拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』が,研究社より出版されました.主として本ブログの記事を元にして執筆しているので,普段ブログを読んでいただいている方には関心をもってもらえるのではないかと思っています.英語学習者が一度は抱くはずの「素朴な疑問」に徹底的にこだわって書きました.
上にもあるように,本書の
コンパニオン・サイトが研究社のウェブサイト内に設けられていますので,そちらもご覧ください.特に,まずは
本書の紹介ページを訪れてみてください.そこには,
内容紹介と目次や,コンパニオン・サイト用に書き下ろした
本書のねらいを掲載しています.また,
サンプルPDFへのリンクも張られていますので,ご一読ください.サンプルでは,「はじめに」,「目次」,そして本書の pp. 26--30 に相当する2.1節「なぜ *a apple ではなく an apple なのか?―――2種類の不定冠詞」の本文全体を読むことができるので,内容のフィーリング(←本ブログに近いです)がつかめると思います.まだ工事中となっているリンク先も多いですが,今後このコンパニオン・サイトには,本書に関する(あるいは英語史全般に関する)様々な補足資料をアップロードしていく予定です.また,本書の内容と関連した新しい話題を提供する「連載」も企画中です.
本書のねらいに詳しいですが,本書は「英語教員をはじめとする英語にかかわる多くの方々に」読んでもらいたいと思い執筆しました.こだわりにこだわったことは,先にも述べたように「素朴な疑問」を扱うということ,「英語史」のおもしろさをとことん伝えること,そして読者に「目から鱗が落ちる」体験を味わってもらうことです.はたしてその目的はうまく果たされているかどうか・・・読者のみなさんの反応をお待ちしています!
コンパニオン・サイト内にも
本書の目次がありますが,参照用に詳しいバージョンを以下に再現しておきます.
はじめに
1 いかにして英語は現在の姿になったのか?―――英語史入門
1.1 英語史の時代区分
1.1.1 各時代区分の名称
1.1.2 時代区分の恣意性
1.2 資料と媒体
1.3 音声と綴字の変化
1.3.1 音声の変化
1.3.2 綴字の変化
1.4 文法の変化
1.5 語彙の変化
1.6 英語の多様性
2 発音と綴字に関する素朴な疑問
2.1 なぜ *a apple ではなく an apple なのか?―――2種類の不定冠詞
2.1.1 母音連続を避ける傾向?
2.1.2 子音の前での n の脱落
2.1.3 共時的な説明と通時的な説明
2.2 なぜ名詞は récord なのに動詞は recórd なのか?―――「名前動後」の強勢パターン
2.2.1 名前動後とは
2.2.2 16世紀以来の語彙拡散
2.2.3 名前動後の拡大の背景
2.2.4 新しい強勢パターンの介入
2.2.5 現在は通過地点
2.3 なぜ often の t を発音する人がいるのか?―――発音と綴字の関係
2.3.1 綴字発音
2.3.2 often の起源と発達
2.3.3 今の変化は昔の変化
2.4 なぜ five に対して fifth なのか?―――古英語の発音規則
2.4.1 five の語形こそが説明を要する
2.4.2 有声音に挟まれると子音が有声化する規則
2.4.3 third の音位転換
2.4.4 first, second の補充法
2.5 なぜ name は「ナメ」ではなく「ネイム」と発音されるのか?―――音変化とマジック e
2.5.1 <e> の役割
2.5.2 ナマからネイムへ
2.5.3 運用変更による切り抜け
2.5.4 綴字の保守性
2.6 なぜ debt, doubt には発音しない <b> があるのか?―――ルネサンス期の見栄
2.6.1 語源的綴字
2.6.2 非語源的綴字?
2.6.3 フランス語における語源的綴字
3 語形に関する素朴な疑問
3.1 なぜ3単現に -s を付けるのか?―――屈折の歴史的性格
3.1.1 共時的・形式的な説明
3.1.2 共時的・機能的な説明
3.1.3 通時的な説明
3.2 なぜ *foots, *childs ではなく feet, children なのか?―――規則と不規則 (1)
3.2.1 規則複数 -s の起源
3.2.2 child の複数形が children となるわけ
3.2.3 foot の複数形はなぜ feet か
3.2.4 高頻度語と不規則複数
3.3 sometimes の -s 語尾は何を表わすのか?―――古英語の格の痕跡
3.3.1 古英語の属格
3.3.2 古英語の対格
3.4 なぜ不規則動詞があるのか?―――規則と不規則 (2)
3.4.1 不規則動詞の規則化
3.4.2 過去形のヴァリエーション
3.4.3 set -- set -- set
3.4.4 なぜ go の過去形が went になるのか?
3.5 なぜ -ly を付けると副詞になるのか?―――形容詞と副詞の関係
3.5.1 -ly は副詞接辞か?
3.5.2 -e の衰退の一波万波
3.5.3 単純副詞
4 統語に関する素朴な疑問
4.1 なぜ未来を表わすのに will を用いるのか?―――未来時制の発達
4.1.1 時・条件の副詞節では未来のことでも will を用いない
4.1.2 英語に未来時制はなかった
4.1.3 英語の未来時制の発達
4.2 なぜ If I
were a bird となるのか?―――仮定法の衰退と残存
4.2.1 be 動詞の歴史
4.2.2 仮定法は直説法とは別物と考える
4.2.3 仮定法現在と should
4.3 なぜ英語には主語が必要なのか?―――語順の固定化 (1)
4.3.1 非人称構文
4.3.2 非人称構文から人称構文へ
4.3.3 現代英語に残る非人称構文
4.4 なぜ *I you love ではなく I love you なのか?―――語順の固定化 (2)
4.4.1 世界の言語の基本語准
4.4.2 古英語から中英語への語順の発達過程
4.4.3 属格名詞の前置と of の発達
4.4.4 なぜ英語人名の順序は「名+姓」なのか?
4.5 なぜ May the Queen live long! はこの語順なのか?―――祈願の may の発達
4.5.1 近代英語期の祈願の may の発達
4.5.2 古英語・中英語における祈願の may の萌芽
4.5.3 語用標識としての may
5 語彙と意味に関する素朴な疑問
5.1 なぜ Help me! とは叫ぶが Aid me! とは叫ばないのか?―――英語語彙の階層性 (1)
5.1.1 日本語語彙の階層
5.1.2 英語語彙の階層
5.1.3 逆転の構造
5.2 なぜ Assist me! とはなおさら叫ばないのか?―――英語語彙の階層性 (2)
5.2.1 英語語彙の3層構造
5.2.2 日本語語彙の3層構造
5.2.3 3層ピラミッド構造の比喩
5.3 なぜ1つの単語に様々な意味があるのか?―――同音異義と多義
5.3.1 同音異義衝突
5.3.2 though と they の同音異義衝突の例
5.3.3 同○異△語
5.4 なぜ単語の意味が昔と今で違うのか?―――単語の意味変化の日常性
5.4.1 意味変化の日常性と類型
5.4.2 deer の周辺の体系的な意味変化
5.4.3 意味借用
5.5 英語の新語はどのように作られるのか?―――混成語の流行
5.5.1 現代の新語の作り方
5.5.2 借用
5.5.3 複合と派生
5.5.4 混成
5.5.5 頭字語
6 方言と社会に関する素朴な疑問
6.1 なぜアメリカ英語では r をそり舌で発音するのか?――― r の発音と移民史
6.1.1 イギリスにおける r
6.1.2 アメリカにおける r
6.1.3 イギリスからアメリカへ渡った移民の出身地
6.1.4 「間大西洋変種」の r
6.2 アメリカ英語はイギリス英語よりも「新しい」のか?――― colonial lag の虚実
6.2.1 アメリカ英語のステレオタイプ
6.2.2 「アメリカ英語=革新的」神話の打破
6.2.3 「アメリカ英語=保守的」神話の打破
6.2.4 英米さの類型論と均衡の取れた見方
6.2.5 言語において保守的とは何か
6.3 なぜ黒人英語は標準英語と異なっているのか?―――英語変種と偏見
6.3.1 AAVE の起源
6.3.2 AAVE の特徴
6.3.3 黒人英語はさらに異なっていくのか?―――黒人英語の合流仮説と分岐仮説
6.3.4 AAVE の3単現の -s
6.4 なぜ船・国名を she で受けるのか?―――英語におけるジェンダー問題 (1)
6.4.1 現代英語の例
6.4.2 歴史的背景
6.4.3 20世紀中の現象
6.5 なぜ単数の they が使われるようになってきたのか?―――英語におけるジェンダー問題 (2)
6.5.1 3人称単数共性代名詞を求めて
6.5.2 実は古くからあった単数の they
6.5.3 規範的な he の人工性
篁????
英語史年表
読書案内
おわりに―――なぜ英語史を学ぶのか?
参考文献
索引
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