hellog〜英語史ブログ     ChangeLog 最新     カテゴリ最新     1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 次ページ / page 1 (12)

helkatsu - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2026-07-20 00:41

2026-07-20 Mon

#6293. 皆さん『英語語源ハンドブック』(冊子版・アプリ版)をどのように使っていますか? [notice][hee][review][hel_education][helkatsu][link][voicy][heldio][kdee]



 先日「#6278. 「居酒屋KKH」 --- 『英語語源ハンドブック』発売1周年記念のオンライン対談」 ([2026-07-05-1]) で話題にしたとおり,6月18日に『英語語源ハンドブック』(研究社)が刊行されて1年となり,6月30日には物書堂さんより『英語語源ハンドブック』アプリ版も発売されました(アプリ版利用は現時点でiOS ユーザーのみ).
 このような節目のタイミングに,冊子版・アプリ版を普段からご愛用いただいているヘビーユーザーの方々に,この1年間ハンドブック利用の感想をうかがえればという趣旨で,先日,Voicy heldio 対談回を設定しました.司会は,heldio ではお馴染みの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)にお願いしました.7月14日の heldio で「#1871. 『英語語源ハンドブック』(冊子版・アプリ版)の使用感をヘビーユーザーの皆さんに聞いてみました」として配信していますので,アーカイヴよりお聴きください.以下は対談回の要旨です.
 対談の冒頭では,何といってもアプリ版の登場によって検索の利便性が飛躍的に向上したことが大きな話題となりました.毎日 note でハンドブックを元に記事を執筆されているみーさんは,冊子版のみでは出先での執筆の際に不便を感じることがあったようですが,アプリ版の導入によっていつでもどこでも参照できるようになり,まさに「必携の書」として使い倒しているとのことです.物書堂さんのアプリらしく,『英語語源ハンドブック』で調べた後にそのままワンタップで『ジーニアス英和辞典』のような他の辞書へポンとジャンプできる参照機能や,解説文中の「グリムの法則」といった専門用語から関連箇所へ直接飛べるジャンプ機能の快適さについても熱く語っていただきました.さらに,デジタルならではの利点として,表や記述をそのままコピペして note の参照として取り出せる点も,アウトプットを継続するユーザーにとってはたいへん有益のようです.
 うろ覚えの状態で検索する際の「全文検索機能」の強力さについては,しーさんから,地の文のキーワードまで引っかかるので,なんとなくこの辺りにあったという項目からでも探しやすく,人間の記憶に優しい仕様である,との実践的な評価をいただきました.実は私自身は Android ユーザーであるため,まだアプリ版を体験できていないもどかしさを抱えつつも,もしこのような利便性が『英語語源ハンドブック』のみならず『英語語源辞典』のほうでも得られれば,情報量の多さゆえに完全に「語源の森」から抜け出せなくなって迷子になってしまうのではないかと,嬉しくもぞっとするような想像をめぐらせた次第です.
 また,英語教師としての視点からユニークなレビューを寄せてくださったのが ari さんです.ari さんは,画面を自由に拡大できる視覚的な利便性に加え,本ハンドブックに載っているかどうかを,自分が授業で話す内容が一般的な範囲か,あるいはそれ以上の趣味の領域に踏み込んでいるかを見極めるための試金石として活用しているといいます.さらに,地方の書店をめぐって冊子版が2刷か3刷かなどの状況を独自に調査していた経験から,アプリ版であればどこにいても常に最新の記述が手元に届くという,新しい角度からのメリットも指摘されました.
 一方で,アプリ版の引きやすさが際立つ一方で,冊子版がもつ特有の価値についても深い議論が交わされました.yuz さんからは,-fy などの接尾辞をもつ単語を検索して派生語を一網打尽にできるのは電子ならではの楽しさ,というニッチな使い方が紹介されましたが,しーさんや yuz さんが口を揃えるのは,パラパラとめくりながら余白に書き込みしていけるという,紙の本ならではの使い心地のよさです.ハンドブックは,一般的な語源辞典と違って基本1000語に絞り込んで読み物として作られているため,最初からアプリだけで入るよりも,紙でじっくりと通読して全体のネットワークを頭に入れてからアプリの全文検索を活用するほうが,そのありがたみをより深く実感できるのかもしれない,と感じました.
 あまねちゃんからは,本ハンドブックを読むことで初めて知った知識の数々 --- たとえば winter がかつては年(歳)を数える単位であったことや,havecatch が実は同根語であることなど --- が具体的に挙げられ,見出し語こそ基本語でありながらも,縦と横のつながりによって英語史の深みへのめり込める格好のジャンプ台になっているとの嬉しいコメントをいただきました.専門家の立場から日々『英語語源辞典』を読み込んでいる寺澤志帆さんからも,専門書特有の略記号や前提知識の壁を,専門家が苦心して噛み砕いて展開したのが本ハンドブックであり,両者を見比べることで語彙のつながりがより良く見えてくるという評価をいただきました.
 対談の締めくくりとして,orangemorishita さんからは,紙の辞典におけるレイアウトの完成度を電子化する際のノウハウや,媒体の機能性に精通したエキスパートの必要性,そして何より老眼が進む世代にとっての拡大機能のありがたみについてもユーモアを交えて語っていただきました.
 結論としては,司会の Taku さんや著者陣の思いと同じく,ぜひ冊子版とアプリ版の両方を手に入れて,それぞれの特徴を活かして使い倒していただきたい,ということに尽きます.
 さて,『英語語源ハンドブック』アプリ版は通常価格3,800円のところ,発売日より3週間,つまり明日7月21日(火)までは「初回セール期間」として,2,800円(26%オフ)とお得になっています.この機会に,ぜひアプリ版のハンドブックも入手いただき,使い倒していただければと思います.商品の詳細はこちらよりどうぞ.
 今後も冊子版・アプリ版ともにご愛読いただけますよう,よろしくお願いします.

 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-19 Sun

#6292. 7月25日(土)の朝カル講座「king を探って古英語原文の世界へ」 [asacul][notice][kdee][hee][etymology][hel_education][helkatsu][heldio][oe][kochushoho][anglo-saxon_chronicle][alfred][viking][suffix][indo-european][word_family][link][voicy][kdee][hee][kenning][beowulf][haplology][phonemicisation][lexicology][lexical_stratification]


asacul_20260725.png



 7月25日(土) 15:30--17:00 に,今年度4回目となる朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座が開かれます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」としては通算第16回目の講義となります.今回はking を探って古英語原文の世界へ」と題して,この大物単語に迫ります.
 現代英語の king は一見すると素朴な日常語ですが,英語史・語源学の観点からその歴史を紐解くと,実にダイナミックで奥深い世界が広がっています.今回の講座では,主に3つの切り口からこの「王」を意味する単語を解読していきます.
 第1のポイントは,印欧語根 *gen(e)- から生み出される広大な語彙の世界です.実は king は,kin (親族)や kind (種類;親切な)などと共通の大きな語根に遡る派生語です.いつものように『英語語源辞典』 や『英語語源ハンドブック』 などの記述を突き合わせながら,印欧語根にまで遡る壮大な単語の家族のつながりを眺めていきます.接尾辞 -ing の歴史についても深掘りします.この辺りは『英語語源辞典』読み方講座に近い内容となります.
 第2のポイントは,古英語期に花開いた「王」の隠喩的複合語,いわゆるケニング (kenning) の世界です.古英語の英雄詩『ベオウルフ』 (beowulf) などを覗くと,王を単に cyning ("king" の古英語形)と呼ぶだけでなく,「指輪をくれる者」 (bēagġyfa) や「黄金の友」 (goldwine) といった詩的な数々の類義語で表現していました.文学的に爛熟した多彩な語彙の魅力を味わいます.
 第3のポイントは,king 周辺の語彙論と同単語の語形変化です.なぜ kingqueen はノルマン征服以降の大量のフランス借用語の波に置き換えられずに生き残ることができたのか,という問題にも触れます.また,かつての古英語の綴字 <c> から中英語の <k> への変化や,軟口蓋鼻音の音素化といった,綴字と発音のダイナミックな変化についても解説します.
 講義の後半には,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)に所収の古英語散文的スト『アングロサクソン年代記』より,アルフレッド大王 (King Alfred) がデーン人(ヴァイキング)との戦いに備えているシーンの短い抜粋部分を読んでみます.丁寧に解説していきますので,古英語初心者の方でも心配要りません.また,上掲書をお持ちでなくても講義資料で関連箇所を引用しますのでご安心ください.
 講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.なお,次回以降の日程と内容は次の通りです.

 ・ 夏期第2回(2026年8月22日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "riddle" を探って古英語原文の世界へ
 ・ 夏期第3回(2026年9月26日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "through" を探って中英語原文の世界へ

 いずれの講座につきましても,多くの方の受講をお待ちしております.


 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-18 Sat

#6291. 和製英語と語順(文法)にまで話題が及んできました --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ第13弾 [note][hee][helkatsu][hel_education][quiz][waseieigo][word_order][nazesantangen]



 heldio/helwa コアリスナーの sorami さんによる『英語語源ハンドブック』に基づいた「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ」シリーズが,快進撃を続けています.隔週土曜日に新作が公開されることになっており,最新回は1週間前の7月11日に公開された第13弾「授業で使える! 中学生向け英語語源クイズ#13~和製英語・語順~」です.
 今回公開された第13弾は,タイトルにもあるように「和製英語」と「語順」という,中学生にとっても身近でありながら英語史的にも奥深いテーマにまで話題が及んできました.ネタバレにならない程度にクイズ問題のラインナップを要約します.
 まずは日常単語の語源を取り上げての軽いジャブから始まり,句動詞のクイズへと展開します.そして,今回の注目ポイントの1つとして,私たちが日常的に使っているカタカナ語の意外な罠を突く和製英語の謎が問われます.さらに,意味変化や語彙交替という英語史の色彩の濃いトピックに移り,最後には英語の語順の歴史的変遷へと導く文法的な問いに至ります.全体が見事なグラデーションで構成されています.単純な単語問題から,英語の統語構造の背景にまで自然と知的好奇心を誘う流れになっており,クイズ職人としての sorami さんの手腕に今回も感心しました.
 とりわけ語順に関する話題は,英語史における最重要テーマの1つです.現代英語は語順が厳格に固定された言語ですが,かつての古英語期には名詞の格変化が豊かだったため,語順は比較的自由でした.歴史の過程で屈折語尾が衰退した結果,語順が文法機能を担うようになり,現代のような固定語順が確立していったのです.このあたりの語順や文法をめぐるダイナミックな変化については,先月刊行されたばかりの私の新刊書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版)でも詳しく解説しています.今回の sorami さんのクイズと合わせて本書をお読みいただくことで,「英語のなぜ」の背景にある歴史のロマンがより立体的に見えてくるはずです.本書もどうぞよろしくお願いします.
 いつもの通り,sorami さんの note 記事では,「授業の小ネタ,ウォームアップ,グループ活動などに自由に使っていただければ幸いです.ALTの先生を巻き込むのもありですね!」と述べられています.全国の英語教員の皆さん,ぜひこのクイズを実際の学校の授業などで活用してみてください.ALTの先生を巻き込んでペアワークやグループ活動に導入すれば,教室が大いに盛り上がることは間違いありません.
 出題や解説にあたっては,原則として『英語語源ハンドブック』に依拠しているということですので,その点もご安心ください.専門的な知見に基づいた信頼できるクイズだからこそ,自信をもって教材としてお使いいただけます.この素晴らしいクイズシリーズが,さらに多くの教育現場へと広がっていくことを願っています!
 第13弾については,先日の Voicy heldio でも取り上げました.ぜひ「#1870. 和製英語と語順にフォーカス --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズ第13弾」をお聴きいただければ.



 関連して,最後に1つお知らせです.6月30日に,物書堂さんより『英語語源ハンドブック』アプリ版が発売されました(アプリ版を利用できるのは iOS ユーザーのみとなります).通常価格は3,800円ですが,発売日より3週間,7月21日までは「初回セール期間」となっており,セール期間の価格は2,800円と(26%オフ)となっています.この機会に,ぜひアプリ版のハンドブックもご活用いただければと思います.詳細はこちらよりどうぞ.

 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-15 Wed

#6288. heldio で khelf 寺澤志帆さんによる3回シリーズ「寺澤志帆さんの『英語語源辞典』読み方講座」が始まりました --- bear 「産む」の項目を徹底解説 [notice][kdee][hel_education][helkatsu][khelf][terasawashiho][voicy][heldio]



 今朝の Voicy heldio より,3日間にわたる「『英語語源辞典』読み方講座」となる対談シリーズが始まっています.本日の初回は「#1872. 寺澤志帆さんの『英語語源辞典』読み方講座 (1) --- bear 「産む」の項目を徹底解説」です.
 khelf メンバーの寺澤志帆さんが,シリーズ「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」にて「384. bear「産む」についてさらに深堀り」と題する記事を投稿されたことは,「#6281. 「英語語源辞典でたどる英語綴字史」の khelf 寺澤志帆さんが『英語語源辞典』の読み方解説を始められています!」 ([2026-07-08-1]) でご紹介したとおりです.これは,『英語語源辞典』通読挑戦者の第一人者である lacolaco さんが,先立つ6月中に,同様の試みをいち早く実践されていたものを受けての,寺澤さんとしての試みでした.今回の対談は,事情により lacolaco さんのご参加はかないませんでしたが,寺澤さんの上記記事に基づいて,ラジオ版として口頭で「読み方講座」を実践していただくという趣旨で企画したものです.
 講座のなかでは,「産む」を意味する bear2 の項目を超精読していきます.1つひとつ記号や略記が意味するところを丁寧に解説し,語源情報を読み解く上で必要となる英語史の前提知識を補いながら進みますので,迷子になることはありません.項目を読み終える頃には,皆さんもほぼすべての情報をほぼ完璧に理解できており,他の単語の項目を読み解く際のスキルも手にしているはずです.
 『英語語源辞典』より,今回注目している bear2 の項目を画像化したものを,版元である研究社の許可を得て,以下に掲載します.お手元に同辞典をお持ちでない方は,こちらをご覧になりながら,今朝の「読み方講義」の本体をじっくりお聴きください.明日,明後日とシリーズは続いていきますが,捕捉や深掘りのアフタートークとなる予定です.ご期待ください.


ダブリン・ギネス収録会



 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-14 Tue

#6287. 「なぜさんたんげん目撃マップ」の全都道府県制覇まであと9県 [notice][nazesantangen][nazesantangen_witness][nhkpb][helkatsu]

nazesantangen_mokugeki_map_20260713.png



 去る6月10日に刊行されて以来,熱い盛り上がりを見せている新刊『英語語源で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書,通称『なぜさんたんげん』)ですが,リアル書店での発見報告を募る「なぜさんたんげん目撃マップ」企画が,連日目を見張る勢いで進展しています.全国の読者・応援者の方々が日々寄せてくださる草の根の目撃情報には,著者として感謝に堪えません.なかには書店さんの許可を得て,素晴らしい書棚の写真を撮ってくださる方も少なからずいらっしゃり,地図を開いてピンを立てるたびに胸が熱くなります.
 さらに心強いことに,NHK出版の営業の皆さんも,全国の書店訪問の最前線から書棚の写真をお送りくださっています.応援読者さん×全国の書店さん×NHK出版営業さん,という3者の熱量が噛み合った結果,昨晩時点の集計で,全国津々浦々の書店に計93本ものピンが立つに至りました.100本の大台も見えてきましたね.
 ここで目撃マップの凡例(ピンの色)を整理しておきましょう.

 ・ 赤ピン:書棚写真あり(有志の皆さんによる書店さんの許可を得ての写真撮影あり)
 ・ 青ピン:書棚写真なし(テキストのみのご報告のケース,あるいは私が写真をアップできていないケース)
 ・ 茶ピン:NHK出版営業さんが回られた書店さん(写真つき)
 ・ 黄ピン:書店さんご自身による書棚の SNS 広報等
 ・ 「文」アイコン:本書が入っていると直接・間接に確認できた図書館

 さて,先日の記事「#6271. 「なぜさんたんげん目撃マップ」の第1次全国制覇達成!」 ([2026-06-28-1]) でお知らせした地方レベルでの全制覇に続き,目下の目標は第2次全国制覇,すなわち47都道府県完全制覇です.昨晩時点の最新データによれば,全都道府県制覇まで,あと9県というところまで迫っています.その9県は,以下の通りです.

 ・ 東北:青森県,岩手県,秋田県,山形県
 ・ 中部:富山県
 ・ 中国:島根県
 ・ 九州:佐賀県,熊本県,宮崎県

 ぜひ該当する県民の方,あるいはビジネスや旅行でこれらの地を訪れた方は,地元のリアル書店を覗いて情報をお寄せいただけますと幸いです.SNS(主に X)にて #なぜさんたんげん目撃マップ あるいは単に #なぜさんたんげん のハッシュタグを付して街と書店の名前をつぶやいていただくか,あるいは毎朝お届けしている Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の任意の配信回のコメント欄より,お知らせください.私が必ず捕捉してピンを立てに伺います.
 書店での写真撮影に関しましては,「#6257. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画が走り出しています」 ([2026-06-14-1]) でも触れたとおり,必ず事前に書店員さんへ一言お声がけをいただき,そのご指示に従っていただきますようお願いいたします.撮影が難しい状況であれば,テキストのみのご報告でも十分に貴い情報となります.ご協力のほど,よろしくお願い致します.
 もちろん,すでに多くのピンが立っている都道府県においても,さらに密度を濃くして地図を面で埋め尽くしていきたいと考えていますので,日本のどこからでも目撃情報をお待ちしています.「英語史をお茶の間に」流通させるためのこの壮大な知的お祭りを,引き続き皆さんとともに楽しんでいければと願っています.
 これまでの「目撃マップ」企画に関する関連記事も合わせてご覧ください.

 ・ 「#6257. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画が走り出しています」 ([2026-06-14-1])
 ・ 「#6267. 「なぜさんたんげん目撃マップ」へピンが多く立ってきています!」 ([2026-06-24-1])
 ・ 「#6271. 「なぜさんたんげん目撃マップ」の第1次全国制覇達成!」 ([2026-06-28-1])
 ・ 「#6275. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画で何をしようとしているのか?」 ([2026-07-02-1])

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-13 Mon

#6286. 「ダブリン・ギネス収録会」 --- helwa の価値が最大限に発揮された完全オンライン土曜日 [heldio][helwa][helkatsu][helmate][dubline_guinness_recording_session][note][kdee][hee]


ダブリン・ギネス収録会



 一昨日の土曜日,7月11日の午後,アイルランドはダブリンの地より Zoom で繋ぎ,Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」のメンバー(ヘルメイト)の皆さんとともに半日を費やすオンラインでの「ダブリン・ギネス収録会」を敢行しました.急な呼びかけであったにもかかわらず,入れ替わり立ち替わりで延べ20名近くのヘルメイトの皆さんにお集まりいただき,盛況のうちに幕を閉じることができました.ご参加くださった方々,そしてチャット等で場を盛り上げてくださったギャラリーの皆さんに,この場を借りて心より御礼申し上げます.ありがとうございました.
 滞在先のダブリンでは朝の6時(日本時間の午後2時)からスタートし,気がつけば日本時間の夜11時まで,実にみっちり9時間にわたる濃密な時間でした.もともとは少人数での小さな対談会を調整していたのですが,オープンなオンラインイベントとして企画を立ち上げたところ,驚くべきフットワークの軽さで多くのヘルメイトのご都合がカチリと噛み合い,嵐のような収録会の決行に至りました.前々から周到に準備された企画よりも,こうした突発的なお祭りのほうが不思議とうまくいくケースがあるのですが,今回はまさにその例でした.
 今回の収録会では良質な対談回をたくさん収録することができましたが,その「取れ高」以上に私にとって貴い財産となったのは,ヘルメイトの皆さんと深く歓談し,親睦を深めることができたことです.結果として,今回の収録会の最大の意義はそこにあったと思っています.
 収録会のメニューを時系列で振り返っておきましょう.まず午後2時過ぎのオープニングに続き,kendama_player さんの英語史講義報告の対談から始まりました.3時過ぎからは,khelf(慶應英語史フォーラム)の寺澤志帆さんをゲストに迎え,『英語語源辞典』 (kdee) の bear の項目をじっくりと読み解く対談を行ないました.普段は私自身が解説する側に回ることが多いのですが,寺澤さんの明快な語り口を,ひたすら聞き役に回って味わうという体験は,たいへんに新鮮な時間でした.解説を聴くうちに次々と新しいアイディアが湧き出し,大いに知的好奇心が刺激されました.
 4時過ぎからは上智大学の小河舜さんにお越しいただき,昨日の記事でも触れた「地球ことば村オンラインサロン」より配信された最新動画に絡めて「英国地名×英語史」をテーマに熱く語り合いました.さらに5時過ぎからは,刊行から1年が経ち,物書堂さんからアプリ版もリリースされた『英語語源ハンドブック』 (hee) の使用感について,ご参加されているヘルメイトの皆さんにマイクを回しながら語り合うコーナーを設けました.
 6時からは,本日の目玉企画である川上さん持ち込みの「聞かせて!『なぜさんたんげん』のなぜ」の heldio 生配信を90分枠で敢行しました.私の側の機器の不調により,途中で生配信が途切れるというトラブルがありましたが,『なぜさんたんげん』をご担当いただいたNHK出版の編集者・田中菜乃香さんにもご出演いただくことができました.著者に向けられた鋭いツッコミに対し,著者は頭をフル回転させ,言葉を整理しながら喋る,きわめて消耗的ながらも価値のある時間となりました.後半の生配信未配信部分は別途録音してあるため,後日,アーカイヴ配信したいと思っています.ぜひご期待ください.
 その後は主にギネスビールを片手に,ヘルメイトの皆さんとの Zoom 上での懇親会へと移りましたが,ari さんykagata さんを中心とした「なぜさんたんげんカウントダウン企画」(そして,ari さんによる4コマ漫画シリーズ「英子さんたんげん」)を振り返る回顧展の対談も収録しました.最後には,ヘルメイトの皆さんから総括のコメントをいただきました.
 半日の収録会を通じて私が確信したのは,このコミュニティ「英語史の輪 (helwa)」が,単なるクローズドな音声配信のチャンネルではなく,「学びと継続をお互いに支援し合う最強の環境」に育ってきているという事実です.毎日記事を書く方,独自の新しい勉強法を開発される方,そして何より,対談収録中に驚異的な集中力を発揮して体系的なライヴ議事録を書き残してくださった orangemorishita さんのような存在.各メンバーによる活動が有機的に結びつき,お互いの学びのモチベーションを高め合う文化が形成されてきています.寺澤志帆さんが最後に投げかけてくれた「純度100パーセント」というキラーフレーズが,まさにこのコミュニティの本質を言い当てていました.
 今回の「ダブリン・ギネス収録会」で収録した濃密な対談や振り返りの数々は,今後の heldio 通常回で配信していく予定です.第1弾は,すでに昨日の朝に「#1869. コアリスナー kendama_player さんが,前橋市立図書館で英語史講座を開かれました」としてお届けしました.ぜひ hellog 読者の皆さんも,今後の配信にご期待いただければ.
 そして,もしこの「純度100パーセント」の学びの熱気や,お互いに刺激を与え合うコミュニティの空気を直に体験してみたいと思われた方は,ぜひプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」へのご参加をご検討いただければと思います.毎週火・木・土の午後6時に,heldio レギュラー配信とは一味違うテイストの話題をお届けしています.月額800円のサブスクリプション配信ですが,初月無料のサービスも用意されていますので,一歩足を踏み入れ,数週間その環境に浸っていただければ,なぜこれほどまでに今「hel活」(helkatsu) が盛り上がっているのか,その理由が必ずお分かりいただけるはずです.hellog 読者の皆さんを helwa でもお待ちしています!

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-08 Wed

#6281. 「英語語源辞典でたどる英語綴字史」の khelf 寺澤志帆さんが『英語語源辞典』の読み方解説を始められています! [notice][khelf][kenkyusha][kdee][lacolaco][helkatsu][hel_education][helmate]


terasawa_shiho_kdee_series_384.png



 7月4日,khelf メンバーの寺澤志帆さんが,シリーズ「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」にて「384. bear「産む」についてさらに深堀り」と題する記事を投稿された.
 タイトルからは普段と変わりない投稿かと思いきや,記事を読んでみると何かが異なる.そう,『英語語源辞典』の読み方解説が丁寧になされているのだ.記号の使い方や略記の説明,そして専門家の視点からの追加的解説が施されており,それに沿って読み解いていくと,辞典初心者にとっても,動詞 bear 「産む」の項目に記述されている語誌の詳細が理解できるようになっているのだ.
 しかも,続けて7月6日には,同じ読み解き解説の趣旨で「386. beast ―『英語語源辞典』読み解き解説第2弾―」も投稿されている.
 実は2週間ほど前に,『英語語源辞典』通読挑戦者の第一人者である lacolaco さんが,同じような試みをいち早く実践されていた.すでに hellog でも「#6268. 「英語語源辞典通読ノート」の lacolaco さんが『英語語源辞典』の読み方解説を始められています!」 ([2026-06-25-1]) で紹介した通りである.直接 lacolaco さんの desire -- deskdespite, develop, device の2つの記事をお読みいただきたい.
 『英語語源辞典』通読の試み自体が勇気ある挑戦といえるが,通読挑戦者たちが自らこの辞典の(読み解きを含めた)おもしろさを広く伝えるために,読み解き方を易しく解説してくれるとは,なんという辞典愛であり語源愛だろうか.
 同辞典を持っているけれども,希望するほどには読みこなせず,使いこなせていなかった,という方は少なくないだろう.この辞典は高価だが,専門性が高く信頼できる代物なので一旦入手すれば一生モノである.だからこそ,多くの方々に使いこなして欲しい.ぜひ辞典を開きつつ,先日の lacolaco さんの記事や今回の寺澤さんの記事をじっくりと読み,語源辞典の懐の深さを味わっていただきたい.
 私自身もこれまでに『英語語源辞典』の読み方解説に類することを試みてきたが,必ずしも体系的に行なってきたわけではない.それでも役に立つだろうとは思われるので,ぜひ「#6232. 『英語語源辞典』を読みこなせるようになりたい方へ」 ([2026-05-20-1]) に掲載されているリンク集より,各コンテンツをたどっていただければ.

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

Referrer (Inside): [2026-07-15-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-05 Sun

#6278. 「居酒屋KKH」 --- 『英語語源ハンドブック』発売1周年記念のオンライン対談 [notice][izakaya_kkh][hee][review][hel_education][helkatsu][link][voicy][heldio]



 「#6265. 『英語語源ハンドブック』刊行から1年 --- 索引と正誤表の最新版も」 ([2026-06-22-1]) で予告していたように,ハンドブックの著者3名(唐澤一友さん,小塚良孝さん,堀田隆一)が刊行1周年記念日となる2026年6月18日の夜にオンラインで集合し,「居酒屋KKH」を開きつつ,本書について語り合いました.
 その鼎談の様子は録音していましたが,本編だけでも計60分を優に超える長丁場となったので,前編と後編に分けて Voicy heldio にて公開しました.濃密な対談となっています.お時間のあるときにじっくりお聴きいただければ.

 ・ 「#1861. (前編)居酒屋KKH --- 『英語語源ハンドブック』発売1周年記念」(7月4日配信)
 ・ 「#1862. (後編)居酒屋KKH --- 『英語語源ハンドブック』発売1周年記念」(7月5日配信)

 前編では,この1年間で読者の方々より Amazon レビューで寄せられてきたご感想をいくつか紹介しつつ,3人でハンドブックの活用法や意義について改めて議論しました.
 後編も,Amazon レビューを取り上げてコメントバックするところから始まりましたが,3人の議論が段々と濃厚になってきます.私の「英語史は伏線回収である」との発言を拾ってくれた唐澤さんが,話しをどんどんおもしろい方向に展開してくれ,さらに小塚さんが「英語史×英語教育」論にまで発展させてくれたおかげで,議論が大きく広がっていきました.一般のハンドブックの読者にとってはもちろん,広く英語教育関係の方々にも示唆のある内容となっていると思います.また,あまり表には出ない英語史研究者の視点についてもおおいに語りましたので,それなりに貴重な対談となっているのではないかと考えています.実際,3人自身が対談を非常に楽しむことができました.
 この1年間,多くの読者の皆さんに,『英語語源ハンドブック』へ様々な角度からご意見をお寄せいただいたり,ハンドブックに基づいて関連する教材や記事などのコンテンツを制作・公開していただきました.ぜひ今後も引き続きご愛用,ご愛読いただき,ハンドブックの価値を広めていってください.
 最後に重要なお知らせです.6月30日に,物書堂さんより本書のアプリが発売されました.物書堂のアプリを利用できるのは iOS ユーザーのみとなりますが,ハンドブックをアプリ版で入手できるようになりました.通常価格は3,800円ですが,発売日より3週間は「初回セール期間」となっており,セール期間の価格は2,800円と(26%オフ)となっています.この機会に,ぜひアプリ版のハンドブックもご活用いただければと思います.詳細はこちらよりどうぞ.

 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

Referrer (Inside): [2026-07-20-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-03 Fri

#6276. soccer/sports 特集 --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ第12弾 [note][hee][helkatsu][hel_education][quiz][helwa]



 heldio/helwa コアリスナーの sorami さんによる『英語語源ハンドブック』に基づいた「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ」シリーズが,素晴らしい注目度を集めつつ継続しています.隔週土曜日に新作が公開されていますが,最新は6月27日に公開された第12弾です.
 今回のクイズは,目下開催中の FIFA World Cup を睨んで,サッカーやスポーツに関連する言葉の特集となっており,非常にタイムリーな企画です.
 毎回のことながら,相変わらずの良質の出題と丁寧な解説には脱帽するばかりです.あまり細かく書いてしまうとネタバレになってしまうので,ここではいくつかのおもしろい問いを厳選して紹介していきましょう.
 まずは基本となる soccer というスポーツ名についてです.日本やアメリカでは soccer と呼びますが,実はサッカー発祥の地であるイギリスでは soccer とは呼ばない,というナゾから始まります.イギリスでは football なのですが,ではなぜ soccer という語が生まれたのかという語源のストーリーが解説されています.日常的な英単語の背景に,意外と知られていない語形成の歴史が隠されているのを知ると,ニヤリとしてしまうはずです.
 さらにクイズは英語にとどまらず,日中語スポーツ名比較へと展開します.中国語で野球を「○球」,テニスを「○球」と別の呼び方をするなど,同じスポーツを翻訳するにしても言語によって着眼点が異なるという指摘は,対照言語学的に興味深い視点です.また,ある球技で「0点」のことを love と呼ぶのはなぜかという問いや,大谷翔平選手が所属するドジャースのチーム名とも深く関わる dodgeball の語源など,知的好奇心をくすぐる良問が目白押しです.
 嬉しいことに,作者の sorami さん自ら「今回のスポーツ関連クイズも,授業の小ネタ,ウォームアップ,グループ活動などに自由に使っていただければ幸いです.ALTの先生を巻き込むのもありですね!」と言ってくださっています.pdf 形式の印刷用資料も用意されていますので,英語の教材として学校の授業やサークルなどで,すぐにでも活用できます.
 さて,この出題のベースとなっている『英語語源ハンドブック』(研究社)ですが,2週間前の6月18日に,めでたく刊行1周年を迎えました.また,3日前の6月30日には物書堂より『英語語源ハンドブック』アプリ (iOS) が発売されました.7月21日までセール販売とのことですので,こちらより詳細をご覧ください.
 この1年間,本当に多くの読者の皆様に温かく迎えられ,愛用されてきたことは,著者陣・関係者一同にとって大きな喜びです.心より御礼申し上げます.読者の皆さん,今後とも本書を末永くご愛用いただけますよう,よろしくお願いいたします.
 今回の sorami さんのクイズ記事を通じて,1人でも多くの方が英単語の奥深い世界に触れ,英語史のロマンを感じていただければ幸いです.ぜひ過去号も含め sorami さんの note へと足をお運びください!

 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-02 Thu

#6275. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画で何をしようとしているのか? [notice][nazesantangen][nazesantangen_witness][nhkpb][helkatsu]

 去る6月10日に刊行された新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ三人称単数のsを付けるのか』(NHK出版新書)をめぐり,全国のリアル書店での発見報告を募る「なぜさんたんげん目撃マップ」企画が連日盛り上がっています.毎朝の Voicy heldio のコメント欄などを通じて,有志の読者の皆さんから全国津々浦々のリアル書店での目撃証言が続々と寄せられており,感謝に堪えません.私が皆さんからの報告をもとに Google マップ上にピンを1本ずつ立てていくという企画ですが,本日までに累計で73本もの熱いピンが立っています.地図を画面で開くたびに,あちらこちらに熱いピンが灯っていく様子は,壮観です.
 関連して重要なのは先日6月29日に出来した第2刷分が,今まさに全国の書店の棚に並び始めていることです.リアルな本の流通というダイナミックな動きと,デジタル上のマップが連動していくおもしろさ.今回は,著者の視点から,単なる本書のプロモーションを超えた,この目撃マップ企画の真の狙いを,学問論・メディア論の観点からお話ししてみたいと思います.
 結論から申し上げれば,この「なぜさんたんげん目撃マップ」企画は,もちろん販促活動の一環ではあるのですが,3つのレイヤーにおいて学問と社会の新しいつなぎ方の実験でもあるのです.
 第1のレイヤーは,書店員さんへのエールです.日々無数の新刊に囲まれるなかで,『なぜさんたんげん』に注目し,平積みや面陳をしてくれる全国の書店員さんがいらっしゃいます.その熱意をマップ上で可視化すること.また,それを見た他の書店員さんに影響を与えていただくこと.それによって,私の「英語史をお茶の間に」も,現実的な意味で達成されるからです.
 第2のレイヤーとして,読者の皆さんに,hel活の当事者になっていただきたい,という思いがあります.ただ本を買って読むだけの存在から,目撃情報を寄せていただくことで,英語史を世の中へ流通させる同志兼当事者になっていただきたいという趣旨です.読者・著者・書店・出版社の「運命共同体」の創造ですね.
 第3のレイヤーは,人文系アカデミアにとってのメディアサバイバル戦略としての側面です.とりわけ人文系に関して大学や学界が縮小の危機に瀕している現代,研究者が研究室や論文のみに閉じこもっている時代は終わりました.研究者がマルチメディア/クロスメディアを自前で構築し,時間をかけて,新しいインフラを整えていくこと.これこそが新しい時代においてアカデミアの活力となるだろうと信じています.
 先日の記事「#6271. 「なぜさんたんげん目撃マップ」の第1次全国制覇達成!」 ([2026-06-28-1]) で触れた地方レベルでの第1次全国制覇に続き,ここからの目標は第2次全国制覇,すなわち47都道府県完全制覇です.以下の通り,まだピンの立っていない空白地帯は数多く残っています.

【 まだピンが立っていない県 】

 ・ 東北:青森県,岩手県,秋田県,山形県
 ・ 関東:栃木県
 ・ 中部:富山県,福井県,山梨県,静岡県
 ・ 中国:鳥取県,島根県,岡山県,広島県
 ・ 四国:徳島県,香川県
 ・ 九州:佐賀県,熊本県,宮崎県

 もちろん,すでに多くのピンが立っている東京都,大阪府,愛知県などの皆さんも,さらに密度を濃くして面で埋め尽くすための追加報告は大歓迎です.「〇〇県〇〇市の〇〇書店に平積みされていました!」という一言の報告が,日本地図を英語史で埋め尽くしていく原動力になります.2刷を店頭で見つけた hellog 読者の皆さん,そして書店員さんからも,さらなる目撃情報をお待ちしています.皆さんとともに日本地図がピンで埋め尽くされる日を楽しみにしています!

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

Referrer (Inside): [2026-07-14-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-01 Wed

#6274. 英語史の月刊ウェブマガジン Helvillian の2026年7月号が公開されました [helwa][heldio][notice][helmate][helkatsu][helvillian][link][nazesantangen]



 去る6月28日,「英語史をお茶の間に」届けようと日々奮闘している有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 7月号が公開されました.通算第21号となります.
 今号のキャッチコピーは「まだまだ続く,#なぜさんたんげん そしてhel活の波」です.6月10日に世に送り出された新著『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)に関連する記事や熱い応援記事が,前号に引き続き,誌面を埋め尽くしています.
 まずは ykagata さんによる「表紙のことば」から覗いてみましょう.瀬戸内海から四国をめぐる旅の記憶とともに,ドイツ語の "Straße von Hormus" (ホルムズ海峡)が英語 street に対応するという興味深い話題を展開してくれています.広い海峡を「ストリート」と呼ぶ言語的なおもしろさを,旅の実感と結びつける筆致はさすがです.ykagata さんは他にも「[古英語]名詞屈折表が stān で始まる本,始まらない本」など,英語史に直接・間接に関わる魅力的な記事を多数寄稿されています.
 今号の収載記事をいくつかカテゴリー別に紹介していきましょう.
 何といっても今号のお祭りの中心は『なぜさんたんげん』です.ari さんによる「英子さんたんげんシリーズ」は,普段のユーモアとダジャレのセンスが凝縮された4コマ漫画で,『なぜさんたんげん』のエッセンシャル版としての期待が集まっています.Grace さんの「『なぜさんたんげん』目撃の巻」は,書店での劇的な「昇格」の瞬間を淡々と描き出し,多くのリスナーの涙を誘う秀逸なドキュメンタリー「石巻の奇跡」を世に送り出しました.さらに umisio さんは「告白・懺悔」と題して,自身が過去に「3単現の s」に疑問を抱かなかった理由を深く掘り下げるシリーズを連載されています.
 一方,お祭りの熱気の中でも淡々と学びを進めるレギュラー陣の記事も輝いています.その代表格が,listener kawakami さんによる「Prologue to Eneydos を読むシリーズ」です.Caxton の印刷技術と英語史の深淵に迫るこの硬派な連載は,編集委員の umisio さんをして「浮かれた頭を冷やしてくれる,ウェーランドの経済学言論の講義のようだ」と言わしめるほどのシリーズとなっています.私自身も,専門家の観点から,これが貴重な中英語精読シリーズになっているものと評価しています.
 語源やクイズの分野も百花繚乱です.mozhi gengo さんは「Beryl と同語源の日本語は○○」やヒンディー語の借用語コラムなど,圧倒的な知識量で独自の深掘りを展開されています.lacolaco さんによる「英語語源辞典通読ノート D」は,着実に歩みを進める職人技の鑑です.『英語語源辞典』の読み方解説も加わり,ますます有用性が高まっています.sorami さんの「中学生向け英語語源クイズ」は,学校の授業ですぐに使える実践的な内容とすぐれた出題センスが相変わらず光っています.
 さらに,前橋市での英語史講座を満員御礼のなかで終えられた kendama_player さんの熱い報告記事や,あまねちゃんによる「オフ会感想」と『英語語源ハンドブック』1周年記念記事,こじこじ先生の楽曲「不規則動詞戦争」,みーさんによる「小学生と学ぶ英語史」シリーズなど,各世代や地域におけるhel活のリアルな息吹が伝わってきます.佐久間さんの「日本語由来の医学英語」も専門家らしい視点を与えてくれます.
 巻末の「あゆみ」では,Grace さんが北千住オフ会の定着や helwa 開設3周年の軌跡をきれいにまとめてくださいました.そして umisio さんによる「編集後記」は,今号の多様な熱量をユーモアたっぷりに総括してくれています.
 最後になりますが,今号を編み上げてくださった編集委員の Lilimi さん,Galois さん,Grace さん,umisio さんには深く感謝いたします.そして,素晴らしいコンテンツを寄稿してくださったヘルメイトの皆さんも,本当にありがとうございました.
 hellog 読者の皆さんも,ぜひこの熱気溢れる Helvillian 7月号のページを訪れて,じっくりと味わってみてください.そして,自分も日頃のhel活の成果をこのウェブマガジンに載せてみたい,英語史の輪に加わりたい,と思われた方は,ぜひ Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」への参加をご検討いただければと思います.helwa にお入りになった瞬間から,あなたもヘルメイトです.一緒に英語史をお茶の間に届けていきましょう!

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-28 Sun

#6271. 「なぜさんたんげん目撃マップ」の第1次全国制覇達成! [notice][nazesantangen][nazesantangen_witness][helkatsu][helmate]

nazesantangen_mokugeki_map_20260628.png



 発売からほぼ18日が経ちました.新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書,通称『なぜさんたんげん』)のプロモーションとして,Google マップ上で展開してきた「なぜさんたんげん目撃マップ」企画にて,ついに第1次全国制覇(地方レベルでの全制覇)を成し遂げました.
 実際の達成は6月24日のことだったのですが,日本全国すべての地方(北海道,東北,関東,中部,近畿,中国,四国,九州・沖縄)にヘルメイトの皆さんの熱い視線が届き,ピンが灯りきりました!
 このスピードでの地方レベル全制覇は,在外の著者1人の力では到底成し遂げられませんでした.まさに「応援読者×全国の書店様×NHK出版営業さん」という三位一体の熱量が,見事なパスを繋ぎ続けた結果にほかなりません.
 まずは,ヘルメイトの皆さんの草の根の力がありました.未来屋書店石巻店での素晴らしいドラマを note で熱く語ってくださった Grace さんの「石巻の奇跡」をはじめ,khelf 藤平さん作の特製POPを携えて三省堂書店岐阜店にアプローチしてくれたあまねちゃんの見事なパスなど,全国の有志による「hel活」 (helkatsu) がすべての起点となりました.
 そして,その熱量を受け止めてくださった全国の書店員の皆さんの熱い共感に,最大の敬意を表します.三省堂書店岐阜店の書店員さんの「中学生の時のなんで??を思い出した」というコメントに代表されるように,「丸暗記の呪縛を解く」という本書の思想に深く共感し,一等地で平積みしてくださっている現場の力には感謝しかありません.直近でも,くまざわ書店エキア北千住店などが素早く連動し,棚を盛り上げてくださいました.書店員の皆さんにおかれましては,ぜひ以下の note 記事もご参照ください.



 さらに,この動きを公式の武器として全面バックアップしてくれたのが,NHK出版営業部の皆様の総進撃です.前線から,まだピンの立っていなかった中国・四国地方を中心に14件ものピン写真をドカドカっと送り届けてくれたプロの組織力と熱量には脱帽するばかりです.この週末の連続新聞広告などの強力な空中戦も含め,この本を届けようとするプロフェッショナルなエネルギーを感じました.
 さて,お祭りのような初速の盛り上がりを経て,本書は次のステージへと進みます.明日6月29日は,待望の第2刷出来となります.全国の書店の棚が再び『なぜさんたんげん』で燃え上がります.ここからは,英語の丸暗記の圧力に苦しんでいる一般の学習者や教育現場に,英語史から救いを届けるフェーズに入ります.
 そして,目指すは第2次全国制覇.すなわち都道府県レベルでの完全制覇です.東北,中国・四国を含め,まだ白地図のまま残っている県がいくつもあります.ぜひ,お近くの書店で本書を見かけましたら,「#なぜさんたんげん目撃マップ」のハッシュタグとともに,heldio のコメント欄や X 投稿などで目撃情報をお寄せください.引き続き,皆様の熱い応援をよろしくお願いいたします!

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

Referrer (Inside): [2026-07-14-1] [2026-07-02-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-26 Fri

#6269. なぜ新刊書『英語史で解く 英文法の謎』のタイトルに「英語史」を含めたのか --- ykagata さんの批評的考察 [nazesantangen][note][helkatsu][helmate][review]



 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)が好評発売中である.おかげさまで各地の書店でもよく売れている模様で,著者として嬉しい限りである.
 さて,先日6月20日付けで,heldio/helwa のコアリスナーでヘルメイトの ykagata さんが,ご自身の note にて実に読み応えのある批評的考察記事を公開してくださった.タイトルは「「語源」の本でなく「英語史」の本が書店に並ぶこと」である.この記事が,英語史の非専門家である読者の視点から書かれたものとは信じられないほどに鋭く,かつ温かい賛辞に満ちており,私は深く感激した.本日の記事では,この ykagata さんの note 記事を紹介しながら,hellog 読者の皆さんにもぜひご一読を促したいと思う.
 ykagata さんの考察の主眼は,今回の新著のメインタイトルに,敢えて「語源」ではなく「英語史」という硬派なキーワードが掲げられたことの歴史的・出版史的な意義にある.近年の出版界における「語源」ブームの商業的な軽薄さに緩やかな警鐘を鳴らしつつ,地味で硬派な「英語史」こそが市民権を得ていくのかもしれない,力をもつ本当のムーブメントになっていくのかもしれない,という実に刺激的な予言が展開されているのだ.
 とりわけ,著者の私自身が読みながら文字通りに打ち震えたのが次の3箇所である.
 まず1点目として,編集者として表題にずばり「英語史」を掲げる決断をしたNHK出版の編集者,田中菜乃香さんは慧眼だった,という指摘である.
 2点目に,その決断に至る背景には,著者の堀田による「hel活」すなわち英語史のアウトリーチ活動の長年の積み重ねが欠かせなかった,と言及してくださっている点である.
 そして3点目に,「英語史だなんていって一般読者に分かってもらえるだろうか」と躊躇していた英語史関係者自身が,今後堂々と「英語史」を謳う契機として,今回の本の出版が重要な出来事なのではないか,と寿いでくださっている点である.出版史上,表題に「英語の歴史」を掲げる新書は寺澤盾先生の名著などがあるけれども,「英語史」をずばり掲げた新書はきわめて珍しいのではないか,という出版史的な縦のパースペクティブにも唸らされた.実際,その通りなのだ.
 これまでは一般向けの書物のタイトルにするには「硬すぎる」と敬遠されがちだった「英語史」であるが,これからはもっと多くの関連書が安心してこの名前を題名に冠して出てこられるようになるのではないか,という予言は本当に力強く,勇気づけられる.
 著者として,また1人の英語史研究者として,この評価を最大の賛辞と感謝をもって受け入れたい.ぜひ ykagata さんの note 記事をじっくりと味わっていただければっc.

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-25 Thu

#6268. 「英語語源辞典通読ノート」の lacolaco さんが『英語語源辞典』の読み方解説を始められています! [notice][voicy][heldio][helwa][inohota][kenkyusha][link][kdee][lacolaco][helkatsu][hel_education][helmate]



 英語史を広める活動「hel活」 (helkatsu) の周辺が実に熱くなっています.本ブログでも要注目としてたびたび紹介してきた,heldio/helwa のコアリスナーでヘルメイトの lacolaco さんが,「英語語源辞典通読ノート」シリーズにて,目下 D の項目をひた走っています.
 驚くべきは,その圧倒的な継続力のみならず,そこに込められた「hel活」スピリットの進化にあります.最新の2つの記事,すなわち6月13日公開の desire -- desk,および6月20日公開の despite, develop, device を拝読し,胸が熱くなりました.
 この最新の2回において,lacolaco さんは貴重で有用な,新しい試みを始められています.前者では desk を,後者では device をサンプルとして取り上げ,『英語語源辞典』初心者に向けて,同辞典の読み方をきわめて丁寧に解説してくれているのです.同辞典特有の専門記号,略称,句読点などの1つひとつにまでこだわり,それが何を意味しているのかを噛み砕いて説明しているセクションは,『英語語源辞典』を所有していながらも,専門的すぎて使いこなせていなかった多くの方々にとって福音となるはずです.
 これは,1ヶ月ほど前の hellog 記事「#6232. 『英語語源辞典』を読みこなせるようになりたい方へ」 ([2026-05-20-1]) における問題提起を受けての,lacolaco さんによる見事なイニシアチブであり,実践です.さらに先立つ「いのほた言語学チャンネル」の研究社ロケ回でも話題となったように,『英語語源辞典』は世界最高峰の辞典でありながら,一般読者がその価値を本格的に享受するためには「読み解き方の手ほどき」がどうしても必要でした.まさにそのギャップを埋める体系的なガイドを,1人のヘルメイトが自らの note で,これほどハイレベルな形で実現してくれたわけです.これぞ草の根から湧き上がる純粋なhel活であり,hel活コミュニティのつながりが生んだ貴い果実です.
 この丁寧な解説は,同辞典の魅力と威力をお茶の間に届ける素晴らしい踏み台となるはずです.一般の英語学習者の皆さんにとどまらず,同辞典の出版元である研究社の方々をはじめ,英語史の研究・教育に携わる専門の関係者の皆さんにも,大いに注目していただきたい画期的な試みです.ぜひ lacolaco さんのノートを訪問し,『英語語源辞典』の読み方解説を味読してみてください

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

Referrer (Inside): [2026-07-08-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-23 Tue

#6266. 「石巻の奇跡」 --- 『なぜさんたんげん』と英語史が浮かばれた日 [notice][nazesantangen][helkatsu][hel][helmate]

 6月10日(水),NHK出版新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)が発売され,おかげさまで全国各地より温かい反響をいただいています.今回は,先日宮城県の未来屋書店石巻店で起きた,ある胸の熱くなる実話を枕にして,英語史という学問分野の地位の変遷について考えてみたいと思います.
 ことの始まりは,熱心な「ヘルメイト」(英語史を広める活動をしている仲間)の1人である Grace さんが発売直後に同書店を訪れた際,拙著が入荷直後のラックの最下段,「日陰の棚」にひっそりと置かれているのを目撃したことでした.Grace さんはその様子を note に投稿され,それに感銘を受けた私がさらに note で応答,すると今度は Grace さんが本書のレビューをお書きになるという流れで,それこそ本書が目立つ特等席へと「昇格」を果たすという,劇的なドラマが展開しました.
 この一連の「棚の昇格」をめぐる応酬は,単なる人情話や一著者の嬉しかった報告にとどまらない,きわめて象徴的な意味を帯びています.ぜひ,以下の note 記事のダイナミックな流れを直接ご覧いただければと思います.

 ・ 6月13日の Grace さんによる note 記事「『なぜさんたんげん』目撃の巻」
 ・ 6月19日の堀田による note 記事「石巻の奇跡――『なぜさんたんげん』がラックの最下段から「昇格」した日」
 ・ 6月20日の Grace さんによる note 記事「心に刻みたい「英語史が教えてくれること」」

 この「ラックの最下段(日陰)から,教養新書棚の正面(表舞台)への昇格」という物理的な移動の軌跡は,昨今の「英語史」という学問分野そのものが辿ってきた,そして向かっていくメタファーのように思われます.
 これまで英語史という分野は,実用英語や記述文法,あるいはTOEIC対策といった華やかな「表舞台」の影に隠れ,いわば書棚の「最下段」のような扱いを受けることが少なくありませんでした.「そんな古い言葉の歴史を知って何になるのか」「試験に出ないから不要だ」という実利主義の波に押され,日陰の道を歩まざるを得なかった時代が長かったのです.
 しかし,現代の英語学習者が抱く「なぜ3単現には s がつくのか」「なぜ go の過去形は went になるのか」といった素朴な「なぜ」にもっとも上手に答えを与えられるのは,多くの場合,英語史の知見なのです.暗記の呪縛から学習者を解放する力をもつこの学問,そして言語と歴史の深い教養を内包するこの学問が,いつまでも最下段に眠っていてよいはずがないのです.
 今回の石巻での出来事は,全国の「hel活」(英語史を広める活動)の仲間たちの草の根の熱意が書店員さんの心を動かし,学問をついに表舞台へと引き上げている象徴です.背景には,もちろん,多くの英語史研究者によるたゆまぬ研究・教育・啓蒙活動の努力があったことも事実です.
 読者の皆さんとともに,この英語史の表舞台への登場を静かに愛でつつ,今後とも「英語史をお茶の間に」浸透させていくことをここに改めて宣言したいと思います.

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-22 Mon

#6265. 『英語語源ハンドブック』刊行から1年 --- 索引と正誤表の最新版も [notice][hee][etymology][hel_education][helkatsu][link][voicy][heldio]


hee_front_cover.jpg



 去る6月18日,あの熱狂の発売からちょうど1周年を迎えることとなりました.『英語語源ハンドブック』(研究社)です.
 刊行から1年が経ち,ありがたいことに重版を重ねておりますが,それに伴う正誤表がこちらの研究社公式HPより公開されています.最新版は2026年6月17日に更新されたものとなりますので,お手元の書籍と合わせてご確認いただければ幸いです.
 さらに,本書で言及されている実に4083語もの単語・表現を網羅した索引が,追加資料としてダウンロードできるようになっています.それもこちらの研究社公式HPよりEXCELファイルやPDFフィあるとして入手できます,最新版が,同じく2026年6月17日付けで公開されています.この索引を活用することで,本書の利便性は一層高まるはずです.この索引を用いると,いろいろなことが可能となります.ぜひ「#6084. 『英語語源ハンドブック』の索引の歩き方」 ([2025-12-23-1]) の記事をお読みください.
 最新のリンクを含め,『英語語源ハンドブック』に関する各種情報は,『英語語源ハンドブック』の特設HPに集約されていますので,ぜひ訪れていただければ.
 この1年間,読者の皆さんの手によって,実におもしろく多様な『英語語源ハンドブック』関連コンテンツが制作・公開されてきました.それらの素晴らしい広報活動の足跡も,上記の特設HPに一覧としてまとめられております.皆さんの熱量には本当に脱帽するばかりです.
 関連コンテンツの盛り上がりについては,6月20日に Voicy heldio で配信した「#1847. 『英語語源ハンドブック』発売1周年 --- 読者の皆さんによる関連コンテンツがたくさん」でも詳しくお話ししております.1周年の記念に,ぜひ合わせてお聴きください.
 なお,1周年記念日となる6月18日の夜には,著者3名がオンラインで一堂に会し「居酒屋KKY」を開催しました.その様子は近々に heldio にてオンエアしますので,ご期待ください.
 『英語語源ハンドブック』が,拙著新刊『『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)とともに,多くの人々にとって英語史へのジャンプ台であり続けることを願っています.

 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

Referrer (Inside): [2026-07-05-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-20 Sat

#6263. 6月27日(土)の朝カル講座「ghost を探って古英語原文の世界へ」 [asacul][notice][kdee][hee][etymology][hel_education][helkatsu][heldio][me][oe][kochushoho][pchron][adverb][preposition][link][voicy]


asacul_20260418.png



 1週間後の6月27日(土) 15:30--17:00 に,今年度の3回目となる朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座が開かれます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」の通算第15弾ということで,今回は「ghost を探って古英語原文の世界へ」と題して,皆が気になる単語 ghost を深掘りしていきます.
 現代英語の ghost の最も普通の語義は「幽霊」ですね.この世ではしばしば恐れられている,あの不思議な存在です.しかし,本来は広く「精霊」 (spirit) を表わし,あらゆるものに生命を吹き込むパワーを表わしていましたが,歴史の過程で意味の縮小が起こったことになります.キリスト教の「聖霊」は the Holy Spirit と言いますが,古くは the Holy Ghost と言われたのも,この経緯と関係しています.
 また,発音や綴字の観点からも興味深い事実があります.古英語や中英語では gast のような綴字が普通でした.母音として ā という長母音をもっていたのです.ところが現代では /oʊ/ という2重母音になっていますね.また,後期中英語以降,どこからともなく綴字に <h> の文字が紛れ込み,現代では ghost となっていますね.講座では,<gh> という綴字の様々な謎にも触れていきたいと思っています.その他,動詞としての ghost,「幽霊語」 (ghost_word) の話題,もちろん ghost の語源自体にも触れていきます.
 講座の後半には,本シリーズの「古い英語の原文で味わう」趣旨に沿って,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)より古英語のなかに実際に現われる "ghost" を覗いてみます.丁寧に解説しますので,古英語初心者の方も心配無用です.また,上掲書をお持ちでなくても講座資料として配付しますのでご安心ください.
 講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.
 なお,この先の夏期クールのテーマと日程をお伝えしておきます.夏期もシリーズを継続していきます.そちらの詳細・お申し込みはこちらのページよりどうぞ.

 ・ 夏期第1回(2026年7月25日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "king" を探って古英語原文の世界へ
 ・ 夏期第2回(2026年8月22日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "riddle" を探って古英語原文の世界へ
 ・ 夏期第3回(2026年9月26日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "through" を探って中英語原文の世界へ

 いずれの講座につきましても,多くの方の受講をお待ちしております.

(以下,後記:2026/06/22(Mon))
 今回の講座については Voicy heldio でも案内を放送しています.ぜひ「#1849. 6月27日(土)の朝カル講座は ghost を深掘り」をお聴きください.



 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-11 Thu

#6254. NHK出版デジタルマガジンで『なぜさんたんげん』の「序章」が公開 [notice][nazesantangen][nhkpb][helkatsu]


「英語はどのようにして現在の姿になったのか──英語の歴史を遡る旅【英語史で解く英文法の謎】」



 昨日2026年6月10日に刊行された新著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)ですが,たいへんありがたいことに,発売初日から大きな反響をいただいております.手に取ってくださった皆様に,この場を借りて心より御礼申し上げます.
 さて,本日はまだ本書を購入しようか迷っている方,あるいは「英語史という分野に興味はあるけれど,新書1冊を読み通せるか不安だ」という方にお届けしたいニュースがあります.昨日付けで,NHK出版公式のデジタルマガジンにて,本書の「序章」の全文が無料公開されました.記事のタイトルは「英語はどのようにして現在の姿になったのか──英語の歴史を遡る旅【英語史で解く英文法の謎】」です.
 今回のデジタルマガジンで公開された「序章」は,本書に沿った「英語史概説」であり,本書全体の「地図」でもあります.壮大なる英語史のタイムラインを一望できる構成となっています.英語が独自の歩みを始める前の「印欧祖語」の時代から,5世紀の西ゲルマン諸民族のブリテン島渡来による「古英語」の誕生,1066年のノルマン征服がもたらした「中英語」の激変期,そして大母音推移や規範主義の台頭をくぐり抜けた「近代英語」を経て,21世紀の「現代英語」にいたるまでの1500年以上の旅路が,コンパクトに凝縮されています.
 この序章を読んでいただくと,本書の狙いがよく分かると思います.本書を通読すれば,私たちが日頃学校文法で悩まされている「スペリングと発音の乖離」の謎や,なぜ feetwent のような不規則変化が残っているのかという素朴な疑問に対して,歴史的な視点から「なるほど,そういうことだったのか!」と腑に落ちる感覚を味わっていただけるはずです.英語という言語は,ゲルマン語の頑丈な骨格の上に,フランス語やラテン語の要素を幾重にも積み上げ,社会の荒波に揉まれながら増改築を繰り返してきた「巨大な建築物」なのです.
 本書の目的は,単に過去の歴史的事実を羅列することではありません.一見すると不合理に思える英文法の「例外」や「謎」を歴史の流れの中に正しく位置づけることで,単語や文法の解解像度を上げ,納得しながら英語を学んでいただくことにあります.
 まずはこの無料公開された「序章」をお読みいただければと思います.序章に続く本書の本体の部分,第1章から第4章で取り上げられる「謎解き」については,ぜひ全国の書店やオンライン書店にて,新書の実物を手にお楽しみいただければ幸いです.
 1人でも多くの英語学習者、そして英語教育に携わる先生方のもとに本書が届き,英語を学ぶ楽しさがさらに広がっていくことを願ってやみません.SNS などでも、ぜひハッシュタグ「#なぜさんたんげん」をつけて応援していただけますと大変励みになります.どうぞよろしくお願いいたします.
 NHK出版デジタルマガジンからは,他にも本書からの2つの部分がすでに公開されています.以下より訪れていただければ.

 ・ 5月11日公開,「紀元前からのこだわり?なぜ3単現の s をつけるのか【英語史で解く英文法の謎】」(本書の第1章第5節に相当)
 ・ 5月28日公開,「英語の「なぜ」には,驚くべき歴史と物語が潜んでいる【英語史で解く英文法の謎】」(本書の「はじめに」に相当)

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-10 Wed

#6253. 本日『なぜさんたんげん』が発売 --- そして昨日の発売前増刷決定のお知らせ [notice][nazesantangen][nhkpb][helkatsu]


nazesantangen_hatsubaimae_zosatsu_20260609_small.png



 ついに,この日を迎えることができました.長年本ブログを読み,応援してくださっている読者の皆さんに,まずは何よりも先にこの言葉をお届けしたいと思います.
 本日2026年6月10日,拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書),通称・略称『なぜさんたんげん』が,公式に全国の書店で発売日を迎えました.月刊誌での2年間にわたる連載期間から数えれば実に長い道のりでした.担当編集者の方とは実に500通を超えるメールのラリーを重ね,時にはニュージーランド,オーストラリア,そしてスコットランドへの移動を跨ぎながら,原稿を書き直し,校正を続けてきました.それらがついに1冊の書籍として結実し,日本の皆さんの手元に届く瞬間を迎えたことになります.著者として実に深い感慨を抱いています.
 そして本日,発売当日に当たり,もう1つ爆弾級のご報告を差し上げます.発売日の前日となる昨日6月9日の夕方,NHK出版より公式のアナウンスがありました.なんと「発売前増刷」が決定したというのです.
 まだ全国の書店のレジを通っていない段階、つまり発売日前に増刷がかかるというのは,著者にとって名誉です.それはひとえに,SNS や note 等を通じて「hel活」 (helkatsu) を応援してくださっている皆さんが自発的に作り出した圧倒的な熱量と大波ゆえにほかなりません.著者として,これほど嬉しく心強い応援はありません.深く御礼申し上げます.
 今日の発売に向けて,1ヶ月前から毎日のように hellog, heldio, SNS, YouTube 等で展開してきた発売前の広報は昨晩をもって無事に全日程を完走いたしました.これは,「著者が自分でできる最大限の広報をやってみたら,一体どこまで行けるか」を確かめる1つの挑戦でもありました.これほどまでにエネルギーを費やし,読者の皆さんと一緒になって駆け抜けた1ヶ月間は,どのような結果になろうとも「完全にやりきった」と言い切れるものです.この爽快なやりきった感があること自体で,私としては大成功だったと考えています.お祭りに付き合ってくださった皆さん,本当にありがとうございました.
 さて,本日無事に発売日を迎えたわけですが,もちろん今後も hellog では『なぜさんたんげん』に注目していきます.本書で取り上げた24の英文法の謎について,さらに一歩深掘りした解説や考察を増やしていくつもりです.ここからは本を開きながら,じっくりと英語史の沼を一緒に歩んでいただければと思います.
 本日以降,全国のリアル書店の店頭に,本書が並び始めているかと思います.もし書店の棚や新刊コーナーで本書を見かけましたら,写真付きでもテキストのみでも構いませんので,SNS 等で「#なぜさんたんげん」 のハッシュタグを付けつつ,教えてください.皆様からのリアルなご報告を,ドキドキしながらお待ちしております.
 『なぜさんたんげん』著者公式HPも,最速レビューのコンテンツを含め,たいへん盛り上がっています.ぜひ訪れていただければ.

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-04 Thu

#6247. helwa 3周年 --- データで振り返るプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 [voicy][heldio][helwa][notice][helkatsu][helmate][hel_education]



 昨日の記事「#6236.heldio 5周年 --- データで振り返る heldio の進化」 ([2026-06-03-1]) に続いて,5月28日時点での Voicy のアナリティクスに基づく記事をお届けします.一昨日2026年6月2日は,heldio 5周年記念日であると同時に,実は helwa 3周年記念日でもありました.Voicy heldio 開始からちょうど2年目に当たる日に,プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」を開始したのでした.
 helwa は週2回ベースで配信を始めましたが,途中から週3回ペースとなり今に至ります.3年間で積み上げてきた helwa の配信数は,449本に達しました.冷静に考えると,これはなかなか異常なペースです.普通の有料コミュニティであれば,数十本の限定雑談や月1回のイベント程度で終わることも多いかと思いますが,helwa は heldio とは異なるもう1つの英語史コミュニティへと成長してきました.
 当初は,これほどニッチな学術分野で有料チャンネルを始めて本当に人が集まるのか,どのような雰囲気の場になるのか,大きな不安があったのも事実です.しかし,蓋を開けてみればそこは heldio 通常回の特典音源の置き場ではなく,日常的な英語史雑談,Discord 上での交流,オフ会ルポ,書籍の共同企画,学会の裏話など,多岐にわたる談義が繰り広げられる「英語史サロン」へと発展していきました.そして,helwa リスナーを増やすことを主目的とするのではなく,英語史を一緒に楽しむ仲間を作ることが最重要視される,そのような空間に育ってきたのです.
 この3年間における最大の成果の1つは,音声配信チャンネルというオンラインの枠を飛び出し,オフ会や「英語史ライヴ」など,現実のコミュニティが実現したことでしょう.泊まりがけのオフ会も複数回開催され,その熱気はこのコミュニティから生まれた月刊ウェブマガジン Helvillian などで熱くレポートされています.英語史という実利の外側にある学問が,学生,社会人,教員といった幅広い層の垣根を越えて,純粋な大人の「居場所」となったことは,きわめて感慨深いことです.
 しかし,helwa がもたらした最大の変革は,「英語史が雑談になった」という点に尽きるかもしれません.本来,英語史は大学の講義室や専門論文のなかに閉じ込められた世界でした.それがこのコミュニティでは,「その語源おもしろい」「その発音変化わかる」「それ英語史的な発想だよね」といった言葉が日常的に交わされています.オフ会での乾杯の挨拶もすっかり古英語の Wes hal! に定着しています.英語史が一部の専門家だけのものではなく,コミュニティの皆さんの間で一種の「生活言語」として根付いているといったらよいでしょうか.
 常連文化,内輪ネタ,定番フレーズが自然発生するその空気感は,深夜ラジオ共同体にかなり近いものがあるように思っています.「英語史」という硬派なテーマなのに,やっていることは深夜ラジオというギャップが,何ともおもしろいところです.また,リスナーの皆さんが単なる受信者にとどまらず,コメントや note や SNS を利用した発信者となってhel活を推進し,英語史エコシステムを想像している点も,helwa の本質といえます.
 英語史研究者としては「英語史って,本来こんなふうにワイワイ雑談する分野じゃなかったんですよ(笑)」と,嬉しい悲鳴を上げたいです.この helwa という舞台裏の熱量とエネルギー源があるからこそ,表舞台である heldio の5年間にわたる毎日更新も維持されてきたと思っています.3年間で醸成されたこの愛すべきニッチ共同体の文化を,今後もさらにディープに,そして楽しく発展させていきたいと考えています.
 新たな月となりました.heldio リスナーの皆さんにおかれましては,heldio 5周年かつ helwa 3周年の機会に,ぜひ「英語史の輪 (helwa)」へご入会ください.helwa は毎週火木土の午後6時に配信しています.月額800円のサブスクで,初月無料サービスがありますので,まず試しにお入りいただければ.今月は helwa では『なぜさんたんげん』の裏話が多くなるはずです.
 一昨日の helwa 「【英語史の輪 #0453】helwa 3周年 --- 英語史エコシステムが完成した」を,ぜひお聴きください.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow