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2026-05-07 Thu
■ #6219. 5月11日(月)夕刻,新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)の「予約爆撃アワー」を実施します [notice][nazesantangen][sobokunagimon][3sp][heldio]
本日は重要なお知らせがあります.先日 Voicy heldio で「#1793. 新書が出ます!5月11日(月)の夕刻に予約爆撃アワー」としてお伝えしましたが,このたび初めて新書を上梓することになりました.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
発売日は1ヶ月少々先の6月10日(水)です.GWが終わり,今週末が明けて5月11日(月)辺りが,ちょうど発売の1ヶ月前となりますので,そのタイミングで近刊書に関する様々な情報開示を始めていきたいと考えています.
まずは,5月11日の夕刻に,Voicy heldio の生配信で「予約爆撃アワー」企画を打ち上げます.生配信をお聴きになりながら,ぜひそのタイミングで Amazon より本書を予約注文していただき,注目度を高めるのにご協力いただけますと幸いです.生配信では,本書についてももろもろご紹介したいと思います.
すでに Amazon の予約受付は始まっていますが,ぜひ5月11日の夕刻の「お祭り」の時間までお待ちください.なお,Amazon から予約いただいた方は,発売後にある「特典」を受け取ることができます.そちらもご期待ください.
近刊書のベースとなっているのは,2021--2022年度のNHKテキスト『中高生の基礎英語 in English』において毎月掲載されていた連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」です.その原稿に大幅な加筆・修正を施し,このたび新書化しました.英語を学び直している社会人の方から,日頃英語教育に携わっている先生方,英語史という分野に初めて触れるという方まで,幅広く読んでいただける1冊に仕上がりました.「英語に関する素朴な疑問」に英語史の観点から答えるスタンダード編というべき本となっています.
タイトルにも掲げた「3単現の s」 (3sp) は,英語学習者が最初期に出会う英文法の謎の代表格ですね.なぜ主語が3人称・単数で,文の時制が現在のときにだけ,わざわざ -s をつけなければならないのか.なぜ他の人称などでは,つける必要がないのか.こうした素朴な疑問に対して,英語史の視点から光を当てることで,一見不条理に見える英文法のルールがいかにして形成されてきたのかを解説していきます.本書には,3単現の -s 以外にも,英語史的な知見から英文法の謎をスッキリ解決するトピックを凝縮して詰め込んでいます.
近刊書に関連する話題は,今後,hellog, heldio, YouTube, X などのメディアでたっぷりお届けしていく予定です.その皮切りとなるのが,5月11日(月)夕刻の「予約爆撃アワー」企画となります.ぜひスケジュールを空けて生配信をお待ちいただければ幸いです.また,当日の聴き逃しのないよう,この機会にぜひ「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」をフォローしていただけますと幸いです.本書の出版をきっかけに,皆さんと一緒にますます英語史を盛り上げていければと思います.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
2026-05-06 Wed
■ #6218. イラスト入りスコットランド史の本 [scotland][history][scottish_history][review][toc][timeline]

何度目かのスコットランド滞在中で,改めてスコットランドの歴史を振り返っておきたいと思っていた.アバディーンの書店にふらっと立ち寄り,スコットランド関連の棚に平積みされていたのが,こちらの本である.
比較的新しいスコットランド史の本で,2019年に出版されたものの2024年版を,売り出し中の£7.99で購入した.ポケットサイズ(とはいえ,イギリス流の「ポケットサイズ」なので,全352ページと重厚でポケットには入らない)で読みやすく,何よりも200以上のイラストが含まれているというのに惹かれた.本を開いてみると,予想以上にイラスト,地図,写真などの図版が豊富だ.現代のスコットランドの風景写真も多く含まれているので.絵はがきや写真集を買うよりも良いのではないかと思われるほどだ.
原則として1節が見開き2ページと短く,すいすい読み進めることができた.時代的には中石器時代から2023年の政治状況までをカバーしている.本文のほかには,用語集,推薦図書,索引が付いている.年表が付されていないのが残念だが,節立てが細かいので目次がそのまま略年表となっていると理解することもできるだろう.以下,目次を掲載する.
Introduction
Mesolithic Hunters and Fishermen
Neolithic Farmers
Stone Circles and Alignments
Beaker People
The Bronze Age
Iron Age
Celtic Migrations
Crannogs
Brochs
Duns, Souterrains and Wheelhouses
Roman Period, AD 80--401
Mons Graupius
Occupation of Southern Scotland to AD 105
The Antonine Wall
Campaigns of Septimius Severus
Final Roman Campaigns in Scotland
The Coming of Christianity, 397--664
Patrick and Columba
St Kentigern
Missionary Activity
The Synod of Whitby
The Peoples of Scotland
The Britons of Strathclyde
The Scots of Dalriada
The Angles of Bernicia
Nechtansmere, 685
Norse Invasions
Kenneth MacAlpin
The Emergence of Scotland, 844--1034
The Battle of Brunanburh, 934
Carham
The Conquest of Lothian, 1018--34
Development of English Influence
Macbeth, 1040--57
Malcolm III Canmore, 1057--93
Queen Margaret
English Clergy and Court
Anglicisation of the Scottish Church
Anglicisation of the Administrative System
Introduction of the Feudal System
David I, 1124--53
The Battle of the Standard, 1138
Malcolm the Maiden, 1153--65
The Treaty of Falaise, 1174
William the Lion, 1165--1214
Alexander II, 1214--49
Alexander III, 1249--86
The Battle of Largs, 1263
The Maid of Norway
Competition for the Throne
Claims of English Overlordship
John Balliol, 1292--96
William Wallace
Robert Bruce, 1306--29
Bannockburn, 1314
Declaration of Arbroath, 1320
Treaty of Northampton, 1328
David II, 1329--71
Halidon Hill, 1333
David II in France, 1334--41
The Auld Alliance
Neville's Cross, 1346
The Release of David II
Robert II, 1371--90
Robert III, 1390--1406
Albany, Rothesay and the Regency
Robert, Duke of Albany, 1406--20
St Andrews University
A Parliamentary System Established
James I, 1437--60
James II, 1460--88
Sauchieburn, 1488
James IV, 1488--1513
The Union of the Thistle and the Rose, 1503
Flodden, 1513
James V, 1513--42
Mary, Queen of Scots
Mary in France, 1548--61
The Regency of the Queen Mother
The Reformation
Mary's Personal Rule, 1561--67
The Murders of Riccio and Darnley
Bothwell
Lochleven and Langside
Mary in England, 1568--87
James VI and I
The Ruthven Raid, 1582
James and Elizabeth
James and Spain
Religious Unrest, 1584--96
Further Plots and Conspiracies, 1587--1600
Union of the Crowns, 1603
Victory over the Church
Laud's Liturgy
The National Covenant, 1638
The Bishops' Wars, 1639--41
The Solemn League and Covenant, 1642
The Scots in the English Civil War
Agreement between the Scots and Charles I
Preston, 1648
Charles II Lands in Scotland
Dunbar, 1650
Scotland Under Military Occupation, 1651--60
The Restoration
Drumclog and Bothwell Bridge, 1679
The Killing Time, 1680--88
James VII and II, 1685--88
Killiecrankie and Dunkeld, 1689
The Religious Settlement, 1690
The Massacre at Glencoe, 1692
The Darien Scheme, 1698--1700
Proposals for Union, 1702--03
Act of Union, 1707
Rise of Jacobitism, 1708
Hanoverian Accession: George I, 1714--27
The Jacobite Rebellions of 1715
Wade's Military Roads
The Highland Forts
The Black Watch
George II, 1727--60
The Porteous Riots, 1736
Bonnie Prince Charlie
Falkirk and Culloden, 1745--46
Aftermath of Rebellion
The Destruction of the Clan System
The Highland Regiments
Industrial Progress
Agricultural Improvements
Social Changes
Henry Dundas, 1775--1801
The Friends of the People
The Downfall of Dundas
The Age of Enlightenment
The Highland Clearances
The Industrial Revolution
The Radical War, 1819--20
Burgh and Parliamentary Reform
Chartism in Scotland
The Great Disruption, 1843
Religious Division
The Development of Heavy Engineering, 1840--1900
Shipbuilding
Tourism
The Crofters' Commission, 1886
Emigration and Immigration
Changes in Local and Central Government
The Birth of Socialism, 1890--1914
Edwardian Scotland
The First World War, 1914--18
Red Clydeside
Postwar Depression
The Rise of Scottish Nationalism
The Local Government Act, 1929
Special Areas
The Second World War
The New Towns
The Scottish Economy
Local Government Acts 1973 and 1994
Resurgence of Nationalism
The Thatcher and Major Years
Devolution and the Scottish Parliament
The Independence Referendum and the Future
Glossary
Recommended Reading
Picture Credits & Acknowledgments
Index
・ Mackay, James, ed. Pocket Scottish History: Story of a Nation. Broxburn: Lomond, 2024.
2026-05-05 Tue
■ #6217. みーさんの「小学生と学ぶ英語史」シリーズが100回を突破しています [helkatsu][hel_education][hee][note][notice][voicy][heldio][helwa]

heldio/helwa のコアリスナーであるみーさんが,note 上で展開されている連載「小学生と学ぶ英語史」が,先日4月21日に記念すべき第100回に到達しました.1月12日の連載開始以来,一日も欠かすことなく毎日更新を続けての100回達成です.この偉業に,心よりお祝い申し上げます.
このシリーズは『英語語源ハンドブック』の項目をベースとしながら,みーさんご自身が教えられている英語教室での経験を活かし,小学生にもわかるように丁寧に,かつ優しくかみ砕いて解説されているものです.タイトルには「小学生と学ぶ」とありますが,その内容は決して小学生向けに限定されるわけではありません.各記事には語源に関する確かな知識に加え,学習上の助けとなる周辺知識やエピソードが豊富に盛り込まれており,中高生や大学生,さらには学び直しを志す大人の学習者にとっても,非常に示唆に富む内容となっています .
みーさんの記事の魅力は,何といっても語り口の柔らかさにあります.『英語語源ハンドブック』の記述をそのまま提示するのではなく,目の前にいる子供たちがどこで躓き,どこで目を輝かせるのかを熟知した教育実践者としての視点が貫かれています.たとえば,lady の語源が「パンをこねる女性」であるという話から,聖母マリアにちなむ ladybug 「てんとう虫」の話題へと繋げ,子供たちの好奇心を刺激する手法などは,まさにその真骨頂と言えるでしょう .
また,みーさんは,hel活をしている helwa の仲間たちがアルファベット順に語源をたどる試みにインスピレーションを受け,ご自身も a, b, c ... と一巡し,また a に戻るという独自のルーティンを確立されました.このように志を同じくする仲間たちが互いに刺激し合い,学びを深めていく姿は,まさに「英語史をお茶の間に」を体現するものだと思います.
このたび,100回突破を祝して heldio にてみーさんとの対談を収録しました.4月28日(火)の朝に配信した「#1794. 祝・みーさん「小学生と学ぶ英語史」100回記念対談」です.連載を始めたきっかけから,日々の継続のコツ,そして教室での子供たちの生の反応まで,たっぷりとお話しを伺っています.
さらに,同日の夕方に,プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」でも,対談の続編を「【英語史の輪 #0438】みーさんとお祝い対談(今朝の続き)」と題して配信しています.こちらでは,よりリラックスした雰囲気で,継続の仕組みや仲間との交流について深掘りしています.ご関心のある方は,あわせてお聴きください.
英語史という分野は,一見すると難解に思われがちですが,みーさんのように橋渡しをされる方がいれば,小学生であっても「印欧祖語」 (indo-european) などの用語も自然に使いこなすようになるのです.こうした英語史の草の根の活動が,英語教育の現場に新しい風を吹き込むことを期待してやみません.読者の皆様も,ぜひみーさんの note を訪れ,フォローしたり温かいコメントを寄せていただければと思います
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
2026-05-04 Mon
■ #6216. Scots は English とは別の言語なのか,あるいは1方言か [language_or_dialect][scots][scots_engish][sociolinguistics][variety]
ある言語変種が言語なのか方言なのかという問題は,(社会)言語学の古くて新しい問題である.本ブログでも language_or_dialect の各記事で議論してきた.昨日取り上げた「#6215. Scots と Scottish English の区別について」 ([2026-05-03-1]) についていえば,1つめの Scots が,とりわけこの問題と関わってくる.Scots は English とは異なる1つの言語とみなすべきなのか,あるいは English の1方言なのか.
ここには言語学的な考慮以上に,社会的な要素,とりわけ政治的な要素が関わる.昨日引用した McClure (23--24) は,続く段落でこの問題に触れつつ,同時に柔らかく回避している.以下,じっくり読んでいただきたい.
Uniquely among Old English-derived speech forms other than standard literary English, Scots has a claim to be regarded as a distinct language rather than a dialect, or latterly a group of dialects, of English. This claim has been, and continues to be, the subject of serious, reasoned and at times heated debate, at both popular and scholarly level . . . : a debate which embraces historical, political, social and literary as well as linguistic issues and has important implications in the field of education. However, it is beyond the scope of the present chapter, for the purposes of which it is sufficient to note that Scots, being descended from Old English and sharing in the general history of West Germanic speech in the British Isles, is appropriately considered as part of 'English' in the purely linguistic sense of the term. That Scottish English, as opposed to Scots, is a form of English is of course non-controversial. The distinction between Scots and Scottish English, which though not always clear in practice is soundly based on historical facts, should be borne in mind throughout the chapter.
Scots が "purely linguistic" な観点からは English の仲間だというのは適切だ,と述べられている.しかし,裏を返せば,"historical, political, social and literary" な観点からは重要な論点であり続けている,ということだろう.
・ McClure, J. Derrick. "English in Scotland." The Cambridge History of the English Language. Vol. 5. Ed. Burchfield R. Cambridge: CUP, 1994. 23--93.
2026-05-03 Sun
■ #6215. Scots と Scottish English の区別について [scots][scots_engish][sociolinguistics][terminology][variety][world_englishes]
「#6207. 英語における Scots 「スコッツ語」の初例」 ([2026-04-25-1]) でも少し話題にしたが,標題の Scots と Scottish English の用語・概念上の区別は,ややこしい.この区別を理解するには,まずこれらの変種の歴史を学ばなければならないからだ.
言語学的な特徴に照らして2つの変種が異なるものである,と議論することはある程度可能だが,互いに類似している点や影響を与え合ってきた経緯もあり,必ずしもきれいに区別できるわけではない.むしろ,各変種が置かれてきた社会言語学的文脈を参照して,つまり時代性,標準の有無,話し言葉と書き言葉のメディアの違い,話者のアイデンティティなどの要因を参照して,2つの変種が区別されているものとして捉えるほうが,適切だろう.
MaClure (23) は,スコットランドにおける英語を概説する文章の冒頭で,この2つの区分を次のように導入している.
Insular West Germanic speech was first established in what is now Scotland in the sixth century. Two phases are clearly identifiable in its history: the first includes the emergence of a distinctively Scottish form, developing independently of the Northern dialect of England though like it derived from Northumbrian Old English, and its attainment to the rank of official language in an autonomous nation-state; and the second, the gradual adoption in Scotland of a written, and subsequently also a spoken, form approximating to those of the English metropolis, with consequent loss of status of the previously existing Scottish tongue. In the course of the linguistic history of Scotland, that is, first one and then two speech forms, both descended from Old English, have been used within the national boundaries. For convenience we will choose to designate the first Scots and the second Scottish English. This situation has no exact parallel in the English-speaking world.
最後に指摘されている通り,古英語に由来する2つの変種が,現代まで並び立って使い続けられている歴史をもつ地域は,世界を探してもほかにない.世界諸英語 (world_englishes) を視野に入れた歴史を考えるとき,スコットランドは特殊な事例を提供してくれるのである.
・ McClure, J. Derrick. "English in Scotland." The Cambridge History of the English Language. Vol. 5. Ed. Burchfield R. Cambridge: CUP, 1994. 23--93.
2026-05-02 Sat
■ #6214. 英語史の月刊ウェブマガジン Helvillian の2026年5月号が公開されました [helwa][heldio][notice][helmate][helkatsu][helvillian][link]

4月28日(火),熱心なヘルメイトの皆さんによる月刊ウェブマガジン Helvillian 5月号(第19号)が公開されました.今号も,英語史を軸とした知的探究心が多方向に展開し,読み応えのあるラインナップとなっています.
今号の「表紙のことば」を担当されたのは ari さんです.桜島をめぐる地元民によるエッセイ,いかに桜島が身近な存在であるかが分かりました.その ari さんの記事群は,今月も ari 節が全開で絶好調です.セム語に由来する英単語から,「エイゴシーの塔」の攻略を経て,フランダース関連の話題まで,記事の守備範囲の広さにはいつも驚かされます.
Grace さんは,英語の「息づかい」というタイトルで寺澤盾先生の新刊書『世界の英語』(中公新書)を紹介されています.lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート」は,D ゾーンを走行中で,今回は demand から demesne までをカバーしています.lacolaco さんの継続的な試みが,「辞書を読む」という静かなムーブメントを呼んでいますね.実は,これこそが最も堅実で強力なhel活なのではないかと,最近,思い始めています.
mozhi_gengo さんは,今号でも圧巻の寄稿数です.scale の語源といった入りやすそうな話題から,ヒンディー語における be 動詞に相当する単語の語源に至るまで,相変わらずの縦横無尽ぶりです.
英語史教育・普及の観点からの記事も,ますます充実してきています.sorami さんの中学生向け語源クイズは,綴字の謎に迫る第7弾まで到達しています.みーさんの「小学生と学ぶ英語史」シリーズは,「小学生×英語史」という革命的な趣旨で始まり,100回に迫る(実際には本日までに優に100回を超えています)勢いで続いています.
umisio さんは,川上さんの名言「英語愛はありません」を深掘りするシリーズで続投されています.『英語史新聞』第13号への熱い暴走レポートも,読者の共感を呼ぶこと間違いなしですね!(khelf の応援,いつもありがとうございます.)
ykagata さんのブログも安定の継続で,ドイツ語を軸に『英語語源ハンドブック』をご紹介いただいたり,学びそのものについて考察する記事が公開されています.あまねちゃんの記事では,mark や zany の語源記事に始まり,最後にはついに『英語語源辞典』通読の挑戦へと禁断の一歩を踏み出されました.
また,川上さんによる古英詩に関する補遺は,異色の専門的な記事となっています.この記事を通じて,ぜひ古英詩の世界に触れてみてはいかがでしょうか.私自身も,微力ながら elvillian の前号の紹介記事を公開し,最新号の目次に名を連ねさせていただきました.
最後は Grace さんによる helwa のhel活の活動報告と,umisio さんによる『英語語源辞典』の流行に注目した暴走的編集後記で締めくくられています.
このように今号も,質量ともに充実したできあがりとなっています.ぜひ時間をかけてゆっくりと各コンテンツを味わっていただければ幸いです.
次号はいよいよ第20号の大台に乗ります.この Helvillian という媒体は,誰かに強制されたものではなく,英語史を愛し,学びを共有したいという有志の自発的なエネルギーによって継続しています.読者の皆さんにおかれましては,ぜひこの熱量を一緒に楽しんでいただき,温かい応援をいただければ幸いです.
また,「読むだけではなく,自分も書く側や編集側に回ってみたい」「このhel活の輪に直接貢献したい」という方は,ぜひプレミアムリスナー限定チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」を覗いてみてください.ともに学び,ともに創る喜びが溢れている空間ですので.
2026-05-01 Fri
■ #6213. 研究社ロケ in 「いのほた言語学チャンネル」が公開されました [kenkyusha][inohota][notice][lexicography]
4月28日(火),「いのほた言語学チャンネル」の最新回として「ロケ!最後の活版印刷の英語辞書(『英語語源辞典』(研究社))をめぐる辞書編纂者たちの矜持」が公開されました.
今回は「いのほた」としては初となるロケ企画で,英語学習者・研究者なら誰もがお世話になっているであろう英語辞書作りの老舗,研究社さんにお邪魔してきました.私自身,学生時代より研究社の辞書をボロボロになるまで引いてきた人間ですので,飯田橋の本社ビルにお邪魔してのロケには感慨深いものがありました.
今回の動画の主役は,私が各所で激推ししている,寺澤芳雄(編)『英語語源辞典』(研究社,1997年)です.2024年には新装版も出ています.私が2023年7月18日に「ゆる言語学ラジオ」の動画「英単語帳の語源を全部知るために,研究者を呼びました【ターゲット1900 with 堀田先生】#247」に出演した際,この辞典の魅力を熱弁したところ,1万円(+税)という高額な辞書にもかかわらず Amazon 等で爆発的に売れるという出来事が起こりました.それをきっかけに,研究社の公式 note 「研究社ノート」にて「『英語語源辞典』と活版印刷裏話」という記事で,同辞典のメイキング秘話が公開されるなど,注目度が増してきました.今回のいのほた動画は,研究社の関係者にもご出演いただきまして,改めて同辞典のアツさを語ろうというロケ企画の第1弾です.
動画では,この辞典の編集に携わられた星野龍さん,中川京子さん,そして関連書として昨年出版された『英語語源ハンドブック』の編集担当である青木奈都美さん,さらに元研究社印刷社長の小酒井英一郎さんという,辞書作りのプロフェッショナルの方々にお集まりいただきました.
特筆すべきは,この『英語語源辞典』が「最後の活版印刷による英語辞書」であるという事実です.1980年の企画開始から1997年の刊行まで,実に17年という歳月が費やされました.その間,時代は急速にデジタル化へと舵を切っていましたが,本辞典は一貫して鉛の活字を 1本ずつ組み上げる活版印刷の手法で制作が進められました.
小酒井さんに見せていただいた実際の組版の重みには,言葉を失いました.1ページ分の文字を物理的な鉛の塊として並べ,それを約1,80ページ分も保管しておく必要があるのです.辞書特有の小さな8ポイント活字(4mm 弱)を,職人が1文字ずつ拾い,並べ,修正していくプロセスは,まさに職人芸です.
星野さんのお話によれば,初期のデジタル組版では,この活版印刷が持つ独特の文字の美しさや行の締まりを再現できず,新時代の波に直面した編集者たちは深い違和感を抱いたといいます.デジタルでは機械的に文字を並べることはできても,職人が長年の経験で培った読みやすさのための微調整までは再現できなかったのです.この辞典には,日本の印刷技術が到達した最高峰の輝きが,物理的に刻み込まれていると言えます.
現在は効率化とコストの観点から,このような贅沢な本作りは二度と不可能だというお話しでした.しかし,だからこそ,今私たちの手元にあるこの『英語語源辞典』は,単なる英語語源に関する情報の宝庫である以上に,20世紀後半の出版文化が残した金字塔としての価値を持っていると言えます.
辞書は引ければよい,という考え方もあります.しかし,その背後にある編纂者たちの矜持と,職人たちの果てしない手仕事の積み重ねを知ると,ページをめくる指先にも自然と力が入るというものです.研究社という出版社の,このプロフェッショナルなこだわりこそが,日本の英語教育と英語学を支えてきたのだと再確認しました.
このロケ動画は今後数週間にわたって続編が公開される予定です.皆さんもぜひ,動画を通じて辞書という小宇宙の奥深さに触れてみてください.そして,もし本棚にこの辞典がないのであれば,入手することをお勧めします.単なる買い物ではなく,歴史の証言者を手元に置くという意味を持ちます.
今回の動画内容と関連する過去の hellog 記事は多岐にわたります,以下の記事をリンク集への起点ととらえていただき,ジャンプしていただければと思います.
・ 「#5210. 世界最強の英語語源辞典 --- 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)」 ([2023-08-02-1])
・ 「#5261. 研究社会議室での3回にわたる『英語語源辞典』をめぐるインタビューが完結」 ([2023-09-22-1])
・ 「#5436. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年3月15日版」 ([2024-03-15-1])
・ 「#5522. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年6月9日版」 ([2024-06-09-1])
・ 「#5553. 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)の新装版 --- 「いのほた言語学チャンネル」でも紹介しました」 ([2024-07-10-1])
・ 「#5856. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2025年5月9日版」 ([2025-05-09-1])
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
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