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helville - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2025-06-27 18:44

2025-06-21 Sat

#5899. 「クレイフィッシュ語」? --- ヘルメイトさんたちによる用語開発 [folk_etymology][disguised_compound][contamination][analogy][language_change][lexicology][paramorphonic_attraction][haplology][terminology][helmate][helvillian][helville][helkatsu]

 heldio/helwa のコアリスナーでヘルメイトの mozhi gengo さんが,今朝ご自身の note で「#233. 跳ねてウィンクする鳥? lapwing」を公開されている.そこで crayfish 「ザリガニ」や lapwing 「ケリ(鳥)」という英単語のメイキングに隠されている語形変化を指摘しつつ,このような語を「クレイフィッシュ語」と名付けている.民間語源 (folk_etymology) や偽装複合語 (disguised_compound) の1種といってよい形態音韻変化だが,その結果として生まれた語を「クレイフィッシュ語」と名づけているのが,とても親しみやすい.
 mozhi gengo さんによる今回の記事と提案は,同じくヘルメイトの lacolaco さんによる最新の note 記事「英語語源辞典通読ノート C (crayfish-creature)」から洞察を得たものと想像される.crayfishcray とは何か,と思うかもしれない.しかし,この語に関しては,cray が意味不明なだけでなく,fish も魚とは無関係なのだ.この語は古フランス語の crevice に由来し,中英語で crevise として借用されたが,語幹の一部である vise の方言的異形 vish が契機となって,最終的に fish と誤って解釈されるに至ったということだ.音形の似た別の既存語に引っ張られて,crevicecrayfish にまで化けてしまったということになる.ちなみに,究極的には語源が crab 「カニ」にも関わるというからおもしろい.
 何よりも lacolaco さんの話題提供,そして mozhi gengo さんの洞察という流れがたまらない.ヘルメイトさんたちが話題をつなげて,「クレイフィッシュ語」というタームの創出に至ったわけだ.
 改めてお2人の着眼点の鋭さに注目したい.ここで議論されている現象は,私が以前 hellog で取り上げた「#5840. 「類音牽引」 --- クワノミ,*クワツマメ,クワツバメ,ツバメ」 ([2025-04-23-1]) と同じものである.そこでは,日本語学における「類音牽引」という用語を使ったのだった.これは「ある語が既存の語の音に引きずられて変化する現象」を指す.先の記事では,富山県の方言における「桑の実」を表す語が,「ツバメ」という既存の語に引っ張られて「クワツバメ」へ,さらには「ツバメ」へと変化していく過程を紹介した.
 この「類音牽引」は,英語の専門用語としては直接対応するものがなく,先の記事では Fertig より confusion of similar-sounding words (61) といった説明的な句を引用するにとどまった.英語の用語不足には不満が残っていたのである.そんな折に,別のヘルメイトのり~みんさんが,note にて 「類音牽引って例えば paromophonic attraction みたいな造語は可能なのだろうか?」〔ママ〕とつぶやかれたのである.これまた見事なタームの造語である."paramorphophonic attraction" から pho の重音脱落 (haplology) を経て,"paramorphonic attraction" と持ってきたわけだ.
 ヘルメイトの皆さんは,異能集団である.

 ・ Fertig, David. Analogy and Morphological Change. Edinburgh: Edinburgh UP, 2013.

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2024-12-29 Sun

#5725. ウェブ月刊誌 Helvillian の1月号が公開されました [helwa][heldio][notice][helmate][helkatsu][helvillian][helville]


Helvillian_202501.png



 昨日12月28日(土)に『月刊 Helvillian 〜ハロー!英語史』の最新号となる第3号(2025年1月)が公開されました.
 heldio/helwa のコアリスナーからなる有志ヘルメイトによる制作で,毎月28日に,その月の仲間の皆さんによる様々な英語史活動「hel活」 (helkatsu) を,note 上でリンクを張りつつ紹介していこうという,hel活応援企画です.ぜひこちらの note アカウントをフォローしていただければと思います.
 最新号も充実のラインナップです.まずレギュラー連載の種類が多くなりました.さらに note 上で都度公開される記事の執筆者が増え,公開頻度も増してきました.川上さんによる「日曜英語史クイズ」連載も好調です.
 そして今号の特集記事は,季節感のある「英語史ゆく年くる年」(←脚韻に注目)です.2024年のhel活の振り返り,および新年に向けての抱負など,ヘルメイトさんの近況が語られています.Grace さんによる表紙のことば,および Helvillian 編集後記も読み逃しなきよう! 表紙やロゴにもこだわりが見られますので,ご注目ください.
 先日本ブログでも取り上げた「#5714. 佐久平千本ノック」 ([2024-12-18-1]) は,12月8日のイベントでしたので,今号の Helvillian でも取り上げられています.そもそも今号の表紙を飾っているのは佐久平駅なのです! イベントのホストを務めてくださったコアリスナーのみーさんによる記事「教室だより2024年12月号「堀田隆一教授ご来訪!」」や,ともに参加されたヘルメイト Grace さん の記事「佐久平オフ会(千本ノック)レポ」へもリンクが張られています.
 制作班の Grace さんLilimi さんMISATO (Galois) さんumisio さんには,年末のお忙しい折にお骨折りいただきました.改めて感謝いたします.
 過去号については本ブログや「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」でご案内しています.そちらもぜひご参照ください.

 ・ heldio 「#1282. 月刊 Helvillian 第2号が公開されました --- ヘルメイトさんによる自主的なhel活」(2024年10月29日配信)
 ・ helwa 「【英語史の輪 #204】祝・Helvillian 創刊」(2024年10月29日配信)
 ・ heldio 「#1248. 月刊誌 Helvillian 創刊! --- helwa リスナー有志によるウェブマガジン」(2024年12月3日配信)
 ・ hellog 「#5700. ウェブ月刊誌 Helvillian の創刊号・第2号が公開されています」 ([2024-12-04-1])

(以下,後記:2025/01/06(Mon))


Referrer (Inside): [2025-02-03-1] [2025-01-02-1]

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2024-12-04 Wed

#5700. ウェブ月刊誌 Helvillian の創刊号・第2号が公開されています [helwa][heldio][notice][helmate][helkatsu][helvillian][helville][hellive2024]

 9月8日(日)に khelf(慶應英語史フォーラム)の主催で heldio の12時間生配信企画「英語史ライヴ2024」が実施されました.ヘルメイト(= helwa リスナー)の方々が全国各地より東京の会場に参集し,当日のライヴに参加されたわけですが,このイベント後,ヘルメイトの「hel活」(英語史活動;helkatsu)がたいへんな勢いで盛り上がってきました.
 その1つの現われが,今回ご紹介する『月刊 Helvillian 〜ハロー!英語史』です.有志ヘルメイトによる制作で,note 上に公開されています.毎月28日発行です.これまでに創刊号(2024年10月28日)と第2号(2024年11月28日)が公開されています.ぜひこちらの note アカウントをフォローしていただければと思います.


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 Helvillian は,毎月ヘルメイトが作成した英語史系ウェブコンテンツを集積し,リンク集を作って公開するウェブマガジンです.さらに特集も組まれており,最新号第2号では,制作班がアンケートを実施した上で「ヘルメイトってどんな人」の記事を執筆されています.その他,こだわりをもって制作された表紙やロゴ,編集後記なども見所です.
 「英語史をお茶の間に」をモットーに掲げている私としては,このような素晴らしい形で有志のhel活を推進されている編集委員の Grace さんLilimi さんMISATO (Galois) さんumisio さんに改めて感謝いたします.
 創刊号・第2号の各々については「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて以下の配信回でもご案内していますので,ぜひお聴きください.これからも強力に応援していきたいと思います!

 ・ heldio 「#1282. 月刊 Helvillian 第2号が公開されました --- ヘルメイトさんによる自主的なhel活」(2024年10月29日配信)
 ・ helwa 「【英語史の輪 #204】祝・Helvillian 創刊」(2024年10月29日配信)
 ・ heldio 「#1248. 月刊誌 Helvillian 創刊! --- helwa リスナー有志によるウェブマガジン」(2024年12月3日配信)

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