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youtube - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2026-09-02 05:00

2026-08-24 Mon

#6328. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第6回 --- 英語は本当に「直接的」なのか [inohota][ippeiinoue][youtube][inohota_rensai][sociolinguistics][pragmatics][notice][inohotanaze][speech_act]


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 月刊誌『英語教育』(大修館書店)にて,同僚の井上逸兵氏(慶應義塾大学)とともに「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を連載しています.8月12日に発売された9月号に,第6回記事「英語は本当に「直接的」なのか ―― 「察し」を再考する」が掲載されました.
 今回のメイン執筆者は井上逸兵さんです.世間でよく耳にする「日本語は察しの文化,英語ははっきりと意思表示する言語」というステレオタイプを,社会言語学や語用論の視点から鮮やかに切り崩していく,痛快で知的な論考となっています.
 記事ではまず,ビジネスシーンなどでも安易に持ち出されがちな「高コンテクスト/低コンテクスト」という文化の2分法に対して疑問符が投げかけられます.親しい英語母語話者同士の会話がきわめて高コンテクストであるように,どのような言語共同体であっても間接的な伝達や「察し」は存在します.
 本稿の中心となるのは,英語の慣用表現にみられる高度な間接性の分析です.たとえば,相手への押しつけを弱める依頼表現 I don't suppose you could help me with this, could you? や,異議を婉曲に伝える We might want to reconsider that. など,字面通りの意味とは異なる意図を聞き手に推論させる「型」が英語には豊富に備わっています.また,イギリス英語でとりわけ好まれる皮肉や控えめな表現を取り上げ,散々な結果の後に発せられる Well, that went well. のように,表面の意味をひっくり返して理解させる複雑な言語行為の仕組みを解き明かしています.これらは単なる当てこすりではなく,前提を共有する者同士の仲間意識を確かめ合う機能を持つという指摘にも納得させられます.
 さらに興味深いのは,映画翻訳の対照分析です.挙げられている例については記事本体を参照いただければと思いますが,相手への直接的な働きかけを避け,状況を示して判断を相手に委ねる英語のあり方は,まさに「独立」の尊重と「つながり」の維持という2つの対人関係的配慮から生まれているのです.
 記事の末尾には,恒例の「相方からの一言」も付しています.現在,サバティカル研究でイギリスやアイルランドに滞在している私自身の実感としても,人間関係に影響する場面で用いられる回りくどい言い回しや,高度な皮肉には日々遭遇しており,まさに英語における「察し」の奥深さと難しさを肌で感じているところです.
 形式上の直接性と実際のコミュニケーションにおける直接性の違いに目を向けることで,英語と日本語の新たな側面が見えてくる好編となっています.ぜひ全国の書店やオンライン書店にて,『英語教育』9月号を手にとっていただければ.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第6回 「英語は本当に「直接的」なのか ―― 「察し」を再考する」『英語教育』2026年9月号,大修館書店,2026年8月12日.44--45頁.

Referrer (Inside): [2026-08-26-1]

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2026-07-23 Thu

#6296. 「ゆる言語学ラジオさんに説教されましたー!」 --- いのほた最新回 [notice][inoueippei][yurugengogakuradio][inohota][youtube][outreach]



 「#6289. 井上逸兵さんが「ゆる言語学ラジオ」に3度目の登場」 ([2026-07-16-1]) で紹介したとおり,人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)が3度目(最終回)のご出演をされました.それを受けて,昨日公開された「いのほた言語学チャンネル」の最新回にて,反省会を開きました.「ゆる言語学ラジオさんに説教されましたー!」(20分ほどの動画)をご覧ください.
 今回の動画は,ゆる言語学ラジオでの井上さんの学ラン姿でのコント風ご出演と,堀元さんによる本気の YouTube 論を受けた振り返りトークとなっています.実はこの学園コント企画,2年前の2024年冬に両チャンネルのメンバー4名で会食した折に上がってきたもので,2年越しの計画として結実したものでした.堀元さんの卓越したエンタメ性と魂の入った YouTube 論には,私も大いに刺激を受け,学ぶことばかりでした.
 動画内では,エンタメや編集技術の反省にとどまらず,現代における知のあり方や大学の役割についても議論が及びました.従来のように大学が知の唯一の頂点や中心として君臨する時代は過ぎ去り,現代は分散型の知の潮流の中にあります.そのような状況において,大学や研究者には,知のキュレーターやオーガナイザー,あるいは開かれた知のサークルの1メンバーとしての柔軟な役割が求められているのではないか,と語り合いました.
 現在私が海外に滞在しているため Zoom での遠隔収録となっていること,画面のアスペクト比や編集,音声レコーディングの話題など,技術面での裏話にも触れています.9月末には日本へ帰国する予定で,10月からは再び2人並んでの対面収録をお届けできる見込みです.
 昨年刊行された共著『言語学でスッキリ解決! 英語の「なぜ?」』(ナツメ社)や,雑誌『英語教育』でのコラボ連載など,動画にとどまらない2人の発信活動についても紹介しています.ゆる言語学ラジオの視聴者の方々にも,一味違った角度から英語学・言語学の奥深さを味わっていただければ幸いです.
 おかげさまで「いのほた言語学チャンネル」は開設から4年と5ヶ月が経ち,チャンネル登録者は2万2千人を超えています.今後とも英語学・言語学のおもしろさを伝えていきたいと思います.「いのほた言語学チャンネル」をよろしくお願いします.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』 ナツメ社,2025年.

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2026-07-17 Fri

#6290. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第5回 --- 英語と日本語の語彙の3層構造 [inohota][youtube][inohota_rensai][notice][lexical_stratification][lexicology][japanese][loan_word][french][latin][synonym][nazesantangen][contact]


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 7月14日,大修館書店より月刊誌『英語教育』7月号が刊行されました.今年度,同雑誌において,YouTube 「いのほた言語学チャンネル」でご一緒している同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに,連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を担当しています.
 最新号の第5回の記事は,私が主に執筆しました.タイトルは「英語と日本語の語彙の3層構造」です.新刊『英語語源で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書,通称『なぜさんたんげん』)の第4章第1節「なぜ英語には類義語が多いのか」で注目した話題をご紹介しています.
 英語は語彙が豊富で,類義語も多い言語です.諸言語の最大の辞書の見出し語数で比べてみても,英語は少なく見積もっても60万語(実際には優にその数倍はあると予想されます)と,他の主要な言語を大きく引き離しています.たとえば「尋ねる」を意味する基本的な動詞に ask がありますが,ほかにも inquireinterrogate といった類義語がいくつも存在します.英語に類義語が多い理由は,歴史における他言語との接触の累積によって,語彙の階層構造ができあがってきたことにあります.
 古英語期には,アングロサクソン人が用いていた本来の英単語 ask だけで,一般的な「尋ねる」の意味がおよそまかなわれていました.しかし,1066 年のノルマン征服(フランス北部のノルマン人がイングランドを征服した事件)の余波により,支配層の言語となったフランス語から inquire という語が英語に流入しました.さらに初期近代英語期に入ると,ルネサンス期を特徴づける古典語への関心の高まりにより,権威あるラテン語から interrogate が持ち込まれました.こうして,文化的香りの高いラテン借用語を頂点とし,その下にノルマン征服を象徴するフランス借用語が位置づけられ,さらにその下に被支配者の言語としての英語本来語が置かれる,ピラミッド風の3層構造が英語語彙において確立したのです.
 記事では,他の具体的な例を列挙し,対応する日本語における語彙階層についても触れました.両言語に見られる語彙の階層構造は,各言語の言語接触の歴史の生き証人なのです.過去から現代に至るまで,ことばがいかに社会の影響を受けて変容してきたのかに関心のある方は,ぜひ今回の『英語教育』の連載記事や新刊『なぜさんたんげん』の扉も叩いてみてください.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第5回 「英語と日本語の語彙の3層構造」『英語教育』2026年8月号,大修館書店,2026年7月14日.44--45頁.
 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

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2026-07-16 Thu

#6289. 井上逸兵さんが「ゆる言語学ラジオ」に3度目の登場 [notice][inoueippei][yurugengogakuradio][inohota][youtube][nazesantangen][politeness][sociolinguistics][honorific][hedge]



 人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新回で,井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)が,先々週と先週に引き続き3度目(最終回)の出演です.堀元さんが熱血教師,井上さんと水野さんが生徒に扮する,驚きの教室コントのシチュエーションで,堀元先生が「いのほた言語学チャンネル」の編集にアドバイスを加えつつ,YouTuber 論を語るという異色の回です.抱腹絶倒の36分ですが,極上の YouTube 制作技術論かつメディア論となっています.動画公開からの初速も著しく,とんでもなく注目されています!
 今回の動画を視聴して感じたのは,コントの枠を超えて堀元さんの「YouTube 哲学・技術論」の結晶となっていたということです.その裏で,とりわけ印象深かったのは,井上さんが語った知の流れ方の大変化,ひいては学術とメディアの関係の革命という視点です.井上さんによれば,大学という権威の象徴が民を啓蒙するという20世紀型の中央集権的なスタイルは終わりを告げ,21世紀はアルゴリズム型の分散型社会へと移行しています.学術についても,もはや本や雑誌という媒体だけでは立ちゆかない時代が到来していると,私も考えています.
 動画のなかで堀元さんが放った「YouTube は学校じゃねえんだよ」という言葉は,本質を突いています.YouTube には視聴維持率の戦いがあるけれども,授業にはそれがありません,最初の数秒で引きつけ,1文字でも無駄な情報を削り,スマホの画面で省略されない短いタイトルに引きのある情報を詰め込む --- この「手前に引きのある情報をもってくる」という徹底的な技術論は,大学教員が必ずしも得意とするわけではないウケる発信の難しさを浮き彫りにしています.
 今回のゆる言語学ラジオ回で,大学教授が「もっとおもしろくしたい」「YouTuber として数字を出したい」とプロのアドバイスを真摯に仰ぐ姿勢は,きわめて珍しいことです.研究者からの YouTube 等の新メディアでの発信が当たり前になってくる時代は,まだ数年先のことかもしれませんが,間違いなく到来するだろうと思っています.
 井上・堀田は職業 YouTuber ではありません.動画内で堀元さんが「YouTuber は怒りと憎しみを食って大きくなる生き物だ」「視聴者を騙せ」と述べているような方向性を追い求める生き方は不可能です.私たちが目指しているのは,学問の魅力で世の中の人々の知的好奇心を刺激することです.プロ YouTuber のアドバイスはありがたくちょうだいしつつ,基本は学問のおもしろさを元気に長く伝えていく継続性こそが大事なのだろうと,改めて認識した次第です.
 「ゆる言語学ラジオ」のお二方には,言語学という分野をここまで盛り上げ,さらに私たちを収録にお呼びいただいた旨,改めて深く感謝します.抱腹絶倒のコントの裏にある YouTuber 論を,ぜひ皆さんも視聴して味わってみてください.

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2026-07-12 Sun

#6285. 小河舜さん(上智大学)×井上逸兵さん「古英語と英国地名からみるイギリスの言語文化」ダイジェスト版 [youtube][ogawashun][onomastics][name_project][toponymy][anglo-saxon][oe][celtic][old_norse][viking][ippeiinoue][norman_conquest][north_sea][contact]



 昨日の記事「#6284. 英語史を育んだ北海 --- だから私は泳いだ」 ([2026-07-11-1]) との関係も深い話題.
 去る7月8日(水),「NPO 法人地球ことば村」オンラインサロンにて,臨場感あふれる YouTube 対談動画が公開されました.お相手は,本ブログや Voicy heldio の「千本ノック」などの企画でお馴染みの英語史研究者小河舜さん(上智大学)と,私の同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学)のお2人です.
 この収録自体は,2年ほど前,2024年10月31日の夜に,慶應義塾大学三田キャンパスの東館オープンラボにて行なわれたものです.私自身は,当夜は仕事の都合で対談本編には立ち会えなかったのですが,その後に催された熱い懇親会の席にはしっかりと滑り込み,英語史トークに花を咲かせたという良き思い出があります.今回はその対談の22分ほどの「ダイジェスト版」が公開されたということで,そのエッセンスをかいつまんで紹介しつつ,hellog 読者の皆さんにもぜひ動画を視聴していただければと思います.
 対談の主たるテーマは,小河さんの主たる研究フィールドである「古英語」と「地名」です.
 英語史における最大の画期といえば,誰もが忘れることのできない1066年のノルマン征服 (norman_conquest) ですが,それ以前の時代を指すのが古英語です.小河さんは,外から新しい言語話者がブリテン島にやってきたときに,既存の地名がどのように置き換えられたのか,あるいは塗り替えられずに痕跡を残したのか,という動態に関心を抱かれています.
 動画内では,とりわけ8世紀以降にブリテン島へ侵入・定住したヴァイキング (viking) の母語である古ノルド語 (old_norse) に由来する地名が具体的に取り上げられています.現代の私たちが抱く「凶暴な海賊」というヴァイキングのステレオタイプは,実は18世紀以降の創作による後付けのイメージが多分に含まれており,実際には商人として定住し,アングロサクソン人とある程度言葉を通じ合わせながら共存していた側面も強かったという指摘には,目から鱗が落ちる方も多いのではないでしょうか.
 そのヴァイキングの言語的痕跡として最も著名な地名要素が,Rugby などの地名に見られる -by 要素です.古ノルド語で「村」や「集落」を意味するこの要素は,イングランドの北東部に明らかに集中的に分布しており,当時のヴァイキングたちの勢力圏を雄弁に物語っています.
 一方で,本来のアングロサクソン系の地名として優勢なのが,WashingtonNewton などに見られる -ton 要素です.古英語の日常語としては「柵」や「囲われた場所」を意味する tūn という単語の縮約形ですが,これが日常言語として発展したのが,私たちが当たり前のように使っている town (町)というわけです.まさに日本の「〇〇町」という感覚と同じ最優勢の地名要素が,歴史の波に揉まれてきたのですね.
 対談では,10世紀の歴史書にラテン語で記された地名表記から,アングロサクソン系の旧名 Norðworðig とヴァイキング系の新名 Derby が並置されている移行期・接触期の揺らぎが生々しく見えるという,文献学的な醍醐味も語られています.
 さらに話題は,より古い層に属するケルト語由来の地名(とりわけ水にまつわる川の名前に多く残る AvonThames の逸話など)から,スコッチ・ウィスキーの「ジョニー・ウォーカー」 (Johnnie Walker) のロゴに隠された興味深い語源説にまで及びます.歩く姿のシルエットで有名なウォーカーという姓ですが,語源を遡れば「歩く人」とは全く無関係で,羊毛を圧縮する職業名やヴァイキングの言語に由来する可能性が高く,現代的な解釈(誤解)によって,あの闊歩する姿のデザインが生まれたというエピソードは,言語学・文化史的にも実に興味深い話題です.
 地名や人名というものは,人間がその時代にその場所とどのような関わりを持っていたかを示すアイデンティティの証にほかなりません.22分の動画のなかに,英語史のロマンと固有名詞学の奥深さが凝縮された対談となっています.
 hellog 読者の皆様におかれましては,ぜひ上掲の YouTube スクリーン,あるいはこちらの直接リンクより,この魅力的な対談動画をじっくりとご視聴いただければ幸いです.

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2026-07-09 Thu

#6282. 井上逸兵さんが「ゆる言語学ラジオ」に2度目の登場 [notice][inoueippei][yurugengogakuradio][inohota][youtube][nazesantangen][politeness][sociolinguistics][honorific][hedge]



 人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新回で,先週に引き続き井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)が出演しています.7月7日(火)に配信された「「日本語は遠回りに言う」。それ誤解です。」です.ポライトネスの日英差をテーマとして,お3方で盛り上がっています.水野さんと堀元さんとの掛け合いとともに37分間,画面に釘付けで視聴しました.勉強になるし,おもしろい!
 一般に「日本語は遠回りで直接言わない,英語ははっきり直接言う」というステレオタイプが広く信じられていますが,社会言語学を専門とする井上さんによれば,この認識は「3割ぐらいしか合っていない」(むしろ逆)とのこと.今回の動画は,そんな言語ごとの対人関係調整のメカニズム,すなわち ポライトネス (politeness) をめぐる,目から鱗が落ちる議論が展開されています.
 動画の前半で特に興味深いのは,英語の丁寧さは形式(統語や形態)ではなく音声に依存することが多いという指摘です.英語には日本語のような文法化された「敬語」 (honorific) のシステムが乏しい分,比較的ゆっくり,かつ明瞭に発音することで経緯や丁寧さを表現する特徴があるといいます.文字情報に頼りがちな学校の英語教育ではなかなか教えにくい領域ですが,音声的なアプローチが対人関係に直結している点は刺激的な視点です.
 さらに議論は,英語における他者の領域への配慮へと展開します.日本語は自分の意見を緩めるヘッジ (hedge) を多用して関節的になりますが,英語はむしろ,相手の領域に土足で踏み込まないための固有の装置をもっています.I want to do this. という直接表現を避け,I am just wondering if I could ... のように「くねくね」と迂回する表現や,最上級表現を薄めて one of the best . . . などとする言い方が,その例とのことです.英語話者がいかに相手の独立を重んじているかが,映画の字幕翻訳の事例なども交えて解説されています.
 動画の後半では,ガソリンスタンドや玄関先での「お見送り文化」の日米差や,都市部で見られる「儀礼的無関心」,さらには幼少期の子育てにおける言語化の訓練の差異にまで話が及びます.言葉にしないものを察する日本のコミュニケーション文化と,すべてを言語化する欧米の文化モデルの対比は,堀元さんが取り上げた現代の生成AI時代における言語化のストレスの話題ともリンクし,終始笑いが絶えないながらも深い思索へと誘われます.最後は,井上さんが仕掛けたといってよい学術的な「状況による」ボケの連発に,水野さんと堀元さんが応酬する展開も必見です.
 日英差に関するステレオタイプを突き崩し,言葉の裏にある文化や心理を深く覗き込める,井上さん出演回らしい内容ですので,ぜひ上記の動画を視聴していただければとと思います.来週は井上さん出演の第3回,いよいよ爆発的なファイナル回が予定されています.すでに待ち遠しいです.
 あわせて,井上&堀田のペアで緩く(ときに熱く)言語学を語る「いのほた言語学チャンネル」のほうも,ぜひチャンネル登録をお願いします!

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2026-07-04 Sat

#6277. 井上逸兵さんが「ゆる言語学ラジオ」に登場 [notice][inoueippei][yurugengogakuradio][inohota][youtube][nazesantangen]



 人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新回で,「いのほた言語学チャンネル」で私もいつも一緒におしゃべりしている同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)が初登場されています! 6月30日(火)に配信された「ラーメン二郎の言語学。「ニンニク入れますか?」を解剖する。」です.お相手の水野さん,堀元さんとの掛け合いが実に見事で,37分の動画を私も笑いながらすっかり一気見してしまいました.
 タイトルにある通り,今回の素材はなんと「ラーメン二郎」です.あの独特な注文システムを言語学の俎上に載せるという引きの強さですが,中身は社会言語学・言語人類学の本格的な導入となっています.お3方が縦横無尽に展開するトークのなかで,「コンテキスト化の合図」「スクリプト」「指標性」,さらには日本語の多種多様な「自称詞」の話題に至るまで,専門用語や概念がぎっしりと詰め込まれています.
 同じ言語学を専門とするといっても,私の主たるフィールドは英語史であり,こうした社会言語学的な領域の本格的な議論は,はるか昔の学生時代に読んだきりのものも多いです.しかし,「いのほた言語学チャンネル」を始めて以来,井上さんの講義を一番近くで聴くことになり,いわば贅沢な「耳学問」を経ていつも復習させてもらっています.学びが本当に大きいです.
 今回の「ゆる言語学ラジオ」の動画の最後では,井上さんが「いのほた言語学チャンネル」の宣伝をしっかりと差し込んでくれています.そちらの「いのほた」ですが,現在私が在外研究で海外に身を置いている関係上,収録の都合もあり,目下は週1回の更新ペースで不定の曜日にお届けしています.
 「いのほた」の最新回として上がっている動画は,私がメインで「本は読むのも作るのも楽しい!出版には未来がある!」として熱く語っています.去る6月10日に刊行され,ありがたいことに早速増刷が出荷となった新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)の制作舞台裏や流通の話題に触れています.出版不況と言われる時代にあっても,やはり「本づくりには夢がある」という著者としての思いを込めた回ですので,ぜひ合わせてご視聴いただき,チャンネル全体を応援していただければ幸いです.
 さらにもう1つ,井上&堀田ペアの活動として,大修館書店が刊行する月刊誌『英語教育』にて,「いのほた言語学チャンネル presents 英語を深める社会言語学・英語史の視点」という連載記事を展開しています.基本的には,2人が毎月交代でメイン記事を執筆し,相方がコメントを寄せるという,まさに「いのほた」の雰囲気を誌面で再現するコンセプトです.現在発売中の7月号(6月12日刊行)は井上さんがメイン担当で,タイトルは「「あぶない!」はなぜ Watch out! になるのか ―― 日常に転がるスピーチアクトの日英比較」という,これまた魅力的な社会言語学のトピックです.
 今回の「ゆる言語学ラジオ」への井上さんの出演回は来週と再来週も続く予定と聞いています.ぜひ今後の展開にも大いに期待したいですね!

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2026-06-16 Tue

#6259. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第4回 --- 「あぶない!」はなぜ Watch out! になるのか ―― 日常に転がるスピーチアクトの日英比較 [inohota][youtube][inohota_rensai][speech_act][sociolinguistics][notice][inohotanaze][historical_pragmatics][pragmatics]


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 6月12日,大修館書店より月刊誌『英語教育』7月号が刊行されました.今年度,同雑誌において,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を展開しています.今回の第4回の記事は井上さんによる言語行為の日英差に迫っています.「「あぶない!」はなぜ Watch out! になるのか ―― 日常に転がるスピーチアクトの日英比較」です.
 今回の井上さんの論考は,日常の何気ない表現に潜む語用論の話題をおもしろく掘り下げています.たとえば,誰かが転びそうになった際,日本語ではとっさに「あぶない!」という言葉が出ます.これは形式としては危険な状況の描写にすぎません.ところが,英語では同様の場面で Watch out! と表現するのが一般的です.日本語が状況を言うことで相手を動かそうとするのに対し,英語は相手にしてほしい具体的な行為を指示することで相手を動かそうとする傾向が見られます.この対比は「うるさい!」に対する Shut up!Be quiet!,「じゃまだ!」に対する Move! などの日常表現,さらには山手線のホームの「降車位置」という表示に対する英語の Keep out という指示のあり方にまで通底しています.
 なぜこのような言語行為 (speech_act) の違いが生まれるのかについて,井上さんは2つの切り口から整理されています.この最も重要なポイントについては,ぜひ雑誌を手に取って連載記事にてお読みください.
 社会言語学 (sociolinguistics) 的に重要なのは,こうした違いを「日本人は察しの文化で,英語圏は直接的だ」といった国民性や民族性の違いに雑に単純化しないという点です.酒場でよく耳にする「日本は島国だからね」という言説への鋭いツッコミを披露されていますが,これには思わずニヤリとしてしまいました.
 最後に,私も少しコメントを寄せています.近年,英語史の分野では歴史語用論の研究が非常に盛んです.今回のトピックはその角度から見ても示唆に富んでいます.英語は歴史を通じて直接的な行為の要求ばかりを好んできたわけではありません.たとえば,Will you be quiet? のように相手の意志の確認を通じて間接的に依頼や軽い命令を表わす言語行為の型も,後期中英語期以降のことではありますが,発達してきています.つまり,英語もまた直接命令するのではない「新たな間接性の型」を自ら開拓してきた歴史をもっているのです.共時的な社会言語学の知見と通時的な英語史の視点が交差する speech act は,エキサイティングな話題ですね.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第4回 「「あぶない!」はなぜ Watch out! になるのか ―― 日常に転がるスピーチアクトの日英比較」『英語教育』2026年7月号,大修館書店,2026年6月12日.44--45頁.

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2026-05-17 Sun

#6229. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第3回 --- 英語史の3つの扉:ことばの考察に通時的な次元を復活させる [inohota][youtube][inohota_rensai][hel_education][hel][sociolinguistics][notice][inohotanaze][comparative_linguistics][philology][historical_linguistics][language_change][voicy][heldio]


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 5月14日,大修館書店より月刊誌『英語教育』6月号が発売されました.今年度,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに配信している YouTube 「いのほた言語学チャンネル」をベースとして,連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を始めています.
 連載第3回となる今回は,私がメイン執筆者として「英語史の3つの扉:ことばの考察に通時的な次元を復活させる」を書いています.前号の井上さんによる「社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか」への返答のような形になります.井上さんからの温かいコメントも最後に付いた文章です.
 今回の記事タイトルは,前号の井上さんの記事タイトルへのオマージュ(いや,パロディというべきでしょうか)として生まれたものです.井上さんがそう来るなら,私としては「英語史の3つの扉」しかない,と直感し,先にタイトルが決まりました.では,その3つとは何か.それは後から考え出すという,いかにも「いのほた」らしいライブ感のある記事執筆です.
 記事では,英語史への3つの入口として,「比較言語学」 (),「文献学」 (philology),「歴史言語学」 (historical_linguistics) を取り上げています.第1の扉「比較言語学」では,文献に残らない祖語の姿を「再建」 )という手法によって浮かび上がらせる営みを論じました.第2の扉「文献学」では,1文字・1語に宿る言語的・社会的文脈を丁寧に読み解くことの醍醐味を述べています.そして第3の扉「歴史言語学」では,言語変化 (language_change) のメカニズムを体系的に追う視点を紹介しました.3者はそれぞれ異なる分野でありながらも「社会と言語の接点」という点で通底しています.この締めくくりによって,社会言語学を専門とされる井上さんとのコラボ的なエッセイとして仕上げることができたかな,と感じています.
 なお,本連載は月々メイン執筆者を交代するスタイルをとっており,サブの側がコメントを数行添える形式をとっています.今回,井上さんからは「英語史ってロマンですねー」という言葉をいただきました.「いのほた言語学チャンネル」のゆるいライブ感を,誌面でも少しずつ体現できているとすれば,望外の喜びです.
 本連載記事と関連して,heldio でも先日「#1812. 英語史の3つの扉 --- 『英語教育』の「いのほた連載」第3弾より」としてお話ししました.あわせてお聴きください.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第3回 英語史の3つの扉:ことばの考察に通時的な次元を復活させる」『英語教育』2026年6月号,大修館書店,2026年5月14日.44--45頁.

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2026-05-11 Mon

#6223. 本日夕方7時,heldio 生配信にて『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』の「予約爆撃アワー」をお届けします [voicy][heldio][notice][nazesantangen][sobokunagimon][heltube][youtube][twitter][nhkpb]



 1ヶ月後の2026年6月10日(水),NHK出版より拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』が刊行されます.初の新書出版であり,編集担当の方と二人三脚で時間をかけて作り上げた思い入れの深い1冊となります.本書は,英語を学んでいる,あるいは教えているすべての方にお届けしたい本となっています.英語の素朴な疑問 (sobokunagimon) は英語史が解決してくれる,この認識を世の中の当たり前にしたい,そんな思いを込めて作った本です.
 発売まであと1ヶ月となった本日5月11日(月)の午後7時より,Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて生配信をお届けします.題して「【ライヴ】近刊『英語史で解く 英文法の謎』予約爆撃アワー」です.この生配信中に,リスナーの皆さんに Amazon より一斉に予約注文していただくことで,本書の注目度,そして英語史という分野の認知度を一気に高めようというお祭り企画です.Amazon 予約注文された方には特典もつきます.この特典についても,今晩,じっくりとお話しいたします.
 19:00の生配信開始直後は,通信環境の確認を兼ねて数分間の雑談からスタートします.19:30くらいまでには,私のほうから新書の案内や予約注文の呼びかけなど,今回の企画の骨子をお話しする予定です.そして,生配信の目玉は19:30頃からのゲスト対談です.本書のもととなった連載記事の頃より編集を担当してくださったNHK出版の田中菜乃香さんにご登壇いただく予定です.田中さんには,連載記事や今回の新書の編集にまつわる逸話,編集者の立場から見た連載と新書の違い,さらには本書のタイトルの決定経緯や,著者である私への「今だから言えること」など,時間の許す限りたっぷりとお話を伺いたいと考えています.30分では収まりきらない予感もしていますが・・・
 今晩の「予約爆撃アワー」企画については,昨晩公開した heltube (私のhel活 YouTube チャンネル)での動画,および今朝の heldio の配信回でも熱烈に広報を行なっています.ぜひそちらもチェックして,今晩のお祭りの気分を高めていただければ幸いです.

 ・ 昨晩公開した heltube 動画:「2026年5月11日(月)19:00より heldio 生配信で近刊の「予約爆撃アワー」を実施します」
 ・ 今朝公開した heldio 音声配信:「#1807. 今晩7時生配信,近刊書の「予約爆撃アワー」」

 とりわけ前者の heltube 動画では,私が現在滞在中のスコットランド,アバディーンの様子も見ていただけます.町の南側を流れるディー川の河口付近,地元で Fittie と呼ばれる港の周辺を毎日ジョギングするのが日課となっています.北海に注ぐこの川の河口では,野生のイルカに遭遇することもあり,自然の豊かさを肌で感じながら過ごしています.その様子もご覧になりつつ,今晩7時の heldio 生配信への準備を整えていただければと思います.
 「英語史をお茶の間に」を実現すべく,皆様の熱い「爆撃」をお待ちしています.今晩のライヴでは,ぜひコメント・質問等を投げ込んでいただけますと幸いです.今晩7時,heldio でお会いしましょう!
 なお,今後の本書の広報に際して,ハッシュタグは #なぜさんたんげんの平仮名8文字で統一いたします.本書の応援,何卒よろしくお願いいたします.

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

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2026-04-29 Wed

#6211. 寺澤盾先生が PIVOT TALK に出演して【世界の英語と日本人】をお話しされています [pivot][youtube][world_englishes][notice][model_of_englishes][variety][standardisation][lingua_franca][ai][sociolinguistics][notice]



 4月25日(土),PIVOT TALK にて「【世界の英語と日本人】英語の始まりは5世紀半ば/20億人超まで広がった理由/英語は語彙が多い/英語が分裂していくシナリオ/標準化の挫折/AI時代にも英語学習は必要か?/10年後の英語と日本人」と題する YouTube 動画が配信されました.英語史研究者の寺澤盾先生(青山学院大学教授,東京大学名誉教授)がゲストとしてお話しされている,50分ほどの貴重な対談です.
 お話しの内容は,1ヶ月ほど前に寺澤先生が中公新書として上梓された『世界の英語 --- 5大陸に広がる多様な Englishes』を紹介しつつ,日本の英語学習者の皆が尋ねたくなる質問群に,英語史や世界英語 (world_englishes) の観点から答えられています.
 動画の内容は多岐にわたりますが,とりわけ重要なトピックをいくつかご紹介しましょう.

 まず,英語がなぜこれほどまでに拡大したのかという問いに対し,寺澤先生は「言語的な特徴によるものではなく,あくまで社会的・歴史的な要因である」と明快に答えられています.5世紀半ばには数十万人規模のマイナー言語に過ぎなかった英語が,1600年頃(シェイクスピアの時代)には600万人,そして現代では20億人を超える話者を抱えるに至った背景には,大英帝国の覇権と,それに続く米国の台頭というパワーの基盤があったという指摘です.
 また,現代の英語の状況を Kachru の「同心円モデル」を用いて解説し,非母語話者が母語話者を圧倒的に上回る(約8割が非母語話者!)という現状を浮き彫りにしています.これにより英語はもはや母語話者の独占物ではなくなっている,というパラダイム・シフトに言及されています.
 英語をめぐる今後の展望についても刺激的なお話しがありました.英語が各地で独自に進化し分裂していく「遠心力」と,共通語 (lingua_franca) として標準化・簡略化を目指す「求心力」のせめぎ合いについて触れ,さらにはAI同時通訳の発展が英語の地位をどう変えるかという点にも踏み込んでいます.
 最後に,日本人が英語とどう向き合うべきかという議論では,話し言葉に関しては特定のネイティブ英語に固執するのではなく,多様な複数形の Englishes を許容する姿勢の大切さを説いています.一方で書き言葉においては依然として標準的な文法や綴字の知識が信頼の指標となるという,現実的でバランスの取れた視点を提供してくれています.

 今回の寺澤先生のご出演は,世界英語という現代的な話題も視野に収めた英語史という学問が単なる過去の記録ではなく,現代社会を読み解き,私たちの未来の指針を示すための生きた知恵であることを改めて実感させてくれるものです.50分という動画の時間は一見長く感じられるかもしれませんが,寺澤先生の落ち着いた,かつ情熱的な語り口に引き込まれ,あっという間に過ぎてしまうはずです.
 そして,この動画で興味を持たれた方は,ぜひ中公新書より刊行されたばかりの『世界の英語』を手に取ってみてください.寺澤先生による『英語の歴史』,『英単語の歴史』に続く3部作の3番目となる本書は,世界各地で変容し続ける英語のダイナミズムを網羅的に描き出した決定版です.動画と合わせて読むことで,英語という言語がもつ4次元的な広がりが,より鮮明に見えてくることでしょう.hellog 読者の皆さんにも強くお薦めしたい1冊です.

 ・ 寺澤 盾 『世界の英語 --- 5大陸に広がる多様な Englishes』 中央公論新社〈中公新書〉,2026年.

Referrer (Inside): [2026-05-15-1]

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2026-04-28 Tue

#6210. 旅する英語史「旅hel」の動画シリーズが始まりました --- 第1回はアバディーン編 [tabihel][hel_education][youtube][helwa][heldio][helkatsu][notice][old_norse][scottish_english][scots]

 新年度の私の「hel活」 (helkatsu) の新機軸として,「旅する英語史 旅hel」 (tabihel) という動画シリーズを立ち上げました.目下,私はスコットランドのアバディーンに滞在しているのですが,旅をし街歩きをしながら英語史に関係する話題を見つけ,ビデオカメラで撮影しつつ,自由にお話ししていこうという Vlog シリーズです.
 シリーズ第1弾は,4月13日に半日をかけて撮影した「アバディーン編」です.こちらは一般公開はしておらず,Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」にお入りいただいているメンバーへの限定公開となっております.helwa メンバーの方は,4月16日配信の「【英語史の輪 #0433】旅する英語史「旅hel」アバディーン編をご視聴ください」を経由して,本編動画への URL にアクセスできます.

 今回の動画の舞台は,スコットランド第3の都市 Aberdeen です.「花崗岩の街」 (Granite City) としても知られる美しい街並みを歩きながら,いくつかの英語史ポイントを拾い上げました.
 例えば,Upperkirkgate という通りの名前です.この gate は,現代英語の「門」ではなく,北イングランドやスコットランドで「道,通り」を意味する古ノルド語に由来すると考えられます.南部の waystreet に相当するもので,まさに北部的な語といえます.実は kirk ももう1つの北部ポイントです.
 また,町の北を流れるドン川に架かる歴史的な橋 Brig o'Don にも訪れています.ここで注目したいのは橋を意味する brig という語形です.標準的な bridge の最後の子音が -dg- /dʒ/ ではなく -g /g/ となっているのは,やはり古ノルド語の影響を強く受けた北部方言の特徴を色濃く残している証拠です.
 動画内では他にも,1593年創立の歴史ある Marischal College を眺めたり,最後には銀行の建物を改装したパブでエールを楽しんだりと,37分にわたる盛りだくさんの内容になっています.Osmo Pocket 3 という小型ビデオカメラを手に,慣れない動画編集に苦戦しながらも,楽しく英語史の視点から街の魅力を切り取ってみました.

 この「旅hel」シリーズの立ち上げについては,一昨日の heldio でも「#1792. 旅する英語史「旅hel」アバディーン編の動画を helwa 経由で配信しています」としてお話ししましたが,そこではダイジェスト版となる5分ほどの「音声」もお聴きいただけます.本編動画の雰囲気を味わうことができるかと思います.
 本編動画にご関心のある方は,ぜひプレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」にお越しください.helwa は初月無料となっておりますので,ぜひ4月分にお入りいただき,試し聴きしつつ,特に4月16日配信の「【英語史の輪 #0433】旅する英語史「旅hel」アバディーン編をご視聴ください」を経由して動画にアクセスしていただければ.

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2026-04-19 Sun

#6201. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第2回 --- 社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか [inohota][youtube][inohota_rensai][hel_education][hel][sociolinguistics][notice][inohotanaze][variation][voicy][heldio]


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 4月14日,大修館書店より月刊誌『英語教育』5月号が発売されました.今年度,同雑誌において,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに,新しい連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を始めています.今回は連載第2回となり,井上さんがメインとなり「社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか」と題して,社会学の入門となる文章を書かれています.最後に,私も少しコメントしています.
 前回の4月号(第1回)は,イントロとして「いのほた」対談形式でお届けしましたが,今月号からは交互にメインライターを務める趣向です.今月は井上さんが「社会言語学」 (sociolinguistics) のエッセンスを鮮やかに切り出しており,来月は私が「英語史」の観点から主筆を担当し,お互いに数行のコメントを寄せ合うという,まさに YouTube チャンネルの空気感を紙面に再現するような構成になっています.
 今回の井上さんの記事の白眉は,「3つの扉」という切り口です.社会言語学という広大な領域を,(私流の解釈によれば) (1) 変異,(2) 人間関係,(3) 空気という3点で整理されています.人はことば「を」どう使うかという受動的な記述にとどまらず,副題にある通り,人はことば「で」何をしているのかという能動的・積極的な側面を強調されているのが,実に井上さんらしい視点だなと感じます.
 とりわけ第1の扉である「変異」 (variation) は,言語変化を扱う歴史言語学や英語史と極めて親和性が高い領域です.歴史的に見れば,ある時代の「変異」が積み重なり,やがて「変化」へと結びついていくからです.この点については語りだすと止まらなくなるのですが,ぜひ本誌をお手に取っていただければと思います.
 実をいえば,この連載は YouTube の「いのほた言語学チャンネル」と同様,あえてガチガチに12回分の計画を固めすぎないようにしています.もちろん大まかな構想はありますが,読者の皆さんの反応や,相方の出方を伺いながら,その都度フレキシブルにテーマを選んでいくという,ライブ感を大切にするスタイルをとっています.井上さんがこう来たならば,次は私はこう返そう……というインタラクションこそが,この連載の醍醐味と言えると思います.次回の6月号では私が主役を務める番ですが,今回の井上さんの「3つの扉」に触発されて,その英語史版をパロディとして書いてみようと思っています.社会言語学と英語史がどのように交差し,響き合うのか.まずは発売中の5月号にて,井上さんによる社会言語学の切り方を堪能してください.
 本連載に関連して,heldio でも「#1783. 『英語教育』の「いのほた連載」第2弾」としてお話ししています.あわせてお聴きいただければ.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第2回 社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか」『英語教育』2026年5月号,大修館書店,2019年4月14日.44--45頁.

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2026-04-16 Thu

#6198. あまり知られていない母語英語変種 [toc][variety][world_englishes][enl][lesser-know_varieties][caribbean][inohota][youtube]



 先日公開された「いのほた言語学チャンネル」の動画では,「#411. 日本でピジン英語が話されていたのはあの島」と題して,小笠原群島の英語に焦点を当てた.関連する話題は,hellog としても「#2559. 小笠原群島の英語」 ([2016-04-29-1]),「#2596. 「小笠原ことば」の変遷」 ([2016-06-05-1]),「#3353. 小笠原諸島返還50年」 ([2018-07-02-1]) で取り上げてきたので,そちらも参照されたい.
 動画で紹介した本では,小笠原群島の英語についての言及は軽くなされているのみだが,それに類する世界であまり知られていない英語母語変種 (lesser-know_varieties) が多く紹介されている.目次がそのままそれらの変種の一覧となっているので,それを挙げておきたい.



1. Introduction
   Part I: The British Isles
2. Orkney and Shetland
3. Channel Island English
   Part II: The Americas and the Caribbean
4. Canadian Maritime English
5. Newfoundland and Labrador English
6. Honduras/Bay Islands English
7. Euro-Caribbean English varieties
8. Bahamian English
9. Dominican Kokoy
10. Anglo-Argentine English
   Part III: The South Atlantic Ocean
11. Falkland Islands English
12. St Helenian English
13. Tristan da Cunha English
   Part IV: Africa
14. L1 Rhodesian English
15. White Kenyan English
   Part V: Australasia and the Pacific
16. Eurasian Singapore English
17. Peranakan English in Singapore
18. Norfolk Island and Pitcairn varieties




 英語は大言語であるとはいえ,母語変種に限っても広く知られていないものが多々あることがわかるだろう.


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 ・ Schreier, Daniel, Peter Trudgill, Edgar W. Schneider, and Jeffrey P. Williams, eds. The Lesser-Known Varieties of English: An Introduction. Cambridge: CUP, 2010.

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2026-03-14 Sat

#6165. 月刊誌『英語教育』にて「いのほた連載」がスタート [inohota][youtube][inohota_rensai][hel_education][hel][sociolinguistics][notice][inohotanaze]


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  *

 昨日3月13日,大修館書店より月刊誌『英語教育』4月号が発売されました.今月号より,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに,新しい連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」が始まっています.
 本連載は,2人で配信している YouTube 「いのほた言語学チャンネル」から派生した連載企画です.早いもので YouTube での活動も4年を超えましたが,動画でお届けしてきた言葉のダイナミズムや楽しさを,今度は誌面を通じてもお届けしたいと考えています.
 連載の趣旨としては,英語教員の方々はもちろん,英語を学ぶすべての読者の皆さんに,社会言語学と英語史という2つのレンズを通して,英語という言語の奥深い魅力を再発見していただくことにあります.見開き2ページというコンパクトな形式ですが,2人の対談回もあれば,片方がトピックを提供してもう片方がコメントを寄せる回もあるなど,バラエティに富んだコンテンツとなっていく予定です.
 第1回は「言語学・英語学の世界にようこそ」と題し,2人の自己紹介とともに本シリーズの狙いについてお話ししています.社会言語学がどのように私たちのコミュニケーションに関わるのか,あるいは英語史がいかにして現代英語の「なぜ?」に光を当てるのか,そのエッセンスを詰め込みました.
 また,「いのほた」コンビによる出版物としては,昨年10月に『言語学でスッキリ解決! 英語の「なぜ?」』(ナツメ社)も刊行されています.こちらも連載と合わせてお読みいただけますと幸いです.
 英語という言語を,単なる暗記の対象としてではなく,人間が作り上げてきた生き生きとした文化装置として捉え直す.そんな知的な冒険を,毎月の連載を通じて読者の皆様と共有できればと願っています.
 新年度にむけて,英語(史)の世界を深めていきたいという方は,ぜひ毎月13日前後の『英語教育』の連載をお見逃しなく!

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第1回 言語学・英語学の世界にようこそ」『英語教育』2026年4月号,大修館書店,2019年3月13日.42--43頁.
 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』 ナツメ社,2025年.

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2026-02-24 Tue

#6147. 言語学用語としての register の初例 [register][terminology][sociolinguistics][oed][youtube][inohota][sociolinguistics]

 昨日の記事「#6146. いのほたで register を紹介しました」 ([2026-02-23-1]) に引き続き,register という用語について.言語学用語としての register の初例を調べるべく,OED に当たってみた.語義 II.9.c がそれに当たり,初出年は1956年とある.この語義の定義と例文をすべて OED から引用する.

II.9.c. Linguistics. In language: a variety or level of usage, esp. as determined by social context and characterized by the range of vocabulary, pronunciation, syntax, etc., used by a speaker or writer in particular circumstances.

   1956 He will on different occasions speak (or write) differently according to what may roughly be described as different social situations: he will use a number of distinct 'registers'. (T. B. W. Reid in Archivum Linguisticum vol. 8 32)
   1962 Interference may..vary according to the social role of the speaker in any given case. This is what the Edinburgh School has called register. (Canadian Journal of Linguistics vol. 7 69)
   1966 Varieties of English distinguished by use in relation to social context are called registers. (G. N. Leech, English in Advertising vii. 68)
   1971 A novel, then, can be seen as an amalgam of registers within a wider register of literary endeavour. (P. Young in J. Spencer, English Language in West Africa 173)
   1972 Chaucer must therefore have used what was, for the London of his time, a more formal, possibly more archaic, register. (Notes & Queries December 446/2)
   1977 They are aware..of the idea of 'varieties' of English, and they probably know the term 'register'---a variety related to a particular use of the language, a particular subject or occupation. (P. Strevens, New Orientations in Teaching of English x. 119)
   1991 An unexpected bonus is a bilingual section on letter-writing in both formal and informal registers. (Times Educational Supplement 15 March 49/2)
   2004 This marker is very often used by Catalan speakers in colloquial register when the speech formality is low. (M. González, Pragmatic Markers in Oral Narr. vi. 224)


 初例の典拠となっている Reid の論文に当たってみると,次のようにあった (32) .

Even if we possessed a separate repertory of utterances for each of the groups of speakers into which the French speech community must be divided, we should still be unable to establish a single linguistic system for any one group. For the linguistic behaviour of a given individual is by no means uniform; placed in what appear to be linguistically identical conditions, he will on different occasions speak (or write) differently according to what may roughly be described as different social situations: he will use a number of distinct "registers"[note 2]


note 2: cf. the levels of diction, indicated in the Report of the Commission set up by the International Council for Philosophy and Humanistic Studies quoted by Professor J. R. Firth in Transactions of the Philological Society. 1951, p.81.


 Reid (1901--81) はオックスフォード大学の教授で,ロマンス語学を専攻していた.引用注にもあるとおり,アイディア自体は Firth の "levels of diction" に遡るが,それを Reid が "register" と名付けなおしたということのようだ.その70年後に「いのほた」でも主題として取り上げられるほどに重要な用語に成長したことになる(cf. 「#404. エンレジスタメント(enregisterment・レジスター化)とレジスターーコンビニ敬語,ファミレス敬語を社会言語学から見ると?」).

 ・ Reid, T. B. W. "Linguistics, Structuralism and Philology." Archivum Linguisticum 8.1 (1956): 28--37.

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2026-02-23 Mon

#6146. いのほたで register を紹介しました [register][enregisterment][terminology][youtube][inohota][sociolinguistics]



 2月17日に配信された「いのほた言語学チャンネル」の回は,「#404. エンレジスタメント(enregisterment・レジスター化)とレジスターーコンビニ敬語,ファミレス敬語を社会言語学から見ると?」と題して,enregisterment という用語・概念を導入しました.
 その基本にあるのが register なのですが,動画でも議論している通り,広く便利な用語・概念である一方,論者によってニュアンスが異なるという点も見逃せません.本ブログでは,Halliday 的な観点からの「#839. register」 ([2011-08-14-1]) を紹介したことがありますが,今回は McArthur の用語辞典からこの用語の定義・解説を改めて読んでみましょう (859) .

REGISTER [1950s in this sense; 14c in origin, through French from Medieval Latin registrum a list or catalogue]. In sociolinguistics and stylistics, a variety of language defined according to social use, such as scientific, formal, religious, and journalistic. The term has, however, been used variously in different theoretical approaches, some giving it a broad definition (moving in the direction of variety in its most general sense), others narrowing it to certain aspects of language in social use (such as occupational varieties only). The term was first given broad currency by the British linguist Michael Halliday, who drew a contrast between varieties of language defined according to the characteristics f the user (dialects) and those defined according to the characteristics of the situation (registers). Registers were then subclassified into three domains: field of discourse, referring to the subject matter of the variety, such as science or advertising; mode of discourse, referring to the choice between speech and writing, and the choice of format; and manner of discourse, referring to the social relations between the participants, as shown by variations in formality. . . .


 基本的には Halliday の流れを汲んだ register の定義となっていますね.以前の記事では「1970年代以降に広まった用語と概念」と紹介しましたが,register のこの語義自体が1950年代からあったというのは初耳でした.

 ・ McArthur, Tom, ed. The Oxford Companion to the English Language. Oxford: OUP, 1992.

Referrer (Inside): [2026-02-24-1]

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2026-02-18 Wed

#6141. 新装復刊まであと1週間 --- 『古英語・中英語初歩』見本の「開封の儀」 [notice][kochushoho][kenkyusha][youtube][heltube][voicy][heldio][kochukoneta30][link][helkatsu]



 2月25日(水)に研究社より『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』が刊行されます.本書の1ファンとして,3週間ほど前より復刊を祝って盛り上げるべく,様々な関連企画を実施しています.ついに刊行1週間前となりました.
 先日2月13日(金),研究社のご厚意により本書のホヤホヤの出来上がり見本を,目下滞在中のメルボルンまでお送りいただきました(ありがとうございます!).興奮のあまり,すぐに「開封の儀」を収録し,翌日には YouTube や Voicy で配信しました.盛り上げコンテンツとして興奮の様子が伝わるかと思いますので,ぜひご視聴ください.

 ・ YouTube heltube 版:「特別配信 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』開封の儀」
 ・ Voicy heldio 版:「特別配信 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』開封の儀」
 ・ note でも関連記事を書いています:「メルボルンで「開封の儀」 --- 研究者のちょっと幸せな朝」

 この3週間で折に触れていくつかのメディアで関連コンテンツを公開してきましたが,以下にまとめておきます.とりわけ heldio での「『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ」は,古い英語に初めて触れる方にお薦めです.本書を手に取る前に,ぜひお聴きいただければ.

【 hellog 】

 ・ 「#6117. 伝説的入門書『古英語・中英語初歩』が新装復刊されます!」 ([2026-01-25-1])
 ・ 「#6120. 『古英語・中英語初歩』新装復刊のカウントダウン企画「古中英語30連発」を始めています」 ([2026-01-28-1])

【 heldio 】

 ・ 「#1706. 伝説の教科書『古英語・中英語初歩』(研究社)が新装復刊
 ・ 「#1708. 『古英語・中英語初歩』新装復刊のカウントダウン企画「古中英語30連発」を始めています」
 ・ 「#1710. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (1) --- 古英語の母音」
 ・ 「#1713. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (2) --- 古英語の子音(前編)」
 ・ 「#1716. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (3) --- 古英語の子音(後編)」
 ・ 「#1722. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (4) --- 古英語の強勢」
 ・ 「#1723. 『古英語・中英語初歩』新装復刊の裏にはヘルメイトたちのドラマがあった」

【 X(旧Twitter) 】

 ・ 私の X アカウント @chariderryu より,カウントダウン企画「古中英語30連発」を展開しています.

 あと1週間,待ちきれないですね!

 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.

Referrer (Inside): [2026-02-20-1]

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2026-02-12 Thu

#6135. 「いのほた言語学チャンネル」で「スペリング=漢字」説をお話しました [inohota][inoueippei][notice][youtube][spelling][kanji][grammatology][mond]



 2月9日(月)に「いのほた言語学チャンネル」の最新回が公開されました.「#403. 英語話者は単語を聞いてスペリングがわからないときはどうする?」と題して,「スペリング=漢字」説をご紹介しました.
 この説を紹介することになったきっかけは,昨年末の12月28日に回答した質問・応答サービス mond でのとある問答が X(旧Twitter)で大きな反響を呼び,365万インプレッションという驚異的な注目を集めたことにあります.質問は「日本語では漢字がわからなければ仮名で書けるが,英語では正しい綴りを知らない場合,ネイティブはどうしているのか?」というものでした.文字論の観点からも,きわめておもしろいお題でした.
 私はかねてより,英語のスペリングは,その機能において漢字に近いという「スペリング=漢字」説を唱えています.英語のアルファベット文字は,表音文字であり,とりわけ1文字1音を原則とする単音文字とされますが,それが1文字以上組み合わさったスペリングという単位になると表語文字の機能を帯び始めます.例えば,doubt のスペリングは確かに単音文字の組み合わせでできていますが,b のように何の音にも対応しない文字が含まれています.doubt というスペリング全体で考えると,それは1つの視覚的な「図像」であり,その図像が「疑」を意味する英単語を表わしています.つまり,スペリング全体として表語文字的な機能を帯びているのです.
 日本語で「疑」という漢字をパーツに分解せずパターンの塊として認識するように,英語話者も doubt という5文字の並びを1つの視覚的単位として認識している.つまり,中身を顕微鏡で見ればアルファベットという表音文字の組み合わせですが,スペリングという単位になると,機能的には「漢字モード」として運用されているといってよいのです.
 では,質問にあったように,綴字がわからないときはどうするのか.ここで英語における「仮名モード」が登場します.それがフォニックスや,とりあえず音を写し取る暫定的なスペリングです.英語にも「漢字モード」と「仮名モード」という2つのモードの切り替えが存在するというのが,私の見立てです.
 動画内では,この文字論的なお話に加え,スペリングの間違いが社会的な規範のプレッシャーを強く受けるという点でも,漢字とスペリングが似ているという側面について井上逸兵さんと議論しています.ぜひご視聴ください.
 「スペリング=漢字」説については,heldio でも以下の配信回でお話していますので,ぜひ合わせてお聴きいただければ.

 ・ 「#606. 英語のスペリングは漢字である」(2023年1月27日)
 ・ 「#1689. 「スペリング=漢字」説を解説します --- 規範主義の観点から」(2026年1月12日配信)
 ・ 「#1688. 「スペリング=漢字」説を解説します --- 機能的観点から」(2026年1月13日配信)

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2026-01-23 Fri

#6115. 『文献学と英語史研究』(開拓社,2023年)への書評をいただきました [review][bunkengaku][link][notice][voicy][heldio][youtube][history_of_linguistics][hel_education]

 日本英文学会の編集する学術誌『英文学研究』の第103巻(2026年)に,拙著(家入葉子・堀田隆一共著)『文献学と英語史研究』(開拓社,2023年)の書評が『英文学研究』に掲載されました.評者は愛知教育大学の小塚良孝氏です.
 4ページ分の丁寧な書評を賜りました.小塚氏には,本書の刊行直後にも関連する研究発表会で司会をしていただくなど,お世話になりました.この場を借りて,改めて感謝申し上げます.
 書評では,本書が意図した「文献学と英語史研究の融合」という視点や,近年の研究動向の整理について,評価していただきました.特に,伝統的な英語史研究における「古英語・中英語・近代英語という時代区分」「形態論・音韻論等の分野区分」「共時性と通時性という視点の区分」といった境界線を,絶対視せずに柔軟に乗り越えることの必要性を本書が説いている点について,的確に言及していただきました.これから英語史を志す学生や若手研究者にとっても,またすでに第一線で活躍されている研究者にとっても,本書が提示する見取り図が有用であることを認めていただいた形です.『英文学研究』がお手元にある方は,ぜひ pp. 226--30 の書評をご一読いただければ幸いです.
 さて,ここで改めて,本書『文献学と英語史研究』について紹介しておきたいと思います.本書は,2023年1月に開拓社の最新英語学・言語学シリーズの第21巻として出版されました.
 本書の最大の目的は,1980年代以降の約40年間にわたる英語史研究の動向を整理し,今後の展望を示すことにあります.英語史研究は,コーパス言語学の発達や隣接分野との連携により,この数十年で大きく変貌を遂げました.かつての「文献学」 (philology) の伝統と,現代的な「言語学」 (linguistics) の手法がいかに融合し,新しい知見を生み出しているのか.その最前線を,音韻論,綴字,形態論,統語論といった主要な分野ごとに詳説しています.本書の構成は以下の通りです.

 ・ 第1章 英語史研究の潮流
 ・ 第2章 英語史研究の資料とデータ
 ・ 第3章 音韻論・綴字
 ・ 第4章 形態論
 ・ 第5章 統語論
 ・ 第6章 英語史研究における今後の展望にかえて
 ・ 参考文献
 ・ 索引

 本書に関連しては,hellog でも過去に多くの記事を書いてきました.以下に関連記事へのリンクを掲載しますので,あわせてご参照ください.

 ・ 「#4985. 新著が出ます --- 家入 葉子・堀田 隆一 『文献学と英語史研究』 開拓社,2022年.」 ([2022-12-20-1])
 ・ 「#5023. 新著『文献学と英語史研究』で示されている英語綴字史研究の動向と展望」 ([2023-01-27-1])
 ・ 「#5024. 「通史としての英語史」とは? --- 新著『文献学と英語史研究』より」 ([2023-01-28-1])
 ・ 「#5158. 家入葉子・堀田隆一著『文献学と英語史研究』(開拓社,2023年)を改めて紹介します」 ([2023-06-11-1])

 また,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」や,YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」でも,関連する話題をいくつかお届けしています.共著者の家入葉子先生(京都大学)との対談回もあります.本書の舞台裏や,英語史研究への熱い思いが語られていますので,未聴の方はぜひチェックしてみてください.

 ・ Voicy heldio: 「#609. 家入葉子先生との対談:新著『文献学と英語史研究』(開拓社)を紹介します」
 ・ Voicy heldio: 「#611. 家入葉子先生との対談の第2弾:新著『文献学と英語史研究』より英語史コーパスについて語ります」
 ・ Voicy heldio: 「#582. 「境界を意識し,境界を越える」 --- 新著『文献学と英語史研究』が伝えたいこと」
 ・ YouTube: 「家入葉子・堀田隆一『文献学と英語史研究』(開拓社,2023年)のご紹介 --- 言語学も同期する中心から周辺へ?」

 今回の小塚氏による書評を機に,再び本書が英語史に関心を寄せる方々の目に留まり,新たな研究の種が蒔かれることを願っています.

家入 葉子・堀田 隆一『文献学と英語史研究』 開拓社,2022年.



 ・ 小塚 良孝 「書評:家入葉子・堀田隆一著 『文献学と英語史研究』 開拓社 2023年 xii + 251pp.」 『英文学研究』 第103巻,2026年.226--30頁.
 ・ 家入 葉子・堀田 隆一 『文献学と英語史研究』 開拓社,2023年.

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