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2024-10-04 Fri
■ #5639. 朝カルシリーズ講座の第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」をマインドマップ化してみました [asacul][oe][mindmap][notice][kdee][etymology][hel_education][lexicology][vocabulary][heldio][link]
7月27日に開講した,標記のシリーズ講座第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」について,その要旨を markmap というウェブツールによりマインドマップ化しました(画像としてはこちらからどうぞ).受講された方は復習用に,そうでない方は講座内容を垣間見る機会としてご活用ください.
シリーズ第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」については hellog と heldio の過去回でも取り上げていますので,ご参照ください.
・ hellog 「#5560. 7月27日(土)の朝カル新シリーズ講座第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」のご案内」 ([2024-07-17-1])
・ hellog 「#5571. 朝カル講座「現代の英語に残る古英語の痕跡」のまとめ」 ([2024-07-28-1])
・ heldio 「#1140. 7月27日(土),朝カルのシリーズ講座第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」が開講されます」
シリーズ過去回のマインドマップについては,以下を参照.
・ 「#5625. 朝カルシリーズ講座の第1回「英語語源辞典を楽しむ」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-20-1])
・ 「#5629. 朝カルシリーズ講座の第2回「英語語彙の歴史を概観する」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-24-1])
・ 「#5631. 朝カルシリーズ講座の第3回「英単語と「グリムの法則」」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-26-1])
次回の朝カル講座から,秋期クールに入ります.10月26日(土)17:30--19:00に開講予定です.第7回「英語,フランス語に侵される」と題し,いよいよ英語語彙史上に強烈なインパクトを与えたフランス語が登場します.ご関心のある方は,ぜひ朝日カルチャーセンター新宿教室の「語源辞典でたどる英語史」のページよりお申し込みください.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
2024-10-03 Thu
■ #5638. 形容詞補文として to 不定詞が続く6つのタイプ --- LGSWE より [infinitive][syntax][adjective][complementation][construction]
今年第3四半期にお届けしてきた heldio 配信回のリスナー投票イベントを開催中.投票会場は10月8日(火)23:59 までオープンしています.1人10票まで投票できます!
「#5633. 形容詞補文として to 不定詞が続く7つのタイプ --- Quirk et al. より」 ([2024-09-28-1]) に引き続き,同構文について.別の文法書を参照すると,異なる分類がなされている.今回は LGSWE (= Longman Grammar of Spoken and Written English) の §9.4.5.2 を参照した.ここでは問題の形容詞の意味にしたがって,6タイプが区別されている.
9.4.5.2 Adjectives taking post-predicate to-clauses
CORPUS FINDINGS
- Only one adjectival predicate is notably common controling to-clauses in post-predicate position: (un)likely. This form occurs more than 50 times per million words in the LSWE Corpus.
- Other adjectival predicates occurring more than ten times per million words in the LSWE Corpus are: (un)able, determined, difficult, due, east, free, glad, hard, ready, used, (un)willing.
- Other adjectival predicates attested in the LSWE Corpus:
Degree of certainty: apt, certain, due, guaranteed, liable, (un)likely, prone, sure
Ability or willingness: (un)able, anxious, bound, careful, competent, determined, disposed, doomed, eager, eligible, fit, greedy, hesitant, inclined, keen, loath, obliged, prepared, quick, ready, reluctant, (all) set, slow, (in)sufficient, welcome, (un)willing
Personal affective stance: afraid, amazed, angry, annoyed, ashamed, astonished, careful, concerned, content, curious, delighted, disappointed, disgusted, embarrassed, free, furious, glad, grateful, happy, impatient, indignant, nervous, perturbed, pleased, proud, puzzled, relieved, sorry, surprised, worried
Ease or difficulty: awkward, difficult, easy, hard, (un)pleasant, (im)possible, tough
Evaluation: bad, brave, careless, crazy, expensive, good, lucky, mad, nice, right, silly, smart, (un)wise, wrong
Habitual behavior: (un)accustomed, (un)used
ここでは,それぞれのタイプの形容詞が用いられる場合に to 不定詞がどのような意味役割を担っているのか,という点については触れられていない.しかし,LGSWE の続く箇所にさらなる解説があるので,ぜひご参照を.
・ Biber, Douglas, Stig Johansson, Geoffrey Leech, Susan Conrad, and Edward Finegan, eds. Longman Grammar of Spoken and Written English. Harlow: Pearson Education, 1999.
2024-10-02 Wed
■ #5637. heldio 2024年第3四半期のベスト回を決めるリスナー投票 --- 10月8日までオープン [voicy][heldio][notice][link][ranking][hellive2024]
上記の通り,本ブログの音声版・姉妹版ともいえる毎朝配信の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」より,今年第3四半期にお届けしてきた配信回のなかからベスト回を決めるリスナー投票イベントを開催中です.1人10票まで投票できます.投票会場は10月8日(火)23:59 までオープンしていますので,この機会に聴き逃した過去配信回などを聴取いただき,マイベストの10件をじっくり選んでいただければと思います.
各配信回へのアクセスは,音声コンテンツ一覧よりどうぞ.7月1日配信の「#1128. コメント返し 2024/07/01(Mon)」 から9月30日配信の「#1219. 「はじめての古英語」第10弾 with 小河舜さん&まさにゃん --- 「英語史ライヴ2024」より」までの92回分が投票の対象となります.
過去のリスナー投票企画については,ranking の記事をご覧ください.
昨日,同じ投票を呼びかける「#1220. heldio 2024年第3四半期のベスト回を決めるリスナー投票 --- 10月8日までオープン」を配信しました.皆さん,奮ってご投票ください.
2024-10-01 Tue
■ #5636. 9月下旬,Mond で10件の疑問に回答しました [mond][sobokunagimon][hel_education][notice][link][helkatsu][adjective][slang][derivation][demonym][perfect][grammaticalisation][h][word_order][syntax][final_e][subjectification][intersubjectification][personal_pronoun][gender]
10月が始まりました.大学の新学期も開始しましたので,改めて「hel活」 (helkatsu) に精を出していきたいと思います.9月下旬には,知識共有サービス Mond にて10件の英語に関する質問に回答してきました.今回は,英語史に関する素朴な疑問 (sobokunagimon) にとどまらず進学相談なども寄せられました.新しいものから遡ってリンクを張り,回答の要約も付します.
(1) なぜ英語にはポジティブな形容詞は多いのにネガティヴな形容詞が少ないの?
回答:英語にはポジティヴな形容詞もネガティヴな形容詞も豊富にありますが,教育的配慮や社会的な要因により,一般的な英語学習ではポジティヴな形容詞に触れる機会が多くなる傾向がありそうです.実際の言語使用,特にスラングや口語表現では,ネガティヴな形容詞も数多く存在します.
(2) 地名と形容詞の関係について,Germany → German のように語尾を削る物がありますが?
回答:国名,民族名,言語名などの関係は複雑で,どちらが基体でどちらが派生語かは場合によって異なります.歴史的な変化や自称・他称の違いなども影響し,一般的な傾向を指摘するのは困難です.
(3) 現在完了の I have been to に対応する現在形 *I am to がないのはなぜ?
回答:have been to は18世紀に登場した比較的新しい表現で,対応する現在形は元々存在しませんでした.be 動詞の状態性と前置詞 to の動作性の不一致も理由の一つです.「現在完了」自体は文法化を通じて発展してきました.
(4) 読まない語頭以外の h についての研究史は?
回答:語中・語末の h の歴史的変遷,2重字の第2要素としてのhの役割,<wh> に対応する方言の発音,現代英語における /h/ の分布拡大など,様々な観点から研究が進められています.h の不安定さが英語の発音や綴字の発展に寄与してきた点に注目です.
(5) 言語による情報配置順序の特徴と変化について
回答:言語によって言語要素の配置順序に特有の傾向があり,これは語順,形態構造,音韻構造など様々な側面に現われます.ただし,これらの特徴は絶対的なものではなく,歴史的に変化することもあります.例えば英語やゲルマン語の基本語順は SOV から SVO へと長い時間をかけて変化してきました.
(6) なぜ come や some には "magic e" のルールが適用されないの?
回答:come,some などの単語は,"magic e" のルールとは無関係の歴史を歩んできました.これらの単語の綴字は,縦棒を減らして読みやすくするための便法から生まれたものです.英語の綴字には多数のルールが存在し,"magic e" はそのうちの1つに過ぎません.
(7) Let's にみられる us → s の省略の類例はある? また,意味が変化した理由は?
回答:us の省略形としての -'s の類例としては,shall's (shall us の約まったもの)がありました.let's は形式的には us の弱化から生まれましたが,機能的には「許可の依頼」から「勧誘」へと発展し,さらに「なだめて促す」機能を獲得しました.これは言語の主観化,間主観化の例といえます.
(8) 英語にも日本語の「拙~」のような1人称をぼかす表現はある?
回答:英語にも謙譲表現はありますが,日本語ほど体系的ではありません.例えば in my humble opinion や my modest prediction などの表現,その他の許可を求める表現,著者を指示する the present author などの表現があります.しかし,これらは特定の語句や慣用表現にとどまり,日本語のような体系的な待遇表現システムは存在しません.
(9) 英語史研究者を目指す大学4年生からの相談
回答:大学卒業後に社会経験を積んでから大学院に進学するキャリアパスは珍しくありません.教育現場での経験は研究にユニークな視点をもたらす可能性があります.研究者になれるかどうかの不安は多くの人が抱くものですが,最も重要なのは持続する関心と探究心,すなわち情熱です.研究会やセミナーへの参加を続け,学びのモチベーションを保ってください.
(10) 英語の人称代名詞における性別区分の理由と新しい代名詞の可能性は?
回答:1人称・2人称代名詞は会話の現場で性別が判断できるため共性的ですが,3人称単数代名詞は会話の現場にいない人を指すため,明示的に性別情報が付されていると便利です.現代では性の多様性への認識から,新しい共性の3人称単数代名詞が提案されていますが,広く受け入れられているのは singular they です.今後も要注目の話題です.
以上です.10月も Mond より,英語(史)に関する素朴な疑問をお寄せください.
2024-09-30 Mon
■ #5635. easy-to-please 構文にみられる中動態的性質 [middle_voice][passive][voice][semantic_role][infinitive][syntax][adjective][complementation][construction][adverb]
今回は,昨日の記事「#5634. eager-to-please 構文の古さと準助動詞化の傾向」 ([2024-09-27-1]) で触れなかったもう1つの構文,easy-to-please 構文について,その歴史的な特徴を考えてみます.
Fischer et al. (171--72) によれば,easy-to-please 構文には態 (voice) に関わる重要な問題がつきまといます.
The easy-to-please construction has undergone a number of changes. From around 1400, two slightly more complex variants of the construction are found. One has a stranded preposition in the subordinate clause, as in (28a). The other has a passive infinitive (28b).
(28) a þei fond hit good and esy to dele wiþ also
'They found it good and easy to deal with as well.' (Curson(Trin-C)16557)
b the excercise and vce [= 'use'] of suche ... visible signes [...] is good and profitable to be had at certein whilis [= 'times'] (Pecock,Represser,Ch.XX)
(28a) はまさに現代の easy-to-please 構文ですが,(28b) は不定詞部分が to be had のように受動態となっている部分に注意が必要です.この違いは何なのでしょうか.この論点について,現代英語に引きつけて具体的に解説しましょう.現代の He is easy to please. において,文の主語 he と不定詞として現われる動詞 please の統語意味論的な関係は,"he is pleased" あるいは "someone pleases him" ということになります.前者をとれば,能動態ではなく受動態の解釈となりますが,不定詞として現われる動詞自体は受動態の標示を帯びていないために,形式と機能に食い違いが生じてしまっています.この態の観点からみると,上記の (28a) よりも (28b) のほうが理に適っているように思われますが,どうなのでしょうか.
Fischer et al. (172) では,次のように議論が続きます.
The development in (28b) is reminiscent of that in the modal passive . . . , and some degree of mutual influence seems likely. Curiously, however, passive marking eventually became obligatory in the modal passive, but not so in the easy-to-please construction, where formal passives never became systematic and sometimes even disappeared again, as shown by the now-ungrammatical example in (29a). Fischer (1991: 175ff) suggests that formally passive infinitives tend to occur with easy-type adjectives when the relation between adjective and infinitive rather than between adjective and subjective is stressed (cf. 29a). In such cases, an adverb rather than an adjective is also often found, as in (29b).
(29) a when once an act of dishonesty and shame has been deliberately committed, the will having been turned to evil, is difficult to be reclaimed (1839, COHA)
b Jack Rapley is not easily to be knocked off his feet (1819, Fischer ibid.)
From this, one might speculate that passive forms failed to fully establish themselves in this context because the meaning the construction conveys is not always purely passive. As (30) illustrates, the subject of many easy-to-please constructions combines both patient-like and agent-like qualities. While the subject undergoes the action, its intrinsic qualities also contribute to how that action unfolds. The construction could therefore be analysed as marking middle voice.
(30) more experienced opponents ... can sometimes be tricky to play against. (BNC)
easy-to-please 構文と中動態という新たな関係が持ち上がってきた.
・ Fischer, Olga, Hendrik De Smet, and Wim van der Wurff. A Brief History of English Syntax. Cambridge: CUP, 2017.
・ Fischer, Olga. "The Rise of the Passive Infinitive in English". Historical English Syntax. Ed. D. Kastovsky. Berlin: Mouton de Gruyter, 1991. 141--88.
2024-09-29 Sun
■ #5634. eager-to-please 構文の古さと準助動詞化の傾向 [infinitive][syntax][adjective][complementation][construction]
昨日の記事「#5633. 形容詞補文として to 不定詞が続く7つのタイプ --- Quirk et al. より」 ([2024-09-28-1]) で「形容詞 + to 不定詞」の様々なパターンを確認しました.7タイプへの区分はかなり細かいものですが,ここでは Fischer et al. に従い,大雑把粗に2タイプに区分しましょう.標題にあるとおり,eager-to-please 構文と easy-to-please 構文の2種類です (170--71) .
In the so-called eager-to-please construction in (22a), the main clause subject functions also as agent-argument of the infinitive. In the easy-to-please construction, the main clause subject corresponds to the patient-argument of the infinitive. The easy-to-please construction is therefore somewhat reminiscent of the modal passive . . . expressing a passive-like meaning without passive marking.
(22) a [Eager-to-please construction]
Andropulos was a bit reluctant to go (BNC)
b [Easy-to-please construction]
He was lying in wait in the hallway, where he was impossible to overlook (BNC)
いずれの構文も歴史は古く,すでに古英語より文証されます (171) .
Both the eager-to-please construction and the easy-to-please construction were already available in OE, as shown in (24) and (25), respectively. . . .
(24) ic eom gearo to gecyrrenne to munuclicere drohtnunge
I am ready to turn to monastic way-of-life (ÆCHom.I,35 484.251)
'I am ready to turn to a monastic way of life.'
(25) ðis me is hefi to donne
This to-me is heavy to do (Mart.5(Kotzor)Se.16,A.14)
'This is hard for me to do.'
おもしろいのは,前者の eager-to-please 構文は,古英語から安定的に文証されるのですが,後に法的な意味を帯びて,準助動詞へ発展したものが出てきていることです.Fischer et al. より続けて引用します (171) .
The eager-to-please construction has been essentially stable throughout the history of the language. It is interesting to note, however, that some adjectives in the construction developed into modal markers. A straightforward example is bound, originally meaning 'under a binding obligation' but now typically used to mark epistemic necessity.
ここでは be bound to の例が示唆されていますが,ほかの箇所では be sure to や be certain to にも言及があります.昨日の記事の内容とあわせて,味わっていただければ.
・ Fischer, Olga, Hendrik De Smet, and Wim van der Wurff. A Brief History of English Syntax. Cambridge: CUP, 2017.
2024-09-28 Sat
■ #5633. 形容詞補文として to 不定詞が続く7つのタイプ --- Quirk et al. より [adjective][complementation][infinitive][syntax][construction][semantics][helmate][helwa]
Quirk et al. (1226--27; §16.75) に,"Adjective complementation by a to-infinitive clause" と題する項がある.
We distinguish seven kinds of construction in which an adjective is followed by a to-infinitive clause. They are exemplified in the following sentences, which are superficially alike:
(i) Bob is splendid to wait.
(ii) Bob is slow to react.
(iii) Bob is sorry to hear it.
(iv) Bob is hesitant to agree with you.
(v) Bob is hard to convince.
(vi) The food is ready to eat.
(vii) It is important to be accurate.
In Types (i--iv) the subject of the main clause (Bob) is also the subject of the infinitive clause. We can therefore always have a direct object in the infinitive clause if its verb is transitive. For example, if we replace intransitive wait by transitive build in (i), we can have: Bob is splendid to build this house.
For Types (v--vii), on the other hand, the subject of the infinitive is unspecified, although the context often makes clear which subject is intended. In these types it is possible to insert a subject preceded by for; eg in Type (vi): The food is ready (for the children) to eat.
いずれの構文も表面的には「形容詞 + to 不定詞」と同様だが,それぞれに固有の統語的,意味的な特徴がある.要調査ではあるが,おそらく歴史的発達の経路も互いに大きく異なるものが多いだろう.
目下 helwa リスナーからなる Discord 上の英語史コミュニティ内部における「ヌマる!英文法」チャンネルにて,He is sure to win the game. のような構文が話題となっている.この「sure + to 不定詞」の構文は,Quirk et al. によれば (iv) タイプに属するという.理解は必ずしもたやすくない.
・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.
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最終更新時間 | 2024-10-04 14:37 |
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