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brown - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2025-06-06 08:58

2021-02-26 Fri

#4323. "subjunctive-friendly" なアメリカ英語 [subjunctive][ame_bre][brown][corpus][contact][mandative_subjunctive]

 仮定法現在の用法,いわゆる "mandative subjunctive" が現代アメリカ英語で安定的に用いられている事実について,本ブログでは通時的な観点から以下の記事で取り上げてきた.「#325. mandative subjunctive と should」 ([2010-03-18-1]),「#326. The subjunctive forms die hard.」 ([2010-03-19-1]),「#345. "mandative subjunctive" を取り得る語のリスト」 ([2010-04-07-1]),「#3042. 後期近代英語期に接続法の使用が増加した理由」 ([2017-08-25-1]),「#3351. アメリカ英語での "mandative subjunctive" の使用は "colonial lag" ではなく「復活」か?」 ([2018-06-30-1]) .
 この問題について Hundt (595--97) が Brown 系コーパスを用いて行なった調査の概要を読む機会があった (cf. 「#428. The Brown family of corpora の利用上の注意」 ([2010-06-29-1])) .1930年代から1991年までの英米両変種(書き言葉)の通時比較調査である.should 使用と比べての mandative subjunctive 使用の割合は,アメリカ英語ではすでに1930年代より8割に近づく高い値を示しており,1991年にはほぼ9割に達している.一方,イギリス英語では,1930年代で2割を超える程度の値であり,その後は増加したとはいえ1991年の時点で4割弱にとどまっている.mandative subjunctive の使用については,共時的にも通時的にもアメリカ英語のほうが著しいといってよい.
 Övergaard の先行研究によると,アメリカ英語での mandative subjunctive の増加は1900年から1920年にかけて起こっており,その背景としてドイツ語,フランス語,スペイン語,イタリア語など仮定法を保持している言語を母語とする中西部の移民たちの存在が指摘されている (Hundt 597) .
 おもしろいのは,上記の「仮定法現在」のみならず,If I were you のような「仮定法過去」の were の残存についても,英米変種間で似たような傾向がみられることだ.イギリス英語では,1930年代には were 使用が8割ほどあったが,1990年代には5割強へと大きく減らしている.一方,アメリカ英語でも1930年代の83.4%から1990年代の74%へ落ちているとはいえ,減り幅は小さい.
 いずれの事例からも,20世紀のアメリカ英語(書き言葉)が "a relatively 'subjunctive-friendly' variety" (Hundt 597) であることがわかる.

 ・ Hundt, Marianne. "Change in Grammar." Chapter 27 of The Oxford Handbook of English Grammar. Ed. Bas Aarts, Jill Bowie and Gergana Popova. Oxford: OUP, 2020. 581--603.
 ・ Övergaard, Gerd. The Mandative Subjunctive in American and British English in the 20th Century. Uppsala: Almqvist and Wiksell, 1995.

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2019-12-22 Sun

#3891. 現代英語の様々な句読記号の使用頻度 [punctuation][alphabet][diacritical_mark][net_speak][brown][corpus][frequency][statistics][exclamation_mark]

 英語は同じローマン・アルファベットを用いる文字圏のなかでも,句読法 (punctuation) に関しては比較的単純な部類に入る.現代的な句読記号が出そろったのは500年前くらいであり,その数も多くない (cf. 「#575. 現代的な punctuation の歴史は500年ほど」 ([2010-11-23-1])) .また,文字そのものが26文字しかない上に,フランス語やドイツ語などにみられる,文字の周辺に付す特殊な発音区別符(号) (diacritical mark; cf. 「#870. diacritical mark」 ([2011-09-14-1])) も原則として用いられない.さらに,現代の印刷文化では句読記号が控えめに使われるようになってきているとも言われる.一方,net_speak などでは,新たな句読記号の使用法が生み出されていることも確かであり,句読法の発展が止まってしまったわけではないようだ (cf. 「#808. smileys or emoticons」 ([2011-07-14-1])) .
 さて,約100万語のアメリカ英語の書き言葉コーパス Brown Corpus を用いた調査によると,英語の主要な句読記号の使用頻度 (%) は次の通りだという (Cook 92) .

Commas47
Full stops45
Dashes2
Parentheses2
Semi-colons2
Question marks1
Colons1
Exclamation marks1


 用いられている句読記号の9割以上が <,> か <.> であるというのは,英語の読み手・書き手の直感としてうなづける.英語の読み書き学習の観点からいえば,まずはこの2つの句読記号に習熟することに努めればよいことになる.
 ローマン・アルファベット文字圏の句読記号の変異について関心のある方は,Character design standards - Punctuation for Latin 1 などを参照されたい.

 ・ Cook, Vivian. The English Writing System. London: Hodder Education, 2004.

Referrer (Inside): [2023-08-26-1] [2022-12-21-1]

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