介されており,まさに heldio の初回「#1. なぜ A pen なのに AN apple なの?」と響き合う内容となっています.
sorami さんのクイズ・シリーズの主な典拠となっているのは,刊行から1年1ヶ月ほどが経つ『英語語源ハンドブック』(研究社)です.1ヶ月ほど前の6月30日に物書堂より『英語語源ハンドブック』アプリ版 (iOS) も発売されていますので,ぜひこちらよりチェックしてみてください.
(以下,後記:2026/08/02(Sun))
今回紹介した第14弾については,heldio 配信回「#1890. 類義語,和製英語,数詞 --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズ第14弾」でも案内していますので,ぜひそちらもお聴きください.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
今朝の Voicy heldio にて「#1885. beast --- 『英語語源辞典』読み解きシリーズ by 寺澤さん&lacolacoさん」を配信しました.先日の「#6298. 好評のうちに完結 --- heldio 『英語語源辞典』読み方シリーズ bear 編」 ([2026-07-25-1]) が好評だったことを受け,heldio での『英語語源辞典』 (=KDEE) の読み解きシリーズを本格的に継続することにしました.
今回も解説を担当してくれるのは,khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバーで「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」を日々連載中の寺澤志帆さんです.そして,もう一方,強力な助っ人にもご参加いただきました.heldio/helwa コアリスナーで「英語語源辞典通読ノート」を執筆されている lacolaco さんです.KDEE 通読・精読のトップランナーのお二人による対談という,実に豪華で魅力的なコラボレーションが実現しました.
今回注目した単語は beast です.研究社さんのご許可のもと,該当する辞典項目を画像として以下に掲載していますので,ぜひ画像を眺めながら,またお手元に辞書がある方は該当ページを開きながら,じっくりお聴きいただければと思います.

beast の項目の精読・解説は,英語史の深さとおもしろさが凝縮された内容となっています.英語史における初出は1200年より前とされる中英語の文献 Ancrene Riwle に遡ります.まず注目すべきは語義の記述順です.KDEE では「動物」が最初にあがり,続いて「獣;野獣」と記載されています.一般的な英和辞典とは異なり,KDEE では歴史的に古く用いられた意味の順に配列されているため,beast は英語に入ってきた当初,現在の animal に相当する一般的・広義の「動物」を意味していたことが分かります.
語源としては,中英語の best(e) から大母音推移 (gvs) を経て現代の発音・綴字に至っています.この単語自体は古フランス語 beste (現代フランス語 bête)からの借用であり,それは俗ラテン語 *besta(m) に遡ると考えられ,古典ラテン語 bēstia(m) に対応します.対談では,俗ラテン語(話し言葉)と古典ラテン語(書き言葉)を結ぶ「=」記号の持つ深い意味合いや,凡例の読み解きをめぐり,音源を聴いた私も大いに唸らされる精密な議論が交わされました.
さらに興味深いのは,beast をめぐる意味変化と「取って代わる関係」のドラマです.beast はもともと古英語の本来語 dēor (現代の deer)に取って代わって一般的名称「動物」の座に就きました.しかし近代英語期になると,今度はラテン語由来の animal にその座を追われ,自身の語義は「野獣,獣」へと限定・縮小していったのです.1611年の近定訳聖書では,まだこの過渡期の様相,すなわち一般の「動物」と「野獣」の両義で使われている状態が観察できます.
なお,おおもとの印欧祖語としては *dhwes- (息をする)にさかのぼる説も示唆されていますが,これは animal の語根の意味「息をするもの」とも響き合い,言語のロマンを感じさせます.
語源辞典の記号ひとつにまで目を配る精密な読み解きと,そこから広がる言語変化のダイナミズムを,ぜひ音声でお楽しみください.今回の配信は beast をめぐるお二人の対談の前半戦となりますので,近日公開予定の後半戦もお楽しみに!
また,寺澤さんの直接の記事「386. beast ―『英語語源辞典』読み解き解説第2弾―」もお読みください.

・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

9ヶ月前に私が開設した,私の周囲に集まってくる英語史コンテンツのポータルサイト The HEL Hub (helhub) は,この hellog よりも地味であまり知られていないのですが,強力なポータルです.開設時の記事「#6028. hel活の新たな基地が完成 --- ポータルサイト「The HEL Hub」」 ([2025-10-28-1]) をご参照ください.
私は「英語史をお茶の間に」をモットーに英語史を広める活動「hel活」 (helkatsu) を展開していますが,このhel活に賛同してくれる仲間がたくさんいます.khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバー,Voicy heldio から派生したプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」のメンバー,その他の研究者の仲間たちです.このような賛同者の方々のことを,親しみを込めて「ヘルメイト」 (halmate) と呼んでいます.
このヘルメイトの皆さんの日々のhel活 --- 主に note などウェブ上のプラットフォームでのコンテンツの発信 --- の勢いが,この1年間ほどをみても,明らかに増してきています.note 上の #hel活 タグを有する記事は,現時点で2040件を超えています.
上記の helhub は,日々ヘルメイトや私自身の手により公開される英語史関連コンテンツに関する情報を一元化したいという趣旨で作ったページです.具体的には,各ヘルメイトの発信基地の RSS から,数時間に1度ほど,半自動で最新情報を拾ってきて,新着情報を更新しています.コンテンツは常時どんどん流れていっており,私も追いついていけないほどのスピード感です.
さて,今日ご紹介したいのは,この私の周囲の「hel活まとめサイト」ともいえる helhub 自体の RSS フィード です.こちらを RSS リーダーなどに登録していただくと,「英語史の話題が一日中流れ続ける」ということの意味が,実感できるのではないかと思います.四六時中,誰かが英語史に直接・関節にかかわる何かを発信していることに驚くはずです.
私自身が発信している hellog や heldio もさることながら,ヘルメイトの皆さんの自主的な探究心と発信力の高さには驚かされるばかりです.専門的な語源解説から,小中学生向けの易しい英語史,マニアックな文法・綴字の考察,さらにはクイズ企画まで,その切り口の多才さには脱帽します.
英語史は,決して大学や学会のなかに閉じこもった学問ではありません.こうして多様な人々が日々言葉の歴史をおもしろがり,語り合う文化が着実に根付いてきています.「英語史をお茶の間に」が,現実のものとなりつつあることを,この RSS のフィードが物語っています.
最近おもしろい読み物はないかな,英語(史)の知識を深めたいな,と思っている方は,ぜひ The HEL Hub を定期的にご訪問ください.そして,日常的に英語史の風を感じたい方は,helhub の RSS フィード をご自身の RSS リーダーに登録してみてください.日常のタイムラインに,怒涛のように英語史の話題が流れ込んでくる刺激的な体験をお約束します.
最後に,helhub とは別に,有志ヘルメイトによる編集委員会が,ヘルメイト皆の note 上でのhel活を月に一度まとめてくださっている「月刊ウェブマガジン Helvillian」という媒体もあります.helhub とも関連が深いので,ぜひこちらもフォローしていただければ.

6月10日(水)の『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版)の刊行から,早くも6週間が経ちました.おかげさまで,発売前増刷に始まり,現在も全国の書店で第2刷が展開されるなど,大変大きな反響をいただいております.読者の皆様,そして日々盛り上げてくださっているヘルメイトの皆さん,ありがとうございます.
さて,本日は刊行と同時に立ち上げた『なぜさんたんげん』特設HPについて改めてご紹介します.本書特設サイトとしてスタートしたこの Web ページですが,発売後のこの1ヶ月あまり,ほぼ毎日にわたってコンテンツを更新・追加してきた結果,単なる新刊紹介の域を超え,文字通り『なぜさんたんげん』を取り巻く公式ポータルサイトへと進化を遂げています.
サイト上のアクセスカウンターも,本記事の執筆時には2493アクセスを記録しており,連日多くの方にお越しいただいています.改めて,現在の特設HPがどのような充実した構成になっているのか,その見どころをご案内します.
1. 豪華陣容による反響・推薦の声:英語史研究者の寺澤盾先生(青山学院大学教授,東京大学名誉教授)からお寄せいただいた特別寄稿レビューをはじめ,杏林大学の倉林秀男先生による4連スレッド・ロングレビュー,慶應義塾大学の川原繁人先生,九州大学の内田諭先生,上智大学の小河舜先生といった専門家による熱い推薦コメントを掲載しています.さらに,SNS や note,ブクログ等で寄せられた読者の皆さんの生の声を凝縮して掲載しています.
2. 連動メディア・コンテンツへのリンク:著者自身による本文の公式朗読音声ページへのリンクのほか,NHK出版編集者の田中菜乃香さんとの Voicy 対談全7回,リスナー川上さん企画「聞かせて!『なぜさんたんげん』のなぜ」シリーズ,さらには在外の著者による現地からの最新 YouTube ミニ動画など,本と立体的に連動する音声・動画コンテンツへワンクリックでアクセスできます.
3. 全目次 & インテリジェントリアルタイム検索機能:本書に詰め込まれた24の疑問とすべての章・節・小見出しを完全網羅.ページ上の検索窓にキーワード(例:「屈折」「マジックe」「語順」など)を入力すると,瞬時に該当するトピックが絞り込まれる便利なシステムを実装しています(←生成AIを用いて密かに実装しているのですが,ほとんど知られていません).
4. 「24の疑問・総選挙」最終結果:発売前に実施し,投票総数96件を集めた Slido 総選挙の確定順位を全公開しています.堂々1位の「なぜ3単現の s をつけるのか」から,予想外の健闘を見せた「Z のミステリー」まで,読者のモヤモヤ度が一目でわかります.
5. なぜさんたんげん目撃マップ & 全国書店棚ギャラリー:読者の皆様から寄せられた全国各地の目撃情報をもとに作成した Google Map (すでに100ピン近く立っています)と,撮影許可をいただいた全国の書店様の愛あふれる売り場写真をズラリと展示しています.すでに50枚以上の書棚写真が掲載されています.
6. 授業用「英語史無料レジュメ」& 店頭用POPポスター配布:全国の中学・高校・大学の先生方が授業や学年通信でそのまま配れる特製 PDF レジュメ第1弾(「なぜ3単現の s をつけるのか」)や,書店員様向けの印刷用販促ポスター(A4/B5対応PDF/PNG)を無料配布しています.
『なぜさんたんげん』は,本を開いて読むだけでも完結する1冊ですが,この特設HPを経由して,読者の皆さんの感想,著者による音声や動画のコンテンツ,全国の書店の様子とつながることで,何倍も深く立体的に体験できる「開かれた本」となっています.
まだ特設サイトをご覧になっていない方は,ぜひ一度覗いてみてください.そして,ぜひ周りの英語学習者や先生方,本好きのご友人にも,このポータルサイトのリンクをシェアしていただけますと幸いです.
学校英語の「呪文」の向こう側にある驚くべき歴史の物語を,一緒に目撃していきましょう!
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
標題の記事が掲載されていることを heldio リスナーの ykagata より教えていただき,記事全文を読んでみました.記事のリード文は次の通りです.
大学などの研究者がポッドキャストを配信する動きが広がっている。高度な内容を平明に伝える番組にはファンも付く。専門知の伝達チャネルとして音声メディアが存在感を増している。」
記事は,犯罪学・刑事政策をテーマとする丸山泰弘さん(立正大学教授)のポッドキャストチャンネル「丸ちゃん教授のツミナハナシ」の紹介に始まり,研究者によるいくつかのポッドキャストが言及されていきます.その他,記事には「研究者がパーソナリティの番組」の一覧表が掲げられているのですが,そのトップに私のチャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」が挙げられており,驚きました.ありがたいことです.

記事は次のように締めくくられています.
音声広告会社オトナル(東京・中央)の調査では月1回以上ポッドキャストを聴く人の割合は25年に18%で、増加傾向が続く。アカデミックナポッドキャストはこれからさらに広がっていきそうだ。
この記事を読んで,そして heldio やそのプレミアム版「英語史の輪 (helwa)」の音声配信に日々携わっている身として,とても感慨深いものがあります.「知の伝達,活字から声へ」という視点は,長年目指してきた「英語史をお茶の間に」というモットーの実現とも深く関わってくるからです.
活字離れが叫ばれる現代において,文字情報としての本ブログ「hellog~英語史ブログ」を毎日更新し続ける一方で,2021年からは毎朝の音声配信 heldio を開始しました.これは私にとってもひとつの大きな実験でした.今では,文字による深い解説と,声による平明で血の通った解説.今では,この2つのメディアは,決して対立するものではなく,お互いを補完し合う強力なペアになり得るという確信があります.
実際,heldio のリスナーコミュニティであるヘルメイトの皆さんとの繋がりや,そこから生まれる様々な「hel活」 (helkatsu) は,まさに「声」のメディアが媒介となって生まれたものです.音声を通じて,学問に近づくためのハードルを下げ,双方向の知的コミュニケーションの触媒になっているのです.
専門知をアカデミアの内部だけに閉じ込めておくのではなく,いかにして社会へアウトリーチしていくか.これは現代の研究者に課された重要な課題です.ポッドキャストというパーソナルで親密なメディアは,そのための最も強力な武器のひとつと言えます.
これからも,hellog による「文字」の蓄積と,heldio による「声」のダイナミズムの両輪で,英語史の魅力を発信し続けていきます.読者の皆さん,リスナーの皆さん,引き続きお付き合いのほど,よろしくお願いします.
ykagata さんによる7月16日公開の関連 note 記事「日本経済新聞が紹介した7つの「研究者配信のポッドキャスト」まとめ」もお読みください.
先日「#6278. 「居酒屋KKH」 --- 『英語語源ハンドブック』発売1周年記念のオンライン対談」 ([2026-07-05-1]) で話題にしたとおり,6月18日に『英語語源ハンドブック』(研究社)が刊行されて1年となり,6月30日には物書堂さんより『英語語源ハンドブック』アプリ版も発売されました(アプリ版利用は現時点でiOS ユーザーのみ).
このような節目のタイミングに,冊子版・アプリ版を普段からご愛用いただいているヘビーユーザーの方々に,この1年間ハンドブック利用の感想をうかがえればという趣旨で,先日,Voicy heldio 対談回を設定しました.司会は,heldio ではお馴染みの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)にお願いしました.7月14日の heldio で「#1871. 『英語語源ハンドブック』(冊子版・アプリ版)の使用感をヘビーユーザーの皆さんに聞いてみました」として配信していますので,アーカイヴよりお聴きください.以下は対談回の要旨です.
対談の冒頭では,何といってもアプリ版の登場によって検索の利便性が飛躍的に向上したことが大きな話題となりました.毎日 note でハンドブックを元に記事を執筆されているみーさんは,冊子版のみでは出先での執筆の際に不便を感じることがあったようですが,アプリ版の導入によっていつでもどこでも参照できるようになり,まさに「必携の書」として使い倒しているとのことです.物書堂さんのアプリらしく,『英語語源ハンドブック』で調べた後にそのままワンタップで『ジーニアス英和辞典』のような他の辞書へポンとジャンプできる参照機能や,解説文中の「グリムの法則」といった専門用語から関連箇所へ直接飛べるジャンプ機能の快適さについても熱く語っていただきました.さらに,デジタルならではの利点として,表や記述をそのままコピペして note の参照として取り出せる点も,アウトプットを継続するユーザーにとってはたいへん有益のようです.
うろ覚えの状態で検索する際の「全文検索機能」の強力さについては,しーさんから,地の文のキーワードまで引っかかるので,なんとなくこの辺りにあったという項目からでも探しやすく,人間の記憶に優しい仕様である,との実践的な評価をいただきました.実は私自身は Android ユーザーであるため,まだアプリ版を体験できていないもどかしさを抱えつつも,もしこのような利便性が『英語語源ハンドブック』のみならず『英語語源辞典』のほうでも得られれば,情報量の多さゆえに完全に「語源の森」から抜け出せなくなって迷子になってしまうのではないかと,嬉しくもぞっとするような想像をめぐらせた次第です.
また,英語教師としての視点からユニークなレビューを寄せてくださったのが ari さんです.ari さんは,画面を自由に拡大できる視覚的な利便性に加え,本ハンドブックに載っているかどうかを,自分が授業で話す内容が一般的な範囲か,あるいはそれ以上の趣味の領域に踏み込んでいるかを見極めるための試金石として活用しているといいます.さらに,地方の書店をめぐって冊子版が2刷か3刷かなどの状況を独自に調査していた経験から,アプリ版であればどこにいても常に最新の記述が手元に届くという,新しい角度からのメリットも指摘されました.
一方で,アプリ版の引きやすさが際立つ一方で,冊子版がもつ特有の価値についても深い議論が交わされました.yuz さんからは,-fy などの接尾辞をもつ単語を検索して派生語を一網打尽にできるのは電子ならではの楽しさ,というニッチな使い方が紹介されましたが,しーさんや yuz さんが口を揃えるのは,パラパラとめくりながら余白に書き込みしていけるという,紙の本ならではの使い心地のよさです.ハンドブックは,一般的な語源辞典と違って基本1000語に絞り込んで読み物として作られているため,最初からアプリだけで入るよりも,紙でじっくりと通読して全体のネットワークを頭に入れてからアプリの全文検索を活用するほうが,そのありがたみをより深く実感できるのかもしれない,と感じました.
あまねちゃんからは,本ハンドブックを読むことで初めて知った知識の数々 --- たとえば winter がかつては年(歳)を数える単位であったことや,have と catch が実は同根語であることなど --- が具体的に挙げられ,見出し語こそ基本語でありながらも,縦と横のつながりによって英語史の深みへのめり込める格好のジャンプ台になっているとの嬉しいコメントをいただきました.専門家の立場から日々『英語語源辞典』を読み込んでいる寺澤志帆さんからも,専門書特有の略記号や前提知識の壁を,専門家が苦心して噛み砕いて展開したのが本ハンドブックであり,両者を見比べることで語彙のつながりがより良く見えてくるという評価をいただきました.
対談の締めくくりとして,orangemorishita さんからは,紙の辞典におけるレイアウトの完成度を電子化する際のノウハウや,媒体の機能性に精通したエキスパートの必要性,そして何より老眼が進む世代にとっての拡大機能のありがたみについてもユーモアを交えて語っていただきました.
結論としては,司会の Taku さんや著者陣の思いと同じく,ぜひ冊子版とアプリ版の両方を手に入れて,それぞれの特徴を活かして使い倒していただきたい,ということに尽きます.
さて,『英語語源ハンドブック』アプリ版は通常価格3,800円のところ,発売日より3週間,つまり明日7月21日(火)までは「初回セール期間」として,2,800円(26%オフ)とお得になっています.この機会に,ぜひアプリ版のハンドブックも入手いただき,使い倒していただければと思います.商品の詳細はこちらよりどうぞ.
今後も冊子版・アプリ版ともにご愛読いただけますよう,よろしくお願いします.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
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