2021年12月5日読売新聞朝刊8面の記事「キプロス南北格差拍車 コロナ 住民交流分断」を読んだ.
ヨーロッパの唯一の分断国家,キプロス (Republic of Cyprus) .地中海東部の島国で,四国の半分ほどの面積の土地に約120万人が暮らしている.キプロスは,16世紀よりオスマン帝国領となっていたが,1878年にイギリスに割譲され,その後1960年にイギリスから独立した.1974年にギリシア系住民(南側)のクーデターを機に,トルコ系住民(北側)がトルコの保護のもとに独立の機運を高め,1973年に「北キプロス・トルコ共和国」として独立を宣言した.以降,分断解消の努力が続けられてきたが,目下コロナ禍による交流の減少により解消が遠のいているという.実際,感染拡大防止のために検問所も一時閉鎖されているようだ.検問所の北側の街にはモスクが立ち,南側の街にはクリスマスのイルミネーションが輝いているという.
あまり知られていないが,キプロスはヨーロッパでは数少ない ESL (English as a Second Language) 地域の1つであり,英連邦にも所属している(cf. 「#4474. 世界の ESL 地域の概観」 ([2021-07-27-1]),「#1676. The Commonwealth of Nations」 ([2013-11-28-1])).ただし,「#177. ENL, ESL, EFL の地域のリスト」 ([2009-10-21-1]) では EFL (English as a Foreign Language) 地域と分類されており,分類の微妙な問題が関わっているようだ.いずれにせよ,McArthur (277) に "English widely used" とある通り,社会的に広く英語が用いられている状況には変わりなさそうだ.
ちなみに,地中海地域では,ほかにマルタ (Malta) とジブラルタル (Gibraltar) がESL地域である(cf. 「#2228. マルタの英語事情 (1)」 ([2015-06-03-1]),「#2229. マルタの英語事情 (2)」 ([2015-06-04-1]),「#2920. Gibraltar English」 ([2017-04-25-1])).
キプロスの言語事情,とりわけ英語使用の実情については詳しく調べていない.歴史的背景,政治情勢,民族構成,言語事情ともに複雑な社会のようである.今後,関心を寄せていきたい.
・ McArthur, Tom, ed. The Oxford Companion to the English Language. Oxford: OUP, 1992.
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