先日,高橋真理子先生(関西学院大学)と Voicy heldio で2度にわたり対談させていただきました.昨年昭和堂より出版されている『World Englishes 入門』より,高橋先生の執筆された第8章「ヨーロッパと中東の英語」について,著者じきじきにお話をうかがうという回でした.
・ 「#1294. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 高橋真理子先生とのヨーロッパと中東の英語をめぐる対談」(2024年12月14日配信)
・ 「#1300. 高橋真理子先生とのアフタートーク --- 『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年)の第8章「ヨーロッパと中東の英語」をめぐって」(2024年12月20日配信)
今回は,知っているようで意外と知らないヨーロッパと中東の英語事情について,本書第8章の記述を土台にしつつ,高橋先生にご解説いただきました.この広い地域には多様な言語,文化,民族が分布しています.そのなかで英語がいかにリンガフランカ (lingua_franca) として機能しているのか,社会的にどのように位置づけられているのか,いかなる英語変種が用いられているのか.様々な疑問が生じます.さらに,なぜヨーロッパと中東が,同じ章で扱われているのでしょうか.アフタートークを含め,今回の対談では,このような質問にお答えいただきました.
ぜひ,これまでの『World Englishes 入門』関連の hellog 記事や heldio 対談回へ,we_nyumon を通じてアクセスしていただければと思います.
最後に,アフタートークでも触れましたが,高橋先生の最近のご単著にもご注目ください.『アジア英語における口語表現の比較』(ナカニシヤ出版,2023年)です.高橋先生,このたびは対談のお時間を割いていただきまして,ありがとうございました!
・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.
・ 高橋 真理子 『アジア英語における口語表現の比較』 ナカニシヤ出版,2023年.
先日,保坂道雄先生(日本大学)と Voicy heldio にて文法化にまつわる対談を2回にわたってお届けしました.開拓社より2014年に出版されたご著書『文法化する英語』を参照しながら,英語史における文法化の具体的な事例について,著者じきじきに解説していただくという贅沢な企画です.2回の配信を以下に挙げておきます.
・ 「#1290. 冠詞の文法化 --- 保坂先生との対談」(2024年12月10日配信)
・ 「#1293. 助動詞 do の文法化 --- 保坂先生との対談」(2024年12月13日配信)
英語史上,きわめて重要な文法化の2つの事例,冠詞の創発と do 迂言法の発展について丁寧に解説していただきました.これらの問題に関心をもった方は,本ブログより article や do-periphrasis のタグの付された記事群を読んでいただければと思います.
上記配信内でも触れていますが,保坂先生との文法化をめぐる heldio 対談回は,以前にも1度配信しています.本ブログより「#5674. 保坂道雄先生との対談 --- ご著書『文法化する英語』(開拓社,2014年)より」 ([2024-11-08-1]) を,あるいは直接 heldio 「#1245. 保坂道雄先生との「文法化入門」対談 --- 「英語史ライヴ2024」より」をご参照ください.
おまけとして,今回の保坂先生との対談にあたって「#1298. 保坂先生とのアフタートークでコメント返し」(2024年12月18日配信)も収録しています.こちらは肩の凝らないおしゃべり回ですので,ぜひお聴きいただければ.
・ 保坂 道雄 『文法化する英語』 開拓社,2014年.
標記の開拓社からの新刊書をご献本いただきました,ありがとうございます!
開拓社による「最新英語学・言語学シリーズ」の第20巻という位置づけで,「生成文法×英語史」の最新の専門的な知見がまとめられています.300頁ほどの著書で,量的にも本格派です.英語の統語変化を理論的に考察したい研究者・学生にとって,必携の参考書です.
以下,目次を取り出してみましょう.魅力的な話題と高度な専門用語が並んでいます.
第I部 生成文法理論における言語変化
第1章 生成文法の理論的枠組みと言語変化
1. はじめに:英語史の時代区分
2. 生成文法の理論的枠組み
3. 文法変化としての言語変化
第2章 言語変化のタイプ
1. 再分析とパラメター変化
2. 文法化:不定詞標識 to を例として
3. 語順変化
4. 項構造の変化:心理動詞を例として
第II部 英語の節構造の変化
第3章 初期英語の節構造と動詞移動の消失
1. はじめに
2. 古英語・初期中英語の基本語順
3. 古英語・初期中英語の節構造
4. 動詞移動と豊かな一致の仮説
5. 屈折接辞の衰退と動詞移動の消失
6. 文法化による語彙動詞から助動詞への変化
7. まとめ
第4章 主語位置の変遷と各種構文の変化
1. はじめに
2. 空主語構文
3. 奇態格経験者主語構文
4. 他動詞虚辞構文
5. that 痕跡効果
6. まとめ
第III部 英語名詞句の構造と分布
第5章 非構造格の消失と格による名詞句の認可方法の変化
1. はじめに
2. 格に関する経験的事実と理論的仮定
3. 与格名詞をともなう構文の歴史的変遷
4. 与格名詞の認可と認可方法の変化
5. まとめ
第6章 数量詞の分布と遊離可能性の通時的変遷
1. はじめに
2. 初期英語における数量詞の分布
3. 理論的仮定
4. 遊離数量詞の分布に関する通時的変化
5. 代名詞と数量詞の語順
6. まとめ
本書については,12月11日に Voicy heldio にて「#1291. 田中 智之・縄田 裕幸・柳 朋宏(著)『生成文法と言語変化』(開拓社,2024年)」の配信回でもご紹介しています.本記事と合わせてお聴きいただければ.
本書と関連して,開拓社の「最新英語学・言語学シリーズ」の第21巻,家入 葉子・堀田 隆一(著)『文献学と英語史研究』(開拓社,2022年)もどうぞよろしくお願い致します.
・ 田中 智之・縄田 裕幸・柳 朋宏 『生成文法と言語変化』 開拓社,2024年.
・ 日時:12月21日(土) 17:30--19:00
・ 場所:朝日カルチャーセンター新宿教室
・ 形式:対面・オンラインのハイブリッド形式(1週間の見逃し配信あり)
・ お申し込み:朝日カルチャーセンターウェブサイトより
今年度の朝カルシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」が,月に一度のペースで順調に進んでいます.主に『英語語源辞典』(研究社)を参照しながら,英語語彙史をたどっていくシリーズです.
1週間後に開講される第9回では主に初期近代英語期におけるラテン語およびギリシア語の語彙的影響を評価します.16--17世紀の初期近代英語期は英国ルネサンスの時代に当たり,古典語への傾倒が顕著でした.知識が増大し学問も発展したために新しい語彙が大量に必要となり,そのニーズに応えるべくラテン語やギリシア語の単語や要素が持ち出されたのです.結果として,古典語に基づく借用語や新語がおびただしく導入され,英語語彙は空前の拡張を遂げることになります.
今回の講座では,古典語からの借用語に主に注目し,この時期の語彙拡大の悲喜劇を観察してみたいと思います.ぜひ皆さんもこの時代にもたらされたラテン・ギリシア語系のオモシロ単語を探してみてください.
本シリーズ講座の各回は独立していますので,過去回への参加・不参加にかかわらず,今回からご参加いただくこともできます.過去8回分については,各々概要をマインドマップにまとめていますので,以下の記事をご覧ください.
・ 「#5625. 朝カルシリーズ講座の第1回「英語語源辞典を楽しむ」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-20-1])
・ 「#5629. 朝カルシリーズ講座の第2回「英語語彙の歴史を概観する」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-24-1])
・ 「#5631. 朝カルシリーズ講座の第3回「英単語と「グリムの法則」」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-26-1])
・ 「#5639. 朝カルシリーズ講座の第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-04-1])
・ 「#5646. 朝カルシリーズ講座の第5回「英語,ラテン語と出会う」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-11-1])
・ 「#5650. 朝カルシリーズ講座の第6回「英語,ヴァイキングの言語と交わる」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-15-1])
・ 「#5669. 朝カルシリーズ講座の第7回「英語,フランス語に侵される」をマインドマップ化してみました」 ([2024-11-03-1])
・ 「#5704. 朝カルシリーズ講座の第8回「英語,オランダ語と交流する」をマインドマップ化してみました」 ([2024-12-08-1])
本講座の詳細とお申し込みはこちらよりどうぞ.『英語語源辞典』(研究社)をお持ちの方は,ぜひ傍らに置きつつ受講いただければと存じます(関連資料を配付しますので,辞典がなくとも受講には問題ありません).
(以下,後記:2024/12/17(Tue))
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
11月30日に,今年度の朝日カルチャーセンター新宿教室でのシリーズ講座の第8回が開講されました.今回は「英語,オランダ語と交流する」と題して,英語史ではあまり注目されることのないオランダ語との言語接触について論じました.企画時には90分の講義に値するテーマかどうか自問していましたが,資料を準備する段になって,それが杞憂であることがわかりました.対面およびオンラインで,多くの方々にご参加いただき,ありがとうございました.
講座の内容を,markmap というウェブツールによりマインドマップ化して整理してみました(画像としてはこちらからどうぞ).受講された方は復習用に,そうでない方は講座内容を垣間見る機会としてご活用ください.
9月8日(日)に khelf(慶應英語史フォーラム)の主催で heldio の12時間生配信企画「英語史ライヴ2024」が実施されました.ヘルメイト(= helwa リスナー)の方々が全国各地より東京の会場に参集し,当日のライヴに参加されたわけですが,このイベント後,ヘルメイトの「hel活」(英語史活動;helkatsu)がたいへんな勢いで盛り上がってきました.
その1つの現われが,今回ご紹介する『月刊 Helvillian 〜ハロー!英語史』です.有志ヘルメイトによる制作で,note 上に公開されています.毎月28日発行です.これまでに創刊号(2024年10月28日)と第2号(2024年11月28日)が公開されています.ぜひこちらの note アカウントをフォローしていただければと思います.
Helvillian は,毎月ヘルメイトが作成した英語史系ウェブコンテンツを集積し,リンク集を作って公開するウェブマガジンです.さらに特集も組まれており,最新号第2号では,制作班がアンケートを実施した上で「ヘルメイトってどんな人」の記事を執筆されています.その他,こだわりをもって制作された表紙やロゴ,編集後記なども見所です.
「英語史をお茶の間に」をモットーに掲げている私としては,このような素晴らしい形で有志のhel活を推進されている編集委員の Grace さん,Lilimi さん,MISATO (Galois) さん,umisio さんに改めて感謝いたします.
創刊号・第2号の各々については「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて以下の配信回でもご案内していますので,ぜひお聴きください.これからも強力に応援していきたいと思います!
・ heldio 「#1282. 月刊 Helvillian 第2号が公開されました --- ヘルメイトさんによる自主的なhel活」(2024年10月29日配信)
・ helwa 「【英語史の輪 #204】祝・Helvillian 創刊」(2024年10月29日配信)
・ heldio 「#1248. 月刊誌 Helvillian 創刊! --- helwa リスナー有志によるウェブマガジン」(2024年12月3日配信)
・ 日時:11月30日(土) 17:30--19:00
・ 場所:朝日カルチャーセンター新宿教室
・ 形式:対面・オンラインのハイブリッド形式(1週間の見逃し配信あり)
・ お申し込み:朝日カルチャーセンターウェブサイトより
今年度の朝カルシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」が,月に一度のペースで順調に進んでいます.主に『英語語源辞典』(研究社)を参照しながら,英語語彙史をたどっていくシリーズです.
1週間後に開講される第8回ではオランダ語と英語の言語接触に迫ります.後期中英語期には,イングランドはオランダを含む低地帯 (the Low Countries) との商業的な交流が盛んで,言語的にも濃い接触があったと考えられています.しかし,伝統的な英語史記述においては,オランダ語との言語接触は,ラテン語,フランス語,古ノルド語などとの言語接触に比べて注目度が低く,大々的に話題にされることはほとんどありません.重要なオランダ借用語をいくつか挙げて終わり,ということが一般的です.しかし,オランダ語の英語への影響は潜在的には一般に考えられている以上に大きく,講座1回分の議論の価値は十分にあると思われます.
今回の講座では,ゲルマン語派におけるオランダ語(および関連諸言語・方言)の位置づけを確認しつつ,同言語が英語の語彙やその他の部門に与えた影響について議論します.また,背景としての英蘭関係史にも注目します.さらに,オランダ単語が日本語語彙に多く入り込んでいる事実にも注目したいと思います.
本シリーズ講座の各回は独立していますので,過去回への参加・不参加にかかわらず,今回からご参加いただくこともできます.過去7回分については,各々概要をマインドマップにまとめていますので,以下の記事をご覧ください.
・ 「#5625. 朝カルシリーズ講座の第1回「英語語源辞典を楽しむ」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-20-1])
・ 「#5629. 朝カルシリーズ講座の第2回「英語語彙の歴史を概観する」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-24-1])
・ 「#5631. 朝カルシリーズ講座の第3回「英単語と「グリムの法則」」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-26-1])
・ 「#5639. 朝カルシリーズ講座の第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-04-1])
・ 「#5646. 朝カルシリーズ講座の第5回「英語,ラテン語と出会う」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-11-1])
・ 「#5650. 朝カルシリーズ講座の第6回「英語,ヴァイキングの言語と交わる」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-15-1])
・ 「#5669. 朝カルシリーズ講座の第7回「英語,フランス語に侵される」をマインドマップ化してみました」 ([2024-11-03-1])
本講座の詳細とお申し込みはこちらよりどうぞ.『英語語源辞典』(研究社)をお持ちの方は,ぜひ傍らに置きつつ受講いただければと存じます(関連資料を配付しますので,辞典がなくとも受講には問題ありません).
(以下,後記:2024/11/27(Wed))
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
heldio/helwa リスナーの川上さんが,ご自身の X アカウントにて「英語史クイズ」を展開し始めています.第2問は(すでに解答と解説も公開されていますが)なかなか難しいこちらのクイズでした.
アルフレッド大王に関する記述として誤ったものを選んでください,という4択問題でした.その4つめの選択肢として「デーン人(ヴァイキング)にキリスト教を信仰させた」がありました.この選択肢は多くの回答者に選ばれていたのですが,解説を読めば分かる通り,これは正解ではないのです.つまり「デーン人(ヴァイキング)にキリスト教を信仰させた」は事実なのです.
厳密にいえば,この辺りの事情については複雑で不明なことも多いのですが,概ね事実であると考えてよい根拠や推論を,『ヴァイキングからノルマン人へ』より2カ所を引用したいと思います.まず第2章「ヴァイキング」の pp. 86--87 より.
しかしながらこのプロセス([引用者注]ヴァイキングのイングランド定住のプロセス)は,ヴァイキングをイングランド人にとっての単なる襲撃者から共生する隣人へと変えるにあたって特筆すべき意味をもっていた.移動を繰り返している段階のデーン人は,現地集団に敗北したときに,現地社会から課されるべき道徳上や商業上の慣習を受けいれることはできなかったであろう.しかしいったん彼らが土地を与えられて定住し,軍隊秩序ではなく現地の政治秩序にしたがって生活せざるをえなくなると,ある種の強制を受けいれることになる.宗教的強制はその最たるものであり,改宗がアルフレッド大王の主たる目的の一つであったことは明白である.彼ら異教を奉ずる厄介者が,洗礼を受け入れキリスト教的行動様式という道徳コードーー神と王への恭順ならびに隣人を愛する責務ーーを学んだのであれば,やがて平和な共生が実現することになるだろう.
私たちはすでに,アルフレッド王がガスルムに洗礼を受け入れるようにいかに要求したのかを知っている.彼は十数年後に同様の改宗をヘステンにも試みたが,うまくはいかなかった.ただしヘステンの息子たちは,アルフレッド王と〔王の娘婿でマーシアの主人〕エアルドールマン・エセルレッドが後押しすることによって改宗を受け入れた.このようにしてキリスト教徒となった指導者たちは,異教を打ち捨てるように彼らの部下たちにすすんで強制したかもしれない.それでは彼らは実際に実行したのだろうか.そしてこのような改宗プログラムを推し進める試みは,どれほどの成功を収めたのだろうか.キリスト教を受け入れるプロセスに関して,イングランド東部にはほとんど何の証拠もない.しかしキリスト教がスカンディナヴィア人にどのような影響を与えたのかを測る基準がないわけではない.第一の証拠は墓地である.異教の墓地が確認される範囲は限られており,イングルビーとレプトンを別にすれば南部と東部には皆無に近かった.そのため,八七〇年代にその地域に定住したものですら異教の埋葬慣行を維持することができなかったことがわかる.第二の証拠は銭貨である.イースト・アングリアには九〇〇年以前に聖エドマンドの銭貨が出現するが,それはおそらくデーン人支配者の一人の手になるものである.この事実は,エドマンド崇敬が彼の死から一世代もたたないうちに盛んになっていたという事実を伝えると同時に,「大軍勢」の指導者の子孫のあいだにもキリスト教の殉教者に対する尊崇の念が現れていたことを教えてくれる.そしてデーンローでも,一〇世紀半ばまでには教会組織が復活し機能していたと考えられる.この事実は,一〇世紀の前半にアルフレッド王の後継者たちがデーンローを征服することにより,デーン人系の新参の定住者がキリスト教信仰とその慣習を受容し現地社会に急速に同化することになったという説明の裏付けともなるだろう.
続いて,古英語期のキリスト教の浸透を論じる5章の p. 213 より引用します.
ヴァイキングたちがなぜ,どのようにキリスト教を受け入れたのかはよくわかっていない.政治的に強制されたから,というのが一つの答えではある.ガスルム〔「大軍勢」の王,八九〇年死去〕とその配下の主だった者たちは,八七八年の敗戦の後,アルフレッド王との間の和平の条件の一つとして洗礼を受けた.ダブリンとヨークを断続的に支配したオーラフ(アムリーブ)・クアラーン(九八一年死去)は,九四三年にイングランドで,エドマンド王を代父として洗礼を受けた.そして,オークニー伯シガードは,改宗したばかりのノルウェー王オーラフ・トリュッグヴァソンにより九九五年に洗礼を受けることを強制された.これら政治的リーダーたちの改宗は,彼らに従う者たちがそれに倣って改宗するという点で重要ではあった.しかしながら,定住者のあるコミュニティ全体に対して司牧を行うためには,その定住者たちに洗礼を施す司祭が必要であり,したがって教会の存在が必要であった.つまり,ヴァイキングの改宗は,それを可能にした教会組織の存在を暗示しているかに見える,ということである.しかしながら,逆説的に,ダブリンのようなアイルランドのスカンディナヴィア人飛び領地よりも,デーンロー地域東部の方が,改宗はより迅速に行われたのである.後者の教会組織の方が,アイルランド(ダブリン近郊も含む)のそれよりも,明らかにより混乱していたにもかかわらず,である.このことは,デーンロー地域では,司教座教会やミンスターが途絶や移転の憂き目を見た後も地方教会が存続しており,その司祭らが伝道活動を行った,ということを示すのかもしれない.またあるいは,ウェセックスから聖職者が送り込まれて,伝道活動を行ったのかもしれない.対照的に,アイルランドの聖職者たちには(そしてまた,ヴァイキングと同盟を結ぶことに何の痛痒も感じていなかったアイルランドの王たちにも),異教の「よそ者たち」を改宗させようという気がおそらくなかった.ノーサンブリアや,マーシア東部,そしてイースト・アングリアと比べて,それら「よそ者」の定住地域ははるかに狭く,その数も少なかったのである.加えるに,改宗時期の違いは,ヴァイキングたちが異教とキリスト教とのせめぎあいに対して,グループごとに異なった対応をしたのだということを示している,ということも言えよう.
アルフレッド大王が,ヴァイキングたち全体の改宗にどれだけ直接の影響を及ぼしたかを正確に測ることは難しいものの,相当なインパクトがあったことは確かのようです.今後の川村さんの英語史クイズにも注目していきましょう!
・ デイヴィス,ウェンディ(編)・鶴島 博和(日本語版監修・監訳) 『ヴァイキングからノルマン人へ』 オックスフォード ブリテン諸島の歴史 第3巻.慶應義塾大学出版会,2025年.
英語史クイズ (helquiz) というコンテンツが,徐々に認知されるようになってきました.文字通り英語史に関するクイズという,英語史活動(helkatsu) に資するコンテンツの1種にすぎないといえば,そうなのですが,SNS上で問うてみたり,クイズ大会を企画してみたり,有志のクイズ作家や評論家(?)が現われたり,おもしろい展開となってきています.
以下に,関連する Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の配信回へのリンクを張っておきます.
・ 「#642. heldio 初の「英語史クイズ」」(2023/03/04)(cf. 「#5059. heldio 初の「英語史クイズ」」 ([2023-03-04-1]))
・ 「#669. 英語史クイズ with まさにゃん」(2023/03/31)(cf. 「#5087. 「英語史クイズ with まさにゃん」 in Voicy heldio とクイズ問題の関連記事」 ([2023-04-01-1]))
・ 「#670. 英語史クイズ with まさにゃん(続編)」(2023/04/01)
・ 「#1010. 英語史クイズ in hel フェス(生放送のアーカイヴ)」(2024/03/06)(cf. 「#5427. 「英語史クイズ」の heldio 生放送をお届けしました」 ([2024-03-06-1]))
・ 「#1256. 英語史クイズの予習会 (1) --- 「英語史ライヴ2024」の裏番組より」(2024/11/06)
・ 「#1263. 英語史クイズの予習会 (2) --- 「英語史ライヴ2024」の裏番組より」(2024/11/13)
・ 「#1268. khelf 杯「英語史クイズ大会」 --- 「英語史ライヴ2024」より」(2024/11/18)(←このクイズ大会はこちらよりインスタライヴのアーカイヴとしても視聴いただけます)
関連して,hel活の有志メンバーによる「英語史クイズ」関連のコンテンツも増えてきています.
・ 堀田の Instagram アカウント @chariderryu:「Kenning Quiz」 (2024/07/27)
・ 菊地翔太先生(専修大学)による note 記事:「「英語史ライヴ2024」で出題した英語史クイズ(解答・解説つき)」 (2024/09/09)
・ khelf 公式 Instagram アカウント @khelf_keio:「英語史クイズ」 (2024/09/21)
・ コアリスナー・ari さんによる note 記事:「#127 【英語史クイズ】 Williamと語源的につながりのない語は?」 (2024/11/17)
・ コアリスナー・川上さんによる X での活動:「英語史クイズ【誤りはどれ】1: ウムラウト i-mutation の影響関係について」 (2024/11/17)
ますます盛り上がっていきそうな企画です.皆さんも,解くだけでなく問いも作ってみてください!
一昨日11月16日(日),東京ポニークラス慶友会にて「英語標準化の歴史」と題して講演させていただきました.対面・オンラインで参加された皆さん,ありがとうございました.講演後の質疑応答も長時間にわたって盛り上がりました.懇親会でも皆さんと貴重な交流の機会を持つことができました.準備・運営に当たられた慶友会メンバーの方々に心より感謝申し上げます.
講義自体は2時間超となりました.それでも時間が足りないくらいでしたが,講義内容を markmap というウェブツールを利用してマインドマップ化しました(画像としてはこちらからどうぞ).515通りの through の話題から入り,英語史における言語的多様性と標準化 (standardisation) のサイクル,最後には20--21世紀の世界英語 (world_englishes) 現象を議論しました.
去る10月,山口美知代先生(京都府立大学)と Voicy heldio で3度にわたり対談させていただきました.
最初の2回は,昨年昭和堂より出版された『World Englishes 入門』の共著者のお一人として世界英語 (world_englishes) について,とりわけ「カリブ海の英語」と「中華世界の英語」について,お話しを賜わりました.
・ 「#1231. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 山口美知代先生とのカリブ海の英語をめぐる対談」(2024年10月12日配信)
・ 「#1235. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 山口美知代先生との中華世界の英語をめぐる対談」(2024年10月16日配信)
「カリブ海の英語」は,おそらく多くの方々にとってあまり馴染みのない変種と思われますが,それだけに英語の世界の奥深さが伝わるはずです.一方,「中華世界の英語」はずっと身近な気はするものの,具体的には知らないことが意外と多いのではないでしょうか.
2回の対談を通じて,世界の隅々で英語が用いられていることが再確認できたと思います.ぜひ,これまでの『World Englishes 入門』関連の hellog 記事や heldio 対談回へ,we_nymon を通じてアクセスしていただければ.
さて,山口先生との第3回目の対談回では,今年開拓社より出版されました単著『ハリウッド映画と英語の変化』について,著者直々にご紹介いただきました.「#1241. 著者と語る『ハリウッド映画と英語の変化』(開拓社,2024年) --- 山口美知代先生との対談」(2024年10月22日配信)をお聴きください.
『ハリウッド映画と英語の変化』については,今年の4月11日の heldio にて私単独で「#1046. 山口美知代『ハリウッド映画と英語の変化』(開拓社,2024年)」としても紹介していますので,そちらもお聴きください.hellog 記事としては「#5469. 山口美知代『ハリウッド映画と英語の変化』(開拓社,2024年)」 ([2024-04-17-1]) をどうぞ.
山口先生,お忙しいところ,対談のお時間を割いていただきまして,ありがとうございました!
・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.
・ 山口 美知代 『ハリウッド映画と英語の変化』 開拓社,2024年.
先月,知識共有サービス Mond にて5件の英語に関する質問に回答しました.新しいものから遡ってリンクを張り,回答の要約も付します.
(1) なぜ数量詞は遊離できるのに,冠詞や所有格は遊離できないの?
回答:理論的には数量詞句 (QP) と限定詞句 (DP) の違いによるものと説明できそうですが,一筋縄では行きません.歴史的にいえば,古英語から現代英語に至るまで,数量詞遊離は常に存在していましたが,時代とともに制限が厳しくなってきているという事実があります.詳しくは新刊書の田中 智之・縄田 裕幸・柳 朋宏(著)『生成文法と言語変化』(開拓社,2024年)をご参照ください.
(2) have got to の got とは何なのでしょうか?
回答:have got は本来「獲得したところだ」という現在完了の意味でしたが,16世紀末から「持っている」という単純な意味に転じました.文法化 (grammaticalisation) の過程を経て,口語で have の代用として定着しています.「#5657. 迂言的 have got の発達 (1)」 ([2024-10-22-1]),「#5658. 迂言的 have got の発達 (2)」 ([2024-10-23-1]) を参照.
(3) 英語では単数形,複数形の区別がありますが,なぜ「1とそれ以外」なのでしょうか?
回答:「1」が他の数と比べて特に基本的で重要な数であるためと考えられます.古英語には双数形もありましたが,中英語以降は単数・複数の2区分となりました.世界の言語では最大5区分まで持つものもあります.「#5660. なぜ英語には単数形と複数形の区別があるの? --- Mond での質問と回答より」 ([2024-10-25-1]) を参照.
(4) 完了形はなぜ動作の継続を表現できるのでしょうか?
回答:完了形の諸用法の共通点は「現在との関与」です.継続の意味は主に状態動詞で現われ,動作動詞では完了の意味が表出します.また「時間的不定性」も完了形の重要な特徴と考えられます.「#5651. 過去形に対する現在完了形の意味的特徴は「不定性」である」 ([2024-10-16-1]) を参照.
(5) subjunctive mood (仮定法・接続法)の現在完了について
回答:仮定法現在完了は理論上存在可能で実例も見られますが,比較的まれです.仮定法の体系は「現在・過去・過去完了」の3つ組みとして理解するのが妥当で,その中で完了相が必要な場合に現在完了形が使用される,と解釈するのはいかがでしょうか.
以上です.11月も Mond にて英語(史)に関する素朴な疑問を受け付けています.気になる問いをお寄せください.
1週間ほど前の10月26日に,今年度の朝日カルチャーセンター新宿教室でのシリーズ講座の第7回が開講されました.今回は「英語,フランス語に侵される」と題して,主に中英語期の英仏語の言語接触に注目しました.90分の講義では足りないほど,話題が盛りだくさんでした.対面およびオンラインで,多くの方々にご参加いただき,ありがとうございました.
その盛りだくさんの内容を,markmap というウェブツールによりマインドマップ化して整理してみました(画像としてはこちらからどうぞ).受講された方は復習用に,そうでない方は講座内容を垣間見る機会としてご活用ください.
・ 日時:10月26日(土) 17:30--19:00
・ 場所:朝日カルチャーセンター新宿教室
・ 形式:対面・オンラインのハイブリッド形式(1週間の見逃し配信あり)
・ お申し込み:朝日カルチャーセンターウェブサイトより
今年度,毎月1回のシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」を開講しています.英語の語源辞典を参照しながら,1年間かけてじっくり英語語彙史をたどっていこうという企画です.前半戦の春期・夏期クールの計6回が終わり,次回からは秋期クールに入り,後半戦がスタートします.上記の通り,9日後の10月26日(土)に,第7回講座が開かれます.第7回は「英語,フランス語に侵される」と題し,いよいよ英語語彙史上に強烈なインパクトを与えたフランス語が登場します.
折しも今年度は,この朝カル講座とは独立して,白水社の月刊『ふらんす』にて連載記事「英語史で眺めるフランス語」を執筆させていただいています.hellog でも連載記事を紹介すべく furansu_rensai の文章を書いてきました.次回の朝カル講座の予習にもなると思いますので,どうぞご参照ください.
英語とフランス語との言語接触については語り尽くせないほど話題が多く,朝カル講座の1回でカバーするのも難儀なのですが,具体例を多く取り上げ,かつエッセンスを絞り出して講座に臨みます.
本シリーズ講座は各回の独立性が高いので,これまでの前半の6回へ参加したか否かにかかわらず,第7回からご参加いただいてもまったく問題なく受講できます.過去6回分については,各々概要をマインドマップにまとめていますので,以下の記事をご訪問ください.
・ 「#5625. 朝カルシリーズ講座の第1回「英語語源辞典を楽しむ」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-20-1])
・ 「#5629. 朝カルシリーズ講座の第2回「英語語彙の歴史を概観する」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-24-1])
・ 「#5631. 朝カルシリーズ講座の第3回「英単語と「グリムの法則」」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-26-1])
・ 「#5639. 朝カルシリーズ講座の第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-04-1])
・ 「#5646. 朝カルシリーズ講座の第5回「英語,ラテン語と出会う」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-11-1])
・ 「#5650. 朝カルシリーズ講座の第6回「英語,ヴァイキングの言語と交わる」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-15-1])
新宿教室での対面参加のほかオンライン参加も可能ですし,その後1週間の「見逃し配信」もご利用できます.奮ってご参加ください.詳細とお申し込みはこちらからどうぞ.
本シリーズ講座では英語の語源辞典を頻繁に参照してきましたが,とりわけ『英語語源辞典』(研究社)に依拠しています.同辞典をお持ちの方は,講座に持参されると,より楽しく受講できるかと思います(もちろん手元になくとも問題ありません).
(以下,後記:2024/10/19(Sat)))
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
9月28日に開講した,標記のシリーズ講座第6回「英語,ヴァイキングの言語と交わる」について,その要旨を markmap というウェブツールによりマインドマップ化しました(画像としてはこちらからどうぞ).受講された方は復習用に,そうでない方は講座内容を垣間見る機会としてご活用ください.
8月24日に開講した,標記のシリーズ講座第5回「英語,ラテン語と出会う」について,その要旨を markmap というウェブツールによりマインドマップ化しました(画像としてはこちらからどうぞ).受講された方は復習用に,そうでない方は講座内容を垣間見る機会としてご活用ください.
「#5637. heldio 2024年第3四半期のベスト回を決めるリスナー投票 --- 10月8日までオープン」 ([2024-10-02-1]) でご案内したとおり,今年第3四半期における Voicy heldio のベスト配信回を決めるリスナー投票(1人10票まで)を実施しました.一昨日投票が締め切られましたが,今回は31名のリスナーの皆さんよりご投票いただきました.ご協力ありがとうございます.
投票結果をまとめましたので本記事にて報告いたします(本日の heldio でも「#1229. heldio 2024年第3四半期のリスナー投票開票結果」として報告しています).以下に上位12位までの計16配信回を掲載します(全結果は本記事のソースHTMLをご覧ください).
1. 「#1219. 「はじめての古英語」第10弾 with 小河舜さん&まさにゃん --- 「英語史ライヴ2024」より」 (39%)
2. 「#1212. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 --- 「英語史ライヴ2024」より」 (35%)
3. 「#1139. イディオムとイディオム化 --- 秋元実治先生との対談 with 小河舜さん」 (32%)
4. 「#1144. なぜ "have a look" のような表現が現われたのか --- composite predicate をめぐる秋元実治先生との対談」 (29%)
4. 「#1159. ハイブリッド語のおもしろい例をください --- 『ふらんす』8月号で英仏ハイブリッド語に触れています」 (29%)
4. 「#1163. 言葉って自然物ですか?人工物ですか?」 (29%)
4. 「#1213. ヘルメイトの皆さんに質問,あなたはいつ英語学習を始めましたか? --- 「英語史ライヴ2024」裏番組より」 (29%)
4. 「#1214. 教えて khelf 会長! 天候の it って何? --- 「英語史ライヴ2024」より」 (29%)
9. 「#1149. It's me. の me --- 英語史上の「代名詞交替」」 (23%)
9. 「#1187. 英語のSVO固定語順にフランス語の影響はありそうにない」 (23%)
9. 「#1201. 早朝の素朴な疑問「千本ノック」 with 小河舜さん --- 「英語史ライヴ2024」より」 (23%)
12. 「#1147. 日常の英語史・英語学 --- khelf 疋田くんの新シリーズ」 (19%)
12. 「#1156. 教えて khelf 会長! --- どうなるAI時代の語学教育?」 (19%)
12. 「#1174. なぜ音変化はそのとき,そこで起きたのですか? --- 大学院生のための英語史」 (19%)
12. 「#1191. 言語の線状性をポジティヴに見ると」 (19%)
12. 「#1217. イチオシの英語本を教えて! --- 「英語史ライヴ2024」裏番組より」 (19%)
第1位(得票率39%)に輝いたのは,「はじめての古英語」シリーズより「#1219. 「はじめての古英語」第10弾 with 小河舜さん&まさにゃん --- 「英語史ライヴ2024」より」でした! リスナーの皆さんの応援によりシリーズとして第10弾に達し,かつ「英語史ライヴ2024」での公開生収録という特別な機会だったこともあるかと想像しますが,それにしてもリスナー投票4連覇ということで強い! 小河舜さん(上智大学),「まさにゃん」こと森田真登さん(武蔵野学院大学),そして堀田隆一のトリオでお届けしてきた古英語入門シリーズです.昨年8月31日に初回の「#822. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 1 with 小河舜さん and まさにゃん」を配信して以来,シリーズ頓挫の危機(?)を乗り越え,時折ゲストを招くなどして変化をつけながら,ここまで続いてきました.次の第11弾は未定ですが(笑),緩く続けていければと思います.過去の配信回や関連する話題は,本ブログの hajimeteno_koeigo でまとめていますので,ご覧ください.
続いて得票率35%で堂々の第2位に輝いたのは,「#1212. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 --- 「英語史ライヴ2024」より」です.khelf の藤原郁弥さん(慶應義塾大学大学院生)が MC を務め,そこに「英語語源辞典通読ノート」で知られる lacolaco さん,およびまさにゃんこと森田真登さんが加わり,45分間の集中精読会が成立しました.ニッチ界隈から熱い支持を受けた配信回です.
第3位には,32%の得票率で「#1139. イディオムとイディオム化 --- 秋元実治先生との対談 with 小河舜さん」が入りました.秋元実治先生(青山学院大学名誉教授)と小河舜さん(上智大学)と堀田の3名が,イディオム(化)について理論的に語らいました.私自身も勉強になった回として,強く印象に残っています.
第4位には,29%の得票率で5つの配信回がタイで並びました.秋元実治先生との対談回が改めて人気で,「#1144. なぜ "have a look" のような表現が現われたのか --- composite predicate をめぐる秋元実治先生との対談」への支持が集まりました.「#1159. ハイブリッド語のおもしろい例をください --- 『ふらんす』8月号で英仏ハイブリッド語に触れています」は,リスナーさんの間でコメントがおおいに盛り上がった回ですので,ぜひコメント欄を訪問していただければ.言語の本質を問うた「#1163. 言葉って自然物ですか?人工物ですか?」も支持をいただきました.「#1213. ヘルメイトの皆さんに質問,あなたはいつ英語学習を始めましたか? --- 「英語史ライヴ2024」裏番組より」は helwa メンバーの有志の収録回でしたが,リスナーさんの間で新鮮さと親近感がウケたものかと理解しています.実際に聴いていて楽しくなる回でした.大人数で議論が弾んだ「#1214. 教えて khelf 会長! 天候の it って何? --- 「英語史ライヴ2024」より」も,リスナーの皆さんに楽しんでいただいたようです.
第9位以下の詳細は省略しますが,今後期待したいシリーズとして「#1147. 日常の英語史・英語学 --- khelf 疋田くんの新シリーズ」を挙げておきましょう.何気ない日常に「hel活」 (helkatsu) のネタがある,という気づきを得られた新シリーズでした.
全体として,今回のリスナー投票では「英語史ライヴ2024」の表番組と裏番組,khelf メンバーや helwa メンバーが出演した配信回,研究者どうしのガッツリ議論回などが上位に入りました.パーソナリティとしては,heldio リスナー,helwa リスナー,khelf メンバー,出演者の方々皆の力でチャンネルを作り続けられているのだなあと,しみじみ感じた次第です.いつもご支援ありがとうございます.
以上,投票結果の報告でした.お聴きでない回がありましたら,ぜひご聴取ください.
昨日の記事「#5643. 「本と文字は時空を超える」 --- 2023年度慶應義塾大学文学部公開講座「越境する文学部」より」 ([2024-10-08-1]) を受けて,追加の話題です.
昨年7月1日にこちらの公開講座が開催されのですが,安形麻理教授(図書館・情報学専攻)との対談に先立ち,私のほうから30分ほど「文字」について講演させていただきました.
公開講座の冊子はすでに発行されているのですが,必ずしも広く出回るわけではありません.そこで,その講義資料をもとに,要旨を markmap というウェブツールによりマインドマップ化したものを公開します(画像としてはこちらからどうぞ).概要だけでも伝われば.
私の所属している慶應義塾大学文学部では,例年春学期に3回ほど公開講座を開いています.昨年度の公開講座の大テーマは「越境する文学部」でした.
2023年7月1日に,第3回の公開講座が三田キャンパスにて開かれ,そこで図書館・情報学専攻の安形麻理教授と私,堀田隆一(英米文学専攻)による講演・対談が実現しました.お題は「本と文字は時空を超える」です.会場からの質疑応答を含め2時間ほどじっくり議論しました.
この公開講座の後,安形先生とは同じテーマで Voicy heldio にて対談収録を行ない,「#768. 本と文字は時空を超える --- 安形麻理先生との対談」として配信しています.ぜひお聴きください.hellog としても「#5185. 文字・本の何が残るのか,何を残すのか --- 安形麻理先生との対談」 ([2023-07-08-1]) の記事でご案内しました..
さて,公開講座より1年以上が経ちましたが,講演・対談を文字起こしして編集を加えた冊子が発行されました.3つの公開講座が収録されています.
・ 「日本列島へと至る道 --- 最初の日本人を考える」(河野 玲子・奈良 貴史・(司会)渡辺 丈彦) (pp. 3--32)
・ 「私たちは世界をどうみているのか? --- アートを通して考える」(平田 栄一朗・新倉 慎右・(司会)兎田 幸司) (pp. 33--64)
・ 「本と文字は時空を超える」(堀田 隆一・安形 麻理・(司会)峯島 宏次) (pp. 65--95)
慶應大学文学部らしい多様なテーマの公開講座となりました.
ちなみに2024年度の公開講座の大テーマは「交流する文学部」でした(すでに終了しています).2025年度の公開講座もお楽しみに!
・ 堀田 隆一・安形 麻理・(司会)峯島 宏次 「本と文字は時空を超える」 『越境する文学部』(極東証券株式会社寄附講座 慶應義塾大学文学部公開講座2023) 慶應義塾大学文学部,2024年3月29日.65--95頁.
9月8日(日)に12時間の公開収録生配信として開催された「英語史ライヴ2024」(hellive2024) の目玉企画の1つとして,人気シリーズ「はじめての古英語」(hajimeteno_koeigo) の第10弾「#1219. 「はじめての古英語」第10弾 with 小河舜さん&まさにゃん --- 「英語史ライヴ2024」より」が実現しました.講師はいつものように,小河舜さん(上智大学),「まさにゃん」こと森田真登さん(武蔵野学院大学),そして堀田隆一の3名です.
多くのギャラリーの方々を前にしての初めての公開収録となり,3名とも興奮のなかで34分ほどの古英語講座を展開しました.冒頭のコールを含め,これほど古英語で盛り上がる集団なり回なりは,かつて存在したでしょうか? おそらく歴史的なイベントになったのではないかと思います(笑).
今回の第10弾は,小河さん主導で古英詩の傑作 Beowulf の冒頭にほど近い ll. 24--25 の1文に注目しました(以下 Jack 版より).
lofdǣdum sceal in mǣgþa gehwǣre man geþēon.
忍足による日本語訳によれば「いかなる民にあっても,人は名誉ある/行いをもって栄えるものである」となります.古英語の文法や語彙の詳しい解説は,上記配信回をじっくりお聴きください.
実は上記の公開収録は Voicy heldio のほか,khelf(慶應英語史フォーラム)の公式 Instagram アカウント @khelf_keioでインスタ動画としても生配信・収録しております.ヴィジュアルも欲しいという方は,ぜひこちらよりご覧ください.会場の熱気が感じられると思います.
シリーズ過去回は hajimeteno_koeigo よりご訪問ください.
・ Jack, George, ed. Beowulf: A Student Edition. Oxford: Clarendon, 1994.
・ 忍足 欣四郎(訳) 『ベーオウルフ』 岩波書店,1990年.
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