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2025-02-14 Fri
■ #5772. 品詞とは何か? --- 意味のみを基準にした厳密な分類は可能か [pos][terminology][linguistics][category][semantics]
標題について「#5763. 品詞とは何か? --- ただの「語類」と呼んではダメか」 ([2025-02-05-1]),「#5765. 品詞とは何か? --- Bloomfield の見解」 ([2025-02-07-1]),「#5771. 品詞とは何か? --- 分類基準の問題」 ([2025-02-13-1]) で議論してきた.
品詞 (parts of speech, or pos) というものを設けると決めた以上,何に基づいて分類するのがベストなのかという問題が生じる(品詞を設ける必要がないというのも1つの立場だが,では言語を何で分けるのがよいのかという別の問いが生じる).昨日の記事では,伝統的な品詞分類が意味,機能,形態の3つの基準の複合に拠っていることを確認した.基準のオーバーラップが問題となるのであれば,いずれか1つに基づいた厳密な理論化こそが目指すべき方向となる.
では,意味(論) (semantics) に基づいた厳密な分類をするとどうなるか.『新英語学辞典』の parts of speech の項では,この試みはうまく行かないだろうと論じられている.以下に引用しよう (p. 837) .
意味,機能,形態の3種の基準のうち,どれを採用してもよいわけであるが,ある一つを基準とした場合,まず,正確に分類できるかどうか,また仮に,分類できたにしても,その分類が文法記述に有効かどうかを考えなければならない.例えば,意味を基準に分類してみると,品詞間の境界を明確に区別することが困難であり,さらにもしあえて分類したとしても,その分類が文法記述には余り有益にはならないであろう.例えば,arrive と arrival を同じ品詞に入れたとすると,その用法について記述しようとすれば,その分類は,語形成とか,節から句への転換とかいう場合を除いては全く無意味になろう.このように意味基準の品詞分類の無益さから,次に機能,形態を基準にした分類が考えられる.
意味による分類は,言うまでもなく意味論としてはおおいに意義があるのだが,品詞を区切る基準としては有益ではないようだ.とすると,品詞というのは,そもそも意味が関わる余地が少ないということになるのだろうか.
・ 大塚 高信,中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.
2025-02-13 Thu
■ #5771. 品詞とは何か? --- 分類基準の問題 [pos][terminology][linguistics][history_of_linguistics][category][structuralism]
「#5763. 品詞とは何か? --- ただの「語類」と呼んではダメか」 ([2025-02-05-1]) と「#5765. 品詞とは何か? --- Bloomfield の見解」 ([2025-02-07-1]) で品詞論を紹介してきた.今回は『新英語学辞典』の parts of speech の項を参照しながら,英語の伝統的な8品詞の分類基準について考えてみる.
英語の伝統的な8品詞は,意味,機能,形態の3つの分類基準がごちゃ混ぜになった分類であり,理論的には問題があるとされる.まず,名詞,形容詞,動詞,間投詞については,主に意味的な基準で分けられているといってよい.もちろん意味的な基準といっても微妙なケースはいくらでもある.英語で white は,日本語では「白」という名詞にも,「白い」という形容詞にも相当し,意味的には互いに限りなく近い.同様に,分詞は形容詞と動詞の合いの子といってよいが,合いの子からみればいずれにも意味的に近い.さらに,以上4品詞の分類については形態的な基準も少なからず関わっており,意味的な基準だけで語れるわけではない.間投詞は他と比べて意味的な自律性があるといえそうだが,これもまだ検討の余地があるかもしれない.
一方,代名詞,副詞,接続詞は機能的な基準による分類だ.ただし,言語において「機能的」とのラベルはカバーする範囲が非常に広い.かりに「統語的」と狭めておけば,それなりに説明できるかもしれないが,グレーゾーンは残る.副詞や接続詞は統語的に決定できそうだが,代名詞は統語論的機能と同時に語用論的機能も帯びており,「機能的」のカバー範囲をもっと広めに設定しておく必要があるようにも思われる.
最後に前置詞はどうだろうか.基本的には統語的な機能の観点からの分類といってよさそうだが,意味的な考慮が入っていないとはいえない.like や worth は後ろに「目的語」らしきものをとる点で統語的には前置詞的な振る舞いを示すが,比較的中身のある語彙的意味をもっている点では形容詞ぽい.
品詞間の境目が明確でないという問題自体は古くからあり,個々の論点が指摘されてきたが,それ以前に3つの分類基準が複雑にオーバーラップしているという本質的な課題を抱えているのである.
・ 大塚 高信,中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.
2025-02-12 Wed
■ #5770. 「hel活単語リレー」の現時点での経路 [word_play][radio_broadcast][helmate][helkatsu][ewlr][heltalk][link]
「#5757. 「hel活単語リレー」(仮題)」 ([2025-01-30-1]) で紹介した stand.fm(スタエフ)での遊び「hel活単語リレー」 (English Word-Lore Relay) が,その後も順調に継続しています.ヘルメイトから参入者が増えてきて,賑やかになってきました.
これまでのリレーの流れを SVG で描いてみました.各ノードをクリックすると,対応するスタエフ配信回へ飛べるようになっています.
目下「hel活単語リレー」に参加・応援してくださっているヘルメイト9名を紹介します(9名は上の図の各ノードで色分けされています).
・ ari さんによる「ari ラジ」
・ umisio さんによる「しおやのめ」
・ 川上さんによる「川上チャンネル」
・ Grace さんによる「ただいま~ことばとともに~」
・ 堀田隆一による「英語史つぶやきチャンネル (heltalk)」
・ みーさんによる「みーチャンネル」
・ mozhi gengo さんによる「கதை மொழி 〜かたいもじ〜」
・ り~みんさんによる「り~みんチャンネル」
・ Lilimi さんによる「りりみの音」
こちらのリレー,ぜひ続けていきましょう!
2025-02-11 Tue
■ #5769. 堀田隆一による英語史関連の音声配信プラットフォームの現在地まとめ [radio_broadcast][voicy][heldio][helwa][helkatsu][hel_education][heltalk][helsta][youtube]
本ブログの姉妹版・音声版として Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」を毎朝6時に配信しています.2021年6月2日に配信を始めてから,hellog 同様に毎日欠かさずに英語史の話題をお届けしてきました.
音声配信の heldio は,私の英語史活動こと「hel活」 (helkatsu) の最も重要なベースの1つとして軌道に乗ってきており,「英語史をお茶の間に」という趣旨に賛同して協力してくださるコアリスナーの方々にも恵まれ,(毎日配信なので苦しくも)楽しいhel活ライフを送っています.
heldio は Voicy という音声配信プラットフォームにて展開していますが,2024年7月21日より別の音声配信プラットフォーム stand.fm(スタエフ)の「英語史つぶやきチャンネル (heltalk)」というチャンネルにて,heldio の約3年遅れの再放送をお届けしています.さらに,この stand.fm を基点に,様々な音声・動画プラットフォーム (Podcast) で同コンテンツをマルチ配信しています.コンテンツの内容は同一ですが,ご自身のお好きなプラットフォームで heldio の英語史の話題をアーカイヴで聴くことができるようになっていますので,いずれもご利用ください.以下に掲載します.
ただし,現在毎朝お届けしている最新コンテンツは,Voicy heldio からのアクセスのみに限定されていますので,そちらからお聴きください.同様に,Voicy heldio のプレミアムリスナー限定配信「英語史の輪 (helwa)」やその他の有料配信も,Voicy プラットフォームからのみのアクセスとなりますのであしからず.
【 現在進行中の毎日の音声配信のソース heldio/helwa 】
・ Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」(毎朝6時配信)
・ Voicy プレミアムリスナー限定配信「英語史の輪 (helwa)」(毎週火木土の午後6時配信;月額800円)
【 上記 heldio の約3年遅れの再放送(毎日配信) 】
・ stand.fm 「英語史つぶやきチャンネル (heltalk)」
・ YouTube Podcast 版
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・ Amazon Music 版
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【 上記の再放送の文字起こしサービス付き音声プラットフォーム 】
・ Listen 版
お好きなプラットフォームで「毎日」英語史の世界を堪能していただければ.
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2025-02-10 Mon
■ #5768. 2024年度に提出された卒業論文と修士論文の題目 [hel_education][sotsuron][shuron][khelf][seminar][link]
今年度,慶應義塾大学文学部英米文学専攻の堀田ゼミより13本の卒業論文と1本の修士論文が提出されました.以下,各々の題目を一覧します.私の英語史のゼミでどんなことが研究テーマとなるのかが伝わると思います.
[ 卒業論文 ]
・ The Shifts in Australian Accents: Tracing Changes Through Media Narratives
・ The Characteristics of the Suffix -ive: with Special Attention to Its Noun-Forming Function
・ De-pluralization of Data: A Synchronic and Diachronic Research on Latin-or-Greek Plurals in English
・ Productivity of Suffixes and Their Relationship with Hyphens: A Comparative Analysis across Genres
・ Complexity as a Motivating Factor behind the Choice of more or -er in Comparative Alternation
・ The Changes of Prepositional Verbs Born in the 20th Century: A Case Study of Adjust to, Aim for, Argue about, Complain about and Concentrate on.
・ The Decline of "May" in American English: Simplification as a Driving Force
・ A Study on the Polysemy of Fast through a Diachronic Analysis
・ The Varying Patronymic Surnames in England: Focusing on bare-form, s-form, and son-form
・ Changing Proverbs: Insights into the Use of English Proverbs
・ Analyzing the Stereotype of English Dialect: A Case Study of The TV Corpus, Interview.
・ Relationship between Slang and Its Speaker
・ The Linguistic Community of Singapore: Changes in Public Perception of Singlish After the Launch of Speak Good English Movement in 2000
[ 修士論文 ]
・ The Diffusion of Etymological Spellings in Early Modern English: Reference to the Latin Prefix Ad''- and Analogical Changes
今年度のゼミでも英語史・英語学に関する多様なテーマで研究がなされました.形態論,統語論,意味論,語用論,語法研究,名前学,社会言語学など,関心が多岐にわたっています.例年よりも文法研究が多めだったように思います.
過年度のゼミ卒業論文の題目についてはこちらの記事セットあるいは sotsuron をどうぞ.英語史分野のテーマ探しのヒントとなるかと思います.
ゼミ生はみな khelf (慶應英語史フォーラム)のメンバーです.khelf の英語史活動報告は以下で行なっていますので,ぜひ訪れてフォローなどしていただければ.
・ khelf 公式ホームページ
・ khelf 公式 X アカウント @khelf_keio
・ khelf 公式 Instagram アカウント @khelf_keio
2025-02-09 Sun
■ #5767. 『CNN English Express』2025年2月号の「特集 英語の新語30」 [voicy][heldio][asakaru][neologism][lexicology][word_formation][kikuchi_shota]

菊地翔太先生(専修大学)が1月21日付で公開された最新の note 記事「英語の新語30 ---『CNN English Express 2025年2月号』特集の紹介」に触発されて,同号を入手しました.ちょうど現代英語の新語に関する朝カル講座のための資料を探していたところだったこともあり,特集をありがたく楽しく読むことができました.菊地先生,ありがとうございます! 同誌2月号はこちらより入手できます.
特集で取り上げられた新語30語は雑誌編集部による選定ということで,選定基準は詳しく書かれていませんが,昨年中に多用され,今年も引き続き頻繁に使用されていくだろう単語がピックアップされているものと想定されます.以下の5つの分野で仕分けされています.
【環境・科学・健康】 heat dome, zero-dose, autumn sneezing syndrome, popcorn brain, anthrobot, decel
【経済・ビジネス】 greedflation, neobank, digital twin, employee experience, bag holder, wanderpreneur
【社会・家庭】 situationship, porch piracy, Barbiecore, anti-airport dad, range anxiety, bed rotting
【ネット関係・デジタル関連】 prompt, For You page, ELI5, doomscrolling, chronically online, enshittification
【スラング・若者言葉】 girl dinner, cap, bussin', brat, cash grab, the ick
各表現の解説と例文は,雑誌の特集に直接当たっていただければと思いますが,読者の皆さんは,どれくらいご存じでしたか? 私は多くを知らず,不勉強を思い知らされました.これを機に現代の新語に関心を寄せていきたいと思います.なお,この貴重な情報は,昨日予定通り開講された朝カル講座で活用することができました.
同雑誌との関連では,ちょうど6年前に「#3542. 『CNN English Express』2月号に拙論の英語史特集が掲載されました」 ([2019-01-07-1]) と題して記事を書いています.ぜひそちらもお訪ねください.
・ 「特集 英語の新語30」『CNN English Express』2025年2月号,朝日出版社,2025年.33--43頁.
2025-02-08 Sat
■ #5766. 「好きな英語の接尾辞を教えてください!」 --- 一昨日の heldio 配信回 [suffix][voicy][heldio][helwa][helkatsu][word_formation][morphology][lexicology][affixation]
一昨日の Voicy heldio は「#1348. 好きな英語の接尾辞を教えてください!」と題して,リスナーの皆さんに「推し接尾辞」をコメント欄で寄せてもらう,参加型hel活の回をお届けしました.この2日間で30件ほどのコメントが寄せられ,各リスナーのお気に入りの,あるいは気になる接尾辞が明らかになりつつあります.
そもそも英語の接尾辞 (suffix) って,何があったっけ? という反応が返ってきそうです.その決定版となる一覧はありませんが,本ブログでは以下の記事で接尾辞等を列挙してきたことがありますので,参考にしていただければ.
・ 「#5677. 『語根で覚えるコンパスローズ英単語』の接辞リスト(129種)」 ([2024-11-11-1])
・ 「#1478. 接頭辞と接尾辞」 ([2013-05-14-1])
・ 「#5718. ギリシア語由来の主な接尾辞,接頭辞,連結形」 ([2024-12-22-1])
緩めに定義すれば,接尾辞とは既存の単語の最後に付される何らかの意味・機能をもったパーツとなります(逆に単語の最初に付されるものは接頭辞 (prefix) です).しかし,ものによっては接尾辞なのか,そうでないのかを,形態論や音韻論の観点から厳密に仕分けることが難しいケースもあると思います(この辺りの突っ込んだ話題については,一昨日のプレミアム配信「【英語史の輪 #247】今朝の「推し接尾辞」お題(生配信)」で触れました).
今回はややこしい点は横に置いておき,あたなの好きな接尾辞を1つでも2つでも挙げてもらえれば.コメント欄は常にオープンしていますので,さらに多くの回答が集まってくることを期待しています.
振り返ってみれば,以前にも似たような heldio 企画を楽しんだことがありました.そのときは「推し前置詞」を募ったのですが,以下の通り,おおいに盛り上がりました.
・ 「#5516. あなたの「推し前置詞」は何ですか?」 ([2024-06-03-1])
・ 「#5517. 大学生に尋ねました --- あなたの「推し前置詞」は何ですか?」 ([2024-06-04-1])
・ 「#5578. 「推し前置詞」で盛り上がった helwa 配信回のスレッドを公開」 ([2024-08-04-1])
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最終更新時間 | 2025-02-14 07:37 |
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