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最終更新時間: 2025-10-02 03:36

2025-10-02 Thu

#6002. ウェブ月刊誌 Helvillian の10月号が公開されました [helwa][heldio][notice][helmate][helkatsu][helvillian][link][hee][helwa_contents][khelf][hee]


Helvillian_202510.png



 9月28日,helwa メンバー有志による毎月の hel活 (helkatsu) の成果をまとめたウェブマガジン『月刊 Helvillian 〜ハロー!英語史』の2025年10月号が公開されました.今号で通算第12号となり,創刊から1年間を駆け抜けたことになります.おめでとうございます!
 今号は khelf(慶應英語史フォーラム)会長の青木輝さんによる「表紙のことば」から始まり,各執筆者の知的好奇心が凝縮された,たいへん読み応えのある号となっています.
 今号の特集は「ことばにまつわる大人の自由研究」,あるいは【helwaコンテンツ2025】です.ari さんは restaurant の語源に迫り,Grace さんは a gob ofgobs of の文法化に注目しています.川上さんは Poor as they are, they are generous. にみられる as の用法を,lacolaco さんは crocodile の綴字の変異を,Lilimi さんは登山用語の社会言語学をそれぞれ論じています.mozhi gengo さんは Tokyoite などにみられる接尾辞の記事を,umisio さんは heldio をきっかけとした本との再会や朝ドラを題材とした話題を綴っています.川上さんによる人気シリーズ「「英語のなぜ」やってます通信」も健在です.
 『英語語源ハンドブック』に取材した記事も豊富です.ari さんは「HEEシリーズ」として,また ykagata さんも「『英語語源ハンドブック』にこじつけて学ぶドイツ語」シリーズとして,豊かな話題を提供してくださっています.著者の1人として感謝を申し上げます.
 個別の寄稿も非常に充実しています.「無職さん」こと佐久間さんは,歯科医史からみた tooth 類の語源や診療科名の語源など,専門分野と英語史を結びつけたユニークな記事を3本寄せています.ari さんは先の特集・連載に加えて,日常的な話題から英語史クイズ,古英語学習ノートに至るまで,縦横無尽に記事をお書きです.川上さんは,法助動詞の連続がなぜ許されないかという問題に迫っています.mozhi gengo さんも,いつものように語源解き明かしを中心に知的好奇心をくすぐる記事を多数執筆されいます.
 金田拓さんによる Francis Bacon の Essays 精読ノートは必読です.umisio さんは,NHK の「チコちゃんに叱られる!」の出演者(←誰?)に関する話題を含め,いつもながらの融通無碍な記事を寄稿されています.ykagata さんによる,ドイツ語の nicht müssen に関する徹底的な調査報告も読み応えがあります.
 最後に,Grace さんによる helwa の活動報告と,umisio さんによる編集後記で今号が締めくくられています.まさに知の饗宴.ぜひ隅々までお楽しみください.
 今号もこれだけの充実した内容が揃ったのは,ひとえに編集委員として尽力されている Grace さん,Lilimi さん,Misato さん,umisio さんのおかげです.この場を借りて心より感謝申し上げます.
 今号については,heldio でも「#1584. Helvillian 10月号が公開! --- 特集は「ことばにまつわる大人の自由研究【helwaコンテンツ2025】」」としてご紹介しています.ぜひお聴きいただければ.


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2025-10-01 Wed

#6001. heldio 2025年第3四半期のベスト回を決めるリスナー投票 --- 10月8日までオープン [voicy][heldio][notice][link][ranking]


 3ヶ月に一度の恒例企画となっていますが,本ブログの音声版・姉妹版というべき毎朝配信の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」より,今年の第3四半期にお届けしてきた配信回(全92回)のなかからベスト回を決めるリスナー投票イベントを開催しています.1人10票まで投票できます.投票会場は10月7日(火)23:59 までオープンしています(あるいは以下のQRコードよりどうぞ).この機会に聴き逃した過去配信回を聴取いただき,じっくり選んでいただければと思います.


heldio 2025年第3四半期のベスト回を決めるリスナー投票





 各配信回へのアクセスは,本記事末尾の一覧,あるいは音声コンテンツ一覧よりどうぞ.7月1日配信の「#1493. 知覚動詞構文と知覚の直接性について --- 名古屋オフ会で村岡宗一郎さんと対談」 (2025/07/01) から9月30日配信の「#1584. Helvillian 10月号が公開! --- 特集は「ことばにまつわる大人の自由研究【helwa コンテンツ2025】」」 (2025/09/30) までの92回分が投票の対象となります.
 今朝,同じ投票を呼びかける「#1586. heldio 2025年第3四半期のベスト回を決めるリスナー投票 --- 10月8日までオープン」を Voicy より配信しました.そちらも合わせてお聴きください.



 過去のリスナー投票企画については,ranking の各記事をご覧ください.



 ・ 「#1493. 知覚動詞構文と知覚の直接性について --- 名古屋オフ会で村岡宗一郎さんと対談」 (2025/07/01)
 ・ 「#1494. Helvillian 7月号が公開! --- 古英語を嗜もう」 (2025/07/02)
 ・ 「#1495. do の不思議を専門家に尋ねる --- 名古屋オフ会に矢冨弘さん登場」 (2025/07/03)
 ・ 「#1496. heldio 2025年第2四半期のベスト回を決めるリスナー投票 --- 7月10日までオープン」 (2025/07/04)
 ・ 「#1497. 『英語語源ハンドブック』の重版決定 --- 昨日お昼の緊急生配信より」 (2025/07/05)
 ・ 「#1498. いきなり井上逸兵さんと生配信(のアーカイヴ)」 (2025/07/06)
 ・ 「#1499. 『英語史新聞』第12号が公開されました」 (2025/07/07)
 ・ 「#1500. that 節を語ろう --- 名古屋オフ会より生配信」 (2025/07/08)
 ・ 「#1501. 「主の祈り」で味わう古英語の文体 --- Helvillian 7月号掲載,小河舜さんによる渾身の記事」 (2025/07/09)
 ・ 「#1502. 「21」をどのように表現するか? --- 複合数詞の問題」 (2025/07/10)
 ・ 「#1503. 7月19日(土)午後,朝カルで「深堀り『英語語源ハンドブック』徹底解読術 出版記念・鼎談」を開講します」 (2025/07/11)
 ・ 「#1504. khelf メンバーによる『英語史新聞』第12号の読みどころ紹介」 (2025/07/12)
 ・ 「#1505. heldio 2025年第2四半期のリスナー投票の結果発表」 (2025/07/13)
 ・ 「#1506. 綴字と発音の乖離は歴史の遺産--- 『スペリングの英語史』より」 (2025/07/14)
 ・ 「#1507. またまた嶋田珠巳先生といっしょにコメント返し」 (2025/07/15)
 ・ 「#1508. 『The Japan Times Alpha J』の7月11日号で特別記事を掲載していただいています」 (2025/07/16)
 ・ 「#1509. Mrs. の発音はなぜ「ミスターズ」ではないのか --- khelf ゼミ生高野さんの「英語史コンテンツ」」 (2025/07/17)
 ・ 「#1510. 「辞書」雑談 by khelf メンバー6名」 (2025/07/18)
 ・ 「#1511. 言語はどのように生まれたか --- ゆる言語学ラジオの水野太貴さんの『中央公論』連載「ことばの変化をつかまえる」より」 (2025/07/19)
 ・ 「#1512. 朝カルの『英語語源ハンドブック』著者鼎談の直前収録」 (2025/07/19)
 ・ 「#1513. 「語源は思考の糧である」 --- 小塚語録より」 (2025/07/21)
 ・ 「#1514. 語源論法に要注意」 (2025/07/22)
 ・ 「#1515. 7月26日の朝カル講座 --- 皆で but について考えてみませんか?」 (2025/07/23)
 ・ 「#1516. 語源学者は複数の語源説があるとき,どのようにしてどちらが正しいと判断するのですか?」 (2025/07/24)
 ・ 「#1517. etymography 「語誌学」の妄想」 (2025/07/25)
 ・ 「#1518. 現代英語の but,古英語の ac」 (2025/07/26)
 ・ 「#1519. コメント返し 2025/07/26(Sat)」 (2025/07/27)
 ・ 「#1520. あなたの推し接続詞を教えてください」 (2025/07/28)
 ・ 「#1521. Helvillian 8月号が公開! --- 特集は「辞書からことばの世界をのぞく」」 (2025/07/29)
 ・ 「#1522. 「英語史」の講義を終えて --- 2025年度前期版」 (2025/07/30)
 ・ 「#1523. YouTube での英語史ショート動画シリーズ「helshort」をゆるゆると始めています」 (2025/07/31)
 ・ 「#1524. khelf の英語史専攻大学院生の平均注目年代は?」 (2025/08/01)
 ・ 「#1525. 本日は「プチ英語史ライヴ from 横浜」で英語史漬け」 (2025/08/02)
 ・ 「#1526. 「あなたの推し接続詞」を語る回 --- プチ英語史ライヴ from 横浜」 (2025/08/03)
 ・ 「#1527. crocodile の怪 --- lacolaco さんと語源学を語る(プチ英語史ライヴ from 横浜)」 (2025/08/04)
 ・ 「#1528. 『英語語源ハンドブック』重版出来 --- 本書のLPを作りました」 (2025/08/05)
 ・ 「#1529. あなたの『英語語源ハンドブック』の推しの項目は? (1) --- プチ英語史ライヴ from 横浜」 (2025/08/06)
 ・ 「#1530. あなたの『英語語源ハンドブック』の推しの項目は? (2) --- プチ英語史ライヴ from 横浜」 (2025/08/07)
 ・ 「#1531. あなたの『英語語源ハンドブック』の推しの項目は? (3) --- プチ英語史ライヴ from 横浜」 (2025/08/08)
 ・ 「#1532. Helvillian 8月号の紹介 by 編集委員 --- プチ英語史ライヴ from 横浜」 (2025/08/09)
 ・ 「#1533. Wulfstan 版「主の祈り」で古英語音読 --- プチ英語史ライヴ from 横浜」 (2025/08/10)
 ・ 「#1534. 10人で千本ノック --- プチ英語史ライヴ from 横浜」 (2025/08/11)
 ・ 「#1535. 笑,草,gaers を考える --- 北澤茉奈さんとの対談」 (2025/08/12)
 ・ 「#1536. 『英語語源ハンドブック』の著者の1人小塚良孝さんが ZIP-FM に出演!」 (2025/08/13)
 ・ 「#1537. I と my/me/mine は補充法 --- 『英語教育』9月号に『英語語源ハンドブック』の書評が掲載されました」 (2025/08/14)
 ・ 「#1538. 『英語語源ハンドブック』の宴 --- 「いのほた言語学チャンネル」最新回より」 (2025/08/15)
 ・ 「#1539. 8月23日の朝カル講座 --- guy で味わう英語史」 (2025/08/16)
 ・ 「#1540. リスナーの皆さんの「推し接続詞」を紹介します」 (2025/08/17)
 ・ 「#1541. 英語史を通じて接続詞はどんどん増えてきた」 (2025/08/18)
 ・ 「#1542. 川上さんの「英語のなぜ5分版」やってます通信 --- 第19弾」 (2025/08/19)
 ・ 「#1543. 今日から1週間,夏期スクーリング「英語史」」 (2025/08/20)
 ・ 「#1544. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック for 夏スク「英語史」(前編)」 (2025/08/21)
 ・ 「#1545. 「グリムの法則」は本当はラスクが見つけていた」 (2025/08/22)
 ・ 「#1546. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (62-1) The Earlier Influence of Christianity on the Vocabulary」 (2025/08/23)
 ・ 「#1547. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック for 夏スク「英語史」(後編)」 (2025/08/24)
 ・ 「#1548. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (62-2) The Earlier Influence of Christianity on the Vocabulary」 (2025/08/25)
 ・ 「#1549. 『英語語源ハンドブック』正誤表の公開,そして yes の語源」 (2025/08/26)
 ・ 「#1550. 夏スク「英語史」が終わりました」 (2025/08/27)
 ・ 「#1551. 「文藝春秋PLUS」で再び英語史をお話ししてきました」 (2025/08/28)
 ・ 「#1552. Helvillian 9月号が公開! --- 特集は「ことばにまつわる大人の自由研究」」 (2025/08/29)
 ・ 「#1553. 9月13日(土)に「英語史ライヴ2025」を開催します」 (2025/08/30)
 ・ 「#1554. 昨日の朝日サンヤツに『英語語源ハンドブック』が掲載 --- そして英語史ライヴ (live) の語源」 (2025/08/31)
 ・ 「#1555. 英語の規範はいかにしてできたのか? --- 昨日 Mond に寄せられた疑問に回答しました」 (2025/09/01)
 ・ 「#1556. khelf 寺澤志帆さんの「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」が好調です --- RSS も用意されています」 (2025/09/02)
 ・ 「#1557. 日本音声学会の音声学セミナーで「現代英語の発音と「大母音推移」」をお話しします」 (2025/09/03)
 ・ 「#1558. 川上さんの「英語のなぜ5分版」やってます通信 --- 第20弾」 (2025/09/04)
 ・ 「#1559. 10月15日に「いのほた本」が出ます! --- ご予約はちょっとお待ちいただければ」 (2025/09/05)
 ・ 「#1560. 1週間後は「英語史ライヴ2025」 --- 特設ページもご覧ください」 (2025/09/06)
 ・ 「#1561. OED の使い道を考える with 泉類尚貴さん --- プチ英語史ライヴ from 横浜」 (2025/09/07)
 ・ 「#1562. 「英語史ライヴ2025」の千本ノックのための英語に関する素朴な疑問を募集」 (2025/09/08)
 ・ 「#1563. life/live ペアの怪について」 (2025/09/09)
 ・ 「#1564. 苅部恒徳(編著)『英語固有名詞語源小辞典』(研究社,2011年)」 (2025/09/10)
 ・ 「#1565. 「英語史ライヴ2025」が明後日に迫りました --- 裏で起こっていることをチラッと」 (2025/09/11)
 ・ 「#1566. 英語史の用語辞典? --- まずは『英語学・言語学用語辞典』を紹介します」 (2025/09/12)
 ・ 「#1567. 「英語史ライヴ2025 by khelf & helwa」が始まります」 (2025/09/13)
 ・ 「#1568. 「英語史ライヴ2025」が終わった帰りの電車で --- 小河舜さん&まさにゃん」 (2025/09/14)
 ・ 「#1569. 「いのほたなぜ」予約爆撃アワー --- 「英語史ライヴ2025」より」 (2025/09/15)
 ・ 「#1570. ゼミ合宿飲み会で,継続こそがすべてという話しをしました」 (2025/09/16)
 ・ 「#1571. khelf 大学院生の研究テーマ」 (2025/09/17)
 ・ 「#1572. 「いのほたなぜ」が英語部門で第2位をマーク --- 超ざっくり英語史年表もついています」 (2025/09/18)
 ・ 「#1573. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (62-3) with Taku さん --- 「英語史ライヴ2025」より」 (2025/09/19)
 ・ 「#1574. "English" という英単語について思いをめぐらせたことはありますか? --- 9月27日の朝カル講座」 (2025/09/20)
 ・ 「#1575. おかげさまで『英語語源ハンドブック』の再重版決定! --- 用語解説の「大母音推移」を読んでみます」 (2025/09/21)
 ・ 「#1576. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック with 小河舜さん --- 「英語史ライヴ2025」より」 (2025/09/22)
 ・ 「#1577. helwa メンバー発信!中高生のあなたへ,私は今こうやって英語(外国語)とつきあっています --- 「英語史ライヴ2025」より」 (2025/09/23)
 ・ 「#1578. 川上さんの「英語のなぜ5分版」やってます通信 --- 第21弾」 (2025/09/24)
 ・ 「#1579. 「大母音推移」は解体していくのか? --- 9月28日(日)の音声学セミナーに向けて」 (2025/09/25)
 ・ 「#1580. 「ゆる言語学ラジオ」『ターゲット1900』回にお邪魔してきました」 (2025/09/26)
 ・ 「#1581. 歯科医学×英語史 with 無職さん --- 「英語史ライヴ2025」より」 (2025/09/27)
 ・ 「#1582. 『英語語源ハンドブック』にこじつけて学ぶドイツ語 with ykagata さん --- 「英語史ライヴ2025」より」 (2025/09/28)
 ・ 「#1583. alligator でワニワニパニック --- khelf 寺澤志帆さんと語る」 (2025/09/29)
 ・ 「#1584. Helvillian 10月号が公開! --- 特集は「ことばにまつわる大人の自由研究【helwaコンテンツ2025】」」 (2025/09/30)



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2025-09-30 Tue

#6000. 音声学セミナーにて「現代英語の発音と「大母音推移」」をお話ししました [notice][mindmap][gvs][phonetics][sound_change][spelling_pronunciation_gap][hel][academic_conference][vowel][diphthong]

 「#5965. 現代英語の発音と「大母音推移」 --- 9月28日(日)の午後,日本音声学会の音声学セミナーにてお話しします」 ([2025-08-26-1]) でお知らせしたとおり,一昨日9月28日(日)に青山学院大学にて,日本音声学会音声学普及委員会主催の第35回音声学セミナーにて大母音推移 (gvs) についてお話しさせていただきました.セミナー本編に続き,質疑応答のセッションも合わせて3時間近くの長丁場でしたが,対面あるいはオンラインにて多くの方々にご参加いただき,私にとってもたいへん充実した会となりました.参加者の皆さん,ありがとうございました.また,学会長の斎藤弘子先生,音声学普及委員会の林良子先生,とりわけ夏休み前より企画準備でお世話になった内田洋子先生と牧野武彦先生には感謝申し上げます.
 セミナーの概要については markmap によりマインドマップ化して整理しました(画像をクリックして拡大).


lib/phonetics_seminar_re_gvs_20250928_mindmap_large.png



 質疑応答セッションでは多くの質問をいただきましたが,時間の制限により,すべてにお答えすることができませんでした.今後,本ブログや Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 などを通じて取り上げていきたいと思います.ぜひ今後も「大母音推移」にご注目ください.

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2025-09-28 Sun

#5998. 英語史旅,hel旅,あるいは helgrimage [helgrim][helkatsu][notice][chaucer][canterbury_tales][cockney][london][johnson][blend]

 「英語語源辞典通読ノート」でおなじみの lacolaco さんが,9月23日付けで興味深い note 記事を公開された.「2025年ロンドン」 と題するその記事は,単なるロンドン旅行記ではない.「英語史」というレンズを通してロンドンとカンタベリーをめぐるという,体を張った知的なhel活 (helkatsu) の記録である.
 同記事によれば,lacolaco さんは今月半ばのロンドン滞在の折に,A History of the English Language in 100 Places をガイドブックとして,英語史にゆかりのある数々の場所を訪ね歩いたという.この本については hellog でも以下の記事などで取り上げてきた.

- 「#5956. 100の場所で英語史を学ぶ本 --- A History of the English Language in 100 Places」 ([2025-08-17-1])
- 「#5968. 「あなたが選ぶ英語史ゆかりの場所100選」はおもしろい企画になりそう --- HEL in 100 Places の序文より」 ([2025-08-29-1])

 今回の lacolaco さんの旅は,まさにこの本を実践に移した旅といえる.Geoffrey Chaucer (1340?--1400) が The Canterbury Tales の構想を練ったとされる Aldgate, Cockney (cockney) の語源となった鐘の音で知られる St Mary-le-Bow,そして Samuel Johnson が英語史上初の本格的な辞書を編纂した Dr Johnson's House など,訪問地はいずれも英語史を学ぶ者にとって胸が熱くなる場所ばかりだ.極めつけは,巡礼の最終目的地である Canterbury への日帰り旅.Chaucer の像や,大聖堂に鎮座する St. Augustine's Chair --- すなわちカンタベリー大聖堂の cathedra (司教座) そのもの --- を目の当たりにした感動が伝わってくる.
 この記事でとりわけ私の心を捉えたのは,lacolaco さんが自らを helgrim (英語史聖地巡礼者)と称していることだ.これは HEL (= History of the English Language) と pilgrim (巡礼者)を掛け合わせた混成語 (blend)である.このネーミングセンスには脱帽する.
 この素晴らしいアイデアに乗っかり,英語史の巡礼行為そのものを helgrimage (英語史旅,あるいはhel旅)と呼びたい.英語史を学び,その歴史が刻まれた土地を訪ね歩く.これは,書物と向き合うだけでは得られない,身体的な学びの形である.言語が実際に使用され,変容を遂げてきた現場の空気を吸うことで,英語史年表の各項目が,単なる知識ではなく,生きた実感として立ち上がってくるはずだ.
 英語史研究は,基本的には文献学であり,書斎にこもって写本や刊本を読んだり,PCの前で電子コーパスを分析するのが一般的だ.しかし,本来,言語は常に特定の場所と結びついている.歴史言語学が,地理学,社会学,人類学などの分野と密接に関わるのはそのためだ.helgrimage は,英語史という学問にフィールドワークの側面を与え,その魅力をさらに深めてくれる可能性を秘めている.
 これまで本ブログでは様々なhel活を提案してきたが,この helgrimage はきわめて能動的な活動といえるだろう.ロンドンやカンタベリーに限らず,ヴァイキングが足跡を残したイングランド北部,古英語の写本が眠る図書館,さらには英語が世界に展開していく拠点となった要衝など,helgrimage の目的地は世界中に存在する.
 lacolaco さんの今回の実践は,英語史の楽しみ方に新たな地平を切り開くものである.多くの helgrims がこれに続くことを願ってやまない.私も helgrimage に出かけることにしよう.

 ・ Lucas, Bill and Christopher Mulvey. A History of the English Language in 100 Places. London: Robert Hale, 2013.

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2025-09-27 Sat

#5997. 「ゆる言語学ラジオ」で『英語語源ハンドブック』が紹介されました --- 人気シリーズ「ターゲット1900」回に再出演 [hee][notice][voicy][heldio][youtube][yurugengogakuradio][etymology]



 先日,人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」にゲストとしてお邪魔しました.「accountはなぜ「口座」も「説明」も表すのか?」と題する配信回で,パーソナリティの水野さんと堀元さんとともに,英単語の語源について楽しく語り合ってきました.
 今回の企画は,大学受験用の英単語集として名高い『英単語ターゲット1900』に掲載されている単語の語源を深掘りするという,同チャンネルの人気シリーズの一環です.英語史・語源研究の専門家と認めていたただき,お招きいただきました.70分ほどの配信時間で,accord, thought, interest, account, cause, sound, individual の計7語を取り上げています.前回のターゲット1900回への出演の折には,1単語どころか1/3単語にしか注目できなかったことを考えれば,今回は大幅な改善(?)といえます.
 今回取り上げた7語はいずれも基本的な単語ですが,歴史を遡ると実に豊かな物語が隠されています.動画のタイトルにもなっている account は,「口座」「説明」「理由」などと多義ですが,「計算する」という語源的な意味に立ち返ることで,その多義性の謎が氷解します.account はラテン語の ad- + computare が元になっており,後者は com- + putare という構成です.putare 自体は「考える,計算する」が原義です.これらの要素が,古フランス語を経て語形を崩しつつ英語に入ってきた次第です.
 動画の最後では,拙著『英語語源ハンドブック』についてもご紹介いただきました.この本は,『ターゲット1900』にも収録されている類いの基本語彙のうち,とりわけ重要な約1000語を対象としており,語源記述を中心としつつもボキャビルにも有用なハンドブックとなっています.本書は動画で展開されたような語源話しの集成といってよく,読みあさることで英語語源学を広く深く学ぶことができます.『ターゲット1900』で英単語を学習されている方には,ぜひ本書も傍らに置いていただきたいと思います.
 「ゆる言語学ラジオ」さんとは,これまでも何度かご縁がありました.3ヶ月ほど前の hellog 記事「#5892. 制限的付加詞 (restrictive adjunct) と非制限的付加詞 (non-restrictive adjunct)」 ([2025-06-14-1]) でも,同チャンネルの話題に触れたところです.
 今回の配信回も,言語への尽きせぬ好奇心を刺激してくれる知的に楽しい内容となっています.水野さんと堀元さんの巧みな話術に引き込まれ,私も時間を忘れて語ってしまいました.ぜひ多くの方にご覧いただければ幸いです.
 なお,今回の出演については,昨日の Voicy heldio でも「#1580. 「ゆる言語学ラジオ」『ターゲット1900』回にお邪魔してきました」としてお話ししました.そちらもお聴きいただければ.



 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

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2025-09-26 Fri

#5996. khelf の疋田海夢さんが Growth and Structure 連載を始めています [khelf][jespersen][helkatsu][review][hel][notice]

 khelf(慶應英語史フォーラム)によるhel活 (halkatsu) が新展開を示しています.
 4ヶ月ほど前に「#5861. khelf 寺澤志帆さんが「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」シリーズを開始しています」 ([2025-05-14-1]) でご紹介しましたが,寺澤志帆さんによる「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」が絶賛継続中です.昨日時点で123件の記事が公開されており,1つひとつ丁寧に記載されています.読み続けていると,英語史の知識が確実に増していきます.ぜひ RSS フィードを登録して,日々講読していただければ.
 そして先日,もう1人の khelf メンバーによる連載が始まりました.大学院生の疋田海夢さんが自身のHP上で始めたシリーズです.連載タイトルはGrowth and Structure で辿る英語の歴史」です.疋田さんが Jespersen による英語史の名著 Growth and Structure of the English Language (10th ed.) を1節ずつ丁寧に読み,コメントを加えていくという企画です.昨日時点で第8節までの記事が公開されており,シリーズ継続のリズムができてきました.こちらの連載にも RSS フィードが用意されていますので,ぜひフォローしていただければ.
 疋田さんが,なぜこの連載を始められたのか? それについては,最初の記事「0. Growth and Structure of the English Language の講読をはじめます」に記されているので,ぜひお読みください.
 先日,hellog でこの名著に関する以下の記事を2本書きましたが,実は今回の疋田さんの連載開始を受けて執筆したものでした.

 ・ 「#5990. Jespersen による英語史の名著 Growth and Structure of the English Language」 ([2025-09-20-1])
 ・ 「#5991. Jespersen の G&S の第1節を堪能する」 ([2025-09-21-1])

 そこでも述べたとおり,G&S は間違いなく英語史に関する名著の1つです.疋田さんが本書の精読を始め,関連する連載を始めた今,皆さんも一緒に同書を読み始める絶好のチャンスです.ぜひ連載を日々追いかけつつ,皆さんにもこの名著を味わっていただければと思います.


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 ・ Jespersen, Otto. Growth and Structure of the English Language. 10th ed. Chicago: U of Chicago, 1982.

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2025-09-25 Thu

#5995. khelf の藤平さんに「いのほたなぜ」のチラシを作成していただきました [notice][inohotanaze][inohota][inoueippei][khelf][helkatsu]


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 井上逸兵さんとともに毎週水・日にお届けてしている YouTube 「いのほた言語学チャンネル」が近々書籍化されることについては,「#5973. 「いのほた本」が出ます! --- 井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』(ナツメ社)」 ([2025-09-03-1]) や「#5985. 一昨日「いのほたなぜ」予約爆撃アワー企画の効き目,英語部門で第2位!」 ([2025-09-15-1]) の記事で触れてきました.発売は10月15日(水)となります.Amazon のこちらのページより予約受付中です.
 上記のチラシは,khelf の藤平さんに制作していただきました.いつもご協力ありがとうございます! チラシの以下の文句にあるとおりの書籍です.

専門の知見をわかりやすく解説.「そう習ったから」では終わらない,一歩先の理解に繋がる一冊.


 目下「いのほたなぜ」の編集者および著者2人で,本書を紹介する様々なコンテンツを作成中です.まず,特設ランディングページ (LP) を作っています.そこでは本書を紹介するのみならず,本書の各章と,元ネタとなっている「いのほた言語学チャンネル」の配信回とを結びつけたリンク集も掲載する予定です.
 また,YouTube チャンネルから生まれた書籍だけに,動画でのお知らせにも力を入れていきます.9月13日(土)に井上&堀田で生配信した以下の「いのほた本ライブ」を皮切りに,今後に向けてショート動画も制作中です.



 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』 ナツメ社,2025年.

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2025-09-24 Wed

#5994. 『英語語源ハンドブック』が3ヶ月で再重版決定 [hee][notice][voicy][heldio][youtube][yurugengogakuradio]


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 6月18日に刊行された『英語語源ハンドブック』(研究社)がおかげさまで好評です.刊行後3ヶ月となる9月18日に,再重版が決定しました.最初の重版は「#5914. 『英語語源ハンドブック』が発売2週間で重版決定!」 ([2025-07-06-1]) でお知らせしたとおりですが,その後も高い評価をいただき続けています.上記「再重版決定」ポスターは,いつものように khelf の藤平さんに制作していただきました(ありがとうございます).
 改めてのご案内ですが,本書のために特設ランディングページ (LP)を作っています.本書の特色や読者からの声などをまとめていますので,ぜひ覗いてみてください.


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 また,昨日公開された「ゆる言語学ラジオ」のターゲット1900回こと「accountはなぜ「口座」も「説明」も表すのか?」では,久しぶりにゲストとして出演させていただき,57分30秒辺りから『英語語源ハンドブック』について紹介しています.ぜひご覧ください.
 また,今回の再重版に際する感謝の辞は,先日以下の Voicy heldio からも配信しました.「#1575. おかげさまで『英語語源ハンドブック』の再重版決定! --- 用語解説の「大母音推移」を読んでみます」もお聴きいただければ.



 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

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2025-09-23 Tue

#5993. 英語の未来と生成AIが拓く新たな局面 --- 言語における求心力と遠心力のダイナミズム [variety][sociolinguistics][function_of_language][future_of_english][world_englishes][model_of_englishes][notice][youtube][inohota][inoueippei][inohotanaze][ai]



 一昨日 YouTube 「いのほた言語学チャンネル」の最新動画が配信されました.題して「#373. これからの英語はどうなる?AIと世界の英語・英語の未来を読む:多様化・AI・世界化」です.今回は,まさに今,私たちが目の当たりにしている言語とテクノロジーの劇的な交錯について,井上さんと議論を深めました.
 この話題を選んだきっかけは,私が以前出演させていただいた「文藝春秋PLUS 公式チャンネル」で,関連する英語史トークを展開したことにあります.そのトークの最後のほうで,英語の多様性やその未来について触れたのですが,同じテーマを「いのほた言語学チャンネル」でもさらに掘り下げてみようと考えた次第です.今や生成AIによるリアルタイム通訳も実用的になりつつあり,英語の未来を考える上で,これは避けて通れない話題となっています.
 いのほた動画では,英語(ひいては言語一般)のもつ「2つの相反する力」について議論しました.1つは,英語が世界の共通語,つまりコミュニケーションの道具としての役割を果たす「求心力」 (centripetal force) です.世界には約7000もの言語があると言われますが,その中で英語は最も広く通用する言語として,私たちの学習目標となってきました.異なる言語を話す人々を結びつける強力なツールとしての英語,という側面です.
 しかし,同時に英語(ひいては言語一般)にはもう1つの側面があります.それは「遠心力」 (centrifugal force) です.20世紀後半以降,世界英語 (world_englishes) という現象が顕著になり,世界各地で標準英語から逸脱した多様な英語が生まれ,話されています.これは,各々の地域の話者が,独自の英語変種を通じて自身のアイデンティティを表現しようとする動きにほかなりません.言語が単なるコミュニケーションの道具にとどまらず,所属する集団や個人のアイデンティティを示す手段となるわけです.結果として,同じ英語を話していても,お互いにとって理解しにくい方向に枝分かれしていくという,一見矛盾した状況が生じています.
 私は,この求心力と遠心力こそが,言語のダイナミズムを支える両輪であると考えています.結びつけようとする力と,分かち隔てようとする力.これらは常に拮抗し,揺れ動くことで言語変化の原動力となっているのです.社会がグローバル化すれば求心力が強まり,個々が多様性を志向すれば遠心力が強まる.まるで振り子のように揺れ動きながら,言語は機能し続けていると言えます.この2つの相反する力については,「#1360. 21世紀,多様性の許容は英語をバラバラにするか?」 ([2013-01-16-1]) や「#2073. 現代の言語変種に作用する求心力と遠心力」 ([2014-12-30-1]) もご参照ください.
 そして,人類史上長らく続いてきたこの言語のダイナミズムに,今,生成AIという前代未聞の技術が投入されてきています.これまでのコンピューター技術は標準的な英語のみを扱ってきたと言ってよいですが,AIは多様な英語をも処理できるようになりつつあります.これは,英語がインフラとしての基盤的役割を今後も担い続けるのかどうかという根本的な問いを突きつけているとも言えます.言語の求心力と遠心力のバランスは,AIの発展によってどのように変容していくのか,今後注視していくべき現象です.
 2020年代は,人類言語史における大きな転換点として記憶されることになるかもしれません.私たちは今,その歴史の瞬間に立ち会っていると言えます.英語の未来,そして言語そのものの未来がどうなっていくのか,引き続き注目していきたいと考えています.ぜひ,今回の「いのほた言語学チャンネル」の配信をご覧いただき,皆さんも一緒に考えてみていただければ.
 「いのほた言語学チャンネル」と言えば,10月15日に「いのほた本」が出ます! 詳細は,ぜひ「#5973. 「いのほた本」が出ます! --- 井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』(ナツメ社)」 ([2025-09-03-1]) の記事をどうぞ.

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2025-09-18 Thu

#5988. 9月27日(土),朝カル講座の夏期クール第3回「English --- 慣れ親しんだ単語をどこまでも深掘りする」が開講されます [asacul][notice][demonym][suffix][onomatology][kdee][hee][etymology][hel_education][helkatsu]


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 毎月1回,朝日カルチャーセンター新宿教室での英語史講座を開いています.今年度のシリーズは「歴史上もっとも不思議な英単語」です.英語史的に厚みと含蓄のある英単語を1つ選び,そこから説き起こして,『英語語源辞典』(研究社)や『英語語源ハンドブック』(研究社)等の参考図書の記述を参照しながら,その英単語の歴史,ひいては英語全体の歴史を語ります.
 来週末の9月23日(土)の講座は夏期クールの3回目となります.今回は英語を学ぶ誰もが最も多く発したり聞いたりし,さらに読み書きもしてきた重要単語 English に注目します.この当たり前すぎる英単語をめぐる歴史は,実は英語史のおもしろさを煮詰めたような物語になっています.ふと立ち止まって考えてみると,謎に満ちた単語なのです.

 ・ なぜ「アングレ」(フランス語)や「エングリッシュ」(ドイツ語)ではなく英語では「イングリッシュ」なの?
 ・ English と綴って「イングリッシュ」というのはおかしいのでは?
 ・ EnglandAnglia との関係は?
 ・ なぜ Japanese の -eseAmerican の -n ではなく English には -ish の語尾がつくの?
 ・ なぜ米語は American ではなく,あくまで (American) English と呼ばれるの?
 ・ 言語名は通常は固有名詞かつ単数として扱われるのに,なぜ最近 Englishes という複数形が使われているの?

 民族,国,言語,文化,歴史に関わる重要単語なので,このように疑問が尽きないのです.講座では,他の民族を表わす単語などとも比較しながら,English に込められた謎に迫ります.
 講座への参加方法は新宿教室での直接受講,オンライン参加のいずれかをお選びいただけます.さらに2週間の見逃し配信サービスもあります.皆さんのご都合のよい方法でご参加いただければ幸いです.申込みの詳細は朝カルの公式ページよりご確認ください.
 なお,この講座の見どころについては heldio で「#1574. "English" という英単語について思いをめぐらせたことはありますか? --- 9月27日の朝カル講座」としてお話ししています.こちらもあわせてお聴きいただければ幸いです.

</p><p align="center"><iframe src=https://voicy.jp/embed/channel/1950/7099532 width="618" height="347" frameborder=0 scrolling=yes style=overflow:hidden></iframe></p><p>

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

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2025-09-17 Wed

#5987. 『最新英語学・言語学用語辞典』(開拓社,2015年)の第7章 --- 英語史用語集 [dictionary][review][notice][linguistics][terminology][glossary][gvs]


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 毎朝配信している Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて,先日コメントをいただいた.英語史に関する用語辞典というのはあるのでしょうか,という質問だ.その答えは,あるといえばあるし,ないといえばない,ということになる.
 まず「ない」という側面から.英語史は比較的専門性の高い,いわばニッチな領域である.ある分野の用語辞典が編纂・出版されるには,それなりの需要が見込まれなければならない.しかし,その点ではニッチな英語史という分野の用語辞典は,残念ながら独立した書籍として出版されたものはない.
 次に「ある」という側面について.英語史専門の用語辞典は上記の通り存在しないものの,大は小を兼ねるという通り,1つ上のカテゴリーである「英語学」の用語辞典であれば,日本語でも英語でもいくつか出版されている.それらは,実質的に英語史用語辞典の役割を果たしてくれているといってよい.英語史の主要な術語は,たいてい英語学(用語)辞典に立項されているからだ.代表的な英語学辞典としては,「#5830. 英語史概説書等の書誌(2025度版)」 ([2025-04-13-1]) の下部の「英語史・英語学の参考図書」を参照されたい.
 また,英語で書かれたものでは,より英語史に近い分野,すなわち歴史言語学 (historical_linguistics) に特化した Campbell, Lyle and Mauricio J. Mixco, eds. A Glossary of Historical Linguistics (Salt Lake City: U of Utah P, 2007) という便利な小辞典がある.さらに,英語史概説書の巻末には用語集 (glossary) が付されていることも多く,有用だ.
 さて,今回特におすすめしたいのが,『最新英語学・言語学用語辞典』(開拓社,2015年)である.この辞典の制作には,私自身も執筆者の1人として関わっている.
 この用語辞典の最大の特徴は,英語学・言語学の広範な分野を網羅しつつ,分野ごとに章を立てて用語を解説している点にある.全11章の構成は以下の通り.



 第1章 音声学・音韻論
 第2章 形態論
 第3章 統語論
 第4章 意味論
 第5章 語用論
 第6章 社会言語学
 第7章 英語史・歴史言語学
 第8章 心理言語学
 第9章 認知言語学
 第10章 応用言語学
 第11章 コーパス言語学・辞書学




 第7章「英語史・歴史言語学」に注目されたい.この章 (pp. 238--70) は,それ自体が独立した英語史用語辞典として利用できる.例えば,英語史学習者が必ず出会う用語の1つ,大母音推移 (gvs) の項目を引いてみよう.

Great Vowel Shift (大母音推移) 後期中英語から初期近代英語期に,強勢をもつすべての長母音に起こった大規模な音変化をいう.生起する環境の如何を問わず,非高母音は上昇し,高母音は二重母音化した.高母音の二重母音化と狭中母音の上昇のいずれが先に起こったかについて意見が分かれる.そもそも大規模な連鎖であったかどうかについても異論が出されている.→ DRAG CHAIN; PUSH CHAIN


 限られた字数のなかで,現象の定義,時代,対象,内容,そして学術的論点までが簡潔にまとめられている.このように,英語史のキーワードが約30ページにわたって解説されており,初学者から専門家まで,幅広い読者のニーズに応える内容となっている.
 英語史の学び方は人それぞれだが,信頼できる用語辞典を手元に置いておくことは,学習の羅針盤として大いに役立つはずだ.今回ご紹介した『最新英語学・言語学用語辞典』は,その候補として,自信をもって推薦できる1冊である.

 ・ 中野 弘三・服部 義弘・小野 隆啓・西原 哲雄(監修) 『最新英語学・言語学用語辞典』 開拓社,2015年.

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2025-09-15 Mon

#5985. 一昨日「いのほたなぜ」予約爆撃アワー企画の効き目,英語部門で第2位! [inohotanaze][hellive2025][heldio][helkatsu][inohota][inoueippei][youtube][notice]



 一昨日,「英語史ライヴ2025」を開催しました.「#5983. 本日の「英語史ライヴ2025」の締めは,16:00からの「いのほた本の予約爆撃アワー」」 ([2025-09-13-1]) で予告した通り,当日の16:00より,Voicy heldio と YouTube 「いのほた言語学チャンネル」 の両プラットフォームにて,井上逸兵さんとともに「いのほた本の予約爆撃アワー」を生配信しました.
 10月15日にナツメ社より出版予定の「いのほたなぜ」こと,井上・堀田の初めての共著となる『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』を,皆さんの力をお借りして,広めていただきたいという趣旨で企画したお祭りイベントです.会場参加された方々,およびライヴ視聴者の皆さんとともに,Amazon の本書のページより,一斉に(といっても文字通りにではありませんが)予約注文していただきました.当日は,ライヴのコメント欄などを通じても,熱い応援をいただき,たいへん心強く感じました.ありがとうございます.
 当日のライヴの様子は,その後両プラットフォームでアーカイヴとしても出そろいましたので,ぜひ視聴・聴取していただければと思います.

 ・ Voicy heldio: 「#1569. 「いのほたなぜ」予約爆撃アワー --- 「英語史ライヴ2025」より」
 ・ YouTube: 「いのほた本ライブ」

 さて,予約爆撃アワー企画の効き目はどうだったのでしょうか? 当日の夜に本書の順位を確認したところ,なんと Amazon 新着ランキングの英語部門で第2位にまで上がっていました! 短時間で皆さんにここまで押し上げていただきました.ありがとうございます.トップの座には手強いライバルが座っていますが,これからますます本書を広めて行きたいと思っています.引き続きご支援をお願いします!


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Referrer (Inside): [2025-09-25-1]

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2025-09-14 Sun

#5984. 昨日の「英語史ライヴ2025」おおいに盛り上がりました! [khelf][helwa][heldio][hellive2025][notice][helkatsu][helmate][inohota][inoueippei][inohotanaze][youtube][helvillian][kenkyusha]


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 昨日9月13日(土),予定通り Voicy heldio にて「英語史ライヴ2025」が開催されました.khelf(慶應英語史フォーラム)および helwa の主催する音声配信イベントで,早朝から夕方まで断続的にではあれ,多くの英語史に関する音声セッションが配信されました.収録会場にはメンバー30名ほどが集まり,和やかな雰囲気のなかで収録したり,懇親したりしました.
 まず,早朝6時からは,平常通りの heldio 配信.その後,helwa 配信も行ないました.7時からは Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)との超精読セッション.続いて8時からは小河舜さん(上智大学)との「千本ノック」.土曜日の朝早くからの生配信でしたが,収録現場には複数名のギャラリーに立ち会っていただき,数十名のリスナーの方々にライヴでお聴きいただきました.大盛り上がりでした.
 9時からは,皆で本格的に会場設営.10時頃からいくつかの収録室に分かれ,次々と音声セッションを収録しました.生配信でお届けすることもあれば,収録し終わったものを後からアーカイヴ配信することもありましたが,夕方までに heldio と helwa を合わせて10本近くの配信回をお届けすることになりました.
 そして,最後に16時からは,heldio および YouTube 「いのほた言語学チャンネル」 の両方にて,井上逸兵さんとともに「いのほた本の予約爆撃アワー」を生配信.来たる10月15日(水)に発売予定の井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』 ナツメ社,2025年.を,Amazon より皆に一斉に注文していただこうというお祭りイベントです.多くの皆さんにご参加いただきまして,ありがとうございました.
 一日を通じて,会場には全国津々浦々からの参加者がお持ちになったお菓子で溢れていました.また,ラジオなので一般にお見せすることはできませんでしたが,多くの参加者が,今回のイベントのために有志で制作されたTシャツを着用していました.『英語語源ハンドブック』の表紙をモチーフとした Helvillian のTシャツです.さらに,午後からは研究社による英語史関連書のフェアが開かれ,賑わいました.多くの皆さんのご協力のもと,17時前には無事にイベントが終了しました.
 夜はお楽しみの懇親会.1次会,2次会とはしごして夜が更けましたが,最後まで参加者の皆さんと英語史を語り続ける,思い出に残る1日となりました.
 昨日中に公開されたセッションは十数本に限られますが,後日のアーカイヴ配信のために収録したセッションも数多くあり,ある意味では「英語史ライヴ2025」は終わっていません.むしろ始まったばかりです.ぜひ今後の heldio/helwa 配信にご期待ください.
 以上,「英語史ライヴ2025」の盛会の旨,簡単に報告いたしました.リスナーの皆さん,関係者の方々,本当にありがとうございました!

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2025-09-13 Sat

#5983. 本日の「英語史ライヴ2025」の締めは,16:00からの「いのほた本の予約爆撃アワー」 [khelf][helwa][hellive2025][notice][helkatsu][helmate][inohota][inoueippei][inohotanaze][youtube]


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 本日9月13日(土)は,昨日の記事 ([2025-09-12-1]) で予告した通り,年に一度の Voicy heldio による英語史のお祭り「英語史ライヴ2025」が開催されます.朝6時の通常配信を皮切りに,夕方5時頃まで,断続的に heldio/helwa で生配信やアーカイヴ配信をお届けします.主催は khelf(慶應英語史フォーラム)および helwa の有志メンバーたちです.東京の収録会場に集まり,英語史に関する様々なセッションを収録・配信していきます.
 hellog 読者の皆さん,heldio/helwa リスナーの皆さんにおかれましては,ぜひ英語史漬けの1日をお楽しみください.本イベントの特設HPをこちらに設けておりますので,ぜひご覧ください.
 本日の hellog 記事としては,とりわけ16時より heldio および YouTube 「いのほた言語学チャンネル」にて同時生配信を予定している「『いのほたなぜ』予約爆撃アワー」企画についてお知らせします.
 同僚の井上逸兵さんと毎週2回,水・日曜日に配信している同 YouTube チャンネルが本になりました! 来たる10月15日(水)に発売予定です.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』 ナツメ社,2025年.(← Amazon へのリンク)

 本日16時から heldio および YouTube にて生配信でお届けする予定の「『いのほたなぜ』予約爆撃アワー」企画は,井上・堀田がこの「いのほた本」をライヴで紹介しつつ,リスナーの有志の皆さんにその場で Amazon にて予約注文していただき,全体としてお祭りムードで盛り上がろうという遊び企画です.ぜひ時間になりましたら,いずれかのメディアにアクセスしていただき,こちらの Amazon リンクより予約注文していただければ幸いです.昨晩時点では,新着ランキングの英語部門にて,すでに第15位にランクインしています.「『いのほたなぜ』予約爆撃アワー」での皆さんのご協力により,ランクをさらに押し上げていただければと思います.この本を通じて,英語史・英語学・言語学のおもしろさを多くの方に伝えたいというのが,著者2人の願いです.
 本書の内容や趣旨については,今後,本ブログでもご紹介していきますが,まずは本日16時の「『いのほたなぜ』予約爆撃アワー」企画にご参加いただければ幸いです.その時間は都合が悪いという方も,ぜひ夕方以降に予約注文をしていただければ.
 どうぞよろしくお願いいたします.


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 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』 ナツメ社,2025年.

Referrer (Inside): [2025-09-15-1]

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2025-09-12 Fri

#5982. 明日9月13日(土),早朝6時から「英語史ライヴ2025」開催 [khelf][helwa][hellive2025][notice][helkatsu][helmate][inohota][inoueippei][inohotanaze][youtube]


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 昨年に続き,今年も「英語史ライヴ」を開催します.明日9月13日(土)の早朝6時より開始です.Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」およびプレミアム限定配信「英語史の輪 (helwa)」にて,hel活 (helkatsu) の仲間たちとともに英語史に関する話題を1日中お届けします.
 朝6時から夕方5時頃まで,断続的に生配信あるいはアーカイヴ配信を行ないますので,リスナーの皆さんにおかれましては,配信回の新着通知が届くよう,この機会に heldio のチャンネルのフォローをお願いいたします.また,同じくこの機会にプレミアム限定配信「英語史の輪 (helwa)」(月額800円のサブスクで,初月無料)にもお入りいただければ,追加的に helwa での新着配信もお聴きいただけます.
 主催は,khelf(慶應英語史フォーラム)および helwa です.主として khelf の大学院生メンバーと helwa の有志メンバーに,事前の準備から明日のイベント当日の音声配信制作まで,直接,間接に携わっていただいています.会場参加される方々にとっては,hel活メンバー同士の交流の機会ともなりますので,おおいにお楽しみください.
 ライヴの特設HPをこちらに準備しましたので,詳しくはそちらからどうぞ.配信スケジュールについては,最初と最後のほうに固定のセッションがいくつかありますが,日中の大部分の時間帯についてはフレキシブルとなりますのでご了承ください.
 固定セッションのうち,とりわけ夕方4時からの「『いのほたなぜ』予約爆撃アワー」企画は必聴です.井上逸兵さんとともに,heldio のみならず YouTube 「いのほた言語学チャンネル」からも生配信します.10月15日に発売予定の「いのほた本」についてお話ししながら,皆で一緒に予約注文してしまいましょう,という盛り上げ企画となっています.
 それでは,明日の「英語史ライヴ2025」をお楽しみに!

Referrer (Inside): [2025-09-13-1]

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2025-09-09 Tue

#5979. Guy Fawkes から you guys へ --- 「いのほた言語学チャンネル」最新回より [youtube][semantic_change][personal_pronoun][grammaticalisation][bleaching][eponym][notice]



 YouTube 上で展開している「いのほた言語学チャンネル」の最新回が,9月7日(日)に配信されました.今回は「#369. you guys などの guy はもともと○○だった!--意外な歴史」と題し,現代英語で頻用される guy という単語の驚くべき歴史的背景と,現在進行中の変化について語りました.動画の撮影に失敗し,静止画のみの配信となってしまいましたが,かえって内容に集中できるからか(?),再生回数は伸びているようです.今回は,この配信の内容を hellog 記事として再構成し,紹介します.
 現代英語の口語で,特にアメリカ英語において Hey, you guys! のように,複数の相手に呼びかける際に使われる guys.この guy は,もともと「やつ,男」を意味するごくありふれた単語として認識されています.しかし,その語源を遡ると,ある歴史上の人物に行き着きます.17世紀初頭のイングランドで起きた火薬陰謀事件 (the Gunpowder Plot) の実行犯の1人,Guy Fawkes (1570--1606) です.
 1605年11月5日,国王ジェームズ1世と議会の主要メンバーの爆殺を狙ったテロ未遂事件が起こりました.世にいう「火薬陰謀事件」です.この計画は未然に発覚し,Guy Fawkes を含む共謀者たちは捕らえられ,処刑されました.国王は,イングランド社会を震撼させたこの事件が鎮圧されたことを祝い,かつ国民が忘れることのないよう,毎年11月5日に焚き火を焚いて祝うことを奨励しました.これが現在まで続く Guy Fawkes Night の始まりです.
 この祝祭では,事件の象徴である Guy Fawkes の人形を作り,市中を引き回した上で燃やすという風習が生まれました.ここから,guy という単語はまず「Guy Fawkes の人形」を指すようになり,やがて「みすぼらしい,あるいは奇妙な格好をした男」へと意味を広げました.一種の軽蔑的なニュアンスを伴っていたわけです.
 19世紀になると,この単語はさらに意味を一般化させ,単に「男,やつ」 (a fellow, a chap) を指す普通名詞へと変化しました.特にこの意味は,大西洋を渡ったアメリカで広く受け入れられました.ここまででも十分に劇的な意味変化 (semantic_change) の道のりといえます.
 しかし,guy の物語はここで終わりません.20世紀以降,特に you guys の形で,複数の人を指す2人称代名詞 (personal_pronoun) の複数形のような振る舞いを見せ始めます.当初は男性の集団を指していたのが,次第に性別の区別なく,男女混合の集団や女性のみの集団に対しても使われるようになりました.つまり,guys は性的な含意を失い,単に「人々」 (people) ほどの意味合いにまで希薄化したのです.
 そして,この変化は今,新たな段階へ進みつつあるように見えます.you guys という表現において,guys の部分は語彙的な意味をほとんど失い,you が複数であることを示すための文法的なマーカー,すなわち複数接尾辞 -s に近い機能を担うようになっているのではないか,という見立てです.もしこの解釈が正しければ,guy は固有名詞から普通名詞へ,そしてさらには文法的な機能を持つ形態素へと変化する,文法化 (grammaticalisation) の過程にあることになります.
 英語史において,2人称代名詞は thouye の区別が失われ you に一本化されていくという大きな変化を経験しました.しかし,単数と複数の区別がないのは不便なため,口語では you guysy'allyouse など,様々な形で複数を標示する工夫が生まれています.その中でも最有力候補の you guys を構成する後半部分が,まさか Guy Fawkes という人名に由来するとは,言語変化のダイナミズムを感じずにはいられません.
 人名が普通名詞化する例 (eponym) は少なくありませんが,文法化の道を歩む例は極めて珍しいといえるでしょう.guy の今後の運命から目が離せません.
 関連する hellog 記事として「#1767. 固有名詞→普通名詞→人称代名詞の一部と変化してきた guy」 ([2014-02-27-1]),「#5977. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第5回「guy --- 人名からカラフルな意味変化を遂げた語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-09-07-1]) もご参照ください.
 ちなみに姓のほうの Fawkes の語源は,『英語固有名詞語源小辞典』によれば,古高地ドイツ語 Falco "falcon" に由来し,古フランス語 Faukes を経由して中英語期に入ってきたものです.

 ・ 刈部 恒徳(編著) 『英語固有名詞語源小辞典』 研究社,2011年.

Referrer (Inside): [2025-09-11-1]

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2025-09-07 Sun

#5977. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第5回「guy --- 人名からカラフルな意味変化を遂げた語」をマインドマップ化してみました [asacul][mindmap][notice][kdee][hee][etymology][hel_education][link][personal_pronoun][eponym][grammaticalisation][semantic_change]

 8月23日(土)に,今年度の朝日カルチャーセンターのシリーズ講座「歴史上もっとも不思議な英単語」の第5回(夏期クールとしては第2回)となる「guy --- 人名からカラフルな意味変化を遂げた語」が,新宿教室にて開講されました.
 講座と関連して,事前に Voicy heldio にて「#1539. 8月23日の朝カル講座 --- guy で味わう英語史」をを配信しました.
 この第5回講座の内容を markmap によりマインドマップ化して整理しました(画像をクリックして拡大).復習用にご参照ください.


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 なお,この朝カル講座のシリーズの第1回から第3回についてもマインドマップを作成しています.

 ・ 「#5857. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第1回「she --- 語源論争の絶えない代名詞」をマインドマップ化してみました」 ([2025-05-10-1])
 ・ 「#5887. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第2回「through --- あまりに多様な綴字をもつ語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-06-09-1])
 ・ 「#5915. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第3回「autumn --- 類義語に揉み続けられてきた季節語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-07-07-1])
 ・ 「#5949. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第4回「but --- きわめつきの多義の接続詞」をマインドマップ化してみました」 ([2025-08-10-1])

 シリーズの次回,第6回は,9月27日(土)に「English --- 慣れ親しんだ単語をどこまでも深掘りする」と題して開講されます.ご関心のある方は,ぜひ朝日カルチャーセンター新宿教室の公式HPより詳細をご確認の上,お申し込みいただければ.

Referrer (Inside): [2025-09-09-1]

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2025-09-05 Fri

#5975. 名著『英語語源辞典』の制作舞台裏 [kdee][notice][heldio][inohota][inoueippei][youtube][khelf][hel_herald]


寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.



 『英語語源辞典』,あるいは KDEE (= The Kenkyusha Dictionary of English Etymology) は,世界最強の英語語源辞典として私が推し続けている書籍ですが,その制作舞台裏のストーリーも同じくらい強力です.同辞典は,辞書出版社である研究社の,最後の活版印刷による辞典なのです.日本の英語系出版史上の金字塔ともいってよいでしょう.
 KDEE の制作舞台裏については,これまでも様々な媒体で取り上げてきました.近日中に改めて大々的に取り上げるべく新企画が進行中なのですが,この機会にこれまでの関連コンテンツをまとめておきたいと思います.



【 研究社 note (2023年8月1日) 】

 KDEE の制作舞台裏に関する一連の話題の火付け役となったのは,研究社公式の「研究社note」に公開された「『英語語源辞典』と活版印刷裏話」と題する記事でした.2023年8月1日に,研究社の編集社さんがまとめられた文章です.何はともあれ,まずそちらをお読みください.

【 Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 (2023年9月) 】

 上記 note 記事を読み,あまりにおもしろいお話しだったので,同じ2023年の夏に,研究社にお声がけし,KDEE の編集・印刷に携わった方々にインタビューさせていただきました.そのインタビューは Voicy heldio にて3部作として公開されました.ぜひアーカイヴよりお聴きください.

 ・ 「#828. 『英語語源辞典』(研究社,1997年)ってスゴい --- 研究社会議室での対談 (1)」
 ・ 「#834. 『英語語源辞典』(研究社,1997年)ってスゴい --- 研究社会議室での対談 (2)」
 ・ 「#842. 『英語語源辞典』(研究社,1997年)ってスゴい --- 研究社会議室での対談 (3)」

【 YouTube 「いのほた言語学チャンネル」 (2024年7月7日) 】

 同僚の井上逸兵さんと運営している YouTube 「いのほた言語学チャンネル」でも KDEE 制作舞台裏に関する話題に触れました.2024年7月7日「#247. 堀田が1年間推してきた,日本語だが内容的には英語語源辞典の世界ベスト・寺澤芳雄編集主幹『英語語源辞典』(研究社)」です.



【 『英語史新聞』の号外(2024年9月8日発行) 】

 khelf(慶應英語史フォーラム)が発行している『英語史新聞』2024年9月8日の号外「英語史ラウンジ 第4回 寺澤盾先生 番外編」にて,KDEE の誕生秘話が紹介されています.khelf メンバーが,KDEE の制作にも関わられた寺澤盾先生(青山学院大学教授,東京大学名誉教授)の研究室に赴き,インタビューした内容が記事となったものです.寺澤盾先生の研究室に同辞典のゆかりの品があり,写真撮影も許可していただきました.関連記事・配信回も以下よりどうぞ.

 ・ 「#5616. 『英語史新聞』号外が発行されました --- 『英語語源辞典』制作にかかわる貴重なエピソード」 ([2024-09-11-1])
 ・ 「#1216. 『英語史新聞』第10号と号外のお披露目 --- 「英語史ライヴ2024」より」

【 「hellog~英語史ブログ」 (2023年8月以降) 】

 本ブログでも,上記のコンテンツへのリンクも含め, KDEE 制作舞台裏について,たびたび取り上げてきました.以下ではそのうち主立った記事のみ掲げます.ぜひ kdee のタグのついた他の記事もお読みいただければ.

 ・ 「#5210. 世界最強の英語語源辞典 --- 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)」 ([2023-08-02-1])
 ・ 「#5261. 研究社会議室での3回にわたる『英語語源辞典』をめぐるインタビューが完結」 ([2023-09-22-1])
 ・ 「#5436. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年3月15日版」 ([2024-03-15-1])
 ・ 「#5522. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年6月9日版」 ([2024-06-09-1])
 ・ 「#5553. 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)の新装版 --- 「いのほた言語学チャンネル」でも紹介しました」 ([2024-07-10-1])
 ・ 「#5616. 『英語史新聞』号外が発行されました --- 『英語語源辞典』制作にかかわる貴重なエピソード」 ([2024-09-11-1])
 ・ 「#5856. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2025年5月9日版」 ([2025-05-09-1])



 2024年6月には新装版も刊行され,KDEE はますます勢いを得ています.ぜひ皆さんのお手元に1冊ご用意ください.KDEE 制作舞台裏に関する新企画もお楽しみに!

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2025-09-03 Wed

#5973. 「いのほた本」が出ます! --- 井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』(ナツメ社) [notice][youtube][inohota][inoueippei][inohotanaze]



 慶應義塾大学文学部英米文学専攻の同僚で社会言語学を専門とされる井上逸兵さんとともに運営している YouTube 「いのほた言語学チャンネル」は,コロナ禍の最中の2022年2月26日にオンライン収録にて始まりましたが,気づいてみればかれこれ3年半も続いてきたことになります.
 先日公開された最新回は「#367. 当チャンネルがついに書籍化!『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』(ナツメ社)2025年10月15日発売!」です.かねてより進めていた「いのほた本」企画について,初めて公式に告知する機会となりました.
 タイトルの通りではありますが,当チャンネルがついに書籍化されることになりました! 書名は『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?』です.ナツメ社より,きたる2025年10月15日に刊行されることになっています.今後,SNS のハッシュタグ等では #いのほたなぜ として言及していきたいと思っております.よろしくお願いします.
 今回の書籍は,これまでの「いのほた言語学チャンネル」の配信内容をベースとしています.ライターさんが過去の配信回のなかから本にしてもおもしろくなりそうなトピックを選び,内容のレベルごとに章立てしてくれました.井上&堀田もコラムを書き下ろしたり校正に加わったりと本作りに参加しましたが,今回の本の出来映えは基本的にはライターさん,編集者さんの巧みな編集によるところが大きいです.動画での対話の雰囲気を残しつつ,文字媒体として非常に読みやすく,かつ知的好奇心をくすぐる1冊に仕上げていただきました.正直なところ「2人の対話は,こんなにもおもしろかったのか」と著者自身が驚いているほどです.
 本書の魅力は,その内容のみならず,ふんだんに盛り込まれたイラストにもあります.イラストレーターさんが,井上さんと私をキャラクター化して描いてくださいましたが,実に良い味を出しています.このキャラクターは本書の随所に登場するだけでなく,「いのほた言語学チャンネル」の新しい公式アイコンとしても用いられることになります.
 本書を校正刷りで通読して改めて感じたのは,このチャンネル,ひいてはこの本が,井上&堀田のコラボレーションの賜物であるということです.対話のなかで思わぬシナジーが生まれる瞬間がたびたびありましたが,そこから得られるアカデミックな興奮はまさに2人でやっているからこそ生まれるものであり,本書にはそうしたコラボ感が満ち溢れているのです.
 本書は,いわゆる体系的な言語学の教科書や概説書ではありません.しかし,英語や言葉に関する素朴な疑問を入り口としながら,読者を言語学の奥深い世界へといざなう,新しいタイプの入門書になっていると自負しています.
 さて,「いのほた本」の船出を祝し,著者2人として,ある企画を考えています.3ヶ月半ほど前の5月20日に新刊書『英語語源ハンドブック』の広報として催した「予約爆撃アワー企画」の「いのほたなぜ」版です.来たる9月13日(土)16:00より「いのほた言語学チャンネル」と Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の同時生配信を行なう予定となっています.そこで著者2人が「いのほたなぜ」について語りながら,同時に皆さんに本書を Amazon で予約注文いただくようにお願いしつつ,皆でお祭りのように盛り上がる,というライヴ企画です.もし本書にご興味をお持ちいただけましたら,ぜひこのイベントにご参加いただけますと幸いです.
 YouTube という動画メディアから生まれたコンテンツを書籍という文字媒体へ移植するという今回の試みについて,読者の皆さんにどのように受け取っていただけるのか,著者として今から楽しみです.

Referrer (Inside): [2025-09-25-1] [2025-09-23-1]

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2025-08-31 Sun

#5970. ウェブ月刊誌 Helvillian の9月号が公開されました [helwa][heldio][notice][helmate][helkatsu][helvillian][link][hee][helwa_contents_for_hellive2024][hellive2024][hellive2025][petit_hellive_from_yokohama]


Helvillian_202509.png



 去る8月28日,helwa メンバー有志が note 上で毎月共同制作している hel活 (helkatsu) ウェブマガジン『月刊 Helvillian 〜ハロー!英語史』の2025年9月号が公開されました.これで通算第11号となり,月刊誌として着実に歩みを進めています.
 今号の「表紙のことば」は,編集委員の1人でもある umisio さんによるものです.美しい五島列島の風景写真とともに,心温まるエッセイが添えられています.このような素晴らしい土地から helwa の活動にも加わっていただいていることに,改めて感謝の念が湧きます.
 今号の特集は「言葉にまつわる大人の自由研究【helwaコンテンツ2024】」です.これは昨夏に helmate 有志の方々から寄せられたコンテンツ群を改めて紹介するもので,いずれも読み応えのある珠玉の論考ばかりです.1年前の夏の盛り上がりを追体験できるとともに,来たる9月13日(土)に開催を控える「英語史ライブ2025」への期待感を高める企画ともなっています.
 特集はもう1つあります.8月上旬に横浜で開催した「プチ英語史ライヴ from 横浜」のルポです.私から寄稿させていただきましたが,当日の楽しい収録回の雰囲気が伝わる記事になっているかと思います.
 さらに今号では,6月に出版された『英語語源ハンドブック』に関連するコンテンツも充実しています.特に注目すべきは,ykagata さんによる新シリーズ「新しい語源ハンドブックにこじつけて学ぶドイツ語」で,英語史とドイツ語の繋がりを学ぶことのできる,知的好奇心をそそる内容です.
 お馴染みとなった連載執筆陣も健在です.川上さんの「やってます通信」,lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート」,みーさんの「教室日誌」などが並びます.常連の寄稿者である Grace さん,ari さん,camin さん,mozhi gengo さんらの記事も必読です.camin さん(片山幹生さん)による「日本語で読めるフランス語史の本」は,フランス語や英仏対照言語史に関心のある方にとって貴重な文献リストです.
 巻末は,Grace さんによる「Helwa のあゆみ/活動報告(2025年9月)」と,編集委員4名(umisio さん,Galois さん,Lilimi さん,Grace さん)による座談会風の「Helvillian 編集後記(2025年9月)」で締めくくられます.編集後記では,helwa 内で静かなキーワードとなっている「五島オフ会」の話題で盛り上がっており,helwa コミュニティの未来に向けた夢が語られています.
 月刊 Helvillian は,helwa コミュニティによる活発な hel活の賜物です.ぜひ多くの皆さんに Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」のメンバーになっていただき,hel活に参加いただければ幸いです.
 Helvillian のバックナンバーはこちらのページにまとまっています.hellog の helvillian タグのついた各記事もお読みください.
 今号については,heldio でも「#1552. Helvillian 9月号が公開! --- 特集は「ことばにまつわる大人の自由研究」」としてご紹介しています.ぜひお聴きください


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