
4月6日(月),khelf(慶應英語史フォーラム)による『英語史新聞』シリーズの最新号となる第13号がウェブ上で公開されました.前号から約9ヶ月ぶりとなる最新号です.こちらよりPDF形式で自由に閲覧・ダウンロードいただけます.
新年度の開始とともに届けられたこの最新号を制作してくれた執筆陣,編集陣の khelf メンバーには,心から感謝します.
今号も読み応えのある4面構成です.各面のハイライトを紹介していきましょう.
第1面は,hellog でも推しに推している市河三喜・松浪有による名著『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を紹介する巻頭記事です.昭和の「オヤジみ」を感じさせつつも,現代の至れり尽くせりな参考書とは一線を画す,おおらかな語学学習のあり方を提案する書でもあります.文法事項の丸暗記に走るのではなく,まずは概略をつかんでからテキストに飛び込むという姿勢は,古英語・中英語を学び始めようとする読者にとって,力強いエールとなるはずです.
第2面では,身近な不規則変化名詞 foot --- feet の謎に迫ります.なぜ語幹の母音が変化するのか.その背景には,ゲルマン祖語にまで遡る i-mutation という規則的な音韻変化が潜んでいます.一見すると「不規則」に思える現象が,歴史的に紐解けばきわめて「規則的」であったことがわかるという,英語史の醍醐味を味わえる記事です.同面のもう1つの記事は聖書の翻訳比較を取り上げており,翻訳者の意図や時代の潮流が言葉選びにどう反映されるかが考察されています.
第3面は,恒例のインタビューコーナー「英語史ラウンジ」です.今回は,法政大学の福元広二先生に,khelf メンバーがお話しを伺っています.中学時代の恩師との出会いから,ケンブリッジ大学やマンチェスター大学での在外研究のエピソード,そして初期近代英語における文法化や歴史語用論の研究に至るまでの歩みが詳しく語られています.英語史研究者がどのような問題意識をもって英語と向き合っているのかを知る貴重な機会となります.本インタビュー記事についてはウェブ版もありますので,そちらからもお読みになれます.
第4面には,英語史の始まりを問うクイズの解説と解答の記事が掲載されています.クイズですのでここでは詳細は述べませんが,英語史上の重要な年代が複数挙げられており,それぞれに象徴される出来事が紹介されています.
今号も,khelf メンバーの「英語史の魅力を伝えたい」という熱意が随所に感じられる仕上がりとなっています.春の新生活の合間に,ぜひじっくりと紙面をめくってみてください.
最後になりますが,学校・大学の授業等で『英語史新聞』を活用される場合は,使用実績把握のため,こちらのフォームよりご一報いただけますと幸いです.「英語史をお茶の間に」を合言葉とする私たち khelf の活動(hel活)への励みとなりますので,よろしくお願い致します..
『英語史新聞』のバックナンバーも khelf 公式サイト内のこちらのページにて公開されています.第1号から第12号まで,あわせてお楽しみください.
・ 『英語史新聞』第1号(創刊号)(2022年4月1日)
・ 『英語史新聞』号外第1号(2022年4月10日)
・ 『英語史新聞』第2号(2022年7月11日)
・ 『英語史新聞』号外第2号(2022年7月18日)
・ 『英語史新聞』第3号(2022年10月3日)
・ 『英語史新聞』第4号(2023年1月11日)
・ 『英語史新聞』第5号(2023年4月10日)
・ 『英語史新聞』第6号(2023年8月14日)
・ 『英語史新聞』第7号(2023年10月30日)
・ 『英語史新聞』第8号(2024年3月4日)
・ 『英語史新聞』第9号(2024年5月12日)
・ 『英語史新聞』第10号(2024年9月8日)
・ 『英語史新聞』号外第3号(2024年9月8日)
・ 『英語史新聞』第11号(2024年12月30日)
・ 『英語史新聞』第12号(2025年7月7日)

新年度が幕を開けました.去る3月28日(土),英語史を愛する有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 4月号(第18号)』が公開されました.今号は記念すべき年度開始号ということで,春らしい勢いと,ますます研ぎ澄まされた知的好奇心が凝縮された号となっています.
今号の「表紙のことば」は,インド事情に精通した mozhi gengo さんが担当されています.インド中央部の崖の上に建つ櫓から眼下の川を望む印象的な1枚ですが,驚くべきはその構図です.最近,私が heldio 等で激推ししている『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』の表紙デザインに酷似しているのです.「何の因果か」と感じさせる,新年度の始まりにふさわしい劇的な表紙ですね.
執筆陣の記事も,質・量ともに進化が止まりません.ari さんは,キャンセル界隈の語源から,hel活系統図のジョークまで,相変わらずの「ari 節」が炸裂しています.
編集委員のお1人 Grace さんは,私がジョークで提唱した「英語史の塔」建設を紹介してくださったほか,認知言語学の観点から文法に迫る本格的な書評も寄稿されています.lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート」は D ゾーンの深部に入っています.アルファベットの文字ごとに異なる語源の「景色」を語れるのは,通読者ならではの境地でしょう.
Lilimi さんは,仏検の振り返りとともに,NHK ラジオ『古典講読』への熱い思いを綴っています.ラジオ文化を愛する者として,非常に共感を覚える内容でした.mozhi gengo さんは,表紙に関連した記事のほか,valueless と priceless の意味論的な対比など,鋭い言語学的考察を展開されています.
教育現場や学習のヒントも充実しています.sorami さんによる中学生向け語源クイズは,もはや hel 活のインフラと言えるほどの完成度です.みーさんの「小学生と学ぶ英語史」シリーズは,実は大人こそが学ぶべき視点に溢れています.umisio さんによる川上さんの「プロの流儀」に迫る新シリーズ「愛などなくったって…」についても,今後の展開に目が離せません.
ykagata さんは,『古英語・中英語初歩』新装復刊を盛り上げる「30連発」の舞台裏や,ドイツ語を通じた比較言語学的な知見を共有してくれています.新星「あまねちゃん」の,古英語に初めて出会った際の瑞々しい違和感の記録も,ベテラン勢にはない(?)新鮮な視点を与えてくれており人気急上昇です.
しーさんによる『古英語・中英語初歩』のアンバサダー的活用術も要注目です,り~みんさんによる「明るい L と暗い L」の沼も思いのほか深いです,「無職さん」こと佐久間さんによるによる「歯・噛む」のアングロサクソン文化論,そして川上さんによる北欧語混交の歴史的詳述などは,どこを切り取っても英語史のロマンが溢れ出ることを証明しています.また,私も note 記事で「英語史の塔」の攻略法について少し触れさせていただき,今号の Helvillian で取り上げていただきました.
最後は Grace さんによる3月の helwa によるhel活の活動報告と,umisio さんによる編集後記で締めくくらています.
今月号を読んで感じるのは,このコミュニティの熱量と質の高さです.決して英語史だけを語るのではなく,お互いの学び合いを尊重し,高め合う居心地の良さが誌面から伝わってきます.
この春,新しい学びを始めてみたいと思っている皆さん,ぜひこの hel 活の輪に加わってみませんか? まずはプレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」を覗いてみてください.初月無料となっておりますので,この月初に気軽にエントリーしていただければ!
Helvillian 4月号のご案内は,声でも「#1768. Helvillian 4月号が公開! --- この春,ことばのルーツをたどる旅をしよう。」としてお届けしています.ぜひそちらもお聴きくださいね.
heldio 2026年第1四半期のベスト回を決めるリスナー投票を,2026年4月6日(月)より4月12日(日) 23:59 までこちらの投票コーナーにて受け付けています(あるいは以下のQRコードよりどうぞ).ぜひ皆さんのマイベスト10を選んでいただければ幸いです.

上記の通り,本ブログの音声版・姉妹版ともいえる毎朝配信の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」より,2026年第1四半期にお届けしてきた配信回(全90回)のなかからベスト回を決めるリスナー投票イベントを開催します.1人10票まで投票できます.投票会場は本日4月6日(月)から4月12日(日)23:59 までオープンしていますので,この機会に聴き逃した過去配信回などを聴取いただき,マイベストとなる10件をじっくり選んでいただければと思います.
各配信回へのアクセスは,本記事末尾の一覧,あるいは音声コンテンツ一覧よりどうぞ.1月1日配信の「#1677. 2026年,英語史は飛躍します!」から3月31日配信の「#1766. early, ere, erewhile, erstwhile」までの90回分が投票の対象となります.
2026年の幕開けとともに,SNSでのバズりや伝説の名著『古英語・中英語初歩』の新装復刊など,英語史界隈は大いに盛り上がりました.この3ヶ月間の歩みを振り返る意味でも,ぜひ清き10票を投じてみてください.
過去のリスナー投票企画については,ranking の記事をご覧ください.
今朝,同じ投票を呼びかける heldio 配信回をお届けしました.そちらもお聴きいただきつつ,皆さん,奮ってご投票ください.
・ 「#1677. 2026年,英語史は飛躍します!」 (2026/01/01)
・ 「#1678. ヘルメイトといっしょに新年のご挨拶」 (2026/01/02)
・ 「#1679. 『はじめて of 英語史』第10刷プレゼントは誰の手に? --- 年末の「英語史小ネタ50連発」の引用リポストより」 (2026/01/03)
・ 「#1680. 【4.5Mの衝撃】バズの「熱」をデータから読み解く --- SNSと英語史の親和性」 (2026/01/04)
・ 「#1681. judge の綴字と発音をめぐる川上さんの考察」 (2026/01/05)
・ 「#1682. 川上さんの「英語のなぜ5分版」やってます通信 --- 第25弾」 (2026/01/06)
・ 「#1683. heldio 2025年第4四半期のベスト回を決めるリスナー投票 --- 1月13日までオープン」 (2026/01/07)
・ 「#1684. 擬古的スペリング」 (2026/01/08)
・ 「#1685. 表音文字,表語文字,表意文字」 (2026/01/09)
・ 「#1686. 「文字」と「文字遣い」」 (2026/01/10)
・ 「#1687. 漢字は表語文字か表意文字か」 (2026/01/11)
・ 「#1688. 「スペリング=漢字」説を解説します --- 機能的観点から」 (2026/01/12)
・ 「#1689. 「スペリング=漢字」説を解説します --- 規範主義の観点から」 (2026/01/13)
・ 「#1690. mond での質問受付方針の変更について」 (2026/01/14)
・ 「#1691. tennis, recipe, permit --- 命令形に由来する変わった英単語たち」 (2026/01/15)
・ 「#1692. 言語カテゴリーはおおよそプロトタイプと配合の問題である」 (2026/01/16)
・ 「#1693. heldio 2025年第4四半期のリスナー投票の結果発表」 (2026/01/17)
・ 「#1694. 改めて年末バズった mond の「英語に仮名はないのか?」論争について」 (2026/01/18)
・ 「#1695. 文字の表語機能最強説 --- いや表意機能か?」 (2026/01/19)
・ 「#1696. 中英語にあった「男性化」の不思議なトレンド」 (2026/01/20)
・ 「#1697. rump steak --- メルボルンより食レポ英語史」 (2026/01/21)
・ 「#1698. 英語,音声に振り回されすぎ」 (2026/01/22)
・ 「#1699. すべての言語変種はフィクションである」 (2026/01/23)
・ 「#1700. OED の12月のアップデートで「先輩」「駅伝」など日本語から11語が追加」 (2026/01/24)
・ 「#1701. 『英語語源ハンドブック』を題材にしたコンテンツが次々に登場」 (2026/01/25)
・ 「#1702. 1月31日の朝カル講座は very --- 「本物」から大混戦の強意語へ」 (2026/01/26)
・ 「#1703. Austral English --- Edward Ellis Morris 編纂のオーストラリア英語辞書(1898年)」 (2026/01/27)
・ 「#1704. 川上さんの「英語のなぜ5分版」やってます通信 --- 第26弾」 (2026/01/28)
・ 「#1705. khelf 寺澤志帆さんとの対談 --- 「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」200回記念」 (2026/01/29)
・ 「#1706. 伝説の教科書『古英語・中英語初歩』(研究社)が新装復刊」 (2026/01/30)
・ 「#1707. Helvillian 2月号が公開! --- 特集は「裏切り」」 (2026/01/31)
・ 「#1708. 『古英語・中英語初歩』新装復刊のカウントダウン企画「古中英語30連発」を始めています」 (2026/02/01)
・ 「#1709. khelf 寺澤志帆さんとの対談 --- 語源から遠ざかる語形 anthem」 (2026/02/02)
・ 「#1710. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (1) --- 古英語の母音」 (2026/02/03)
・ 「#1711. カンガルーを食べました --- 食レポ英語史」 (2026/02/04)
・ 「#1712. lacolaco さんと helwa 新年会で対談 --- 「英語語源辞典通読ノート」の近況報告」 (2026/02/05)
・ 「#1713. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (2) --- 古英語の子音(前編)」 (2026/02/06)
・ 「#1714. ykagata さんと情報発信論を語る --- helwa 新年会より」 (2026/02/07)
・ 「#1715. リスナー sorami さんによる『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズが始動 --- 中高生のための英語史」 (2026/02/08)
・ 「#1716. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (3) --- 古英語の子音(後編)」 (2026/02/09)
・ 「#1717. 天野優未さんの『英語語源ハンドブック』『はじめての英語史』実況中継がおもしろすぎる」 (2026/02/10)
・ 「#1718. 『英語語源辞典』を通読しているあの2人が初対談 --- helwa 新年会より」 (2026/02/11)
・ 「#1719. カンガルーのたたきをショウガ醤油で --- 食レポ英語史」 (2026/02/12)
・ 「#1720. 『英語のルーツ』文庫化記念 --- 唐澤一友さんとの対談 from 居酒屋KKH」 (2026/02/13)
・ 「#1721. 『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズ第2弾が公開 --- sorami さんとの対談」 (2026/02/14)
・ 「#1722. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (4) --- 古英語の強勢」 (2026/02/15)
・ 「#1723. 『古英語・中英語初歩』新装復刊の裏にはヘルメイトたちのドラマがあった」 (2026/02/16)
・ 「#1724. 「混種語大喜利」 --- 皆さんからの傑作選を発表」 (2026/02/17)
・ 「#1725. オーストラリア先住民アボリジニーの諸言語」 (2026/02/18)
・ 「#1726. 読者の皆さんが作る『英語語源ハンドブック』の輪(前編) from 居酒屋KKH」 (2026/02/19)
・ 「#1727. 読者の皆さんが作る『英語語源ハンドブック』の輪(後編) from 居酒屋KKH」 (2026/02/20)
・ 「#1728. 『古英語・中英語初歩』アンバサダー,しーさんとの対談(前編) --- helwa 新年会より」 (2026/02/21)
・ 「#1729. 『古英語・中英語初歩』アンバサダー,しーさんとの対談(後編) --- helwa 新年会より」 (2026/02/22)
・ 「#1730. 「A→B」という言語変化の矢印のなかを覗き込むと,そこは魑魅魍魎のうごめく世界」 (2026/02/23)
・ 「#1731. 定説は受け入れるのではなく受け止める,そして定説の根拠を学べ」 (2026/02/24)
・ 「#1732. 本日,伝説的入門書『古英語・中英語初歩』が新装復刊」 (2026/02/25)
・ 「#1733. 2月28日の朝カル講座は that --- 指示詞から多機能語への大出世」 (2026/02/26)
・ 「#1734. 「偽装複合語大喜利」 --- 皆さんからの傑作選を発表」 (2026/02/27)
・ 「#1735. 「英語史の塔」をご覧ください」 (2026/02/28)
・ 「#1736. この春は英語史を始めよう! --- 「英語史の塔」の登り方」 (2026/03/01)
・ 「#1737. 川上さんの「英語のなぜ5分版」やってます通信 --- 第27弾」 (2026/03/02)
・ 「#1738. 言語における数(すう) --- 基本編」 (2026/03/03)
・ 「#1739. 言語における数(すう) --- 応用編」 (2026/03/04)
・ 「#1740. Helvillian 3月号が公開! --- 春の陽気でいろんなキャラが登場」 (2026/03/05)
・ 「#1741. メルボルンの老舗 The Mytre Tavern よりお届け」 (2026/03/06)
・ 「#1742. 緊急対談 --- teach/taught に関する中学生の天才的指摘をめぐって」 (2026/03/07)
・ 「#1743. at が動詞化している? --- khelf 寺澤志帆さんとの対談」 (2026/03/08)
・ 「#1744. 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を手に取って皆さんは何を思いますか? --- helwa オフ会より」 (2026/03/09)
・ 「#1745. 広義と狭義の「表語文字」」 (2026/03/10)
・ 「#1746. There is a book on the table. --- 単数性を3回も繰り返して標示したいのはなぜ?」 (2026/03/11)
・ 「#1747. ヘルメイトOGさんとのhel活対談 --- 綴字と発音の乖離をめぐって」 (2026/03/12)
・ 「#1748. sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズが絶好調」 (2026/03/13)
・ 「#1749. 音位転換大喜利 --- たくさん集まってきました」 (2026/03/14)
・ 「#1750. 川上さんの「英語のなぜ5分版」やってます通信 --- 第28弾」 (2026/03/15)
・ 「#1751. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を音読する」 (2026/03/16)
・ 「#1752. 言語における数(すう) --- イベント編」 (2026/03/17)
・ 「#1753. 月刊誌『英語教育』にて新年度の「いのほた連載」がスタートしています」 (2026/03/18)
・ 「#1754. 3月28日の朝カル講座は be --- 英語の「存在」を支える超不規則動詞」 (2026/03/19)
・ 「#1755. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (1)」 (2026/03/20)
・ 「#1756. 「周年」の語感が良化している --- 水野さんの投稿より」 (2026/03/21)
・ 「#1757. 意味の音色 --- semantic prosody」 (2026/03/22)
・ 「#1758. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (2)」 (2026/03/23)
・ 「#1759. 比較級 -er と最上級 -est の語源的関係」 (2026/03/24)
・ 「#1760. furthermore --- 2重比較級を体現している語」 (2026/03/25)
・ 「#1761. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (3)」 (2026/03/26)
・ 「#1762. furthermost --- 比較級の上に最上級を作っている語」 (2026/03/27)
・ 「#1763. 究極の「3重最上級」 --- firstmost, nexmost」 (2026/03/28)
・ 「#1764. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (4)」 (2026/03/29)
・ 「#1765. 英語綴字における <e> の役割」 (2026/03/30)
・ 「#1766. early, ere, erewhile, erstwhile」 (2026/03/31)

新年度が始まりました.英語史の学び始めにふさわしいこの時期,本日は数日後の英語史講座のご案内を致します.
来たる4月11日(土)と12日(日)2日間にわたり,オンラインにて東京言語研究所の春期講座が開講されます.同研究所は,私が学生の頃から憧れをもって仰ぎ見ていた伝統ある言語学の研究・教育機関であり,ここ数年は私も講師として登壇させていただく機会を得ております.
春期講座は,2日間にわたる単発講義のオムニバスです.今年度,私は2日目の4月12日(日)の1限目(10:00--11:20)にて「英語史入門」を担当します.内容は「80分で英語史」です.実は私にとってこれは大きな挑戦です.
普段の大学の講義や,同研究所で担当する10回ほどのシリーズとなる理論言語学講座では,時間をかけてじっくりと英語の歴史を紐解いていきます.しかし,今回はそれをギュッと凝縮した80分間のダイジェスト版となります.1600年以上にわたる英語のダイナミズムをこの短時間でどう描き切るか,現在も最終段階の構成を練りながら,私自身が緊張しつつもワクワクしているところです.
講義の核となるのは,外面史を用いて内面史を解説するという試みです.発音の変化,綴字の変遷,文法の転換,そして語彙の拡大など.これらをバラバラに扱うのではなく,現代英語に潜む「なぜ?」という素朴な疑問を入口に,英語史全体のパノラマが見えてくるような網羅的な内容を目指します.
今回の春期講座では,魅力的な講義が勢揃いしています.heldio にもご出演いただいた嶋田珠巳先生先生(社会言語学)の講座は1日目に予定されています.言語学ファンにとってはたまらない2日間となるはずです.
なお,今年度の秋のシーズンには,同研究所にてシリーズの英語史講座(10週)も担当する予定です.今回の80分間の講義は,そのエッセンスを味わっていただくためのジャンプ台として位置づけています.
いずれもオンライン開催ですので,全国どこからでも,あるいは目下の私のように海外からでも(時差には注意が必要ですが!)ご参加いただけます.後日配信はありませんが,リアルタイムでの充実した議論を楽しみましょう.
申込期限は4月6日(月)の午前10時までとなっています.詳細およびお申し込みは,東京言語研究所の公式HPよりどうぞ.
(以下,後記:2026/04/03(Fri))
本記事と同じ趣旨で,4月3日の heldio にて「#1769. 「80分で英語史」 --- 4月12日に東京言語研究所の春期講座で」をお届けしましたので,ぜひそちらもお聴きいただければ.
1月より推し続けている市河三喜・松浪有著『古英語・中英語初歩』(研究社)が新装復刊となってから,1ヶ月が経ちました.1月以来,hellog や Voicy heldio などで本書に関連する話題をいくつかお届けしてきましたが,本書の中身を直接参照し,古英語の入門講義となるシリーズも始めましたので,今回はそちらをご紹介します.
まず,本書の冒頭を飾る「綴りと発音」をじっくり読んで解説するシリーズを,heldio で4回にわたって配信してきました.解説した部分は研究社の公式HPの試し読みコーナーで閲覧できますので,本書をお持ちでない方も,ぜひそちらを閲覧しつつお聴きいただければと思います.
・ 「#1710. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (1) --- 古英語の母音」
・ 「#1713. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (2) --- 古英語の子音(前編)」
・ 「#1716. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (3) --- 古英語の子音(後編)」
・ 「#1722. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (4) --- 古英語の強勢」
新装復刊後には,古英語テキストパートの2つめのテキスト "Early Britain" を音読し,精読するシリーズも開始しました.今のところ,以下の配信回を heldio でお聴きになれます.本書をお持ちでない方は,当面は本ブログの「#2909. Peterborough Chronicle の Early Britain の記述」 ([2017-04-14-1]) をご参照ください.ただし,詳しい解説やグロッサリーは本書を通じてしかアクセスできませんので,ご関心を持たれた方は,ぜひ本書を入手していただければ.
・ 「#1751. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を音読する」
・ 「#1755. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (1)」
・ 「#1758. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (2)」
・ 「#1761. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (3)」
また,4月から月一で始まる朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座「歴史上もっとも不思議な英単語 --- 語源を探って古英語・中英語原文の世界へ!」でも,本書より古英語や中英語の原文を参照していく予定です.ぜひ『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』にご注目ください.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.

今年度の毎月,朝日カルチャーセンター新宿教室にて「歴史上もっとも不思議な英単語」と題して,英語史のシリーズ講座を展開してきました.『英語語源辞典』(研究社)や『英語語源ハンドブック』(研究社)をお供に,毎回,日常的な単語を1つ取り上げ,そこから縦横無尽に広げたり掘り下げたりしつつ,ダイナミックな英語史を味わおうという趣旨で進めてきました.
今度の土曜日の回は,今年度のシリーズとしては最後となる第12回です.話題としては,最終回に相応しい単語として be 動詞を選びました.90分ではとても語り尽くせそうにない大物単語です.最初に出会う英単語の1つであり,かつ何年も英語を学んできても必ずしもうまく使いこなせない,そんな be 動詞の謎と魅力に迫ります.
以下,be 動詞をめぐってどんな論点があり得るのか,ブレスト風に書き出してみます.
・ be 動詞の起源は?
・ be 動詞の歴史的異形を覗いてみよう!
・ be 動詞の特殊性5点
・ be 動詞は動詞でもあり助動詞でもある
・ 存在を表わす be 動詞
・ 連結辞 (copula) としての be 動詞
・ 仮定法過去 If I were/was a bird, . . . をめぐる考察
・ be 完了とは?
・ be 動詞は人称・数・時制・相・態・法を表わすことができる
・ 死に絶えた be 動詞
・ ain't をめぐる社会言語学的考察
・ 非標準変種における be 動詞の使われ方
ほかにも思いつく点がたくさんあります.講座では,なるべく多くの点に触れ,この得体の知れない,しかし常に付き合って行かざるを得ないナゾの動詞に90分間漬かっていきましょう!
講座への参加方法は,今期もオンライン参加のみとなります.リアルタイムでの受講のほか,2週間の見逃し配信サービスもあります.皆さんのご都合のよい方法でご参加いただければ幸いです.開講時間は 15:30--17:00 となっています.講座と申込みの詳細は朝カルの公式ページよりご確認ください.そして,ぜひお手元に『英語語源辞典』や『英語語源ハンドブック』もご用意いただください.講座が何倍も楽しくなります.
ご案内した講座のお知らせは,先日の heldio でも「#1754. 3月28日の朝カル講座は be --- 英語の「存在」を支える超不規則動詞」として予告編をお届けしましたので,そちらも合わせてお聴きください.
さて,今回で2025年度のシリーズは一区切りとなりますが,4月からも2026年度の新シリーズが始まります.新シリーズ開始とはいっても,少なくとも春期クールについては,2025年度のシリーズの主題「歴史上もっとも不思議な英単語」は引き継いでいく予定です.毎回1つの英単語に注目してダイナミックな英語史の動きを追っていきますが,新年度からは2月25日に研究社より刊行された『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』の古い英語の原文テキストを参照しつつ展開する予定です.新年度春期クールについては,すでに朝カルの公式の案内も出ていますので,そちらから詳細をご確認ください.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.

3月5日に第4回英語史大喜利 (hel_ogiri) をX上で開催しました.今回は,音位転換 (metathesis) の例を寄せてくださいというお題でした.正規の並びの2つの音が,言い間違いの結果ひっくり返ってしまったものの,その並びが後に標準的になってしまったという「嘘から出た誠」のような事例です.言い間違いという人間の避けがたい性質によって新たな語形が生まれてしまうというのは,共感を誘うののか,言語変化のなかでも人気のあるトピックです.
しかし,だからといって面白い例,上手い例がたくさん挙がってくるかといえば,そう簡単なお題でもありません.典型的で教科書的な例はいくつか挙がってきますが,その後が続かないものです.私も大喜利に参加したのですが,限界を感じました.しかし,多くの参加者がもがきながら例を探し,リプライや引用リポストを通じてそれをシェアしてくださったおかげで,おもしろいものが続々と寄せられてきました.以下に,まとめておきたいと思います.
・ aks/ask
・ beorht → bright
・ brand/burn
・ brid → bird
・ cocodrile → crocodile
・ fersc → fresh
・ forst → frost (cf. freeze)
・ gærs → grass
・ hros → horse
・ iern(an), yrn(an) → run
・ mansk → Manx
・ nutrition, nutriment/nurture
・ patron → pattern
・ purpose/propose
・ tax/task
・ three/third
・ thirl → thrill
・ þurh → through
・ wæps → wasp
・ wal (whale) + ros (horse)
・ worht(e) → wrought (cf. work)
crocodile に関しては「#5999. crocodile の英語史 --- 『シップリー英語語源辞典』の意外な洞察」 ([2025-09-29-1]) を参照してください.
なお,最初に寄せられた投稿は,り~みんさんによる以下の複雑な事例でした.
lamella (ラテン語)
↓ 借入
la lemelle (フランス語)
↓ 異分析
l'alemelle
↓ 接尾辞(指小辞)の交替
l'alemette
↓ 音韻転換 ★ココ★
l'amelette
↓ 母音変化
l'omelette
↓ 借入
omelette (英語)
本記事と同じ趣旨で,3月14日の heldio にて「#1749. 音位転換大喜利 --- たくさん集まってきました」をお届けしましたので,ぜひそちらもお聴きいただければ.
2月28日(土)に,今年度の朝日カルチャーセンターのシリーズ講座「歴史上もっとも不思議な英単語」の第11回(冬期クールとしては第2回)が開講されました.今回注目した単語は「that --- 指示詞から多機能語への大出世」です.
現代英語における that は,指示詞,関係詞,接続詞をはじめとする様々な文法的な役割を果たす多義語です.多くの機能はすでに古英語にもみられますが,各々の機能はどのようにして起こり,発展してきたのでしょうか.超高頻度の単語でもあり,いちいち気にしたこともないと思いますが,今回あえて注目し,歴史的発展を追いかけてみました.講義は,that の八面六臂の活躍の秘密に迫る濃密な90分となりました.
朝カル講座第11回の内容を markmap によりマインドマップ化して整理しました.復習用にご参照いただければ.

なお,この朝カル講座のシリーズの第1回から第10回についてもマインドマップを作成しているので,そちらもご参照ください.
・ 「#5857. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第1回「she --- 語源論争の絶えない代名詞」をマインドマップ化してみました」 ([2025-05-10-1])
・ 「#5887. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第2回「through --- あまりに多様な綴字をもつ語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-06-09-1])
・ 「#5915. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第3回「autumn --- 類義語に揉み続けられてきた季節語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-07-07-1])
・ 「#5949. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第4回「but --- きわめつきの多義の接続詞」をマインドマップ化してみました」 ([2025-08-10-1])
・ 「#5977. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第5回「guy --- 人名からカラフルな意味変化を遂げた語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-09-07-1])
・ 「#6013. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第6回「English --- 慣れ親しんだ単語をどこまでも深掘りする」をマインドマップ化してみました」 ([2025-10-01-1])
・ 「#6041. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第7回「I --- 1人称単数代名詞をめぐる物語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-11-10-1])
・ 「#6076. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第8回「take --- ヴァイキングがもたらした超基本語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-12-15-1])
・ 「#6076. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第8回「take --- ヴァイキングがもたらした超基本語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-12-15-1])
・ 「#6098. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第9回「one --- 単なる数から様々な用法へ広がった語」をマインドマップ化してみました」 ([2026-01-06-1])
・ 「#6139. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第10回「very --- 「本物」から大混戦の強意語へ」をマインドマップ化してみました」 ([2026-02-16-1])
次回の第12回は3月28日(土)で,今年度の最終回となります.テーマは「be --- 英語の「存在」を支える超不規則動詞」です.開講形式は引き続きオンラインのみで,開講時間は 15:30--17:00 となります.ぜひ朝日カルチャーセンター新宿教室の公式HPより詳細をご確認ください.
また,2026年度も朝カルでの英語史講座を継続します.シリーズとしての大テーマも2025年度の「歴史上もっとも不思議な英単語」を引き継ぎますが,新たな試みとして,新刊書『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を参照し,古英語や中英語の原文に挑む機会を増やしていく予定です.詳細はこちらの公式ページよりご覧ください.

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昨日3月13日,大修館書店より月刊誌『英語教育』の4月号が発売されました.今月号より,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに,新しい連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」が始まっています.
本連載は,2人で配信している YouTube 「いのほた言語学チャンネル」から派生した連載企画です.早いもので YouTube での活動も4年を超えましたが,動画でお届けしてきた言葉のダイナミズムや楽しさを,今度は誌面を通じてもお届けしたいと考えています.
連載の趣旨としては,英語教員の方々はもちろん,英語を学ぶすべての読者の皆さんに,社会言語学と英語史という2つのレンズを通して,英語という言語の奥深い魅力を再発見していただくことにあります.見開き2ページというコンパクトな形式ですが,2人の対談回もあれば,片方がトピックを提供してもう片方がコメントを寄せる回もあるなど,バラエティに富んだコンテンツとなっていく予定です.
第1回は「言語学・英語学の世界にようこそ」と題し,2人の自己紹介とともに本シリーズの狙いについてお話ししています.社会言語学がどのように私たちのコミュニケーションに関わるのか,あるいは英語史がいかにして現代英語の「なぜ?」に光を当てるのか,そのエッセンスを詰め込みました.
また,「いのほた」コンビによる出版物としては,昨年10月に『言語学でスッキリ解決! 英語の「なぜ?」』(ナツメ社)も刊行されています.こちらも連載と合わせてお読みいただけますと幸いです.
英語という言語を,単なる暗記の対象としてではなく,人間が作り上げてきた生き生きとした文化装置として捉え直す.そんな知的な冒険を,毎月の連載を通じて読者の皆様と共有できればと願っています.
新年度にむけて,英語(史)の世界を深めていきたいという方は,ぜひ毎月13日前後の『英語教育』の連載をお見逃しなく!
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第1回 言語学・英語学の世界にようこそ」『英語教育』2026年4月号,大修館書店,2019年3月13日.42--43頁.
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』 ナツメ社,2025年.
2月25日に刊行された『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を,この1ヶ月半ほど推しに推しています.本書に関する研究社の公式HPには,本書の内容,目次,試し読みコーナーなどが設けられていますが,ページの下方には「関連記事」や「関連書籍」の案内もあります.本書を手に取る多くの方は広く英語史に関心があるのではないかと思われますので,これらはたいへん有用な情報となるはずです.
とりわけ「関連記事」の1つめとして挙げられている「英語史関連書籍の一覧をアップしました」(2月27日付けで公開)はお薦めです.そのリンク先からダウンロードできる PDF ファイルには,研究社から刊行されている15冊の英語史周辺書籍の一覧が収められています. *
この一覧は,広報の一環として研究社がまとめられたものですが,実はここには khelf(慶應英語史フォーラム)のhel活が関わっています.昨年9月13日に,khelf(慶應英語史フォーラム)および helwa の主催する音声配信イベント「英語史ライヴ2025」が開催され,おおいに盛り上がりました(cf. 「#5984. 昨日の「英語史ライヴ2025」おおいに盛り上がりました!」 ([2025-09-14-1])).イベント当日は,書籍展示のために研究社の担当の方々に会場にお越しいただいたのですが,イベントに先立って,展示するにふさわしい英語史関連書を選別すべく,khelf の大学院生メンバーも準備に関わっていたのです.英語史を専攻する大学院生の目利きが入っており,私自身も事前に確認させていただいた,その書籍の一覧がイベントで配布されたという次第です.
さて,このたび『古英語・中英語初歩』がめでたく新装復刊となりました.この機会を捉えて,半年前に準備されたあの一覧を再利用できないかと思い立ち,研究社の担当に打診したところ,このような形で公開されるに至ったという次第です.
なお,一覧に含まれている書籍のうち5冊については,khelf のメンバーを中心とする英語史を専攻する学徒たちが,Voicy heldio でその内容を紹介する「声の書評」 (voice_review) という新しい企画を,「英語史ライヴ2025」にて実施しました.その配信回はアーカイヴとして残っていますので,以下の hellog 記事を経由してお聴きいただければと思います.
・ 「#6005. khelf の新たなhel活「声の書評」が始まりました --- khelf 藤原郁弥さんが紹介する『市河三喜伝』」 ([2025-10-05-1])
・ 「#6006. 声の書評 --- khelf 木原桃子さんが紹介する『英語文化史を知るための15章』」 ([2025-10-06-1])
・ 「#6007. 声の書評 --- khelf 寺澤志帆さんが紹介する『聖書の英語の研究』」 ([2025-10-07-1])
・ 「#6008. 声の書評 --- khelf 泉類尚貴さんが紹介する『コーパスと英文法』」 ([2025-10-08-1])
・ 「#6012. 声の書評 --- 小河舜さんと khelf 疋田海夢さんが紹介する『英語固有名詞語源小辞典』」 ([2025-10-12-1])
選ばれた英語史関連書籍の一覧です.英語史の学びのために,ぜひご利用ください.一覧へのアクセスはこちらのページよりどうぞ.

先月,2026年2月は,知識共有プラットフォーム mond に寄せられた10件の問いに回答しました.今月も英語史の奥深さを感じさせる鋭い質問が並び,回答する側としても知的な刺激を多くいただいた1か月となりました.
2月の回答を振り返ってみると,話題や分野が多岐にわたっていました.音韻論,形態論,統語論,語用論,語彙論の問い,そして他言語との比較対照から生じた疑問等が寄せられ,多様で刺激的な問答となりました.とりわけ音韻論と形態論が関わる語形成の話題が多かったように思われます.
以下に2月分の10の問いと,対応する mond の回答へのリンクを時系列で示します.未読のものがありましたら,英語史の読み物として楽しんでいただければ.
1. foremost, hindmost の most はなにゆえ後ろについているのでしょうか?(2月3日)
2. 2人称代名詞の親称 thou と敬称 ye の使い分けがまだ健在であった時代の英語では,キリスト教の神に言及するときには thou と ye のどちらを用いましたか?(2月5日)
3. 「ねる」が「ねんね」になるように頭の1音を2回くりかえすタイプの名詞は英語にはありますか?(2月8日)
4. 研究社『英語語源辞典』にて.dusk 「黄昏」の項を引くと,ME dusk(音位転換) < OE dox < Gmc *duskaz と書いてありました.これってつまり,二重に音位転換が起こって,ひっくり返ったものがさらに元へ戻ったということなのでしょうか? 1回の音位転換はよく聞かれますが,2回連続というのはすごく珍しい例なのではないでしょうか!?(2月13日)
5. 英語では語末の -ng, -mb の g, b が発音されず鼻音だけになっていますが,-nd もいったんは [n] だけになりゆりもどした感じですか?(2月15日)
6. ドイツ語では名詞 + -ig による形容詞に -en をつけて動詞化することができますが,英語の名詞 + -y ではできません.これはドイツ語が拡大的であるのか,英語のほうだけ廃れたのかどちらなのでしょうか?(2月17日)
7. なぜ英語では直説法,仮定法ぐらいしか「法」とつくものがないのでしょうか?(2月19日)
8. ma'am は2つの a の間の d が脱落した語形ですが,英語は母音の間の d は明瞭に発音する言語のはずです.この d の脱落した語形の変則性について歴史的に解説をお願いします.(2月21日)
9. Say は say that SV や say "~" のように発言内容を目的語にとることができますが,say me のように人を目的語にとることはできません.したがって,人を主語にした受動態の文は作れないことになります.しかし,「~だと言われている」という意味で,S is said to V という表現は許容されています.例:She is said to be a nurse. 「彼女は看護師だと言われている.」 これはなぜでしょうか.(2月23日)
10. people が person の複数形の単なる代用になったのはいつですか?(2月25日)
とりわけ印象的だったのは,4番目の dusk における2重の音位転換 (metathesis) に関する質問です.ゲルマン祖語の *duskaz が古英語までに dox と音位転換を起こし,さらに中英語以降に再び dusk へと音位転換するプロセスは,一見すると元に戻ったようで,珍しい例と考えられるかもしれません.しかし,回答では,実際にはそれほど珍しいことではないことや,言語の変化と変異の複雑さにも言い及びました.実際,この問答を紹介した X 投稿10問のなかで最も多くの反響をいただきました.この問答からは,言語変化の機微に関する議論が発展し,heldio にて「#1731. 定説は受け入れるのではなく受け止める,そして定説の根拠を学べ」や「#1730. 「A→B」という言語変化の矢印のなかを覗き込むと,そこは魑魅魍魎のうごめく世界」をお話するに至りました.ぜひそちらもお聴きください.
また,2番目の神に対して thou と ye のいずれを用いたのかという問題も,英語史における代名詞の親称・敬称の歴史を考える上で欠かせない論点で,関心が集まりました.
7番目の,英語における「法」の少なさに関する質問も注目を集めました.他言語の観点から英語をみると,質問の幅も広がっておもしろいですね.

先日2月28日(土),英語史の周囲に集まる有志による月刊ウェブマガジン Helvillian 3月号(第17号)が公開されました.春の足音を感じる今号も,圧倒的なボリュームと多角的な視点が詰まった1冊となっています.
今号の「1. 表紙のことば」は,私,堀田が担当させていただきました.滞在先の国際都市メルボルンを流れるヤラ川の早朝の風景です.多言語社会に暮らしてみて感じたことを綴っています.
続く執筆陣はいつものように豪華です.「2. ari」さんは,2月の季節感あふれるクイズや,AI を駆使した最新の英語教育ツール,さらに偽装複合語 holiday をめぐる話題まで,八面六臂の活躍.シリーズ記事も多く,いつもどこからネタを探してくるのかと不思議なほどですね.
「3. Grace」さんは,文字論の本を読みながら思いついたという悪名高い(?) literal 周辺の語彙を散策し,「4. lacolaco」さんの「英語語源辞典通読ノート」は D ゾーンを着実に進んでいます.
インド短期滞在の報告が楽しみな「5. mozhi gengo」さんは,現地の動物園事情から古英語の2月の呼び名 Solmonað,そして『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』の表紙デザインから受けたインスピレーションまで,驚くべき守備範囲の広さを見せています.
新連載や教育現場からの報告も充実しています.「6. sorami」さんによる中学生向け語源クイズは,ヘルメイトによるこの1ヶ月のhel活のなかでも大ヒットといってよいでしょう.「11. みー」さんの1月からシリーズ化が始まっている「小学生と学ぶ英語史」は,次世代に英語史や英語語源の楽しさを伝える素晴らしい試みです.「10. こじこじ先生」による英検と入試の現実的なアドバイスを含め,Helvillian 周りの活動はついに広い意味でのhel活は小中高のすべてをカバーするに至っています.「7. umisio」さんの「日曜研究」シリーズは,教科書・教育問題へ切り込んでおり,筆が止まりません.
「8. ykagata」さんの独英語比較シリーズは,safe や take などの基本語を扱うことが多いですが,そのほか総選挙の報道やラジオ放送の改編といった時事ネタも積極的に取り上げています.「9. あまねちゃん」さんは,note 初投稿ながら,景気のよい Wes hal! の話題などでインパクトを与え始めています.
「12. り~みん」さんの「千本ノック」論は,私が千本ノックを通じて何をしてきたのか,自分でも意味が分かっていなかったことに,1つのヒントを与えてくれた記事でした.「13. 佐久間」さんの歴史から見た生成AI論も,読み応えがあります.今こそ読んでおくべき記事ですね.
「14. 川上」さんは,英語史を硬派に攻める急先鋒ですが,今回はレギュラーの「やってます通信」のほかラテン語の流入を歴史的背景とともに前・後編で詳述しています.「15. 堀田」のセクションでは,メルボルンでの「開封の儀」や「英語史の塔」建設について触れています.
最後は「16. Grace」さんによるこの1ヶ月の helwa 活動報告と「17. umisio」さんによる編集後記です.編集委員でもあるお2方の3月号の総括が,なんともおもしろい.2月を通じて,皆でhel活を走り抜けてきたことがよくわかる締めとなっています.
今月も,寄稿者各々の英語史愛が爆発した号となっています.ぜひじっくりとお読みいただければと思います.
hellog 読者の皆さんも,このようなhel活コミュニティに加わってみませんか? ご関心のある方は,ぜひ気軽にプレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」においでください.毎週火・木・土の午後6時に,heldio と変わらぬ熱量でお会いしましょう!
2月16日(月)に私の X アカウント @chariderryu にて,第3回英語史大喜利 (hel_ogiri) を開催しました.今回のお題は,おもしろい偽装複合語 (disguised_compound) を寄せてくださいというものでした.ちょうど『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』のカウントダウン企画「古中英語30連発」の No. 22 として「daisy 「ヒナギク」の語源が古英語の dæges ēage "day's eye" だと知っていましたか?」と投稿した直後に,今回の大喜利も開催しました.
大喜利開催の協力者でもある heldio/helwa リスナーの ari さんのユーモラスな入れ知恵により,今回の大喜利は,遊び心を込めて「ごん,お前だったのか」選手権と命名されました.ネタ披露のフォーミュラとして,次の「ごん構文」が X 上に飛び交いました.
・ Daisy 「ごん,お前… Day (日) の Eye (目) だったのか…」
過去2回の大喜利に比べ,かなり難易度の高いお題でしたが,英語語源の猛者たちが多くの良質な例を寄せてくださいました.いつものように私の独断と偏見で,おもしろかったもの,勉強になったものをいくつか掲載します.
・ Gospel 「ごん,お前… Good (良い) Spell (知らせ) だったのか…」
・ Curfew 「ごん,お前… Cover (消す) Fire (火) だったのか…」
・ But 「ごん,お前… By (そばに) Out (外に) だったのか…」
・ About 「ごん,お前… On (上に) By (そばに) Out (外に) だったのか…」
・ Kitchen 「ごん,お前… Cook (料理する) の -ina (場所) だったのか…」
・ Don 「ごん,お前… Do (する,置く) の On (上に) だったのか…」
・ Lapwing 「ごん,お前… Leap (跳ねる) Wink (ウィンク) だったのか…」
・ Answer 「ごん,お前… And (に対して) Swear (誓う) だったのか…」
・ Worship 「ごん,お前… Worth (価値) -ship (があること) だったのか…」
・ Chameleon 「ごん,お前… Khamaí (地を這う) Léōn (獅子) だったのか…」
・ Zebra 「ごん,お前… Equus (馬) Ferus (野生) だったのか…」
・ Giraffe 「ごん,お前… Zurnā (ラッパ) Pāy (足) だったのか…」
・ Pyjamas 「ごん,お前… Pāy (足) Jāma (服) だったのか…」
・ Philip 「フィリップ,お前… Philéō (好き) Híppos (馬) だったのか…」
・ Barn 「ごん,お前… Bere (大麦) Ærn (家屋) だったのか…」
そして,ari さんが,まさかの掟破りのフォーマットで11連発.
その bridal は eleven の決まりがあった.11時,neighbor の Marshal が alarm を鳴らすと,一匹の squirrel が vinegar と garlic 塗れの handkerchief を奪い去った.この dismal な光景こそが,求婚に対する彼女の明確な answer だった.
こんなにたくさん例が集まるとは! ぜひ英単語語源学習とボキャビルにご活用ください.
皆さんから寄せていただいたのは,大部分が英語からの例でしたが,以下は寄せていただいた日本語からの例です.日本語を主とすると大変なことになりそうですね.
・ 聖(ひじり) 「ごん,お前… 日 (ひ) 知り (しり) だったのか…」
・ 社(やしろ) 「ごん,お前… 屋 (や) 代 (しろ) だったのか…」
・ 仏(ほとけ) 「ごん,お前… 浮屠 (ふと=ブッダ) 家 (け) だったのか…」(諸説あり)
本記事と同じ趣旨で,2月27日の heldio にて「 #1734. 「偽装複合語大喜利」 --- 皆さんからの傑作選を発表」をお届けしました.ぜひそちらもお聴きください.

昨日2月25日(水),ついに古英語・中英語の伝説的な教科書『古英語・中英語初歩』が新装復刊となりました.1ヶ月前の「#6117. 伝説的入門書『古英語・中英語初歩』が新装復刊されます!」 ([2026-01-25-1]) を皮切りに,この hellog でも,また他のメディアでも,本書の1ファンとして今回の復刊を祝い,待ち望んできましたが,ついに入手できるようになりました.
本書は初学者が古英語および中英語の「初歩的知識を得ること」を目的として書かれています.本格的な科学的研究への第一歩として,あるいはそこまで行かなくとも,現代英語を歴史的な観点から深く理解するための入り口として,これほど丁寧で優しい作りとなっている教科書は稀です.
本書の構成は,大きく古英語パートと中英語パートに分かれています.それぞれの部門において,まず綴字・発音,文法,時代背景に関する解説がなされます.とりわけ現代英語から距離のある古英語については,細かく解説されています,その後に実際の原文を読み解く「テキスト編」が続きます,語学書として王道の構成です.特筆すべきは,初学者の便宜のために,各パートの最初のいくつかのテキストには,IPA による発音記号が1単語1単語について丁寧に付されている点です.これは,慣れない古い文字体系に戸惑う読者にとって,きわめて手厚い計らいです.
すべてのテキストに,現代英語訳が付されている点も見逃せません.英語で書かれた古英語・中英語の教科書では,現代英語訳は省略されるのが通例ですが,本書ではあえてこれを完備することで,現代英語との語順や綴字の対比を促す工夫がなされています.日本の英語学習者のツボを押さえた解説と相まって,独学を可能にするための情報が,この一冊の中に完全に閉じ込められています.
巻末には,テキストに現われる単語を網羅したグロッサリー(小辞典)も付いています,この一冊を仕上げれば,より専門的な英語史の世界へと羽ばたく準備が整うとともに,歴史的な観点からの現代英語の理解がぐんと深まるでしょう.今回の新装復刊にあたっては,旧版よりもコンパクトで,鞄に入れて持ち運びやすい現代的な装丁に生まれ変わっています.
定価3,300円(税込)という価格は,この充実した内容からすれば間違いなく「お得」と断言できます.これまで英語史のおもしろさに魅せられながらも,古英語や中英語の原文に踏み込む勇気は出なかったという方々にとって,本書は背中を押してくれる最高の入門書となるはずです.ぜひ、この伝説的入門書を手にとって,英語という言語の懐の深さを体感してください.表紙に扉のデザインが施されており,背景も扉の向こう側もディープでダークな色ですが,これは古英語・中英語の「深遠さ」や「沼」を表わしているものと解釈したいところです.扉を開くには少し怖そうですが,それだけ濃厚な世界が待っているのだと捉えていただければ.
昨日の heldio にて,本記事と同じ趣旨を「#1732. 本日,伝説的入門書『古英語・中英語初歩』が新装復刊」として熱量をこめてお届けしました.ぜひそちらもお聴きいただければ.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.

今年度は月1回,朝日カルチャーセンター新宿教室で英語史講座を開いています.シリーズタイトルは「歴史上もっとも不思議な英単語」です.日常的でありながらも深い歴史やいわくありげな背景をもっている英単語を毎回1つ選び,『英語語源辞典』(研究社)や『英語語源ハンドブック』(研究社)等の記述を参照しながら,その単語の魅力に迫り,同時に英語史のダイナミズムをも感じていただきます
2月28日(土)の講座は冬期クールの第2回となります.今回取り上げるのは,あまりに多義・多機能で正体が何なのかが分からなくなりそうな that という単語に注目します.1音節の小さな語ですが,ある意味で英文法を背負っているかのような八面六臂の活躍.その起源と発展をたどると,この単語の理解が増し,愛着も湧いてくること間違いなしです.
以下,that をめぐってどんな論点があるのか,ブレスト風に書き出してみます.
・ Is that that that that that that refers to? / That that is is that that is not is not is that it it is.
・ that と定冠詞 the の関係は?
・ 指示詞の th- と疑問詞の wh- の関係は?
・ 直示性の単語たち:this, these, that, those
・ this 単独では人を指せるけれど,that 単独だと失礼になるのはなぜ?
・ those who などと those 人々を指し得るのはなぜ?
・ I think that . . . . などの that 節はいかにして生まれたか?
・ ゆるい副詞節を導く that
・ 関係代名詞の that は,他の関係代名詞と何が異なるのか?
・ that の「省略」,あるいは虚辞の that について
ほかにも論点は挙がってくるものと思われます.that のすべてを90分で語り尽くすことはできませんが,歴史をたどることで,その魅力をあぶり出したいと思います.
講座への参加方法は,今期もオンライン参加のみとなります.リアルタイムでの受講のほか,2週間の見逃し配信サービスもあります.皆さんのご都合のよい方法でご参加いただければ幸いです.開講時間は 15:30--17:00 となっています.講座と申込みの詳細は朝カルの公式ページよりご確認ください.
なお,冬期クールの第3回は以下の通りの予定です.春に向けて,英語史の学びを盛り上げていきましょう!
・ 第12回:3月28日(土) 15:30~17:00 「be --- 英語の「存在」を支える超不規則動詞」
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
先日ご紹介した「#6133. 日英語の「語彙の3層構造」で大喜利をしました」 ([2026-02-10-1]) に引き続き,2月8日(日)に私の X アカウント @chariderryu にて,おもしろい混種語 (hybrid) を寄せてくださいという趣旨のお題を立てて,呼びかけました.ちょうど『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』のカウントダウン企画「古中英語30連発」の No. 14 として「英語も日本語もちゃんぽん(雑種語)がお好き?」と投稿した直後のことでした.
中英語からの例として,英・語幹 + 仏・接尾辞 = goddess (女神),仏・語幹 + 英・接尾辞 = beautiful (美しい),仏・語幹 + 英・語幹 = court house (裁判所庁舎)を挙げつつ,このような混種語で,おもしろい例が,英語にも,そしてとりわけ日本語にもたくさんあるので,皆さんに出していただこうと考えた次第です.集まってきた例は,事実上すべて日本語からの例でしたが,唸らされるようなおもしろい例をたくさん挙げてくださいました.ありがとうございます.以下,独断と偏見で傑作選を掲載します.
【 食物・料理部門 】
・ カレー南蛮そば
・ ツナおろしキムチ和風パスタ
・ うにいくら濃厚クリームパスタ
・ 生バウムケーキショコラクリーム
・ 生チョコトリュフ芳醇ミルクティー(ブルボン)
・ タンドリーチキンブルゴーニュ風パイ包み焼き
【 場所の名前部門 】
・ 横浜アンパンマンこどもミュージアム
・ 白浜エネルギーランド海ゲート駐車場
【 その他,商品名等 】
・ カラオケ大会
・ 京都サンガF.C.
・ キッチン収納棚
・ ドモホルンリンクル
・ サマージャンボ宝くじ
・ スーパーエネルギー回収
・ 仲良しアベック専用シート
・ ルスツリゾートゴンドラリフト券
・ 反復学習ソフト付き正規表現書き方ドリル(技術評論社)
・ クライネ・ソプラニーノ・リコーダー・奏者
【 英語より特別部門:「希羅希羅ネーム」(ギリシア語とラテン語の混種語) 】
・ pseudo-science
・ finalize
・ television
・ sociology
【 大喜利に参加できなかった残念な語 】
・ バカ旦那
思ったよりも日常は混種語にあふれていますね.お寄せくださった皆さん,ありがとうございました.
本記事と同じ趣旨で,2月17日の heldio にて「#1724. 日英語「混種語大喜利」 --- 皆さんからの傑作選を発表」をお届けしました.ぜひそちらもお聴きいただければ.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
2月25日(水)に研究社より『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』が刊行されます.本書の1ファンとして,3週間ほど前より復刊を祝って盛り上げるべく,様々な関連企画を実施しています.ついに刊行1週間前となりました.
先日2月13日(金),研究社のご厚意により本書のホヤホヤの出来上がり見本を,目下滞在中のメルボルンまでお送りいただきました(ありがとうございます!).興奮のあまり,すぐに「開封の儀」を収録し,翌日には YouTube や Voicy で配信しました.盛り上げコンテンツとして興奮の様子が伝わるかと思いますので,ぜひご視聴ください.
・ YouTube heltube 版:「特別配信 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』開封の儀」
・ Voicy heldio 版:「特別配信 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』開封の儀」
・ note でも関連記事を書いています:「メルボルンで「開封の儀」 --- 研究者のちょっと幸せな朝」
この3週間で折に触れていくつかのメディアで関連コンテンツを公開してきましたが,以下にまとめておきます.とりわけ heldio での「『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ」は,古い英語に初めて触れる方にお薦めです.本書を手に取る前に,ぜひお聴きいただければ.
【 hellog 】
・ 「#6117. 伝説的入門書『古英語・中英語初歩』が新装復刊されます!」 ([2026-01-25-1])
・ 「#6120. 『古英語・中英語初歩』新装復刊のカウントダウン企画「古中英語30連発」を始めています」 ([2026-01-28-1])
【 heldio 】
・ 「#1706. 伝説の教科書『古英語・中英語初歩』(研究社)が新装復刊
・ 「#1708. 『古英語・中英語初歩』新装復刊のカウントダウン企画「古中英語30連発」を始めています」
・ 「#1710. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (1) --- 古英語の母音」
・ 「#1713. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (2) --- 古英語の子音(前編)」
・ 「#1716. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (3) --- 古英語の子音(後編)」
・ 「#1722. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (4) --- 古英語の強勢」
・ 「#1723. 『古英語・中英語初歩』新装復刊の裏にはヘルメイトたちのドラマがあった」
【 X(旧Twitter) 】
・ 私の X アカウント @chariderryu より,カウントダウン企画「古中英語30連発」を展開しています.
あと1週間,待ちきれないですね!
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
1月31日(土)に,今年度の朝日カルチャーセンターのシリーズ講座「歴史上もっとも不思議な英単語」の第10回が,冬期クールの第1回として開講されました.テーマは「very --- 「本物」から大混戦の強意語へ」でした.
very といえば,最も日常的で無標な強意語 (intensifier) と認識されていると思います,あまりに卑近な単語なので深く考えたこともないかもしれませんが,英語史的にも様々な観点から議論できる,話題の尽きない語彙項目です.講義では,very の起源と発展をたどり,他の類義語と比較し,強意語という語類の特異な性質に迫りました.濃密な90分となったと思います.
この朝カル講座第10回の内容を markmap によりマインドマップ化して整理しました.復習用にご参照いただければ.

なお,この朝カル講座のシリーズの第1回から第9回についてもマインドマップを作成しているので,そちらもご参照ください.
・ 「#5857. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第1回「she --- 語源論争の絶えない代名詞」をマインドマップ化してみました」 ([2025-05-10-1])
・ 「#5887. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第2回「through --- あまりに多様な綴字をもつ語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-06-09-1])
・ 「#5915. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第3回「autumn --- 類義語に揉み続けられてきた季節語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-07-07-1])
・ 「#5949. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第4回「but --- きわめつきの多義の接続詞」をマインドマップ化してみました」 ([2025-08-10-1])
・ 「#5977. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第5回「guy --- 人名からカラフルな意味変化を遂げた語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-09-07-1])
・ 「#6013. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第6回「English --- 慣れ親しんだ単語をどこまでも深掘りする」をマインドマップ化してみました」 ([2025-10-01-1])
・ 「#6041. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第7回「I --- 1人称単数代名詞をめぐる物語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-11-10-1])
・ 「#6076. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第8回「take --- ヴァイキングがもたらした超基本語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-12-15-1])
・ 「#6076. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第8回「take --- ヴァイキングがもたらした超基本語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-12-15-1])
・ 「#6098. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第9回「one --- 単なる数から様々な用法へ広がった語」をマインドマップ化してみました」 ([2026-01-06-1])
次回の第11回は2月28日(土)で,主題は「that --- 指示詞から多機能語への大出世」となります.開講形式は引き続きオンラインのみで,開講時間は 15:30--17:00 です.ご関心のある方は,ぜひ朝日カルチャーセンター新宿教室の公式HPより詳細をご確認の上,お申し込みいただければ幸いです.

2022年の秋に大阪で開催された「コトバの祭典」というべき大規模な展示を覚えていますでしょうか? 私自身もちらっとだけ展示協力の形で関わらせていただいた国立民族学博物館(民博)の特別展「Homō loquēns 『しゃべるヒト』 --- ことばの不思議を科学する」です.本ブログでも,「#4876. 国立民族学博物館で言葉の特別展が始まっています!」 ([2022-09-02-1]) および 「#4955. 国立民族学博物館の特別展「しゃべるヒト」の開催は11月23日(水)までです」 ([2022-11-20-1]) で取り上げたことがありました.
当時,民博に訪問できなかった方,あるいは展示の興奮をもう一度味わいたいという方に朗報です.この度,同特別展示のウェブ版が公開されました.以下よりアクセスしてみてください.
・ 「Homō loquēns 『しゃべるヒト』 --- ことばの不思議を科学する」ウェブサイト
ウェブ版では,実際の展示室で紹介されていたコンテンツが,デジタルアーカイブの形で再構成されています.「コトバで伝わるしくみ」「コトバを操る身体のしくみ」「コトバを身につけるしくみ」「コトバの多様性」「コトバとヒトの関係の多様性」「コトバの研究の多様性」といった多岐にわたるテーマが網羅されており,いながらにして言語学の最前線に触れることができます.
さて,私自身がこのプロジェクトにおいて展示協力として関わらせていただいたのは,「言語の分岐」に関するセクションでした.「英語の300年間」と題する図で,近代における英語の世界的な拡大と,それに伴う多様化(分岐)が示されています.
・ 「言語の分岐 英語の300年間」
ここではイギリス諸島で話されていた英語の諸変種がベースとなって,そこからアメリカ,アジア,アフリカ,オセアニアへ拡散していき,新たな変種が派生していく様子が模式的に描かれています.言語が地理的に離れ,時間の経過とともに独自の進化を遂げていく様子は,言語のダイナミズムを感じさせます.英語史という時間軸の視点と,英語方言学という空間軸の視点が交差する様を味わうことができると思います.
こちらのウェブサイトは,未完成の部分もありますが,今後順次公開されていくことになるとのことです.特別展での展示パネルのテキストや図表がこのように公開されることで,一過性のイベントで終わることなく,言語学や英語史の学習リソースとして永続的に活用できるようになったことは,とても有意義なことです.
民博の展示室で圧倒されたあの日から数年が経ちましたが,こうしてウェブ版として再会してみると,改めてコトバという存在の奥深さに気づかされます.ぜひ皆さんも,このデジタル特別展に訪れてみてください.
なお,当時,特別展を楽しんだ私の感想は,heldio 配信回としても記録されています.ご関心のある方は,「#536. 民博特別展「しゃべるヒト」に訪問中」をお聴きいただければ.
2月9日(月)に「いのほた言語学チャンネル」の最新回が公開されました.「#403. 英語話者は単語を聞いてスペリングがわからないときはどうする?」と題して,「スペリング=漢字」説をご紹介しました.
この説を紹介することになったきっかけは,昨年末の12月28日に回答した質問・応答サービス mond でのとある問答が X(旧Twitter)で大きな反響を呼び,365万インプレッションという驚異的な注目を集めたことにあります.質問は「日本語では漢字がわからなければ仮名で書けるが,英語では正しい綴りを知らない場合,ネイティブはどうしているのか?」というものでした.文字論の観点からも,きわめておもしろいお題でした.
私はかねてより,英語のスペリングは,その機能において漢字に近いという「スペリング=漢字」説を唱えています.英語のアルファベット文字は,表音文字であり,とりわけ1文字1音を原則とする単音文字とされますが,それが1文字以上組み合わさったスペリングという単位になると表語文字の機能を帯び始めます.例えば,doubt のスペリングは確かに単音文字の組み合わせでできていますが,b のように何の音にも対応しない文字が含まれています.doubt というスペリング全体で考えると,それは1つの視覚的な「図像」であり,その図像が「疑」を意味する英単語を表わしています.つまり,スペリング全体として表語文字的な機能を帯びているのです.
日本語で「疑」という漢字をパーツに分解せずパターンの塊として認識するように,英語話者も doubt という5文字の並びを1つの視覚的単位として認識している.つまり,中身を顕微鏡で見ればアルファベットという表音文字の組み合わせですが,スペリングという単位になると,機能的には「漢字モード」として運用されているといってよいのです.
では,質問にあったように,綴字がわからないときはどうするのか.ここで英語における「仮名モード」が登場します.それがフォニックスや,とりあえず音を写し取る暫定的なスペリングです.英語にも「漢字モード」と「仮名モード」という2つのモードの切り替えが存在するというのが,私の見立てです.
動画内では,この文字論的なお話に加え,スペリングの間違いが社会的な規範のプレッシャーを強く受けるという点でも,漢字とスペリングが似ているという側面について井上逸兵さんと議論しています.ぜひご視聴ください.
「スペリング=漢字」説については,heldio でも以下の配信回でお話していますので,ぜひ合わせてお聴きいただければ.
・ 「#606. 英語のスペリングは漢字である」(2023年1月27日)
・ 「#1689. 「スペリング=漢字」説を解説します --- 規範主義の観点から」(2026年1月12日配信)
・ 「#1688. 「スペリング=漢字」説を解説します --- 機能的観点から」(2026年1月13日配信)
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