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hel_education - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2026-10-15 05:01

2026-10-15 Thu

■ #6380. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第8回 --- 英語は1つではない [inohota][ippeiinoue][youtube][inohota_rensai][sociolinguistics][accommodation_theory][audience_design][style][notice][hel_education][inohotanaze]


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  *

 月刊誌『英語教育』(大修館書店)にて,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を連載しています.10月14日発売の11月号に,第8回記事「英語は1つではない ―― 相手と場面で変わる「話し方」」が掲載されました.今回のメイン執筆者は井上逸兵さんです.
 電話に出た瞬間,相手が家族から上司に変わった途端に声のトーンまで変わる,というだれもが経験する現象を入り口に,井上さんは,「英語が話せるようになりたい」というときの「英語」が,まるで1種類しかないかのように扱われがちであることに注意を促しています.私たちは日本語を話すときでさえ,先生と話すとき,友人と話すとき,家族と話すときとで,語彙も文の長さも声の高さも巧みに使い分けています(社会言語学でいう style-shifting).ところが外国語となると,教科書で覚えた1つの話し方をどの相手にも使い続けてしまい,妙に浮いてしまうことが起こりやすいという指摘には膝を打ちました.
 議論の軸となるのは,2つの社会言語学の理論です.1つは Howard Giles らのコミュニケーション適応理論(Communication Accommodation Theory.cf. 「#1935. accommodation theory」 ([2014-08-14-1]))で,相手との距離を縮めたいときにはことばを相手に近づけ(convergence),逆に距離を置きたいときにはあえて離す(divergence)という話し方の調整を説明するものです.もう1つは Allan Bell のオーディエンス・デザイン(audience_design.cf. 「#1934. audience design」 ([2014-08-13-1]))で,直接話しかけている相手だけでなく,傍らで聞いている第3者の存在までもが話し方を左右し得ることを教えてくれます.
 「英語には日本語のような敬語がないのではないか」という誤解にも言及があります.英語にも Could you...? や Would you mind...? のような丁寧表現はありますが,それだけではありません.声の高さ・速さ・強さ・間の取り方といったプロソディ (prosody) が丁寧さの重要な担い手になっている点は,日本語母語話者にはかえって気づきにくい盲点でしょう.「英語ができる」とは,1種類の正しい英語をいつも同じように出せることではなく,相手や場面を見ながら少しずつことばを動かしていける能力そのものだ,と締めくくられています.
 記事の末尾には,恒例の相方からの一言として,私もコメントしています.
 ぜひ全国の書店やオンライン書店にて,『英語教育』11月号を手にとっていただければと思います.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第8回 「英語は1つではない ―― 相手と場面で変わる「話し方」」『英語教育』2026年11月号,大修館書店,2026年10月14日.60--61頁.

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2026-10-11 Sun

■ #6376. 形容詞,食事,時間,語順にまつわるクイズ --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ第19弾 [note][hee][helkatsu][hel_education][quiz][collocation][word_order][voicy][heldio]



 隔週土曜日という決まったリズムで届けられる sorami さんの語源クイズシリーズ,10月3日に第19弾「授業で使える! 中学生向け英語語源クイズ#19~英語の朝昼晩・語順その2~」が公開されました.気づけばシリーズも20回目が目前です.
 今回は全9問.形容詞に始まり,食事と時間の言葉を経て,最後は語順の話題へと着地する構成です.ネタバレにならない範囲で,いくつかの問いを紹介しましょう.
 冒頭は形容詞を答える軽ジャブ問題です.通時的な意味変化 (semantic_change) の話題も復習的に取り上げられます.
 続いて,クイズは1日の食事と時間をめぐる語彙へと進みます.それぞれお馴染みの単語ですが,意外な語源をもっていることがわかります.朝昼晩の言葉を並べてみると,日々の暮らしの言葉にこそ歴史の層が厚く積み重なっていることに気づかされますね.この話題には,皆さん興味を抱くのではないでしょうか
 time と結びつく動詞を選ばせる問題も勉強になります.例えば kill time のように,同じ time でも組み合わせる動詞によって表現の性格ががらりと変わるのがおもしろいところです.語彙を点ではなく,コロケーションという線で捉える感覚が養われます.
 そして最後は,副題にある通り「語順その2」です.前回第18弾の語順の問題を受けて,今回はコスタリカやプエルトリコといったスペイン語地名を入口に,名詞と形容詞の並び順を世界の言語のなかで比べてみるという趣向です.英語の「形容詞+名詞」の順は,実は世界的に見れば当たり前ではない.そんな気づきを中高生が得られるとすれば,これほど贅沢なクイズはありません.
 いつもの通り,sorami さんの note 記事では,「授業の小ネタ,ウォームアップ,グループ活動などに自由に使っていただければ幸いです.ALTの先生を巻き込むのもありですね!」と述べられています.問題版と解答版の PDF も用意されていますので,全国の英語教員の皆さん,ぜひ授業で活用してみてください.
 sorami さんのクイズ・シリーズの主な典拠となっているのは,刊行から1年4ヶ月ほどが経つ『英語語源ハンドブック』(研究社)です.ご好評いただき,先日第4刷が出来したところです.今年の6月30日には物書堂より『英語語源ハンドブック』アプリ版 (iOS) も発売されていますので,ぜひこちらよりチェックしてみてください.今回のクイズをきっかけに,毎日口にする「朝昼晩」の英単語の語源にも興味を持っていただければ幸いです.

 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

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2026-10-09 Fri

■ #6374. 10月16日,専修大学で「3単現の -s の英語史」をお話しします [notice][hel_education][hel_lecture][helkatsu][nazesantangen][3sp]


10月16日,専修大学で「3単現の -s の英語史」をお話しします



 来たる10月16日(金)の夕刻,専修大学文学部英語英米文学科主催の学術講演会にて,「3単現の -s の英語史」と題してお話しします.お招きくださったのは,khelf や heldio のhel活でも日頃からお世話になっている菊地翔太先生(専修大学)です.菊地先生は,講演会について10月1日に note 記事「堀田隆一先生のご講演「3単現の -s の英語史」(専修大学生田キャンパス)のご案内」を公開してくださっています.ありがとうございます.
 学科主催の講演会ではありますが,一般の方でもご参加いただる会となっています.英語史に関心をお持ちの方,中学校で「3単現の -s」を習って以来モヤモヤを抱え続けてきた方,英語を教えている先生方など,どなたも歓迎です.ぜひ生田キャンパスまで足をお運びください.開催概要は以下の通りです.

 ・ 日時:2026年10月16日(金)5限 (16:35--18:05)
 ・ 会場:専修大学生田キャンパス 2号館 地下1階 Active! Studio 202
 ・ 主催:専修大学文学部英語英米文学科
 ・ 演題:「3単現の -s の英語史」
 ・ 参加:一般の方も参加可です(詳細は上記の菊地先生の note 記事をご確認ください)

 今回の講演は,6月に刊行された拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書),通称『なぜさんたんげん』の第1章第5節「なぜ3単現の s をつけるのか」の内容を,さらに深掘りしていくものです.新書では一般読者向けにコンパクトにまとめましたが,講演会では,そこからさらに一歩も二歩も踏み込んだ論点にも触れていきます.
 講演では,まず3単現の -s に関する共時的な説明を確認します.そこでは「何を」「どのように」には答えてくれますが,「なぜ」には答えてくれません.そこで通時的な視点へと切り替えます.英語史の観点からみると,問うべきは「なぜ3単現に -s がつくのか」ではなく,むしろ「なぜ3単現以外では何もつかなくなってしまったのか」なのです.古英語の動詞 lufian (to love) の屈折表から出発し,屈折語尾の水平化の過程で3単現の語尾だけが生き残った経緯,さらに北部方言に由来する -s が本来の -th を置き換えていった経緯などをたどります.
 後半では,Northern Present Tense Rule,3複現の -s,-th から -s への置換という3つの問題を取り上げ,数あるパラダイムのなかから,なぜ「3単現の -s を唯一の屈折標示としてもつパラダイム」が標準英語に採用されたのかを議論します.そして,現在も世界の英語諸変種に見られる多様な -s の分布に目を向けながら,「正しい英語」という発想を相対化してみたいと思います.たった1文字の語尾に,屈折の水平化,方言接触,標準化,社会的評価といった英語史の主要テーマが凝縮されていることを,皆さんと一緒に味わえればと思います.
 なお,第1章第5節の内容は,NHK出版デジタルマガジンにて無料公開されています(「#6225. 近刊『なぜさんたんげん』の3単現の s を扱った節が公開されています」 ([2026-05-13-1]) を参照).そちらを予習としてお読みいただくと,当日の話がいっそう楽しめるはずです.同じ話題を授業向けにまとめたレジュメとしては「#6258. なぜ3単現にだけ s をつけるのか? --- 教室で使える『なぜさんたんげん』レジュメ」 ([2026-06-15-1]) もどうぞ.
 当日,生田キャンパスで皆さんにお会いできることを楽しみにしています.

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

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2026-10-05 Mon

■ #6370. 2026年度の「英語史」講義が始まります --- 慶應義塾大学文学部英米文学専攻の必修科目 [hel_education][hellog][heldio][hellog_entry_set][link][helkatsu][notice]

 慶應義塾大学文学部英米文学専攻の必修科目の1つ「英語史」の秋学期の講義が開講しました.主に専攻の2年生が履修する科目です,今学期は英語史のなかでも特に中英語期以降に注目します.
 今学期の初回講義では,本ブログの記事を組み合わせることにより,改めて英語史の導入を図ります.以下のセクションには多くの情報が詰め込まれていますが,履修生の皆さんは,今回の講義ですべてを消化できなくても,いつでもこの記事に戻ってきてください.一般の hellog 読者の方々も,以下のリンクを通じて,今学期の初回講義を部分的・擬似的に体験できるかと思います.ぜひ以下のリンクを1つひとつたどっていただければ.



1. イントロ
   1.1. 不定冠詞 a と an について: 「#831. Why "an apple"?」 ([2011-08-06-1]),heldio 「#1. なぜ A pen なのに AN apple なの?」
   1.2. 「英語史」講義担当者の紹介: note 「堀田隆一のプロフィール」,heldio 「#1171. 自己紹介 --- 英語史研究者の堀田隆一です」,「#2. 自己紹介」 ([2009-05-01-2])
2. 英語史の世界へようこそ
   2.1. 英語史の魅力4点: 「#4546. 新学期の始まりに,英語史の学び方」 ([2021-10-07-1])
      (1) 英語の見方が180度変わる
      (2) 英語と歴史(社会科)がミックスした不思議な感覚の科目
      (3) 素朴な疑問こそがおもしろい
      (4) 現代英語に戻ってくる英語史
   2.2. 「#4361. 英語史は「英語の歴史」というよりも「英語と歴史」」 ([2021-04-05-1]): 魅力 (2) に通じます
   2.3. 「なぜ英語史を学ぶのか」の記事セット: 様々な角度から「なぜ学ぶのか」を検討してみました(cf. heldio 「#444. 英語史を学ぶとこんなに良いことがある!」や heldio 「#112. 英語史って何のため?」でも取り上げています)
3. 英語に関する素朴な疑問
   3.1. 「#1093. 英語に関する素朴な疑問を募集」 ([2012-04-24-1]): 魅力 (3) に通じます
   3.2. 3166件の素朴な疑問
   3.3. これまで hellog で取り上げてきた素朴な疑問集
   3.4. 知識共有サービス「Mond」で英語・言語に関する素朴な疑問に回答しています
   3.5. この講義で Slido (質疑応答サービス)を利用して英語に関する素朴な疑問を募集します(こちらからアクセスしてください)
4. 英語史を日常の風景に
   4.1. 「#5097. hellog の読み方(2023年度版)」 ([2023-04-11-1]): 2009年5月1日より毎日更新している英語史のブログです.この hellog の効果的な使い方の tips をどうぞ.
   4.2. 音声コンテンツ一覧 (heldio & hellog-radio): hellog の音声版というべき Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) .2021年6月2日より毎朝6時に1本10分ほどで英語史の話題をお届けしています.日々の英語史の学びのためにフォローしてください.英語史の話題が日常になります.「#5093. heldio の聴き方(2023年度版)」 ([2023-04-07-1]) および「#5098. 英語史を学び始めようと思っている方へ hellog と heldio のお薦め回一覧(2023年度版)」 ([2023-04-12-1]) も参照.
   4.3. 「#5091. khelf の沿革,活動実績,ミッションステートメント」 ([2023-04-05-1]): khelf HP,公式 X アカウント @khelf_keio,公式 Instagram アカウント @khelf_keio より情報を発信しています.
   4.4. 「#5917. 『英語史新聞』第12号が公開されました」 ([2025-07-09-1]): 世界初の英語史を主題とする新聞の第12号です.
   4.5. 「いのほた言語学チャンネル」(旧「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」): 2022年2月26日より同専攻の井上逸兵先生(英語学・言語学)と一緒に週2回(水)と(日)の午後6時に動画を公開しています
5. 講義の進め方
   5.1. 講義スライド,テキスト,課題,試験,評価
   5.2. 指定テキストは英語史の古典的名著 Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.:「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1])
   5.3. 英語史の読書案内:「#6203. 英語史概説書等の書誌(2026年度版)」 ([2026-04-21-1]),「#4557. 「英語史への招待:入門書10選」」 ([2021-10-18-1]),heldio 「対談 英語史の入門書」
   5.4. 過年度に「英語史」を履修した先輩たちの言葉: 「#5393. 2023年度,1年間の「英語史」の講義を終えて」 ([2024-02-01-1]),heldio 「#974. 1年間の「英語史」の講義を終えて --- 2023年度版」
6. ライヴで寄せられた英語の素朴な疑問に即興で答える「千本ノック」も



 今学期も楽しい英語史ライフを!

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2026-09-30 Wed

■ #6365. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第7回 --- 『英語語源辞典』は英語語彙史の豊かさを伝えてくれる極上の1冊 [inohota][ippeiinoue][youtube][inohota_rensai][kdee][dictionary][lexicography][etymology][kenkyusha][notice][hel_education]


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 月刊誌『英語教育』(大修館書店)にて,同僚の井上逸兵さんとともに連載している「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」.9月12日発売の10月号に,第7回記事「『英語語源辞典』は英語語彙史の豊かさを伝えてくれる極上の1冊」が掲載されました.今回のメイン執筆者は私です.
 きっかけは,井上さんと配信している YouTube 「いのほた言語学チャンネル」で初めて実現した現地ロケです.1年ほど前,日本の英語辞書出版の老舗,研究社にお邪魔し,私が日頃「世界最強の語源辞典」と激賞してやまない,寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社)の制作秘話を,編纂・出版に携わったプロフェッショナルの方々に直接うかがうという主旨のロケでした.
 取材で明かされたのは,本辞典が研究社における「最後の活版印刷による英語辞書」であるという事実です.気の遠くなるような歳月と職人技が注ぎ込まれた,二度と再現されないであろうものづくりの舞台裏について,記事では詳しく綴っています.続きはぜひ本誌でお確かめください.
 研究社ロケの模様は,「いのほた言語学チャンネル」にて全3回のシリーズ動画としても公開中です.



 なお,今回の『英語教育』の記事でも触れられている,上記の取材を通して立ち上がりつつある新企画については,近々に hellog などでもご報告できればと思っています.
 最後に,井上さんからの一言も紹介します.

堀田さんが「世界一」と激賞する『英語語源辞典』.私もロケで,鉛の活字が並んだ組版の重さと歴史に感銘を受けました.続きはぜひ本誌で!


 『英語教育』10月号,書店やオンライン書店で手にとっていただければ幸いです.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第7回 「『英語語源辞典』は英語語彙史の豊かさを伝えてくれる極上の1冊」『英語教育』2026年10月号,大修館書店,2026年9月12日.44--45頁.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2026-09-26 Sat

■ #6361. 10月6日(火)より東京言語研究所で英語史講座(全10回)が開講 [notice][hel_education][tokyogengokenkyujo][hel_lecture]


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 来たる10月6日(火)19:00--20:40を初回として,10週にわたりオンラインで東京言語研究所の理論言語学講座(後期)の一環として「史的言語学:英語史入門」を担当します.約1600年にわたる英語の歴史を概観し,現代英語が抱える「なぜ?」を歴史的な視点から解き明かしていく全10回の講義です.
 全10回を通じて,英語史を貫く次の4つの潮流を,じっくりと掘り下げていきます.

 1. 文法 --- 総合から分析へ.古英語は屈折の豊富な「総合的言語」,現代英語は屈折の乏しい「分析的言語」.この大転換がいつ,どの,そしてなぜ起こったのかを探ります.
 2. 語彙 --- 語形成と借用のせめぎ合い.英語には,350以上の言語から語彙を借用してきた「世界的語彙」の側面があります.時代ごとに主役を変えてきた新語導入法の歴史に注目します.
 3. 綴字と発音 --- 両者の乖離.中英語まではさほど乖離していなかった綴字と発音が,近代英語期にかけて大きく離れていった経緯を,単語の具体例とともに追います.
 4. 標準化 --- 求心力と遠心力.英語は標準化と脱標準化のサイクルを繰り返してきました.このサイクルを踏まえ,21世紀に注目される "World Englishes" の現状について議論します.

 東京言語研究所での英語史講座は何度目かになりますが,今回は従来の時代順での英語史概観ではなくテーマ別に英語史を眺めていくことになります.受講される方は,予習として英語史入門書などでオーソドックスな時代の流れをつかんでおくと,講座も理解しやすくなると思います.入門書については,「#6203. 英語史概説書等の書誌(2026年度版)」 ([2026-04-21-1]) もご参照ください.
 本講座を含めた理論言語学講座のラインナップとそのシラバス (PDF) はこちらよりご覧ください.
 申込期間は8月21日(金)から9月28日(月)午前10:00までとなっています.締切が目前に迫っていますので,ご関心のある方は東京言所の公式サイトよりお早めにお申し込みください.
 この秋から年末にかけては,英語という言語を歴史的に眺めてみましょう.英語に限らず言語というものを新たな角度から見ることのおもしろさに気付いてもらえると思います.
 この講座については Voicy heldio でも案内を放送しています.ぜひ「#1944. 10月6日(火)より東京言語研究所で全10回の英語史講座が開講」をお聴きください.

</p><p align="center"><iframe src="https://voicy.jp/embed/channel/1950/8181618" width="618" height="347" frameborder=0 scrolling=yes style=overflow:hidden></iframe></p><p>

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2026-09-22 Tue

■ #6357. 語彙の横の広がりや語順にも注目した出題 --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ第18弾 [note][hee][helkatsu][hel_education][quiz][word_order][synonym][voicy][heldio]



 語源というと,1つの単語の来歴をひたすら遡っていく「縦」の探究をイメージしがちです.しかし,意味に注目した類義語の関係など,語彙の「横」の広がりに目を向けることでも,英単語のおもしろさは十分に味わえます.そんな視点を存分に盛り込んだのが,sorami さんによる「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ」シリーズの第18弾「授業で使える! 中学生向け英語語源クイズ#18~train/king/人/語順~」です.9月19日に公開された新作を紹介しましょう.
 まずは train, coach, bus という身近な乗り物の名前をめぐる出題です.単語ごとの語源を丁寧に追うだけでなく,coach と train がそれぞれ別の経路をたどりながら,現代英語ではどちらも「指導者,コーチ」という意味へと収斂していく様子が示されており,語源の縦の深掘りに終始しない,語彙の横の広がりに注目した構成になっています.単語どうしを線ではなく面で捉える視点を養ってくれる好例です.
 続くのは,king にまつわる問題です.「○○の王様」を意味する比喩表現から始まり,さらに視野を広げて,英語,フランス語,ドイツ語など複数の言語における王の名前の対応関係へと話題が及びます.同じ人物を指す名前が言語ごとにどのように姿を変えるのか,という対照言語学的な視点は,中学生にとっても新鮮な驚きとなりますね.
 さらに,person, people, man, human という「人」を表す複数の英単語を比較する問題も用意されています.似たような意味をもつ単語がなぜこれほど複数併存しているのか,その背景には借用の重なりという英語語彙史ならではの事情が潜んでいます.語彙どうしの意味の守備範囲の違いを見極めさせる出題です.
 そして今回最後に控えているのは語順の問題です.世界の諸言語を,主語・動詞・目的語の並べ方によって類型的に比較するという,もはや単なる「英語語源クイズ」の枠には収まらない内容にまで踏み込んでいます.
 英語史において語順に関する話題は最重要テーマの1つです.現代英語は語順が厳格に固定された言語ですが,古英語期には名詞の格変化が豊かだったため,語順は比較的自由でした.屈折語尾が衰退する過程で語順そのものが文法機能を担うようになり,現代のような固定語順が確立していったのです.このあたりの語順をめぐるダイナミックな変化については,拙著英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか(NHK出版)の第1章第1節でも詳しく解説しています.今回のクイズと合わせてお読みください,「英語のなぜ」の背景にある歴史のロマンがより立体的に見えてくるはずです.
 今回もまたまた,作者の sorami さん自ら「授業の小ネタ,ウォームアップ,グループ活動などに自由に使っていただければ幸いです.ALT の先生を巻き込むのもありですね!」と呼びかけてくださっています.pdf 形式の印刷用資料も用意されていますので,英語の教材として学校の授業やサークルなどですぐにでも活用できます.
 sorami さんのクイズ・シリーズの主な典拠となっているのは,刊行から1年3ヶ月ほどが経つ『英語語源ハンドブック』(研究社)です.今年の6月30日には物書堂より『英語語源ハンドブック』アプリ版 (iOS) も発売されていますので,ぜひこちらよりチェックしてみてください.

(以下,後記:2026/09/26(Sat))
 今回紹介した第18弾については,heldio 配信回「#1945. 語彙が横に広がる! --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズ第18弾」でも案内していますので,ぜひそちらもお聴きください.



 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

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2026-09-21 Mon

■ #6356. 9月26日(土)の朝カル講座「"through" を探って中英語原文の世界へ」 [asacul][notice][kdee][etymology][hel_education][helkatsu][me][me_text][kochushoho][through][hee][spelling][me_dialect][metathesis][doublet]


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 今週末,9月26日(土) 15:30--17:00に,朝日カルチャーセンター新宿教室にてオンライン講座が開かれます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」の夏期第3回(通算第18回)となり,夏期クールの締めくくりの回です.今回は「through を探って中英語原文の世界へ」と題して,中英語期の綴字事情を象徴するこの1語に迫ります.
 現代英語の前置詞・副詞 through (#FF5E;を通り抜けて)は,誰もが知る基本語です.ところが後期中英語期の綴字を丹念に集めていくと,驚くべき事実に突き当たります.私が確認した限りで516通りもの異なる綴字が存在するのです.「#53. 後期中英語期の through の綴りは515通り」 ([2009-06-20-1]) で紹介して以来,折に触れて話題にしてきた「515通りの through」ですが,2025年に516通り目の綴字(þurrh)が見つかったことは,「#5738. 516番目の through を見つけました」 ([2025-01-11-1]) で報告した通りです.今回の講座では,この驚異の数字を入口に,中英語期の写字生たちの綴字事情を探ります.through が音位転換 (metathesis) の代表選手とされていることや,<-ough> という綴字を共有しながら発音がまるで異なる though, enough, cough, plough などの仲間たちにも触れる予定です.
 第2のポイントは,through の語源的な仲間たちです.実は through と thorough は同一語源から分かれた2重語 (doublet) の関係にあり,動詞 thrill (原義は「(穴を)貫く」)とも語根を共有します.『英語語源辞典』の各項目を突き合わせながら,この語族のつながりを確認します.
 さらに,語源はまったく異なるものの,through に負けず劣らず異綴字・異形の乱立という運命をたどった単語として borough を取り上げます.-borough, -burg, -burgh, -bury と,地名接尾辞として地域ごとに異なる形を今に残す borough 系との対比を通じて,through の綴字の乱立が中英語期という一時期に集中して噴出し,やがて1つに収束した時間軸の産物であるのに対し,borough の異形は複数の地域方言の違いをそのまま反映して現在まで並存する空間軸の産物であることを見ていきます.
 第3のポイントは,こうした綴字の乱立がなぜ生じたのかという歴史的背景です.1066年のノルマン征服により,英語は公的な書き言葉の座をフランス語に奪われ,長らく話し言葉の世界に押し込められました.13世紀以降,英語が再び書かれるようになったとき,書き手たちは規範となる標準綴字をもたぬまま,各自の「訛った」方言の発音に即して思い思いに綴ったのです.講座では,ノルマン征服から英語の復権に至る略史を年表とともにたどりながら,なぜこれほど自由奔放な綴字が許されたのか,当時の言語事情を探ります.
 講義の後半には,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)の II. The Ormulum より,"Dedication" の冒頭部分を中英語原文で読んでみます.綴字潔癖症ぶりを見せる書き手 Orm の,一風変わった綴字の癖にもぜひ注目してください.講義資料で原文や文法解説をサポートしますので,中英語原文に触れたことがない方でも安心してご参加いただけます.
 講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.なお,今回で夏期クールは最終回となりますが,10月24日(土)からは,秋期クール(全3回)として「歴史上もっとも不思議な英単語」シリーズが継続します.初回は「will を探って中英語原文の世界へ」です.
 また,10月10日(土)には,単発の朝カル講座,拙著『なぜさんたんげん』出版記念の特別講座「英語学習の伏線回収の鍵は「英語史」だった!」も開講する予定です.皆様のご受講をお待ちしています.

(以下,後記:2026/09/23(Wed))
 今回の講座については Voicy heldio でも案内を放送しています.ぜひ「#1942. 8月22日(土)の朝カル講座は through の516通りの魅力その他をすべて語ります」をお聴きください.



 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2026-09-17 Thu

■ #6352. 比較級・最上級 の英語史 --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ第17弾 [note][hee][helkatsu][hel_education][quiz][comparison][superlative][voicy][heldio]



 heldio/helwa コアリスナーの sorami さんによる,『英語語源ハンドブック』(研究社)に基づいた英語語源クイズ・シリーズが,隔週土曜日のペースで着実に更新を重ねています.9月5日に公開された最新回は,「授業で使える! 中学生向け英語語源クイズ#17~比較級・最上級~」と題する第17弾です.今回は比較級という,英文法の授業で必ず扱われる基本文法事項を切り口にした構成になっています.
 全7問というボリュームです.早速中身に触れてみましょう.冒頭を飾るのは,near と next の語源的な関係を問う問題です.near はもともと nigh「近い」の比較級でした.現代英語の私たちが単純な原級として使っている near は,実は由来をたどれば比較級だったのですね.そして next はその最上級形にあたります.同じ発想は,first と last にも見られます.両語とも,古い時代には別語幹の最上級として機能していたものが,のちに独立した基本語として定着しました.
 中盤では,ラテン語由来の比較級表現に焦点が当てられます.senior や major ,minor ,junior といった語は,形こそ現代英語のなかでは原級のように使われていますが,もとをたどればラテン語の比較級語尾 -ior を伴う正真正銘の比較級です.また,音楽用語として日本語にもすっかり定着している fortissimo や pianissimo は,イタリア語の最上級語尾 -issimo を伴う語形であることも紹介されています.「とても強く」「とても弱く」という意味は,実は文法的には最上級だったというわけです.普段何気なく使っている外来語のなかに,比較級・最上級の化石が埋め込まれているとは,なんとも興味深い話ですね.
 後半では,Health is better than wealth. のような比較級を含むことわざの穴埋め問題や,futon ,hibachi ,satsuma といった,英語にそのまま取り込まれた日本語由来の語彙を扱う問題が並びます.日本語話者にとっては見慣れた単語が英語の辞書にそのまま載っているという事実に,改めて驚かされます.
 そして締めくくりには,「現代の不規則動詞は,かつては規則動詞だった」という,英語史ならではの逆説的な事実に触れる問いが用意されています! 規則・不規則という現代の分類は,あくまで現代英語の断面を切り取った結果に過ぎず,通時的にみれば,むしろ多くの「不規則」のほうが,古い規則性の生き残りであることも少なくないのです.
 sorami さんは今回も,「これからも『英語語源ハンドブック』をもとにした英語クイズを少しずつ投稿していきます.(隔週土曜日更新予定)」と結ばれています.全国の英語教員の皆さん,ぜひこのクイズを授業の小ネタやウォームアップにご活用ください.比較級・最上級という身近な文法事項の背後に,これほど豊かな歴史が眠っているとわかれば,生徒たちの英文法に対する見方もきっと変わるのではないでしょうか.

 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

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2026-09-12 Sat

■ #6347. 10月3日(土),新潟県三条市で川上さんの英語史の市民講座シリーズ開始 [notice][helkatsu][hel_education][sobokunagimon]


市民ゼミ 受講生募集



 この秋,heldio の人気コーナー「やってます通信」でお馴染みのリスナー川上さんが,地元の新潟県三条市にて,英語史をテーマにした市民講座シリーズを開講されます! 中等教育の現場で長らく英語を教えてきた川上さんが,学校の授業では扱いきれない「なぜ?」を存分に語り尽くす全4回の連続講座です.詳細は,川上さんご自身による告知 note 「三条市にて講座を開講します」にも綴られています.
 全4回の構成は,「数字のなぜ」(第1回・第2回),「複数形のなぜ」(第3回),「人称代名詞のなぜ」(第4回)という,いずれも英語学習者なら一度は素朴な疑問を抱いたことのあるテーマが並びます.身近な単語を糸口に,その背後に横たわる英語史の奥深さへと誘う構成になっており,英語がやや苦手な方から,学び直したい大人まで,幅広く楽しめる内容になること間違いなしです.
 講座は,三条市が「市民ゼミ」と銘打っている企画の一環として開催されるます.概要は以下の通りです.

 ・ 日程:10月3日(土)を皮切りに,隔週で11月14日(土)まで全4回,いずれも土曜日 14:30--16:00 の時間帯.
 ・ 会場:三条市中央公民館 講義室
 ・ 受講料:無料
 ・ 定員:30名(応募多数の場合は抽選)
 ・ お申し込み:市民ゼミ 受講生募集より詳細をご確認下さい.明後日,9月14日(月)締め切りですのでお早めにどうぞ!

 三条市民向けの企画ではありますが,居住地を問わず参加できるとのことです.遠方の方でもお申し込みいただけます.
 実をいうと,今回の講座の趣旨や見どころについては,3日前の heldio の対談回にて,川上さんご本人と,市民講座の経験の豊富な kendama_player さんを交えて,たっぷりお話ししています.heldio 「#1928. この秋,川上さんの英語史講座が三条市で」 にて配信中ですので,講座に関心を持たれた方は,ぜひこちらの対談も お聴きいただければと思います.

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2026-09-11 Fri

■ #6346. 「英語嫌い」に英語史が効く理由 --- NHK出版デジマガ・動画公開 [notice][nazesantangen][nhkpb][helkatsu][hel_education][youtube][notice]


NHK出版デジタルマガジン「なぜ英語は「不規則」だらけなの? 「英語嫌い」に英語史が効く理由」



 『なぜさんたんげん』にまつわる新しい発信を2件.9月9日(水)と9月10日(木)の両日,NHK出版より,本書と連動した動画およびその動画に基づいたデジタルマガジン記事が公開されました.タイトルはいずれも「なぜ英語は「不規則」だらけなの? 「英語嫌い」に英語史が効く理由」です.動画は全4回の対談形式で構成されており,お相手は千代田区立九段中等教育学校主任教諭の黄俐嘉先生です.
 今回のプロジェクトで特筆すべきは,プロデューサー,コーディネーター,脚本家,動画編集社,記事編集社,広報担当者――そのすべてを,『なぜさんたんげん』の編集を担当してくださった田中菜乃香さんお一人で担ってくださったという点です.八面六臂のご活躍に,著者として深く感謝申し上げます.今回の狙いは,今まさに英語が苦手な方,あるいはかつて「英語嫌い」だった方に,あらためて英語史のおもしろさを届けることにあります.

 動画は全4回に分かれており,以下よりご視聴いただけます(各5分程度).



 デジタルマガジンの記事は,前半・後半の2本立てで公開されています.

 ・ 前半:なぜ英語は「不規則」だらけなの? 「英語嫌い」に英語史が効く理由
 ・ 後半:なぜ go の過去形は went なの? 英語への向き合い方が変わる,英語史という入り口

 なお,来たる10月10日(土)には,朝日カルチャーセンター新宿教室にて『なぜさんたんげん』出版記念講座も予定されています(詳しくは「#6345. 10月10日(土),朝カルで『なぜさんたんげん』出版記念講座」 ([2026-09-10-1]) をご覧ください).今回の動画・記事とあわせて,1人でも多くの「英語嫌い」だった方に,英語史のおもしろさが届きますように!
 関連して,昨日 heldio にて,今回の動画企画の狙いを田中さんと語り合った対談回[[「#1929. 「英語嫌い」に英語史が効く理由 --- NHK出版田中さんとデジマガ・動画公開記念対談」 も配信しています.デジマガ記事・動画とあわせて,ぜひこちらもお聴きください.

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

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2026-09-07 Mon

■ #6342. 2026度の朝カルシリーズ講座の夏期の第2回(8月回)「riddle を探って古英語原文の世界へ」のまとめ [asacul][notice][kdee][hee][etymology][hel_education][helkatsu][oe][oe_text][anglo-saxon][riddle][kochushoho][alliteration][oe_poetry][metanalysis][trish][rune][ruthwell_cross][alliteration]

 8月22日(土)に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて今年度の夏期第2回(シリーズ通算第17回)となるオンライン講座を開講しました.テーマは「riddle を探って古英語原文の世界へ」です.「歴史上もっとも不思議な英単語」シリーズの一環として,現代英語で「なぞなぞ,謎」を意味する riddle を手がかりに,英語の読み書き文化の起源と古英語の詩の世界を受講者の皆さんと探訪しました.参考テキストには,引き続き市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)を活用しました.
 講座の前半では,まず riddle と read の語源的な深いつながりと語誌に迫りました.両語は同根であり,印欧祖語の *ar(ə)- (合 わせる,整える)に遡ります.古英語の名詞 rǣdels は「助言,考慮,解釈,推測」など実に多義的でした.形態論の観点からは,本来語幹の一部だった末尾の -s が複数形語尾と勘違いされて脱落した「異分析」 (metanalysis) や,派生に伴う母音変化(3音節短化)の事例を確認しました.また,関連語として write (原義は「彫る,刻む」)や book (ブナの木 beech に由来),ゲルマン人の「彫る文字」であるルーン文字 (rune) やスコットランドの Ruthwell Cross の石碑銘文の話題を掲げ,かつてゲルマン人にとって文字を書く行為が物理的な「刻み込み」であり,読む行為が「意味を推測・解釈する」という精神的な営みであったことを浮き彫りにしました.
 講座の後半では,古英詩の形式的特徴である2つの半行構造と「頭韻」 (alliteration) の規則について解説した上で,アングロサクソン人が愛好した「謎詩」 (riddle) というジャンルに焦点を当てました.具体的には『古英語・中英語初歩』の pp. 122--23 に収められている「本の虫,シミ」 (Bookworm, Riddle XLVII) の古英語原文を読解しました.「蛾が言葉を喰らったが,その言葉を飲み込んだところで少しも賢くはならなかった」という,書物の物質性と知恵の受容をめぐるアングロサクソン流のアイロニーとユーモアが効いた作品です.
 次回,夏期クールの最終回(第3回)は,9月26日(土)に「through を探って中英語原文の世界へ」と題して開講されます.かつて516通り以上の綴字が存在したこの単語を軸に,中英語の原文を覗いてみます.
 また,10月10日(土)には特別講座「英語学習の伏線回収の鍵は「英語史」だった! --- 『なぜさんたんげん』出版記念」も予定されています.こちらの特別講座の詳細・お申し込みは朝カルの公式ページよりどうぞ.

 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

Referrer (Inside): [2026-09-08-1]

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2026-08-27 Thu

■ #6331. often の発音から twelve の語源まで --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ第16弾 [note][hee][helkatsu][hel_education][quiz][suffix][numeral][waseieigo][voicy][heldio]



 heldio/helwa コアリスナーの sorami さんによる『英語語源ハンドブック』に基づいた「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ」シリーズが,回を重ねるごとにますます充実の内容となっています.隔週土曜日に新作が公開されており,8月22日に公開された最新回は,「授業で使える! 中学生向け英語語源クイズ#16~often/和製英語IV~」と題する第16弾です.
 今回は全6問と,例によってボリューム満点の構成です.発音の変化に始まり,語形成,数詞の語源,そして恒例の和製英語シリーズへと,バラエティ豊かな話題が展開していきます.あまり細かく紹介するとネタバレになってしまいますので,ここではいくつかの問いを厳選してお伝えします.
 まずは,often の t を発音するかどうかという,現代英語の発音をめぐる身近な疑問から幕を開けます.学校では長らく無音とされてきた t ですが,近年ではむしろ発音する話者が増えているとも言われています.規範として教わる発音と,実際に使われている発音とが必ずしも一致しないという事実に触れることは,「発音は一度決まったら変わらない」という思い込みを崩す良いきっかけになるはずです.
 続いて,letter から email へと連なる通信手段をめぐる語彙の移り変わりや,接尾辞 -able の働きを問う問題,さらには port という部品を含む単語群を,接頭辞ごとに整理して考えさせる問題が並びます.基本的な語彙の背後に潜む形態論的な規則性に気づかされる,知的好奇心をくすぐる構成です.
 後半のハイライトは,数詞 twelve の語源です.ten と「余り」を意味する語の組み合わせに由来するという成り立ちを知ると,現代の10進法とは異なる数え方の名残が,日常的に使う数詞のなかにひっそりと刻み込まれていることに気づかされます.
 そして締めくくりは,恒例となった和製英語クイズの第4弾.「リベンジ」「スマート」「マンション」など,すっかり日本語化してしまった外来語的表現を,英語圏で通じる形にどう言い換えればよいかを問う,実践的な8題が用意されています.学校の授業はもちろん,日常会話でもすぐに役立つ内容です.
 今回も sorami さんは,「授業の小ネタ,ウォームアップ,グループ活動などに自由に使っていただければ幸いです.ALTの先生を巻き込むのもありですね!」と呼びかけています.印刷してそのまま配布できる pdf 資料も用意されていますので,学校現場ですぐに活用できますね.
 sorami さんのクイズ・シリーズの主な典拠となっているのは,刊行から1年2ヶ月ほどが経つ『英語語源ハンドブック』(研究社)です.2ヶ月ほど前の6月30日には物書堂より『英語語源ハンドブック』アプリ版 (iOS) も発売されていますので,ぜひこちらよりチェックしてみてください.

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2026-08-16 Sun

■ #6320. 分詞,和製英語,英語史クイズと今回も盛りだくさん --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ第15弾 [note][hee][helkatsu][hel_education][quiz][participle][waseieigo][voicy][heldio]



 heldio/helwa コアリスナーの sorami さんによる「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ」シリーズが,抜群の出題センスにより人気を博しています.隔週土曜日に新作が公開されており,8月8日に公開された最新回は第15弾となります.
 今回も,日常語彙,現在分詞か過去分詞かという文法に関わる単語語源の問題,和製英語・カタカナ語シリーズ,英語史クイズなど,非常にバランスの取れた構成で飽きさせません.
 日常的な英語語彙の話題からスタートし,ドイツ語・オランダ語・イタリア語などとの比較を通じて,とある英単語の語源に迫る問題へと展開していきます.基本語の比較から印欧祖語の系譜にまで思いを馳せさせる流れは見事です.
 また,文法項目として重要な interesting と interested の使い分けを,感情誘発動詞の原義から丁寧に紐解く問題や,文房具を中心とした和製英語・カタカナ語のクイズなど,英語学習者が直面しやすいポイントが,今回も巧みに織り交ぜられています.
 後半には,新しくシリーズ化されつつある「英語史クイズ」が控えています.英語史クイズとはいっても,季節語という日常的な語彙を話題にしているので,たいへんに取っつきやすい構成になっています.かつての英語において1年がどのように区切られていたのか,そして fall や winter にまつわる語誌など,厳しい猛暑が続く今の季節だからこそ味わい深く感じられる歴史的なトピックが散りばめられています.
 作者の sorami さん自身も,毎回推している通り,「授業の小ネタ、ウォームアップ、グループ活動などに自由に使っていただければ幸いです.ALTの先生を巻き込むのもありですね!」とのことなので,皆さん,ぜひ様々な形でクイズをご活用ください.印刷してそのまま配れるPDFファイルも用意されており,現場への気配りも万全です.
 sorami さんのクイズ・シリーズの主な典拠となっているのは,刊行から1年2ヶ月ほどが経つ『英語語源ハンドブック』(研究社)です.今年の6月30日に物書堂より『英語語源ハンドブック』アプリ版 (iOS) も発売されていますので,ぜひこちらよりチェックしてみてください.手軽に引けるアプリ版の登場で,さらに身近に語源の世界へアクセスできるようになっています.
 今回紹介した第15弾については,heldio 配信回「#1902. 現在分詞と過去分詞 --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズ第15弾」でも案内していますので,ぜひそちらもお聴きいただければ.



 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

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2026-08-15 Sat

■ #6319. 8月22日(土)の朝カル講座「"riddle" を探って古英語原文の世界へ」 [asacul][notice][kdee][etymology][hel_education][helkatsu][oe][oe_text][anglo-saxon][riddle][kochushoho][alliteration][oe_poetry][hee]


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 来週末の8月22日(土) 15:30--17:00 に,朝日カルチャーセンター新宿教室にてオンライン講座が開講されます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」の夏期第2回(通算第17回)となります.今回は「riddle を探って古英語原文の世界へ」と題して,「謎」を意味する単語に迫ります.
 現代英語の riddle は「謎,なぞなぞ」を意味する単語ですが,英語史・語源学の観点から紐解くと,アングロサクソン人の「読み書き文化」の原点につながる,文字通り謎に満ちた世界が広がっています.今回の講座では,主に3つの切り口からこの単語を解読していきます.
 第1のポイントは,riddle と read の語源的関係です.riddle は,動詞 read に接尾辞が付加された派生語にすぎません.古英語の rǣdan (to read) は本来「解釈する;助言する」などを意味していました.つまり,古代人にとって「読む」とは,与えられた暗号や謎を「解読する」行為そのものだったのです.さらに視野を広げて,write (原義は「引っ掻く」),book (ブナの木),rune (秘密・囁き)などの語源もあわせて紹介します.これらの単語の語源をつなぎ合わせていくと,ゲルマン民族が文字や書物,そして読み書き文化をどのように受容し発展させてきたのか,その文化的背景が見えてきます.
 第2のポイントとして,(次の第3のポイントを見据えて)古英詩 (Old English poetry) の世界と頭韻 (alliteration) の役割,そしてルーン文字の文化を覗いてみます.先日,私自身が現地で実物を見てきたスコットランド Dumfriesshire の Ruthwell Cross は,古英詩 The Dream of the Rood の断片がルーン文字で刻まれた,8世紀初頭のものと考えられている有名な石碑です.その訪問体験談や写真を紹介しつつ,アングロサクソン人の詩的言語生活の一端を感じてみます.古英詩は現代詩のような脚韻 (rhyme) ではなく,音節頭の子音を揃える頭韻によってリズムを取っていました.この頭韻が,単なる音の装飾にとどまらず,詩の構造や記憶,さらには解読の鍵としていかに決定的な役割を果たしていたかを解説します.
 第3のポイントは,古英語文学における「謎詩」 (Riddles) という独特のジャンルの鑑賞です.古英語期には,事物や自然現象が自ら「私は誰でしょう?」と語りかける詩が数多く残されました.今回の講座では,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)の IX. RIDDLES より,(3) Bookworm (Riddle XLVII) を古英語原文で解読してみます.「本を食う虫」を描いた短い詩ですが,頭韻の配置に注意しながら丁寧に読んでいきます.あわせて,かつては「竜;蛇」を指していた worm の意味変化についても取り上げます.
 講義資料で原文や文法解説をしっかりサポートしますので,テキストをお持ちでなくても問題ありません.古英語原文に触れたことがない方でも安心してご参加いただけます.
 講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.なお,次回(夏期第3回)の日程と内容は次の通りです.

 ・ 夏期第3回(2026年9月26日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "through" を探って中英語原文の世界へ

 皆様のご受講をお待ちしています.
(以下,後記:2026/08/19(Wed))
 今回の講座については Voicy heldio でも案内を放送しています.ぜひ「#1907. 8月22日(土)の朝カル講座は riddle を深掘り」をお聴きください.


 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2026-08-12 Wed

■ #6316. khelf のhel活の資産,過年度の「英語史コンテンツ」が復旧 [khelf][khelf_hel_intro][cat_hel_contents_50_2022][cat_hel_contents_50_2023][cat_hel_contents_50_2024][cat_hel_contents_50_2025][hel_herald][helkatsu][links][sobokunagimon][hel_education]

 本日は,khelf(慶應英語史フォーラム)によるhel活 (helkatsu) の貴重なウェブ上の資産について,お知らせです.
 khelf では,2021年度から2025年度にかけての5年間にわたり,春から夏にかけての風物詩的な名物企画として「英語史コンテンツ」(初年度の2021年度は「英語史導入企画」と呼んでいた)という催しを継続してきました.これは,主として khelf に所属する慶應英語史ゼミの現役学部生・大学院生を中心とし,卒業生やその他の関係者も少数加わったメンバーが日替わりで執筆を担当し,英語史に関する様々な話題をウェブ上に公開していくという熱量あふれる企画です.
 企画概要や各年度のコンテンツのタイトル一覧については,khelf HP のこちらのセクションにまとめられており,これまで本ブログでも毎年度の恒例行事としてたびたび関連する話題を取り上げてきました.
 しかし,ここ1年ほどの間,過去コンテンツへのアクセスについて問題が生じていました.khelf HP 上に掲載されているコンテンツのうち,最新の2025年度分についてはすべてのコンテンツおよびリンクが正常に機能しているものの,2024年度以前の過去のコンテンツへのリンクが切れてしまっていたのです.
 このリンク切れの背景には,所属大学が契約していたオンラインストレージのサービス Box が,諸事情により契約打ち切り・運用終了となったという事情がありました.これにより,もともと Box 上に置かれていたファイル群へのリンクが無効化されるに至りました.
 幸いコンテンツのデータ自体は散逸することなく,Google Drive 上に退避させておいたため無事でした.しかし,個々のコンテンツファイルの各々に再びリンクを張り直す作業には膨大な手間がかかるため,リンク切れのまま放置せざるを得ない心苦しい状態が続いていました.
 このたび,年度単位でのアクセス環境を再整備しました.個別の各コンテンツファイルへの直リンクの完全復元とまではいきませんが,年度ごとの全体フォルダへの共有リンクを新たに公開・設置しました.これにより,過年度の特定のコンテンツをご覧になりたい場合に,khelf HP 上でタイトルと公開年度さえ確認していただければ,該当する年度のフォルダへアクセスして,お目当てのコンテンツにたどり着けるようになりました.
 khelf メンバーが知恵と情熱を絞って作成してきた「英語史コンテンツ」は,英語史の素朴な疑問 (sobokunagimon) に答える教育的・啓蒙的な資産であり,英語史をお茶の間に広めるための宝の山です.これが再びみなさんの手元で閲覧可能な状態に戻ったことは,khelf のhel活にとっても大きな一歩であると感じています.
 以下に,2021年度から2025年度までの各年度の「英語史コンテンツ」企画について,(1) コンテンツにアクセスできる年度別オンラインフォルダへのリンク,(2) khelf HP 上の公式ページ,(3) hellog での関連記事集へのリンク,の3点を一覧として掲げます.ぜひ過去の名作コンテンツの数々を探索してみてください.

・ 2021年度の「英語史導入企画」

  1. 2021年度コンテンツフォルダ(Google Drive)
  2. khelf HP 上の公式ページ
  3. khelf_hel_intro_2021

・ 2022年度の「英語史コンテンツ50」

  1. 2022年度コンテンツフォルダ(Google Drive)
  2. khelf HP 上の公式ページ
  3. hel_contents_50_2022

・ 2023年度の「英語史コンテンツ50」

  1. 2023年度コンテンツフォルダ(Google Drive)
  2. khelf HP 上の公式ページ
  3. hel_contents_50_2023

・ 2024年度の「英語史コンテンツ50+」

  1. 2024年度コンテンツフォルダ(Google Drive)
  2. khelf HP 上の公式ページ
  3. hel_contents_50_2024

・ 2025年度の「英語史コンテンツ50」

  1. 2025年度コンテンツフォルダ(Google Drive)
  2. khelf HP 上の公式ページ
  3. hel_contents_50_2025

 復旧した過年度のコンテンツをきっかけに,新たな学びや素朴な疑問への発見があれば幸いです.今後とも khelf の活動と英語史コンテンツをよろしくお願いします.

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2026-08-11 Tue

■ #6315. 2026度の朝カルシリーズ講座の夏期の初回(7月回)「king を探って古英語原文の世界へ」のまとめ [asacul][notice][hel_education][oe][oe_text][anglo-saxon_chronicle][kochushoho][haplology][phonemicisation][phoneme][kenning][synonym][alfred][viking][etymology][kdee][hee][beowulf][anglo-saxon]

 7月25日(土)に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて今年度の夏期第1回(シリーズ通算第16回)となるオンライン講座を開きました.夏期クールのテーマも引き続き「歴史上もっとも不思議な英単語」ですが,今回は「king を探って古英語原文の世界へ」と題し,国家の世襲的君主を表わす基本語 king の起源と発達に迫りました.参考テキストには今期も市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)を活用し,今回は古英語のテキストから「王」が登場する箇所を読み解きました.
 講座でまず注目したのは,king の語源的背景と仲間となる単語群です.古英語の cyning は「一族,血族」を意味する cynn (現代英語 kin)に,所属・由来を表わす接尾辞 -ing が付いたもので,原義は「一族の者」でした.さらに遡ると印欧語根 *gen(ə)- (生む,生じさせる)に行き着き, generous, gender, nature など膨大な語彙ネットワークと繋がっています.また,古英語の詩にあふれる「ケニング」 (kenning) と呼ばれる隠喩的複合語を取り上げ,古英詩『ベオウルフ』にみられる bēagġyfa (指環を与える者)や goldwine (黄金の友)といった「王」の多彩な表現を紹介しました.
 音変化や語彙体系の観点からも興味深い事実を確認しました.語形面では,古英語 cyning から cyng への変化に見られる重音省略 (haplology) や,中英語から近代英語にかけての /kɪŋg/ から /kɪŋ/ への変化,すなわち軟口蓋鼻音の音素化 (phonemicisation) に触れました.また,形容詞における kingly (本来語),royal/regal (フランス借用語),monarchic(al) (ギリシア借用語)という語彙の3層構造にも触れ,なぜ king や queen という基本語がフランス語に置き換えられずに生き残ったのかという問題についても考察しました.
 講座の後半では,『古英語・中英語初歩』の pp. 94--98 に収められている『アングロサクソン年代記』 (anglo-saxon_chronicle) より,896年のアルフレッド大王 (King Alfred) に関する記述の一部を読解しました.デーン人(ヴァイキング)の侵略に対抗するため,大王自ら従来の倍の大きさを誇る長船(ロングシップ)の建造を命じたエピソードです.アングロサクソン王国を死守した英雄としてのアルフレッド王の戦いの準備について,古英語の原文を通じて受講者の皆さんと味わいました.
 夏期クールの第2回は,8月22日(土)に「riddle を探って古英語原文の世界へ」と題して開講されます.古英語のなぞなぞ文化とこの単語の語誌に迫る予定です.ぜひ朝カルのこちらの公式ページよりお申込みください.

 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

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2026-08-03 Mon

■ #6307. 『英語語源ハンドブック』特設HPがリニューアル [hee][lp][helkatsu][hel_education]


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 1年前の今日,「#5942. 『英語語源ハンドブック』のランディングページ (LP) を作成しました --- 7月29日の重版出来記念」 ([2025-08-03-1]) の記事を公開しました.この1年間,『英語語源ハンドブック』は好評をいただき,ハンドブックをめぐる環境も変化してきました.そこで,本書の特設HPをリニューアルしました.
 単なる書籍紹介のための特設HPという枠組みを超えて,アプリ,公式コンテンツ,読者コミュニティ,そして関連書籍が有機的につながり合う『英語語源ハンドブック』エコシステムのポータルサイトへと進化を遂げてのリニューアルとなります.
 今回の特設HPの改変・追加ポイントは多岐にわたりますが,特にアピールしたい要点をいくつか紹介します.

 ・ 物書堂アプリ版(iOS)発売 & 公式無料特典の集約:デジタルならではの検索・コピー機能にご注目ください.さらに本書掲載の4,083語・表現を網羅した「公式索引データ(Excel/PDF)」の無料配布や,最新正誤表へも案内します.
 ・ 広がる「読者の輪(hel活・教育実践)」のアーカイブ化:刊行後に読者,教育者,研究者の皆さんがウェブ上で展開してくださったコンテンツ群を,カテゴリ整理しました.sorami さんやみーさんによる note 連載,ykagata さん,り~みんさんによる他言語比較,天野優未さん,やるせな語学さん,khelf の寺澤志帆さんらによる専門的・実践的アプローチなど,熱量あふれるhel活の広がりを一覧できます.
 ・ 学びのロードマップ「英語史の塔 (Tower of HEL)」の新設: 『はじめての英語史』,『英語語源ハンドブック』,『英語語源辞典』,『古英語・中英語初歩』という研究社の英語史4書籍の相互関係を示しました.
 ・ Amazon カスタマーレビューの掲載:現場の中高英語教員から寄せられた「一生使える虎の巻」といった絶賛の声をはじめ,熱いメッセージを多く掲載しています.
 ・ メディア・YouTube・講座実績の集約:本書に注目した「ゆる言語学ラジオ」出演回,「いのほた言語学チャンネル」出演回,各種ラジオ出演回,朝日カルチャーセンター新宿教室での講座などを挙げています.
 ・ モバイル閲覧の完全最適化:スマホやタブレットからでも快適に巡回できるよう,レスポンシブデザインへ刷新しました.

 この1年間で本書の周りに生まれた温かい読者の輪と,広がり続ける英語史コンテンツの循環には,感謝の念に堪えません.まさに読者の皆さんとともに作り上げてきたポータルサイトだと実感しています.
 新しくなった『英語語源ハンドブック』特設HPを,ぜひ訪問してみてください.アプリ版のチェックや公式索引データのダウンロード,そして本書の通読・活用に向けて,ワクワクするような学びのヒントが見つかるはずです.

 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

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2026-07-31 Fri

■ #6304. deer と animal を『英語語源辞典』で読み解く by 寺澤志帆さん&lacolacoさん [notice][kdee][hel_education][helkatsu][khelf][terasawashiho][voicy][heldio][semantic_change][etymology][french][latin][borrowing][kenkyusha]



 今朝の Voicy heldio にて「#1888. deer と animal --- 『英語語源辞典』読み解きシリーズ by 寺澤さん&lacolacoさん」を配信しました.前回の beast 編に対応する hellog 記事「#6301. beast を『英語語源辞典』で読み解く by 寺澤志帆さん&lacolacoさん」 ([2026-07-28-1])) に続く,『英語語源辞典』 (= KDEE) 読み解きシリーズの後半戦となります.
 今回も khelf(慶應英語史フォーラム)の寺澤志帆さんと,heldio/helwa コアリスナーの lacolaco さんによる対談形式でお届けしています.研究社さんのご許可のもと,今回の精読対象である2語の辞典項目画像を以下に掲載します.


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 今回の後半戦は,beast の記事の白ダイヤ(注釈部)に突如現れた2つの重要語 deer と animal へと接続・深掘りしていく展開となりました.
 まず,lacolaco さんがリード役となり deer の項目を読み解いていきます.古英語の本来語 dēor は,もともと一般的な「動物」を意味していました.それが中英語期にフランス語から入ってきた beast に押され,やがて「鹿」という特定の動物へと語義が特殊化していった経緯が紐解かれます.lacolaco さんの精読を受け,寺澤さんが補足やコメントを加える形で解説と議論が深まっていきます.
 後半では,寺澤さんがリード役を務めて animal の項目を精読していきます.ラテン語 anima 「空気,息,命,魂」に由来するこの語が,16世紀の近代英語期に(再)導入され,やがて beast に代わって「動物」の代表表現の座に就いていくプロセスの記述を読み解きます.その後,お二人による beast, deer, animal 全体を俯瞰した総合的なディスカッションへと発展していきます.意味変化が実際にはストレートな過程ではなく,複雑な現象であるという重要な洞察も得られました.
 「本来語 deer > フランス借用語 beast > ラテン借用語 animal」という勢力図の遷移と意味変化のグラデーションが,辞書記述を通じて立体的に浮かび上がってきます.「動物」とはいったい何なのか,という悩ましい問いも立ち上がってきました.解説の最後で突如現れた古英語の家畜を表す単語 nēat に,お二人が「これは何だ?」と困惑する一幕もあり,精読のライブ感が伝わってきます.
 なお,lacolaco さんはご自身の note 過去記事でで deer と animal について整理されていますので,合わせてお読みください.

 ・ 「英語語源辞典通読ノート D (deduce-deictic)」
 ・ 「英語語源辞典通読ノート A (angle-animal)」

 語源辞典を1項目ずつ丁寧に読み解くことで,単なる単語の暗記を超えた英語史のドラマが立ち現れてきますね.ぜひお手元に『英語語源辞典』をご用意の上,または本配信をきっかけに1部入手していただき,この知的な冒険の音源をお楽しみください!


寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.



 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2026-07-30 Thu

■ #6303. 類義語,和製英語,数詞の特集 --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ第14弾 [note][hee][helkatsu][hel_education][quiz][synonym][waseieigo][japanese][numeral][article][voicy][heldio]



 heldio/helwa コアリスナーの sorami さんによる「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ」シリーズが人気です.隔週土曜日に新作が公開されていますが,今日は7月25日に公開された第14弾を紹介します.
 今回も,授業のウォームアップや親子の雑学タイム,さらには脳トレ(!?)にそのまま活用できる充実したラインナップとなっています.テーマは,意味が似ていて紛らわしい英単語の区別,和製英語の第2弾,そして数詞と不定冠詞 a/an にまつわる語源問題です.
 前半では,put on と wear の「動作」と「状態」の違い,日本語では様々な動詞に訳し分けられる wear の万能性,さらには large と big の客観/主観のニュアンスの違いや,laugh と smile の対比など,英語学習者が直面しやすい類義語・類義表現の使い分けが丁寧に扱われています.
 続く中盤では,日本語のある乗り物に由来する rickshaw のような英語化された日本語単語のトピックや,「ワイシャツ」「SNS」「ドンマイ」といった英語圏では通じにくい和製英語・カタカナ語を自然な英語でどう表現するかという実践的なクイズが並びます.
 そして後半のハイライトは,数にまつわる語源問題です.only, alone, lonely, between の中に潜む数詞の形跡を探る問いから,不定冠詞 a/an が数詞 one (古英語 ān)からどのように分化・発達したかという英語史の核心へとつながっていきます.母音・子音の環境による n の脱落について,単なる発音の便宜という誤解を解き明かす歴史的事実が紹介されており,まさに heldio の初回「#1. なぜ A pen なのに AN apple なの?」と響き合う内容となっています.
 sorami さんのクイズ・シリーズの主な典拠となっているのは,刊行から1年1ヶ月ほどが経つ『英語語源ハンドブック』(研究社)です.1ヶ月ほど前の6月30日に物書堂より『英語語源ハンドブック』アプリ版 (iOS) も発売されていますので,ぜひこちらよりチェックしてみてください.

(以下,後記:2026/08/02(Sun))
 今回紹介した第14弾については,heldio 配信回「#1890. 類義語,和製英語,数詞 --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズ第14弾」でも案内していますので,ぜひそちらもお聴きください.



 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

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