慶應義塾大学文学部英米文学専攻の堀田ゼミでは,9月16日(月)から18日(水)にかけて伊東の温泉宿にて2泊3日のゼミ合宿を実施しました.初日と2日目は,参加した大学院生,学部4年生,学部3年生の総勢32名が,各々の個人研究のテーマを短時間で紹介・発表する「ポスターなしポスターセッション」の課題をこなしました.
「英語史ゼミ」なのですが,実際にはゼミ学生の扱っているテーマは多岐にわたります.何がどう英語史なのかと疑問に思われるテーマもあるかもしれませんが,そのような疑問が生じること自体が英語史の魅力だと考えています.「○○×英語史」の問題を大喜利のように解いていくことにより,英語史のキャパシティが実際に広がっていくからです.皆さんにも,クイズやパズルのように,楽しんでいただければ.
以下,32名の(仮)テーマを掲げます(注:私がリフレーズしたものもあります).
【 大学院生 】
1. 古英語時代における強変化動詞活用の変遷 --- frīġnan
2. Peterborough Chronicle の統語論と語順
3. EEBO TCP を用いた語源的綴字の普及時期の調査
4. 「大母音推移」研究のこれまでとこれから
【 学部4年生(この冬に卒業論文を控えています) 】
5. オーストラリア国内におけるアクセントの変化
6. 接尾辞 -like について
7. 英語の方言が生み出すステレオタイプの動向
8. 法助動詞の衰退
9. 前置詞を伴う動名詞補文の発達
10. 行為者接尾辞としての -ive の立ち位置を探る
11. ラテン・ギリシア複数形の「脱複数化」
12. スラングの残存と廃滅
13. 英単語の多義性 --- fast に焦点を当てて
14. 英語ことわざの形容詞的用法
15. 脱ダイグロシア化が進むシンガポールの言語社会
16. 比較級形容詞と共起名詞の関係性
17. イングランドにおける父称由来の苗字
【 学部3年生 】
18. 呼びかけ語としての man の用法
19. 日本と韓国の英語学習の比較
20. 英訳「ノアの箱舟」の語彙と意味変化
21. 英語省略語の意義,効果,その歴史
22. 言語変化の因果論
23. 英語・ヒンディー語の code-switching
24. ある語に対する類義語の数と,いつどこから増えていったのか
25. 英語史上にみられる code-switching と現代の code-switching の比較
26. 近代英語における wh- 関係節の考察
27. 呼称からみるフィリピン社会
28. 映画『スター・ウォーズ』シリーズにおける役割語
29. 婉曲表現の分類と用法
30. 名詞 lockdown とコロナの関係
31. 9世紀後半における英語振興と英語教育の歴史的背景
32. 今年ひときわ耳にする nomination の選挙ナラティヴ
以上,32名のテーマについては,合宿中に Voicy 収録した2回の配信回も合わせてお聴きください.
・ 「#1206. khelf ゼミ合宿2024秋 at 伊東 --- Day 1」
・ 「#1208. khelf ゼミ合宿2024秋 at 伊東 --- Day 2」
今回の2泊3日のゼミ合宿では,ほかにも英語史に関するグループコンテンツ作成などの活動を行ないました.その様子や成果は,向こう数日間,khelf の公式 X アカウント @khelf_keio や公式 Instagram アカウント @khelf_keio より発信していく予定ですので,ぜひご注目ください.
今年度,慶應義塾大学文学部英米文学専攻の堀田ゼミより14本の卒業論文と1本の修士論文が提出されました.以下,各々の題目を一覧します.私の英語史のゼミでどんなことが研究テーマとなるのかが伝わると思います.
[ 卒業論文 ]
・ Changes in the Frequency of Inanimate S-Genitive Case Use in British Popular and Quality Papers
・ The Characteristics and Development of Suffix -some in the History of English
・ The Origin and Development of the Construction It is Adj of NP to VP
・ The Difference between To-infinitive and Bare Infinitive in a Subjective Complement
・ A Study on the Singular and Plural Concord with the Collective Noun "Government"
・ An HTOED-Based Study on Semantic Change of Words Meaning "Delicious"
・ Contemporary Usage of 'unto' with Semantic Extension from the Bible
・ The Usage of Metonymies Shared among ENL Areas: The Case of Governmental Facilities
・ Stylistic Differences and Literary Commonalities among Two Works of George Orwell
・ Changes in the Social Demand and Frequency of the Woman's Honorific Title Ms
・ Decoding the N-word: A 20-Year Analysis of Language Evolution in Grammy Nominated Rap (2004--2024)
・ Political Correctness of the Infectious Disease Names: Hansen's disease, AIDS, and Mpox
・ Class Society and Language in Britain: Focusing on the Linguistic Characteristics of the Beatles
・ Changes and Trends of English Use in the Indian Movies: New Middle Class as the Audience
[ 修士論文 ]
・ Tautologies in the History of English: Their Usage and Conventionality
今年度のゼミでも英語史・英語学に関する多様なテーマで研究がなされました.形態論,統語論,意味論,語用論,語法研究,文体論,社会言語学など,関心が多岐にわたる点が,本ゼミの特徴です.ただし今回は音声学・音韻論に注目した研究がありませんでした(私としては少々寂しい).調査方法としてはコーパスを用いた実証的な研究が基本となってきています.来年度の卒論・修論にもテーマの幅広さを期待しています!
過年度のゼミ卒業論文の題目についてはこちらの記事セットあるいは sotsuron をどうぞ.英語史分野のテーマ探しのヒントとなるかと思います.khelf HP より「研究テーマ紹介」,あるいはゼミ紹介 HP より「ゼミ生の卒論テーマ」も役立つと思います.
今年度,私の英語史ゼミから7本の卒業論文と1本の修士論文が提出されました.先日,論文面接と論文発表会の機会を持ちましたが,研究成果に基づき,実りのあるディスカッションを楽しむことができました.以下に各々の題目を紹介します.ゼミの雰囲気がつかめるかと思います.
[ 卒業論文 ]
・ How Dialects are Used in Disney Movies: Trends of the Dialect Application in Disney Movies from 1940s--2020s
・ Belonging and Representation of LGBTQ People
・ The Transition of British Standard English --- The Shifting Status of Received Pronunciation and the Rise of Estuary English
・ "Make America Great Again" and Its Extended Use: A Corpus-Based Study of Donald Trump's Presidential Election Slogan and Its Parodies
・ The Lexical Erosion of American English on British English in Note Value Expressions
・ if it were not for or were it not for?: A Corpus-Based Study on Subjective Inversions
・ The Meaning Shift of "better" as a Colloquial Expression Compared with "had better": A Study Based on Both Corpus and Video Productions
[ 修士論文 ]
・ Variation between OV and VO in Subordinate Clauses in The Peterborough Chronicle
英語史ゼミといっても,現代英語のテーマが多いのは例年の通りです.古い英語を扱うばかりが英語史ではなく,むしろポイントは歴史的・通時的な視点が含まれているかどうかです.ゼミとしては社会言語学の視点も重視しています.今年度については,多くの研究が英語史や社会言語学の視点を内包していたと思います.昨今の英語史研究のトレンドを反映して社会寄りのテーマが多かったですが,伝統的な語彙や文法のテーマも健在でした.来年度はどんな卒論・修論が提出されてくるでしょうか.
過年度のゼミ卒業論文の題目についてはこちらの記事セットあるいは sotsuron をどうぞ.英語史分野のテーマ探しのヒントにもなるはずです.khelf ホームページより「研究テーマ紹介」も役立つと思います.
昨日3月4日の午前から午後にかけて,ゼミ内で2021年度の卒論報告会(オンライン)を開催しました.1日がかりでしたが,報告者である4年生はもちろん,khelf に所属の学部2年生,3年生,院生その他も出席し,盛会となりました.
今年度は13件の卒論が提出され,その一覧は「#4665. 2021年度に提出された卒論論文の題目」 ([2022-02-03-1]) で挙げましたのでここで繰り返しませんが,改めて英語史・英語学が扱う範囲の広さを確認することができました.今年度も,時代を超えて人気のテーマもあれば,時代性を反映した時事的なテーマもありました.それでもここ数年の卒論題目を眺めながら一つひとつの卒論を思い出してみると,大まかな傾向も見えてくるように思われます.
例えば,近年,研究手法として電子資料を用いる研究が当たり前となってきました.これ自体は予想できることかと思いますが,とりわけこの2年間は皆がコロナ禍で巣ごもりを余儀なくされたために,その傾向に拍車がかかったように思われます.各種のコーパスや OED などの辞書を用いた研究はますます多くなってきましたし,ネット上の音声や動画を利用する研究,ウェブ上で英語話者などにアンケートを実施するケースも増えてきました.
もう1つの傾向として,様々な英語変種,とりわけ世界英語 (world_englishes) への関心も明らかに高まってきました.以前は英語変種に関する研究といえば英米差を扱うものが多く,たまにカナダ英語やオーストラリア英語が参入してくるといったふうに主要な ENL 変種をターゲットとした話題が多かったと思います.しかし,特にここ数年で,主要でない ENL 変種,ESL 変種,ピジン語,クレオール語を含む様々な英語変種への関心が高まってきました.ただし,数年間で生じた急激な変化というよりは,徐々に強まってきた傾向だろうと理解しています.
最後に,報告会後の懇親会で院生から指摘があったのですが,社会言語学的な視点の研究が目立ってきているのではないかということでした.これは,研究の潮流ということもありますが,一方で堀田ゼミや慶應英文の特徴(バイアス?)が反映されているだけかもしれません.ですので,何とも言えませんが,今年度そのような視点からの卒論が多かったというのは事実だと思います.
さて,これで今年度の公式なゼミ活動は一応終わりました.しかし,すでに新年度にかけての様々な企画が動き出しています.例えばこの4月と5月には,1年前と同様に「英語史導入企画」を打ち上げる予定です(cf. 「#4417. 「英語史導入企画2021」が終了しました」 ([2021-05-31-1])).4月より,またよろしくお願いいたします.
参考までに,これまでの卒業論文の題目についてはこちらの記事セットにまとめました.関連して sotsuron あるいは khelf メンバー・研究テーマ紹介にも参考になる情報があります.1年前の「#4330. 春のゼミ合宿にて卒論・修論報告会を開催しました」 ([2021-03-05-1]) もどうぞ.
今年度,慶應義塾大学文学部英米文学専攻の私の英語史ゼミより計13本の卒業論文が提出されました.昨日,卒業論文面接も無事に終了し公式に承認されましたので,ここに13本の題目を記録・紹介します.ゼミの雰囲気が伝わるかと思います.
・ "A Corpus-Based Study of Word-initial h- in Late Modern and Present-Day English from the Perspective of Phonological Weakness"
・ "The Reasons and Factors David Beckham Has Corrected His Cockney Accent"
・ "Suffixes for Demonyms: The History and Causations of Demonymic Diversity in English"
・ "The Linguistic Attitude of English toward Borrowings: Focusing on Borrowings from Italian and Spanish"
・ "Semantic Changes of Adjectives 'Kind' and 'Gentle': Similarities and Differences of How the Two Adjectives Have Acquired the Meaning of 'Tender'"
・ "Analysis of Expansion of Meaning in Blue: Focused on Cultural Background of Color Blue"
・ "The Development of Gender-Neutral Language: A Corpus-Based Study on Chairman and Chairperson"
・ "A Comparison of Words in Picture Books between the 19th Century and 20th Century: Focusing on Adjectives"
・ "Female Names in the 19th Century: The Characteristics of Female Names Derived from Male Names"
・ "Naming 'Pokémon' from the Perspective of the Three-layered Axiom of English History"
・ "The Study of Relationship between Rastafarianism and Jamaican English"
・ "The Chronological Change in the Language Use of Hispanic: Analysis on Broadway Musicals"
・ "Rhetorical Features and Analysis of Obama's 'A More Perfect Union' Speech"
並び順は,主題別でも時代別でもきれいな仕分けが難しいために,あくまで緩いものです.逆にいえば,それくらい多様だったということです.
近年の大学生の関心のありかが学界の潮流とも連動していることが興味深いところだと思っています.とりわけ標準英語以外の変種への関心,広く World Englishes への関心が高まってきているようです.題目内に "Jamaican English", "Hispanic", "Cockney" といったキーワードを見つけることができます.また,今年度のゼミでたまたま意味変化に焦点を当ててきたこともあり,意味変化の話題もよく見られました.
広い意味での「名前」に関するテーマも好まれたようですが,これは偶然なのでしょうか・・・.ただ,「名前」は普遍的に関心を持たれやすいテーマであることは確かですね.
私のゼミは普段は「英語史ゼミ」を謳っていますが,必ずしも歴史的・通時的な話題ばかりを扱うわけではなく実質的には広い「英語学ゼミ」です.それでも,今年度は昨年度に引き続き歴史的・通時的な観点が比較的強かったと思います.
過年度の卒業論文の題目についてはこちらの記事セットあるいは sotsuron をご覧ください.これからこの分野で卒論テーマを書こうとしている方にも,きっと参考になると思います.khelf (= Keio History of the English Language Forum) にも参考になる関連情報があります.
私が大学で担当している3,4年生を対象とするゼミは「英語史ゼミ」あるいは「フィロロジーゼミ」ということになっています.慶應文学部の専門ゼミは正式には(伝統的かつ大仰に)「研究会」と呼ばれるため,内部では「英語史研究会」や「フィロロジー研究会」,はたまた担当者の名前をとって「堀田研究会」などと呼ばれることもあります(最後のものは,私自身が研究されてしまうかのようで,ゼミ合宿などの折りに貸し切りバスやセミナー室の扉に貼り出されると少々恥ずかしいです).また,大学院でも対応する英語史のゼミがあります.
1年のこの時期は,現学部2年生が来年度以降に所属する専門ゼミを志望し,選考を経て,およそ決定する時期です.来年度の英語史ゼミ所属予定者も,先日,無事に確定しました.来年度もゼミでは広く英語史・英語学の諸問題を扱っていきたいと考えています.
さて,大学・大学院の英語史ゼミの現役メンバーや卒業生・修了生などを中心とするコミュニティとして,khelf (= Keio History of the English Language Forum) という組織が立ち上がっています.ほぼ2年前の2020年1月に発足し,同年11月にはホームページもオープンしました(「#4212. ゼミのホームページがオープンしました」 ([2020-11-07-1])).内輪メンバーからなる組織ではありますが,そこでの英語史学習・研究・教育の様子は可能な範囲で一般に公表していくという方針をとっています.この2年間のゼミ活動の足跡も,いくつかコンテンツ化されたものが上記ホームページ上に公開されていますので,ゼミ所属予定者はじっくりと読んでおいてください.また,また,本ブログを読んでいただいている一般の方々も,こんなことまでもが英語史・英語学の話題になり得るのかと,その幅広さを味わってみてください.
とりわけ,ゼミ生が英語史・英語学のどのような話題に関心をもっているかを眺めてもらえればと思います.この11月にはゼミ生研究テーマ紹介ページが設けられました.テーマ紹介となるコンテンツの作成に当たっては,各ゼミ生に前もってウェブ上での一般公開を前提とするので分かりやすい紹介コンテンツとなるように工夫してくださいと述べてありました.ですので,大学院生の研究テーマなども,本当はいずれも専門的で難解なテーマではありますが,通常よりもずっと分かりやすく紹介されています.昨年度のゼミ生(=卒業生)の卒論題目なども掲載されています.過年度のゼミ生の卒論題目については,合わせて sotsuron の各記事もご参照ください.
一昨日の3月3日に,一日がけで春のゼミ合宿(オンライン)を開催しました.年度末ということで,学部・院のゼミ関係者の執筆した卒業論文(7本)と修士論文(2本)の報告会という趣旨で,1人につき20分の発表および10分の質疑応答という時間割で,朝から夕方までみっちり勉強する機会となりました.
以下「#4297. 2021年度に提出された卒論論文の題目」 ([2021-01-31-1]) のリストと多く重なりますが,堀田ゼミ(慶應義塾大学文学部・文学研究科英米文学専攻の英語史分野)にて研究されているテーマの嬉しい多様性を示したく,合宿当日のメニューを掲げたいと思います.
今年度は慶應義塾大学文学部英米文学専攻の私のゼミより計5本の卒業論文が提出され,卒業論文面接も無事に終了しました.これまで過年度の卒論題目一覧を本ブログの sotsuron 記事にて掲載していましたので,新たに本年度の5本の題目もここに記録(というより紹介)しておきます.
・ "The Analysis of French Loanwords Meaning Animals and Their Meat"
・ "A Chronological Study of the Noun Apple in Complexes of Fruit (or Vegetable) Names Using TOE and OED"
・ "The Conditions of Third-Person Singular Verbal -s Inflection in African American Vernacular English: Analyzing Kendrick Lamar's Lyrics"
・ "The Distribution of the Agent Suffixes -er and -or"
・ "Taboos and Slang: A Study Focusing on Euphemisms for Death in the 19th and 20th Centuries of America"
題目から窺える通り,本年度は語彙論が多かったです.ただし,語彙が話題となっていても,アプローチは意味論,形態論,社会言語学などと多岐にわたっていました.また,OED やコーパスの積極的な利用も目立ちました.文法的な研究としては,AAVE における3単現の -s を巡る話題があります.
英語史を専攻とする私が担当するゼミからの卒論ではあっても,必ずしも歴史的・通時的な話題に限定されるわけではないのですが,本年度は歴史的な観点がかなり濃厚だったように思います.
毎年の感想ではありますが,何よりも話題が多岐にわたっていることが嬉しいですね.ゼミ後輩の皆にも,それ以外の一般の卒論テーマを探っている大学生にも,この題目一覧が参考になればと思います.
今年度も慶應義塾大学文学部英米文学専攻より卒業論文が13件提出され,卒業論文面接も無事に終了しました.以前は各年度の卒論題目一覧を本ブログの sotsuron 記事に掲載していましたが,ここ数年間は掲げていなかったので,今回は2018--2020年度の3年分の卒論題目34件を一気に示したいと思います.その趣旨は,続くゼミ生の卒論執筆に参考となるように,そして最近の学生の関心を示すためです.非常に緩くはありますが分野別に並べてみました.
・ A Phonological Relationship between the Northern Dialect of Middle English and Old Norse --- Was 'qual' Pronounced /kwal/?
・ The Analysis of Development of Rhoticity in Scottish English
・ Difference in the Usage of Onomatopoetic Terms in English and Japanese: Through the Comparison of Onomatopoeia Related to the Act of Laughing and Smiling
・ The Details of the Great Vowel Shift on the History of English Language --- The Great Vowel Shift's Power on the History of English Language
・ Original Reference and Native Etymological Spellings in Ad-Words: Comparison of Their First Attestation Dates
・ On the Use of <you> and <ye> in Proverbs --- Focusing on Proverbs Derived from the Bible
・ The Contemporary Flat Adverb in Written American English: Approaching the Real Use
・ On the Minority Use of Subjunctive Should in the United States --- The Reason Why the American Still Use Should in the Subjunctive Clause
・ An Analysis of Preparatory Subject it Constructions and Top-Heavy Sentences
・ The History of Perfect Construction: What Factors Have Influenced the Transition from BE PERFECT to HAVE PERFECT?
・ The Difference between Suffix -er and -or: The Aspect of Meaning
・ Semantic Intensification Derived from Human Psychological Aspects: Negativity and Abnormality Evoke Impressiveness
・ Color Metaphors Representing Mental States in English: Semantic Analysis of Color Terms
・ A Comparison of Adjectives of Taste between English and Japanese --- Antonymous Taste System Based on Collocation Analysis
・ Analysis of Differences in Recognition of Kawaii among Native Speakers of English
・ The Changes in the Reactions to American English in the Early Stage of Hollywood Talkie Films
・ The Relationship of Gender, Character and Social Power: Consideration from the Movies of Harry Potter Series
・ The Analysis of The Times Headlines: A Historical Study from the Early Days to the Present
・ The Difference of the Verb Expressions between Male-Named and Female-Named Hurricanes --- Alternative of the Traditional Reference to Hurricanes with Female Pronouns
・ Disappearing Trench: The Effect of War on the Language
・ A Study of the Feature of Mixed Languages based on Pidgins, Code-Switching, and Senkyoshigo
・ The Role and Status of English in India: Analysis on Indian Movies
・ An Effect of Eye Dialect in Literary Works --- Cockney in Plays and Musicals
・ The Linguistic Difference between Korean Language and English from Translation Perspective
・ Attempts to the Overcoming of Imperialism from the Point of View of Emoji and Pictogram Use
・ The Distribution of Celtic Elements of Place-Names in England
・ What's Business English? Consideration from Comparison of BtoB and BtoC and the ESP
・ Trump's Accommodation Affects Hispanics at the Television Debate
・ What are Some Meanings of "SHITHOLE" Donald Trump Said
・ A Comparison between President Obama's Speech and President Trump's Speech
・ Standardization of Written Language and Changes in Language Awareness: A Historical Comparison of English and Japanese
・ Looking Back on the Transition in English Textbooks with the Japanese History of English Education: Qualitative Analysis on English Textbooks
・ To Seek Principled Explanations: An Historical Study on Autonomous Linguistics
・ Influence of Language on Thought and its Cultural Differences
このように毎年度,堀田英語史ゼミでは,硬派な音韻や文法の問題から,英語諸変種の言語学的特徴や社会言語学的機能といったトピック,そしてアメリカ大統領の演説分析まで幅広い卒論研究が行なわれています.この多様さが嬉しいです.何でも必ず英語史の話題になります.
いよいよ2019年も終わりですが,この時期は卒論を始めとする学位論文の提出期限の前後の時期でもあります.切羽詰まっている学生もいることと思いますが,論文の書式については時間を割いて揃えましょう.
英語学術論文の書式には様々な種類がありますが,本ブログの主題である英語史や,その隣接分野である文学などでよく用いられるものに Modern Language Association (MLA) による MLA Style があります.MLA Style にも版があり,現行版は2016年に改訂された第8版です.本ブログでも,各記事での引用や参考文献などは,原則として MLA Style に準拠しています(ただし,古い版に基づいており現行版とは多少異なっているのであしからず.本ブログ全体の参考文献リストもご参照ください).
MLA Style は正式には1冊の本として出版されていますが,オンラインのリソースも多々あるので,以下に参照に便利なリンクを張っておきます.
・ The MLA Style Center の参考文献表についてのクイック・ガイド
・ MLA Formatting and Style Guide --- Purdue Writing Lab
・ The Complete Guide to MLA & Citations
・ MLA Format: Everything You Need to Know Here
学術研究において参考文献リストの整理は重要です.本音として「面倒くさい」のも事実なのですが,実はそのような面倒くささを軽減してくれるのが書式でありマニュアルです.つまり,学術研究上の文房具の1つです.英語論文を執筆する(予定の)学生は,MLA Style でなくとも,いずれかの書式をしっかり身につけておきましょう.
今年度もゼミ生から卒業論文が提出された.今年度は以下の9本である.緩く分野別に並べてみた.
(1) 中英語期のフランス借用語の傾向について --- 宗教運動の盛衰という観点から ---
(2) フランス語における英語の借用とイギリスの時代背景
(3) 「神」を意味する言葉とその使い分け
(4) The Backgrounds of "Swear" --- Why It Has Double Meanings
(5) 意味の分解によるベーシック・イングリッシュの動詞表現の考察
(6) with にもたらされた多義性 --- コーパスを用いて fight with の意味分化を調査する ---
(7) 習慣・非習慣用法における黒人英語とアイルランド英語の関係性
(8) 英語商品名の総称化プロセスにおける Majuscule Loss について --- 社会背景を含めた考察 ---
(9) イギリスの階級と言葉 -- 日本の士農工商社会と比較して ---
社会言語学的な視点を含めた英語史の話題が比較的多かったように思う.ゼミの授業ではとりわけこのような視点に注目した内容を扱ったわけではなかったのだが,学生が関心を抱きやすいテーマなのだろう.語彙,意味,語法は例年人気のある分野で今年度も多かったが,音声や形態の研究はなかった.一方,私が綴字にこだわった年度だったためか,その関連で1本が提出された.○○英語を扱う World Englishes への関心は毎年続いており,今年もあった.近年の潮流となってきている歴史語用論の観点からの研究も1本出された.
2009年度以来の歴代卒論題目リスト集もどうぞ (##2065,1745,1379,973,608,266) .来年度もバリエーション豊かな話題に期待します!
今年度もゼミ生から卒業論文が提出された.今年度は以下の16本である.緩く分野別に並べてみた.
(1) 現代英語における Yod-dropping の生じた順序について --- 前後する子音群に注目して ---
(2) Long Front-Vowel Shift in Early Sixteenth Century
(3) The Shift from be-perfect to have-perfect in Late Modern English
(4) 準助動詞 had better の用法拡大 --- had best との比較も交えて ---
(5) 単独前置詞における区分の仕方 --- 除去の意味を持つ前置詞7語に限定して ---
(6) 1810年?2000年のアメリカ英語における at all costs と at any cost の使い分けについて
(7) On Classification of Old English Christian Terms into the Native or Exotic Type
(8) 英語における名詞から動詞への意味分類
(9) 温感形容詞 "hot" と "cold" の意味比較 日英対照言語学的観点から
(10) 16世紀末から17世紀までのイギリス詩における2人称代名詞 ye の使用頻度と目的格での使用
(11) 現代英語における thou の使用がもたらす効果
(12) ヴィクトリア朝の小説におけるポライトネスの表れの傾向
(13) 英語変種における航空管制英語の特殊性について
(14) 言語政策から見るシンガポールの英語教育
(15) ネイティブ英語に影響される日本人大学生 --- アンケート調査より ---
(16) カタカナ語のコミュニケーション機能における矛盾 --- 背後に存在する英語とアメリカ ---
音韻,形態,統語,語法,語彙,意味,語用にわたる言語学的な話題もあれば,言語変種や言語に対する態度といった社会言語学的な話題もあった.数が比較的多かったということもあろうが,とりわけバリエーション豊かな年となった.おかげさまで,今年度も新しいことをおおいに勉強させてもらいました.多謝.来年度の話題にも期待します.
2009年度以来の歴代卒論題目リスト集もどうぞ (##1745,1379,973,608,266) .
今年度もゼミ生から卒業論文が提出された.今年度は以下の8本である.緩く分野別に並べてみた.2009--2011年の題目リストも合わせてどうぞ (##1379,973,608,266) .
(1) 否定接頭辞 in- と un- の差異について --- 借用接頭辞 in- の勢力の拡大 ---
(2) 近代英語期における clipping による語形成
(3) Semantic Prosody of Synonymous Verbs Meaning "To Keep in Mind"
(4) 助動詞 can における可能,可能性,許可の3用法 --- 共時的混同と通時的変化の観点から ---
(5) 英語語彙における三層構造の批判的考察 --- 形容詞の類義語群の観点から ---
(6) ポリティカル・コレクトネスによる是正語の考察
(7) マオリ語の復興と学校教育 --- オーストラリアとの比較を交えて ---
(8) 「英語帝国主義」は実在する --- 英語検定受検者数から見る「英語帝国主義」の存在 ---
昨年度,コーパスを用いた卒論研究が増えてきたと述べたが,今年度は (1), (3), (4), (5) の4本でコーパス利用がみられた.伝統的な言語学の部門として形態,統語,意味,語彙,語用のテーマがそれぞれある一方で,(6)--(8) は社会言語学の話題だ.特に,(7), (8) は macro-sociolinguistics あるいは sociology of language といわれる分野の話題であり,卒論のテーマとしては,これまでなかった類だ.指導している自分がどこまで話題について行けるかということを試されているともいえるが,たいへん勉強になった.来年度の卒論も,variation の広さと新しい話題に期待したい.
2011年12月の半ばにゼミ学生が提出した卒業論文のタイトルをリストアップする(緩やかな分野別の順序で).2009年,2010年のリストと合わせて,##973,608,266 を参照.
(1) イギリス英語における単数普通名詞と複数普通名詞の頻度 --- 書き言葉と話し言葉のジャンル別観点から ---
(2) 名詞不規則複数形のゆれについての通時的研究
(3) 書き言葉における do/make を用いた複合述語の増加
(4) 近代英語後期における be 完了形の減少
(5) 現代アメリカ英語から見る HELP + 不定詞構文における to 不定詞と原形不定詞 --- 形態と有生性の観点から ---
(6) 味覚形容詞「酸っぱい」と "sour" にみる共感覚表現の日英比較
(7) アメリカにおける性差別に関する PC 表現の変遷
(8) カナダ英語がアメリカ英語に及ぼした語彙における影響
(9) 動詞と共起する「関連」の前置詞 about, over, on における用法の差異
(10) アメリカ英語の綴字改革における Noah Webster の影響力はどの程度のものなのか
(11) 書き言葉の媒体の変化が与える綴り字への影響
(12) 話しことばに現われるジェンダーに隠れた年齢差
(13) インドにおける多様性と統一性 --- インド英語における現地語由来の語彙に現われた特徴 ---
(14) The Identity Problem in Singlish Controversy
昨年度までと同様に,扱われている話題は多岐にわたる.前年度から続く特徴としてはコーパス利用が14件中10件もあることである.授業でコーパスを紹介する際に,テーマによっては卒論での使用も考慮に入れてみては,と述べているのだが,当初の予想よりコーパスへの関心が高い.
分野としては,伝統的な英語学の区分けによれば形態,統語,意味,語用,語彙,語法,綴字の研究があり,音声が見られないくらいである.社会言語学的な関心も目立っており,コーパスにより比較的手軽に扱えるようになってきた英語変種の研究が増えている.地域変種でいえば,英米のほか,カナダ,インド,シンガポールの英語が取り上げられた.
時代でいえば,2件が近代英語に触れているが,それ以外はすべて現代英語である.(11) はインターネット上のデータを用いた最新の Netspeak の考察を含んでおり,現代というよりは現在進行中の話題だ.
これだけテーマに幅があると着いて行くのが大変だが,その過程で私も学べることが多く,楽しいのも事実である.来年度も variation の広さに期待したい.
2010年12月にゼミ学生が提出した卒業論文のタイトルをリストアップする.2009年のリストは[2010-01-18-1]を参照.
・ "Buzzword",流行語に見る現代イギリス社会と日本社会の比較
・ 語彙におけるアメリカ英語のイギリス英語への影響力 --- 食べ物,衣服,電話・郵便,交通の分野を中心に ---
・ 現代アメリカ英語における不定詞付き help 構文での to 不定詞と原形不定詞 --- 発話レベルと援助の方法の観点から ---
・ 近現代英語期における must, have to, have got to の意味の変遷 --- 文法化・主観化の観点から ---
・ 現代英語の造語の傾向 ---主に転換---
・ 19世紀におけるフランス語借用語の分野的特徴
・ 与格交替に表われる前置詞「to」と「for」の違い --- 前置詞と動詞の持つ意味合いから ---
・ 前置詞 in と on の選択における英米の相違 --- 通時的分布の推移と意味概念の観点から ---
・ インド英語の成立と複合語
・ 口語文語コーパスを用いた,whom の使用方法からみた分析 --- whom 単体と "前置詞+whom" 形の比較を中心に ---
・ On Transfer from Strong Verbs to Weak Verbs
・ 感覚表現における sweet の意味別の変遷 --- sweet smell, sweet voice, sweet smile を中心に ---
・ 12世紀から18世紀における不定冠詞 a, an の分岐
・ 現代英語における二人称複数代名詞の代用表現 ---you guys の増加を中心に---
今年度の特徴は,[2010-11-16-1]で取り上げたオンラインコーパスを授業で導入したこともあって,コーパスを利用した研究がいくつかあったことである.分野としては相変わらず様々で,統語論,形態論・語形成,語彙論,意味論と幅広い.ただし,昨年度みられた音声と文字に関する論考はなかった.英語変種,英米差,通時的言語変化,社会言語学への関心も見られ,題目の variation の豊富さでは昨年度に比肩すると評価したい.
2009年12月にゼミ学生が提出した卒業論文のタイトルをリストアップする.
・中英語期におけるアルファベット "v" の出現
・大母音推移期における英詩の脚韻
・前置詞 of の意味の広がり ?分離から所有へ?
・接辞のクラス分け ?接尾辞 -able の独自性の観点から?
・後期近代英語における May と Can の使用頻度の推移
・近代英語期における進行形の使用頻度の拡大
・かばん語の出現数の推移とその背景
・The Syntactic and Semantic Relation between the Act and Target in Terms of Directness
・(for) NP to V の異分析
・The Peterborough Chronicle における se の屈折の種類の推移:古期英語から中期英語の屈折衰退の実証
全体としてテーマの分布としては広がりがあってよかったのではないかと考えている.時代的には,古英語後期,中英語,近代英語,現代英語とカバーされているし,英語学の分野でも,文字,音声,形態,統語,語彙,意味のバランスがとれていた.しかし,比較的人気が高いと思われる英語方言や世界英語といった社会言語学的なテーマがなかった.
英語学や英語史の分野ではこのような話題が卒論の研究対象になります,ということで参考までに.
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