hellog〜英語史ブログ     ChangeLog 最新     カテゴリ最新     1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 次ページ / page 1 (39)

notice - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2026-08-28 00:31

2026-08-28 Fri

#6332. heldio で3回にわたり静岡大学名誉教授・服部義弘先生にインタビュー [voicy][heldio][notice][gvs][bibliography][open_mic][helkatsu][helmate]

 Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 のオープンマイク企画の一環として,heldio/helwa コアリスナーの kendama_player さんが,大学院時代の恩師である静岡大学名誉教授・服部義弘先生(専門は英語音韻論・英語史)にインタビューをしてくださいました.
 服部先生といえば,日本の英語音韻論および英語史研究を長年牽引されてきた重鎮です.その服部先生が heldio にご出演いただけるとは,驚くやら嬉しいやらで,私も感激いたしました.kendama_player さんがヘルメイトとして素晴らしいご縁をつないでくれました.企画は3回にわたる対談となっており,すでに heldio にて配信済みです.リンクを以下に掲げますので,ぜひお聴きください.

 ・ 「#1909. 静岡大学名誉教授・服部義弘先生に聞く! --- ご経歴,そして堀田との関係は?」



 ・ 「#1912. 静岡大学名誉教授・服部義弘先生に聞く! --- 大母音推移は本当にあったのか?」



 ・ 「#1915. 静岡大学名誉教授・服部義弘先生に聞く! --- お薦めの英語史の本は?」



 初回配信回では,服部先生のご経歴とともに,服部先生と私との学術的な関係について触れていただきました.お話しの中で言及された論著やシンポジウムの情報を,年代順に整理して掲載しておきます.

 ・ 中野 弘三・服部 義弘・小野 隆啓・西原 哲雄(監修) 『最新英語学・言語学用語辞典』 開拓社,2015年.
 ・ 堀田 隆一 「英語史における音・書記の相互作用 --- 中英語から近代英語にかけての事例から ---」近代英語協会第34回大会シンポジウム「英語音変化研究の課題と展望」(青山学院大学),2017年6月24日.
 ・ 服部 義弘・児馬 修(編) 『歴史言語学』 朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.
 ・ 堀田 隆一 「英語における may 祈願文の発生と発達」『歴史言語学』第8号(日本歴史言語学会編),2020年.67--80頁.
 ・ 堀田 隆一 「英語の発音と綴字の乖離と GVS」 日本音声学会主催 第35回音声学セミナー(青山学院大学京都大学),2025年9月28日.

 第2回では,英語史における音変化としては最も著名な大母音推移 (gvs) の話題を掘り下げていただきました.服部先生が対談のなかで言及・示唆された文献一覧は以下の通りです.

 ・ Jespersen, Otto. A Modern English Grammar on Historical Principles. Part 1. Copenhagen: Munksgaard, 1909.
 ・ Sapir, Edward. Language. New York: Hartcourt, 1921.
 ・ Smith, Jeremy J. An Historical Study of English: Function, Form and Change. London: Routledge, 1996.
 ・ Minkova, Donka and Robert Stockwell. "Phonology: Segmental Histories." A Companion to the History of the English Language. Ed. Haruko Momma and Michael Matto. Chichester: Wiley-Blackwell, 2008. 29--42.
 ・ Stenbrenden, Gjertrud Flermoen. Long-Vowel Shifts in English, c. 1150--1700: Evidence from Spelling. Cambridge: CUP, 2016.
 ・ 服部 義弘 「第3章 音変化」服部 義弘・児馬 修(編) 『歴史言語学』朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.47--70頁.
 ・ 米倉 綽・中村 芳久 (編) 『英語学が語るもの』 くろしお出版,2018年.

 対談のなかで服部先生は,大母音推移を構成する個々の音変化が一貫した連鎖反応として生じたわけではないとする「バラバラ説」を支持されつつも,Sapir のいう drift(駆流)の概念を引き合いに出しながら,全体としては大きな音変化の潮流をなしていたと捉える見解を示されました.一方で,現代の英語教育・英語学習の観点から見れば,GVS を一枚岩の現象として整理して捉えることにも十分に教育的利点がある,と柔軟な視点から述べられていたのが印象的でした.
 第3回では,服部先生選りすぐりのお薦め英語史書を挙げていただきました.英書と和書の,専門性の高い推薦書です.

 ・ Mugglestone, Lynda, ed. The Oxford History of English. Oxford: OUP, 2006.
 ・ Hogg, R. M. and D. Denison, eds. A History of the English Language. Cambridge: CUP, 2006.
 ・ Fulk, R. D. A Comparative Grammar of the Early Germanic Languages. Benjamins, 2018.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
 ・ 寺澤 芳雄・川崎 潔 (編)  『英語史総合年表 --- 英語史・英語学史・英米文学史・外面史 ---』 研究社,1993年.

 とりわけ『英語史総合年表』の選書にはしびれました.重厚かつ多角的に英語史の歩みを鳥瞰できる名著です.本書は現在でも入手可能ですので,関心を抱いた方はぜひ書棚に揃えてみてください.
 服部先生,刺激的なお話を本当にありがとうございました.ぜひ次回は,kendama_player さんも含めて3人で直接お会いして,さらに深くお話ししたいと思いました.ありがとうございました!

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-08-26 Wed

#6330. 月刊誌『英語教育』に『なぜさんたんげん』の書評が掲載 [notice][nazesantangen][review]


inohota_rensai_eigokyouiku_20260812_front_cover.png

  *

 一昨日の記事「#6328. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第6回 --- 英語は本当に「直接的」なのか」 ([2026-08-24-1]) で紹介した同誌の最新刊9月号の70ページに,6月に刊行された拙著『なぜさんたんげん』の書評が掲載されました.評者は岐阜聖徳学園大学の西脇幸太氏です.本書の丁寧なご紹介,ありがとうございます.
 今回いただいた書評はコンパクトな紙幅ではありますが,本書の狙いや特徴を的確に捉えてくださっています.本書について「専門的な内容を,質を落とさず平易に解説している点だけでも十分に価値がある」と評価された上で,随所に織り交ぜた日本語との比較対照によって「英語だけでなく日本語への理解も深まり,言葉そのものの面白さや奥深さに気づかせてくれる」点に本書の大きな魅力がある,との言葉を寄せてくださいました.
 拙著『なぜさんたんげん』では,現代英語の不規則性や文法上の謎を英語史の観点から解きほぐすだけでなく,日本語という身近な母語のレンズを通すことで,ことばのダイナミズムを立体的に体感していただくことを意識して執筆しました.専門家として記述の厳密さは担保しつつ,一般読者の方々へそのエッセンスを届けるという挑戦に対して,まさに意図したところを汲み取っていただけた思いです.著者として大きな励みになります.
 ありがたいことに,刊行以来,雑誌媒体のみならず SNS,ブログ,note,YouTube 等のウェブ上の各種メディアでも,本書に関する熱のこもったご感想や書評,紹介動画などが数多く寄せられています.こうした皆さんからの反響については,著者公式の特設ページにて随時一覧化し,まとめています.
 この特設 HP では,いただいたレビューの紹介にとどまらず,本書と関連して音声・動画コンテンツへのリンクも豊富に取り揃えています.本書をすでにお読みいただいた方の復習や深掘り用としてはもちろん,これから手に取ってみようとお考えの方のガイドとしても活用いただけると思います.ぜひ一度特設 HP を覗いてみてください.日々更新しており,アクセスカウンターは2,700を超えています.
 引き続き,ブログ,note,各種 SNS,あるいは Amazon などのレビューサイトなど,様々な媒体でのご感想・レビューをお待ちしています.皆さんからの声が,英語史の魅力をより多くの方へ届ける大きな力となります.「hel活」の一環としても,ぜひ率直な声をお寄せいただけますよう,お願いします.

 ・ 西脇 幸太 「書評:『英語史で解く英文法の謎 「なぜ3単現の s」をつけるのか』(堀田隆一著,NHK出版新書,1,078円)」『英語教育』(大修館) 2026年9月号,2026年.70頁.
 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-08-25 Tue

#6329. 昨朝の朝日サンヤツ広告に『英語語源ハンドブック』が掲載 --- 物書堂からのアプリ版も [hee][notice]

asahi_sanyatsu_hee_20260823.jpg



 一昨日の8月23日(日)付の朝日新聞朝刊の第1面下部,「サンヤツ広告」の枠に,研究社より刊行されている『英語語源ハンドブック』 (=HEE) の広告が掲載されました.
 広告のキャッチコピーには「見慣れた単語から,英語が四次元的に見えてくる!」と大書されており,本書のコンセプトである「約1000の基本語について,意味・語形・発音の変化や,単語間の隠れた絆などを徹底解説」という魅力がコンパクトに凝縮されています.刊行から1年以上が経ち,ありがたいことに重版を重ねていますが,こうして新聞広告という大きな媒体を通じて,一般の読者の方々へも本書の存在が届く機会をいただけるのは,本当に嬉しい限りです.
 そして,広告の下部をよく見ていただくとお気づきになるかと思いますが,そこには「iOSアプリも好評発売中です」の文言とともに,QRコードが添えられています.そう,去る6月30日に,辞書アプリの雄である物書堂さんよりリリースされた,HEE のアプリ版です.
 このアプリ版の存在は,本書の使い勝手を文字通り「別次元」へと引き上げてくれます.先日 Voicy heldio で配信した「#1871. 『英語語源ハンドブック』(冊子版・アプリ版)の使用感をヘビーユーザーの皆さんに聞いてみました」でも,ヘビーユーザーの方々から熱い反響をいただきましたが,物書堂アプリならではの「全文検索」の威力は圧倒的です.うろ覚えの語句や,解説文のなかに登場するキーワード,あるいは「グリムの法則」といった専門用語からでも,瞬時に関連記述へアクセスすることができます.さらに,物書堂アプリ内で他の英和辞典などと連携し,シームレスにジャンプしながら調べ物を進められる体験は,一度味わうと手放せなくなると好評です.(hellog 記事「#6293. 皆さん『英語語源ハンドブック』(冊子版・アプリ版)をどのように使っていますか?」 ([2026-07-20-1]) も参照.)
 出版社である研究社の方からも「書籍版と併せてお勧め」したいとのこと.紙の冊子版がもつ「通読して全体のネットワークを俯瞰する」「余白に書き込める」という良さと,アプリ版が誇る「圧倒的な携帯性と検索性」という強みが,みごとな相乗効果を生み出しているといえます.
 現在アプリ版をご利用いただけるのは iOS (iPhone/iPad) ユーザーの方に限られますが,お手持ちのデバイスにこのハンドブックを入れておけば,日常のふとした瞬間にいつでも語源の森へ分け入ることができます.外出先での学習はもちろん,英語を教えていらっしゃる先生方にとっても,授業の合間にサッと引ける最高の「虎の巻」となるはずです.Android ユーザーの私としては,Android 版の登場も待ちたいところです.
 冊子版をお持ちの方も,まずはアプリ版から入ってみたいという方も,ぜひこの機会にアプリ版『英語語源ハンドブック』をご活用いただければと思います.両者を併用することで,英語の語彙の世界がさらに立体的,かつ四次元的に広がっていくはずです.
 この機会に,私が制作・公開している『英語語源ハンドブック』特設HPも,ぜひ訪れてみてください.『英語語源ハンドブック』に関する最近の関連記事として,以下もご参照いただければ.

 ・ 「#6265. 『英語語源ハンドブック』刊行から1年 --- 索引と正誤表の最新版も」 ([2026-06-22-1])
 ・ 「#6278. 「居酒屋KKH」 --- 『英語語源ハンドブック』発売1周年記念のオンライン対談」 ([2026-07-05-1])
 ・ 「#6293. 皆さん『英語語源ハンドブック』(冊子版・アプリ版)をどのように使っていますか?」 ([2026-07-20-1])

 今後とも,『英語語源ハンドブック』の冊子版・アプリ版ともども,ご愛読・ご愛用いただけますよう,よろしくお願いします.

 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-08-24 Mon

#6328. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第6回 --- 英語は本当に「直接的」なのか [inohota][ippeiinoue][youtube][inohota_rensai][sociolinguistics][pragmatics][notice][inohotanaze][speech_act]


inohota_rensai_eigokyouiku_20260812_front_cover.png

  *

 月刊誌『英語教育』(大修館書店)にて,同僚の井上逸兵氏(慶應義塾大学)とともに「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を連載しています.8月12日に発売された9月号に,第6回記事「英語は本当に「直接的」なのか ―― 「察し」を再考する」が掲載されました.
 今回のメイン執筆者は井上逸兵さんです.世間でよく耳にする「日本語は察しの文化,英語ははっきりと意思表示する言語」というステレオタイプを,社会言語学や語用論の視点から鮮やかに切り崩していく,痛快で知的な論考となっています.
 記事ではまず,ビジネスシーンなどでも安易に持ち出されがちな「高コンテクスト/低コンテクスト」という文化の2分法に対して疑問符が投げかけられます.親しい英語母語話者同士の会話がきわめて高コンテクストであるように,どのような言語共同体であっても間接的な伝達や「察し」は存在します.
 本稿の中心となるのは,英語の慣用表現にみられる高度な間接性の分析です.たとえば,相手への押しつけを弱める依頼表現 I don't suppose you could help me with this, could you? や,異議を婉曲に伝える We might want to reconsider that. など,字面通りの意味とは異なる意図を聞き手に推論させる「型」が英語には豊富に備わっています.また,イギリス英語でとりわけ好まれる皮肉や控えめな表現を取り上げ,散々な結果の後に発せられる Well, that went well. のように,表面の意味をひっくり返して理解させる複雑な言語行為の仕組みを解き明かしています.これらは単なる当てこすりではなく,前提を共有する者同士の仲間意識を確かめ合う機能を持つという指摘にも納得させられます.
 さらに興味深いのは,映画翻訳の対照分析です.挙げられている例については記事本体を参照いただければと思いますが,相手への直接的な働きかけを避け,状況を示して判断を相手に委ねる英語のあり方は,まさに「独立」の尊重と「つながり」の維持という2つの対人関係的配慮から生まれているのです.
 記事の末尾には,恒例の「相方からの一言」も付しています.現在,サバティカル研究でイギリスやアイルランドに滞在している私自身の実感としても,人間関係に影響する場面で用いられる回りくどい言い回しや,高度な皮肉には日々遭遇しており,まさに英語における「察し」の奥深さと難しさを肌で感じているところです.
 形式上の直接性と実際のコミュニケーションにおける直接性の違いに目を向けることで,英語と日本語の新たな側面が見えてくる好編となっています.ぜひ全国の書店やオンライン書店にて,『英語教育』9月号を手にとっていただければ.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第6回 「英語は本当に「直接的」なのか ―― 「察し」を再考する」『英語教育』2026年9月号,大修館書店,2026年8月12日.44--45頁.

Referrer (Inside): [2026-08-26-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-08-17 Mon

#6321. ari さんによる heldio/helwa ファンサイト「Helvillain Heal」が登場 [notice][helkatsu][helwa][heldio][link][helmate][helvillian][oe_text]


Helvillain_Heal_by_arisan_20260813.png



 昨今,hel活の熱気が各所で高まりを見せているが,また1つ,まことにありがたく貴重なウェブサイトが誕生した.8月14日,heldio/helwa のコアリスナーでhel活界隈でも精力的に活動されている ari さん さんが,heldio/helwa のファンサイト「Helvillain Heal」を開設してくださった.ari さん,ありがとうございます!
 このサイトは,私の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」,およびプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」を応援する有志(= ari さん)によって編集・公開されているポータルサイトである.サイトトップの案内にもある通り,リスナーコミュニティ「Helvillian の中でも,こっそりと行動する Helvillain の館」というコンセプトだそうだ.Helvillian ではなく Helvillain であるところに注目である(ダジャレなのだが,一応これを述べておかないと,微妙すぎて読者が混乱する恐れがある).
 サイトを覗いてみると,現時点で大きく分けて2つの主要コンテンツが整理されている

 ・ Voicy heldio での古英語・中英語音読回へのリンク集:heldio で配信してきた古英語・中英語のテキストを読み上げる「音読回」が,学びやすいように整理されている.素朴に古英語や中英語の音声に触れてみたい学習者にとって,絶好のガイドとなる.
 ・ 月刊ウェブマガジン Helvillian 各号へのリンク集:有志ヘルメイトの皆さんが制作してくださっている英語史とhel活に関する月刊ウェブマガジン Helvillian について,創刊号から最新号に至るまでの表紙画像および各記事へのリンクがずらりと並んでいる.

 過去の記事でも触れてきた通り,Helvillian の毎号の充実ぶりには目を見張るものがある.このようにバックナンバーも含めて一覧・アクセスできる環境を整えていただき,hel活コミュニティ全体にとっても大きな財産となる.まさに「英語史をお茶の間に」広めるhel活の真骨頂だ.
 有志ヘルメイトの ari さんによ自発的な広報・アーカイブ活動が,こうして素晴らしい形を取って立ち上がったことに,身近な者として深い感謝と敬意を表したい.このような仲間の情熱に支えられながら英語史の輪が広がっていくのを実感するのは,本当に嬉しい.
 このサイトの今後の更なる展開やコンテンツの拡充も,大変楽しみにしている.hellog 読者の皆さんも,ぜひ「Helvillain Heal」を訪問し,ブックマークの上,日々の英語史の学びに活用していただければ.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-08-15 Sat

#6319. 8月22日(土)の朝カル講座「"riddle" を探って古英語原文の世界へ」 [asacul][notice][kdee][etymology][hel_education][helkatsu][oe][oe_text][anglo-saxon][riddle][kochushoho][alliteration][oe_poetry][hee]


asacul_20260725.png



 来週末の8月22日(土) 15:30--17:00 に,朝日カルチャーセンター新宿教室にてオンライン講座が開講されます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」の夏期第2回(通算第17回)となります.今回はriddle を探って古英語原文の世界へ」と題して,「謎」を意味する単語に迫ります.
 現代英語の riddle は「謎,なぞなぞ」を意味する単語ですが,英語史・語源学の観点から紐解くと,アングロサクソン人の「読み書き文化」の原点につながる,文字通り謎に満ちた世界が広がっています.今回の講座では,主に3つの切り口からこの単語を解読していきます.
 第1のポイントは,riddleread の語源的関係です.riddle は,動詞 read に接尾辞が付加された派生語にすぎません.古英語の rǣdan (to read) は本来「解釈する;助言する」などを意味していました.つまり,古代人にとって「読む」とは,与えられた暗号や謎を「解読する」行為そのものだったのです.さらに視野を広げて,write (原義は「引っ掻く」),book (ブナの木),rune (秘密・囁き)などの語源もあわせて紹介します.これらの単語の語源をつなぎ合わせていくと,ゲルマン民族が文字や書物,そして読み書き文化をどのように受容し発展させてきたのか,その文化的背景が見えてきます.
 第2のポイントとして,(次の第3のポイントを見据えて)古英詩 (Old English poetry) の世界と頭韻 (alliteration) の役割,そしてルーン文字の文化を覗いてみます.先日,私自身が現地で実物を見てきたスコットランド Dumfriesshire の Ruthwell Cross は,古英詩 The Dream of the Rood の断片がルーン文字で刻まれた,8世紀初頭のものと考えられている有名な石碑です.その訪問体験談や写真を紹介しつつ,アングロサクソン人の詩的言語生活の一端を感じてみます.古英詩は現代詩のような脚韻 (rhyme) ではなく,音節頭の子音を揃える頭韻によってリズムを取っていました.この頭韻が,単なる音の装飾にとどまらず,詩の構造や記憶,さらには解読の鍵としていかに決定的な役割を果たしていたかを解説します.
 第3のポイントは,古英語文学における「謎詩」 (Riddles) という独特のジャンルの鑑賞です.古英語期には,事物や自然現象が自ら「私は誰でしょう?」と語りかける詩が数多く残されました.今回の講座では,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)の IX. RIDDLES より,(3) Bookworm (Riddle XLVII) を古英語原文で解読してみます.「本を食う虫」を描いた短い詩ですが,頭韻の配置に注意しながら丁寧に読んでいきます.あわせて,かつては「竜;蛇」を指していた worm の意味変化についても取り上げます.
 講義資料で原文や文法解説をしっかりサポートしますので,テキストをお持ちでなくても問題ありません.古英語原文に触れたことがない方でも安心してご参加いただけます.
 講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.なお,次回(夏期第3回)の日程と内容は次の通りです.

 ・ 夏期第3回(2026年9月26日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "through" を探って中英語原文の世界へ

 皆様のご受講をお待ちしています.
(以下,後記:2026/08/19(Wed))
 今回の講座については Voicy heldio でも案内を放送しています.ぜひ「#1907. 8月22日(土)の朝カル講座は riddle を深掘り」をお聴きください.


 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-08-11 Tue

#6315. 2026度の朝カルシリーズ講座の夏期の初回(7月回)「king を探って古英語原文の世界へ」のまとめ [asacul][notice][hel_education][oe][oe_text][anglo-saxon_chronicle][kochushoho][haplology][phonemicisation][phoneme][kenning][synonym][alfred][viking][etymology][kdee][hee][beowulf][anglo-saxon]

 7月25日(土)に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて今年度の夏期第1回(シリーズ通算第16回)となるオンライン講座を開きました.夏期クールのテーマも引き続き「歴史上もっとも不思議な英単語」ですが,今回は「king を探って古英語原文の世界へ」と題し,国家の世襲的君主を表わす基本語 king の起源と発達に迫りました.参考テキストには今期も市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)を活用し,今回は古英語のテキストから「王」が登場する箇所を読み解きました.
 講座でまず注目したのは,king の語源的背景と仲間となる単語群です.古英語の cyning は「一族,血族」を意味する cynn (現代英語 kin)に,所属・由来を表わす接尾辞 -ing が付いたもので,原義は「一族の者」でした.さらに遡ると印欧語根 *gen(ə)- (生む,生じさせる)に行き着き, generous, gender, nature など膨大な語彙ネットワークと繋がっています.また,古英語の詩にあふれる「ケニング」 (kenning) と呼ばれる隠喩的複合語を取り上げ,古英詩『ベオウルフ』にみられる bēagġyfa (指環を与える者)や goldwine (黄金の友)といった「王」の多彩な表現を紹介しました.
 音変化や語彙体系の観点からも興味深い事実を確認しました.語形面では,古英語 cyning から cyng への変化に見られる重音省略 (haplology) や,中英語から近代英語にかけての /kɪŋg/ から /kɪŋ/ への変化,すなわち軟口蓋鼻音の音素化 (phonemicisation) に触れました.また,形容詞における kingly (本来語),royal/regal (フランス借用語),monarchic(al) (ギリシア借用語)という語彙の3層構造にも触れ,なぜ kingqueen という基本語がフランス語に置き換えられずに生き残ったのかという問題についても考察しました.
 講座の後半では,『古英語・中英語初歩』の pp. 94--98 に収められている『アングロサクソン年代記』 (anglo-saxon_chronicle) より,896年のアルフレッド大王 (King Alfred) に関する記述の一部を読解しました.デーン人(ヴァイキング)の侵略に対抗するため,大王自ら従来の倍の大きさを誇る長船(ロングシップ)の建造を命じたエピソードです.アングロサクソン王国を死守した英雄としてのアルフレッド王の戦いの準備について,古英語の原文を通じて受講者の皆さんと味わいました.
 夏期クールの第2回は,8月22日(土)に「riddle を探って古英語原文の世界へ」と題して開講されます.古英語のなぞなぞ文化とこの単語の語誌に迫る予定です.ぜひ朝カルのこちらの公式ページよりお申込みください.

 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-08-02 Sun

#6306. 英語史の月刊ウェブマガジン Helvillian の2026年8月号が公開されました [helwa][heldio][notice][helmate][helkatsu][helvillian][link][nazesantangen][dubline_guinness_recording_session]



 7月28日,有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 8月号が公開されました.通算第22号となります.
 まず,編集委員の Galois さんによる素晴らしい表紙デザインが目を引きます.今号の「表紙のことば」を担当されたのは,佐久間さん(helwa のハンドルネーム「無職さん」)です.上海の外灘(ワイタン)に建つ旧中国税関の時計塔を取り上げ,イギリス帝国の領土拡大と英語の世界進出の歴史を重ね合わせて解説してくれています.ロンドンの Big Ben をモデルとし,かつて「ウェストミンスターの鐘」を響かせていた時計塔が,現在では革命歌「東方紅」を奏でているという歴史の皮肉は,まさに英語史が世界史の一部であることを思い出させてくれます.専門家である佐久間さんは,日本歯科医史学会や救急蘇生法教育の歴史に関する記事も寄稿されています,
 今号の収載記事も,多種多様で魅力的なラインナップが揃っています.前号に引き続き熱を帯びているのが『なぜさんたんげん』関連の記事です.ari さんによる「英子さんたんげん」や「3単現」関連の記事,しーさんによる「日本語で読もう!『なぜさんたんげん』」,あまねちゃんさんによる「載りそうで載らなかったトピックを想像してみた」シリーズなど,多角的なアプローチで『なぜさんたんげん』を盛り上げています.
 語源や英語史の深掘り記事も百花繚乱です.mozhi gengo さんは plaster, pairing, bear などいつもながらに様々な語源を取り上げられていますが,他のヘルメイトのhel活と互いに影響を与え合う話題選びも目立ち,「hel活の輪」を体現しています.同じように,ykagata さんの houseghost やドイツ語に絡めた多様なコンテンツも,「hel活の輪」を回し続ける動力源です.lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート D」は職人技の域に達していますね.sorami さんの「中学生向け英語語源クイズ」,川上さんの「homework と housework の違い」をはじめとする素朴な疑問系のトピック,みーさんによる「小学生と学ぶ英語史」シリーズなど,教育現場や日常に即したコンテンツが目白押しです.
 さらに,Lilimi さんの『古文と漢文』読書記,rei さんの ghost から spirit への「helwa 論」,こじこじ先生によるオリジナル曲の披露,kendama_player さんによる英語史講座報告など,ヘルメイト個々の関心と創造性が炸裂しています.
 新刊書,宮嵜 由美・八木橋 宏勇(編)『響き合うことばと社会』(開拓社)を記事で紹介された Grace さんは,「helwa のあゆみ」も執筆されています,北千住オフ会での Baugh and Cable 精読会や,急遽開催され大盛況となった「ダブリン・ギネス収録会」の熱気が記録されています.
 そして,研究者論や helwa 論にも関心の強い umisio さんによる「編集後記」は必読です.井上逸兵先生の「ゆる言語学ラジオ」出演に端を発した酷暑の「ボケ」大ブームと,ari さんの極上 note 記事「青椒肉絲の美味しい店」をめぐりリスナーや私の大混乱をユーモアたっぷりに語ってくれています.
 今号の目次を取りまとめてくださった Lilimi さん,そして編集委員の Galois さん,Grace さん,umisio さん,本当にありがとうございました.
 hellog 読者の皆さんも,ぜひ Helvillian 8月号を開いて,この熱気あふれる学びの場を体験してみてください.そして,この熱いhel活の輪に加わりたいと思われた方は,ぜひ Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」 へお越しください.その日からあなたもヘルメイトです!

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-31 Fri

#6304. deeranimal を『英語語源辞典』で読み解く by 寺澤志帆さん&lacolacoさん [notice][kdee][hel_education][helkatsu][khelf][terasawashiho][voicy][heldio][semantic_change][etymology][french][latin][borrowing][kenkyusha]



 今朝の Voicy heldio にて「#1888. deer と animal --- 『英語語源辞典』読み解きシリーズ by 寺澤さん&lacolacoさん」を配信しました.前回の beast 編に対応する hellog 記事「#6301. beast を『英語語源辞典』で読み解く by 寺澤志帆さん&lacolacoさん」 ([2026-07-28-1])) に続く,『英語語源辞典』 (= KDEE) 読み解きシリーズの後半戦となります.
 今回も khelf(慶應英語史フォーラム)の寺澤志帆さんと,heldio/helwa コアリスナーの lacolaco さんによる対談形式でお届けしています.研究社さんのご許可のもと,今回の精読対象である2語の辞典項目画像を以下に掲載します.


kdee_deer_animal.png



 今回の後半戦は,beast の記事の白ダイヤ(注釈部)に突如現れた2つの重要語 deeranimal へと接続・深掘りしていく展開となりました.
 まず,lacolaco さんがリード役となり deer の項目を読み解いていきます.古英語の本来語 dēor は,もともと一般的な「動物」を意味していました.それが中英語期にフランス語から入ってきた beast に押され,やがて「鹿」という特定の動物へと語義が特殊化していった経緯が紐解かれます.lacolaco さんの精読を受け,寺澤さんが補足やコメントを加える形で解説と議論が深まっていきます.
 後半では,寺澤さんがリード役を務めて animal の項目を精読していきます.ラテン語 anima 「空気,息,命,魂」に由来するこの語が,16世紀の近代英語期に(再)導入され,やがて beast に代わって「動物」の代表表現の座に就いていくプロセスの記述を読み解きます.その後,お二人による beast, deer, animal 全体を俯瞰した総合的なディスカッションへと発展していきます.意味変化が実際にはストレートな過程ではなく,複雑な現象であるという重要な洞察も得られました.
 「本来語 deer > フランス借用語 beast > ラテン借用語 animal」という勢力図の遷移と意味変化のグラデーションが,辞書記述を通じて立体的に浮かび上がってきます.「動物」とはいったい何なのか,という悩ましい問いも立ち上がってきました.解説の最後で突如現れた古英語の家畜を表す単語 nēat に,お二人が「これは何だ?」と困惑する一幕もあり,精読のライブ感が伝わってきます.
 なお,lacolaco さんはご自身の note 過去記事でで deeranimal について整理されていますので,合わせてお読みください.

 ・ 「英語語源辞典通読ノート D (deduce-deictic)」
 ・ 「英語語源辞典通読ノート A (angle-animal)」

 語源辞典を1項目ずつ丁寧に読み解くことで,単なる単語の暗記を超えた英語史のドラマが立ち現れてきますね.ぜひお手元に『英語語源辞典』をご用意の上,または本配信をきっかけに1部入手していただき,この知的な冒険の音源をお楽しみください!


寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.



 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-28 Tue

#6301. beast を『英語語源辞典』で読み解く by 寺澤志帆さん&lacolacoさん [notice][kdee][hel_education][helkatsu][khelf][terasawashiho][voicy][heldio][semantic_change][etymology][french][latin][borrowing][gvs][kenkyusha]



 今朝の Voicy heldio にて「#1885. beast --- 『英語語源辞典』読み解きシリーズ by 寺澤さん&lacolacoさん」を配信しました.先日の「#6298. 好評のうちに完結 --- heldio 『英語語源辞典』読み方シリーズ bear 編」 ([2026-07-25-1]) が好評だったことを受け,heldio での『英語語源辞典』 (=KDEE) の読み解きシリーズを本格的に継続することにしました.
 今回も解説を担当してくれるのは,khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバーで「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」を日々連載中の寺澤志帆さんです.そして,もう一方,強力な助っ人にもご参加いただきました.heldio/helwa コアリスナーで「英語語源辞典通読ノート」を執筆されている lacolaco さんです.KDEE 通読・精読のトップランナーのお二人による対談という,実に豪華で魅力的なコラボレーションが実現しました.
 今回注目した単語は beast です.研究社さんのご許可のもと,該当する辞典項目を画像として以下に掲載していますので,ぜひ画像を眺めながら,またお手元に辞書がある方は該当ページを開きながら,じっくりお聴きいただければと思います.


kdee_beast_small.png



 beast の項目の精読・解説は,英語史の深さとおもしろさが凝縮された内容となっています.英語史における初出は1200年より前とされる中英語の文献 Ancrene Riwle に遡ります.まず注目すべきは語義の記述順です.KDEE では「動物」が最初にあがり,続いて「獣;野獣」と記載されています.一般的な英和辞典とは異なり,KDEE では歴史的に古く用いられた意味の順に配列されているため,beast は英語に入ってきた当初,現在の animal に相当する一般的・広義の「動物」を意味していたことが分かります.
 語源としては,中英語の best(e) から大母音推移 (gvs) を経て現代の発音・綴字に至っています.この単語自体は古フランス語 beste (現代フランス語 bête)からの借用であり,それは俗ラテン語 *besta(m) に遡ると考えられ,古典ラテン語 bēstia(m) に対応します.対談では,俗ラテン語(話し言葉)と古典ラテン語(書き言葉)を結ぶ「=」記号の持つ深い意味合いや,凡例の読み解きをめぐり,音源を聴いた私も大いに唸らされる精密な議論が交わされました.
 さらに興味深いのは,beast をめぐる意味変化と「取って代わる関係」のドラマです.beast はもともと古英語の本来語 dēor (現代の deer)に取って代わって一般的名称「動物」の座に就きました.しかし近代英語期になると,今度はラテン語由来の animal にその座を追われ,自身の語義は「野獣,獣」へと限定・縮小していったのです.1611年の近定訳聖書では,まだこの過渡期の様相,すなわち一般の「動物」と「野獣」の両義で使われている状態が観察できます.
  なお,おおもとの印欧祖語としては *dhwes- (息をする)にさかのぼる説も示唆されていますが,これは animal の語根の意味「息をするもの」とも響き合い,言語のロマンを感じさせます.
 語源辞典の記号ひとつにまで目を配る精密な読み解きと,そこから広がる言語変化のダイナミズムを,ぜひ音声でお楽しみください.今回の配信は beast をめぐるお二人の対談の前半戦となりますので,近日公開予定の後半戦もお楽しみに!
 また,寺澤さんの直接の記事「386. beast ―『英語語源辞典』読み解き解説第2弾―」もお読みください.


寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.



 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

Referrer (Inside): [2026-07-31-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-26 Sun

#6299. 2026度の朝カルシリーズ講座の初回(6月回)「ghost を探って古英語原文の世界へ」のまとめ [asacul][notice][hel_education][oe][oe_text][riddle][semantic_change][lexicology][synonym][spelling][gh][flemish][caxton][kochushoho][gvs][ghost_word][etymology]

 1ヶ月ほど前のことになりますが,6月27日(土)に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて今年度の春期第3回(シリーズ通算第15回)となるオンライン講座を開きました.シリーズ全体のテーマは「歴史上もっとも不思議な英単語」です.今回は「ghost を探って古英語原文の世界へ」と題し,現代英語で「幽霊」を意味するお馴染みの単語 ghost の波乱に満ちた歴史を深掘りしました.参考テキストには,今期継続して活用している市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)を用い,古英語の原文のなかに生きる ghost の姿を味わいました.
 今回の講座で大きく取り上げたのは,ghost の意味変化と名義変化です.現代でこそ「幽霊,死者の霊」という意味が主ですが,古英語の gāst は本来広く「生命の根源;魂,霊魂」全般を指す語でした.しかし,抽象的な「魂」の意味領域を本来語の soul やフランス借用語の spirit に譲り渡した結果,ghost は「恐ろしい死者の霊」という限られたニッチに押し込められることになりました.これに伴い,キリスト教の「聖霊」を意味する名称も,かつての Holy Ghost から,現代語訳聖書で一般的な Holy Spirit へと移り変わったのです.
 発音と綴字の観点からも,ghost はきわめて興味深い変化を示してきました.発音面では,古英語の長母音 /ɑː/ (gāst)が,中英語を経て大母音推移をくぐり抜け,現代の2重母音 /oʊ/ に至るという規則的な発展を遂げています.
 一方,不規則でミステリアスなのが綴字に見られる <gh> です.15世紀,イギリス近代印刷の父 William Caxton がフランドル地方から印刷術を導入した際,オランダ・フラマン系の印刷工たちが,自言語の gheest の綴字習慣を英語の gost に持ち込んだとされています.まさに「タイポグラフィーの幽霊」といえます.また,講義では文献学者 Walter W. Skeat による「幽霊語」 (ghost_word) の話題や,辞書盗用を防ぐ「mountweazel 語」などの脱線話にも触れました.
 講座の後半では,『古英語・中英語初歩』の p. 120 に収められている古英語のなぞなぞ詩 The Riddles の第1詩「嵐」に目を通しました(時間不足で詳しく解説できませんでしたが).自然の猛威を描く力強い詩行のなかに,"flǣsc ond gǣstas" 「肉体と霊魂」という形で ghost の複数形が登場します.現代の「幽霊」とは異なり,肉体と対をなす「生きている魂」として機能していた古英語本来の用法を,受講者の皆さんと直接確認しました.
 さて,朝カル講座は夏期クール(7月--9月)へと入っています.第1回は昨日7月25日に「king を探って古英語原文の世界へ」と題して開講されました.8月以降の回についてご関心のある方は,ぜひ朝カルのこちらの公式ページよりお申込みいただければ.

 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-24 Fri

#6297. 英語史の話題が一日中流れ続ける「The HEL Hub」の RSS [helhub][helkatsu][notice][hel_education][helvillian]

helhub_lp.png



 9ヶ月前に私が開設した,私の周囲に集まってくる英語史コンテンツのポータルサイト The HEL Hub (helhub) は,この hellog よりも地味であまり知られていないのですが,強力なポータルです.開設時の記事「#6028. hel活の新たな基地が完成 --- ポータルサイト「The HEL Hub」」 ([2025-10-28-1]) をご参照ください.
 私は「英語史をお茶の間に」をモットーに英語史を広める活動「hel活」 (helkatsu) を展開していますが,このhel活に賛同してくれる仲間がたくさんいます.khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバー,Voicy heldio から派生したプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」のメンバー,その他の研究者の仲間たちです.このような賛同者の方々のことを,親しみを込めて「ヘルメイト」 (halmate) と呼んでいます.
 このヘルメイトの皆さんの日々のhel活 --- 主に note などウェブ上のプラットフォームでのコンテンツの発信 --- の勢いが,この1年間ほどをみても,明らかに増してきています.note 上の #hel活 タグを有する記事は,現時点で2040件を超えています.
 上記の helhub は,日々ヘルメイトや私自身の手により公開される英語史関連コンテンツに関する情報を一元化したいという趣旨で作ったページです.具体的には,各ヘルメイトの発信基地の RSS から,数時間に1度ほど,半自動で最新情報を拾ってきて,新着情報を更新しています.コンテンツは常時どんどん流れていっており,私も追いついていけないほどのスピード感です.
 さて,今日ご紹介したいのは,この私の周囲の「hel活まとめサイト」ともいえる helhub 自体の RSS フィード です.こちらを RSS リーダーなどに登録していただくと,「英語史の話題が一日中流れ続ける」ということの意味が,実感できるのではないかと思います.四六時中,誰かが英語史に直接・関節にかかわる何かを発信していることに驚くはずです.
 私自身が発信している hellog や heldio もさることながら,ヘルメイトの皆さんの自主的な探究心と発信力の高さには驚かされるばかりです.専門的な語源解説から,小中学生向けの易しい英語史,マニアックな文法・綴字の考察,さらにはクイズ企画まで,その切り口の多才さには脱帽します.
 英語史は,決して大学や学会のなかに閉じこもった学問ではありません.こうして多様な人々が日々言葉の歴史をおもしろがり,語り合う文化が着実に根付いてきています.「英語史をお茶の間に」が,現実のものとなりつつあることを,この RSS のフィードが物語っています.
 最近おもしろい読み物はないかな,英語(史)の知識を深めたいな,と思っている方は,ぜひ The HEL Hub を定期的にご訪問ください.そして,日常的に英語史の風を感じたい方は,helhub の RSS フィード をご自身の RSS リーダーに登録してみてください.日常のタイムラインに,怒涛のように英語史の話題が流れ込んでくる刺激的な体験をお約束します.
 最後に,helhub とは別に,有志ヘルメイトによる編集委員会が,ヘルメイト皆の note 上でのhel活を月に一度まとめてくださっている「月刊ウェブマガジン Helvillianという媒体もあります.helhub とも関連が深いので,ぜひこちらもフォローしていただければ.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-23 Thu

#6296. 「ゆる言語学ラジオさんに説教されましたー!」 --- いのほた最新回 [notice][inoueippei][yurugengogakuradio][inohota][youtube][outreach]



 「#6289. 井上逸兵さんが「ゆる言語学ラジオ」に3度目の登場」 ([2026-07-16-1]) で紹介したとおり,人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)が3度目(最終回)のご出演をされました.それを受けて,昨日公開された「いのほた言語学チャンネル」の最新回にて,反省会を開きました.「ゆる言語学ラジオさんに説教されましたー!」(20分ほどの動画)をご覧ください.
 今回の動画は,ゆる言語学ラジオでの井上さんの学ラン姿でのコント風ご出演と,堀元さんによる本気の YouTube 論を受けた振り返りトークとなっています.実はこの学園コント企画,2年前の2024年冬に両チャンネルのメンバー4名で会食した折に上がってきたもので,2年越しの計画として結実したものでした.堀元さんの卓越したエンタメ性と魂の入った YouTube 論には,私も大いに刺激を受け,学ぶことばかりでした.
 動画内では,エンタメや編集技術の反省にとどまらず,現代における知のあり方や大学の役割についても議論が及びました.従来のように大学が知の唯一の頂点や中心として君臨する時代は過ぎ去り,現代は分散型の知の潮流の中にあります.そのような状況において,大学や研究者には,知のキュレーターやオーガナイザー,あるいは開かれた知のサークルの1メンバーとしての柔軟な役割が求められているのではないか,と語り合いました.
 現在私が海外に滞在しているため Zoom での遠隔収録となっていること,画面のアスペクト比や編集,音声レコーディングの話題など,技術面での裏話にも触れています.9月末には日本へ帰国する予定で,10月からは再び2人並んでの対面収録をお届けできる見込みです.
 昨年刊行された共著『言語学でスッキリ解決! 英語の「なぜ?」』(ナツメ社)や,雑誌『英語教育』でのコラボ連載など,動画にとどまらない2人の発信活動についても紹介しています.ゆる言語学ラジオの視聴者の方々にも,一味違った角度から英語学・言語学の奥深さを味わっていただければ幸いです.
 おかげさまで「いのほた言語学チャンネル」は開設から4年と5ヶ月が経ち,チャンネル登録者は2万2千人を超えています.今後とも英語学・言語学のおもしろさを伝えていきたいと思います.「いのほた言語学チャンネル」をよろしくお願いします.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』 ナツメ社,2025年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-22 Wed

#6295. 『なぜさんたんげん』発売から42日 --- 特設HPが「ポータルサイト」へと成長・進歩を遂げています [notice][voicy][heldio][link][helkatsu][nazesantangen][review][links][nazesantangen_witness][nhkpb]


nazesantangen_lp_20260722.png



 6月10日(水)の『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版)の刊行から,早くも6週間が経ちました.おかげさまで,発売前増刷に始まり,現在も全国の書店で第2刷が展開されるなど,大変大きな反響をいただいております.読者の皆様,そして日々盛り上げてくださっているヘルメイトの皆さん,ありがとうございます.
 さて,本日は刊行と同時に立ち上げた『なぜさんたんげん』特設HPについて改めてご紹介します.本書特設サイトとしてスタートしたこの Web ページですが,発売後のこの1ヶ月あまり,ほぼ毎日にわたってコンテンツを更新・追加してきた結果,単なる新刊紹介の域を超え,文字通り『なぜさんたんげん』を取り巻く公式ポータルサイトへと進化を遂げています.
 サイト上のアクセスカウンターも,本記事の執筆時には2493アクセスを記録しており,連日多くの方にお越しいただいています.改めて,現在の特設HPがどのような充実した構成になっているのか,その見どころをご案内します.

 1. 豪華陣容による反響・推薦の声:英語史研究者の寺澤盾先生(青山学院大学教授,東京大学名誉教授)からお寄せいただいた特別寄稿レビューをはじめ,杏林大学の倉林秀男先生による4連スレッド・ロングレビュー,慶應義塾大学の川原繁人先生,九州大学の内田諭先生,上智大学の小河舜先生といった専門家による熱い推薦コメントを掲載しています.さらに,SNS や note,ブクログ等で寄せられた読者の皆さんの生の声を凝縮して掲載しています.
 2. 連動メディア・コンテンツへのリンク:著者自身による本文の公式朗読音声ページへのリンクのほか,NHK出版編集者の田中菜乃香さんとの Voicy 対談全7回,リスナー川上さん企画「聞かせて!『なぜさんたんげん』のなぜ」シリーズ,さらには在外の著者による現地からの最新 YouTube ミニ動画など,本と立体的に連動する音声・動画コンテンツへワンクリックでアクセスできます.
 3. 全目次 & インテリジェントリアルタイム検索機能:本書に詰め込まれた24の疑問とすべての章・節・小見出しを完全網羅.ページ上の検索窓にキーワード(例:「屈折」「マジックe」「語順」など)を入力すると,瞬時に該当するトピックが絞り込まれる便利なシステムを実装しています(←生成AIを用いて密かに実装しているのですが,ほとんど知られていません).
 4. 「24の疑問・総選挙」最終結果:発売前に実施し,投票総数96件を集めた Slido 総選挙の確定順位を全公開しています.堂々1位の「なぜ3単現の s をつけるのか」から,予想外の健闘を見せた「Z のミステリー」まで,読者のモヤモヤ度が一目でわかります.
 5. なぜさんたんげん目撃マップ & 全国書店棚ギャラリー:読者の皆様から寄せられた全国各地の目撃情報をもとに作成した Google Map (すでに100ピン近く立っています)と,撮影許可をいただいた全国の書店様の愛あふれる売り場写真をズラリと展示しています.すでに50枚以上の書棚写真が掲載されています.
 6. 授業用「英語史無料レジュメ」& 店頭用POPポスター配布:全国の中学・高校・大学の先生方が授業や学年通信でそのまま配れる特製 PDF レジュメ第1弾(「なぜ3単現の s をつけるのか」)や,書店員様向けの印刷用販促ポスター(A4/B5対応PDF/PNG)を無料配布しています.

 『なぜさんたんげん』は,本を開いて読むだけでも完結する1冊ですが,この特設HPを経由して,読者の皆さんの感想,著者による音声や動画のコンテンツ,全国の書店の様子とつながることで,何倍も深く立体的に体験できる「開かれた本」となっています.
 まだ特設サイトをご覧になっていない方は,ぜひ一度覗いてみてください.そして,ぜひ周りの英語学習者や先生方,本好きのご友人にも,このポータルサイトのリンクをシェアしていただけますと幸いです.
 学校英語の「呪文」の向こう側にある驚くべき歴史の物語を,一緒に目撃していきましょう!

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-20 Mon

#6293. 皆さん『英語語源ハンドブック』(冊子版・アプリ版)をどのように使っていますか? [notice][hee][review][hel_education][helkatsu][link][voicy][heldio][kdee][kenkyusha]



 先日「#6278. 「居酒屋KKH」 --- 『英語語源ハンドブック』発売1周年記念のオンライン対談」 ([2026-07-05-1]) で話題にしたとおり,6月18日に『英語語源ハンドブック』(研究社)が刊行されて1年となり,6月30日には物書堂さんより『英語語源ハンドブック』アプリ版も発売されました(アプリ版利用は現時点でiOS ユーザーのみ).
 このような節目のタイミングに,冊子版・アプリ版を普段からご愛用いただいているヘビーユーザーの方々に,この1年間ハンドブック利用の感想をうかがえればという趣旨で,先日,Voicy heldio 対談回を設定しました.司会は,heldio ではお馴染みの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)にお願いしました.7月14日の heldio で「#1871. 『英語語源ハンドブック』(冊子版・アプリ版)の使用感をヘビーユーザーの皆さんに聞いてみました」として配信していますので,アーカイヴよりお聴きください.以下は対談回の要旨です.
 対談の冒頭では,何といってもアプリ版の登場によって検索の利便性が飛躍的に向上したことが大きな話題となりました.毎日 note でハンドブックを元に記事を執筆されているみーさんは,冊子版のみでは出先での執筆の際に不便を感じることがあったようですが,アプリ版の導入によっていつでもどこでも参照できるようになり,まさに「必携の書」として使い倒しているとのことです.物書堂さんのアプリらしく,『英語語源ハンドブック』で調べた後にそのままワンタップで『ジーニアス英和辞典』のような他の辞書へポンとジャンプできる参照機能や,解説文中の「グリムの法則」といった専門用語から関連箇所へ直接飛べるジャンプ機能の快適さについても熱く語っていただきました.さらに,デジタルならではの利点として,表や記述をそのままコピペして note の参照として取り出せる点も,アウトプットを継続するユーザーにとってはたいへん有益のようです.
 うろ覚えの状態で検索する際の「全文検索機能」の強力さについては,しーさんから,地の文のキーワードまで引っかかるので,なんとなくこの辺りにあったという項目からでも探しやすく,人間の記憶に優しい仕様である,との実践的な評価をいただきました.実は私自身は Android ユーザーであるため,まだアプリ版を体験できていないもどかしさを抱えつつも,もしこのような利便性が『英語語源ハンドブック』のみならず『英語語源辞典』のほうでも得られれば,情報量の多さゆえに完全に「語源の森」から抜け出せなくなって迷子になってしまうのではないかと,嬉しくもぞっとするような想像をめぐらせた次第です.
 また,英語教師としての視点からユニークなレビューを寄せてくださったのが ari さんです.ari さんは,画面を自由に拡大できる視覚的な利便性に加え,本ハンドブックに載っているかどうかを,自分が授業で話す内容が一般的な範囲か,あるいはそれ以上の趣味の領域に踏み込んでいるかを見極めるための試金石として活用しているといいます.さらに,地方の書店をめぐって冊子版が2刷か3刷かなどの状況を独自に調査していた経験から,アプリ版であればどこにいても常に最新の記述が手元に届くという,新しい角度からのメリットも指摘されました.
 一方で,アプリ版の引きやすさが際立つ一方で,冊子版がもつ特有の価値についても深い議論が交わされました.yuz さんからは,-fy などの接尾辞をもつ単語を検索して派生語を一網打尽にできるのは電子ならではの楽しさ,というニッチな使い方が紹介されましたが,しーさんや yuz さんが口を揃えるのは,パラパラとめくりながら余白に書き込みしていけるという,紙の本ならではの使い心地のよさです.ハンドブックは,一般的な語源辞典と違って基本1000語に絞り込んで読み物として作られているため,最初からアプリだけで入るよりも,紙でじっくりと通読して全体のネットワークを頭に入れてからアプリの全文検索を活用するほうが,そのありがたみをより深く実感できるのかもしれない,と感じました.
 あまねちゃんからは,本ハンドブックを読むことで初めて知った知識の数々 --- たとえば winter がかつては年(歳)を数える単位であったことや,havecatch が実は同根語であることなど --- が具体的に挙げられ,見出し語こそ基本語でありながらも,縦と横のつながりによって英語史の深みへのめり込める格好のジャンプ台になっているとの嬉しいコメントをいただきました.専門家の立場から日々『英語語源辞典』を読み込んでいる寺澤志帆さんからも,専門書特有の略記号や前提知識の壁を,専門家が苦心して噛み砕いて展開したのが本ハンドブックであり,両者を見比べることで語彙のつながりがより良く見えてくるという評価をいただきました.
 対談の締めくくりとして,orangemorishita さんからは,紙の辞典におけるレイアウトの完成度を電子化する際のノウハウや,媒体の機能性に精通したエキスパートの必要性,そして何より老眼が進む世代にとっての拡大機能のありがたみについてもユーモアを交えて語っていただきました.
 結論としては,司会の Taku さんや著者陣の思いと同じく,ぜひ冊子版とアプリ版の両方を手に入れて,それぞれの特徴を活かして使い倒していただきたい,ということに尽きます.
 さて,『英語語源ハンドブック』アプリ版は通常価格3,800円のところ,発売日より3週間,つまり明日7月21日(火)までは「初回セール期間」として,2,800円(26%オフ)とお得になっています.この機会に,ぜひアプリ版のハンドブックも入手いただき,使い倒していただければと思います.商品の詳細はこちらよりどうぞ.
 今後も冊子版・アプリ版ともにご愛読いただけますよう,よろしくお願いします.

 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

Referrer (Inside): [2026-08-25-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-19 Sun

#6292. 7月25日(土)の朝カル講座「king を探って古英語原文の世界へ」 [asacul][notice][kdee][hee][etymology][hel_education][helkatsu][heldio][oe][kochushoho][anglo-saxon_chronicle][alfred][viking][suffix][indo-european][word_family][link][voicy][kdee][hee][kenning][beowulf][haplology][phonemicisation][lexicology][lexical_stratification][etymology]


asacul_20260725.png



 7月25日(土) 15:30--17:00 に,今年度4回目となる朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座が開かれます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」としては通算第16回目の講義となります.今回はking を探って古英語原文の世界へ」と題して,この大物単語に迫ります.
 現代英語の king は一見すると素朴な日常語ですが,英語史・語源学の観点からその歴史を紐解くと,実にダイナミックで奥深い世界が広がっています.今回の講座では,主に3つの切り口からこの「王」を意味する単語を解読していきます.
 第1のポイントは,印欧語根 *gen(e)- から生み出される広大な語彙の世界です.実は king は,kin (親族)や kind (種類;親切な)などと共通の大きな語根に遡る派生語です.いつものように『英語語源辞典』 や『英語語源ハンドブック』 などの記述を突き合わせながら,印欧語根にまで遡る壮大な単語の家族のつながりを眺めていきます.接尾辞 -ing の歴史についても深掘りします.この辺りは『英語語源辞典』読み方講座に近い内容となります.
 第2のポイントは,古英語期に花開いた「王」の隠喩的複合語,いわゆるケニング (kenning) の世界です.古英語の英雄詩『ベオウルフ』 (beowulf) などを覗くと,王を単に cyning ("king" の古英語形)と呼ぶだけでなく,「指輪をくれる者」 (bēagġyfa) や「黄金の友」 (goldwine) といった詩的な数々の類義語で表現していました.文学的に爛熟した多彩な語彙の魅力を味わいます.
 第3のポイントは,king 周辺の語彙論と同単語の語形変化です.なぜ kingqueen はノルマン征服以降の大量のフランス借用語の波に置き換えられずに生き残ることができたのか,という問題にも触れます.また,かつての古英語の綴字 <c> から中英語の <k> への変化や,軟口蓋鼻音の音素化といった,綴字と発音のダイナミックな変化についても解説します.
 講義の後半には,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)に所収の古英語散文的スト『アングロサクソン年代記』より,アルフレッド大王 (King Alfred) がデーン人(ヴァイキング)との戦いに備えているシーンの短い抜粋部分を読んでみます.丁寧に解説していきますので,古英語初心者の方でも心配要りません.また,上掲書をお持ちでなくても講義資料で関連箇所を引用しますのでご安心ください.
 講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.なお,次回以降の日程と内容は次の通りです.

 ・ 夏期第2回(2026年8月22日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "riddle" を探って古英語原文の世界へ
 ・ 夏期第3回(2026年9月26日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "through" を探って中英語原文の世界へ

 いずれの講座につきましても,多くの方の受講をお待ちしております.


 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-17 Fri

#6290. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第5回 --- 英語と日本語の語彙の3層構造 [inohota][youtube][inohota_rensai][notice][lexical_stratification][lexicology][japanese][loan_word][french][latin][synonym][nazesantangen][contact]


inohota_rensai_eigokyouiku_20260714_front_cover.png

  *

 7月14日,大修館書店より月刊誌『英語教育』7月号が刊行されました.今年度,同雑誌において,YouTube 「いのほた言語学チャンネル」でご一緒している同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに,連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を担当しています.
 最新号の第5回の記事は,私が主に執筆しました.タイトルは「英語と日本語の語彙の3層構造」です.新刊『英語語源で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書,通称『なぜさんたんげん』)の第4章第1節「なぜ英語には類義語が多いのか」で注目した話題をご紹介しています.
 英語は語彙が豊富で,類義語も多い言語です.諸言語の最大の辞書の見出し語数で比べてみても,英語は少なく見積もっても60万語(実際には優にその数倍はあると予想されます)と,他の主要な言語を大きく引き離しています.たとえば「尋ねる」を意味する基本的な動詞に ask がありますが,ほかにも inquireinterrogate といった類義語がいくつも存在します.英語に類義語が多い理由は,歴史における他言語との接触の累積によって,語彙の階層構造ができあがってきたことにあります.
 古英語期には,アングロサクソン人が用いていた本来の英単語 ask だけで,一般的な「尋ねる」の意味がおよそまかなわれていました.しかし,1066 年のノルマン征服(フランス北部のノルマン人がイングランドを征服した事件)の余波により,支配層の言語となったフランス語から inquire という語が英語に流入しました.さらに初期近代英語期に入ると,ルネサンス期を特徴づける古典語への関心の高まりにより,権威あるラテン語から interrogate が持ち込まれました.こうして,文化的香りの高いラテン借用語を頂点とし,その下にノルマン征服を象徴するフランス借用語が位置づけられ,さらにその下に被支配者の言語としての英語本来語が置かれる,ピラミッド風の3層構造が英語語彙において確立したのです.
 記事では,他の具体的な例を列挙し,対応する日本語における語彙階層についても触れました.両言語に見られる語彙の階層構造は,各言語の言語接触の歴史の生き証人なのです.過去から現代に至るまで,ことばがいかに社会の影響を受けて変容してきたのかに関心のある方は,ぜひ今回の『英語教育』の連載記事や新刊『なぜさんたんげん』の扉も叩いてみてください.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第5回 「英語と日本語の語彙の3層構造」『英語教育』2026年8月号,大修館書店,2026年7月14日.44--45頁.
 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-16 Thu

#6289. 井上逸兵さんが「ゆる言語学ラジオ」に3度目の登場 [notice][inoueippei][yurugengogakuradio][inohota][youtube][nazesantangen][politeness][sociolinguistics][honorific][hedge]



 人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新回で,井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)が,先々週と先週に引き続き3度目(最終回)の出演です.堀元さんが熱血教師,井上さんと水野さんが生徒に扮する,驚きの教室コントのシチュエーションで,堀元先生が「いのほた言語学チャンネル」の編集にアドバイスを加えつつ,YouTuber 論を語るという異色の回です.抱腹絶倒の36分ですが,極上の YouTube 制作技術論かつメディア論となっています.動画公開からの初速も著しく,とんでもなく注目されています!
 今回の動画を視聴して感じたのは,コントの枠を超えて堀元さんの「YouTube 哲学・技術論」の結晶となっていたということです.その裏で,とりわけ印象深かったのは,井上さんが語った知の流れ方の大変化,ひいては学術とメディアの関係の革命という視点です.井上さんによれば,大学という権威の象徴が民を啓蒙するという20世紀型の中央集権的なスタイルは終わりを告げ,21世紀はアルゴリズム型の分散型社会へと移行しています.学術についても,もはや本や雑誌という媒体だけでは立ちゆかない時代が到来していると,私も考えています.
 動画のなかで堀元さんが放った「YouTube は学校じゃねえんだよ」という言葉は,本質を突いています.YouTube には視聴維持率の戦いがあるけれども,授業にはそれがありません,最初の数秒で引きつけ,1文字でも無駄な情報を削り,スマホの画面で省略されない短いタイトルに引きのある情報を詰め込む --- この「手前に引きのある情報をもってくる」という徹底的な技術論は,大学教員が必ずしも得意とするわけではないウケる発信の難しさを浮き彫りにしています.
 今回のゆる言語学ラジオ回で,大学教授が「もっとおもしろくしたい」「YouTuber として数字を出したい」とプロのアドバイスを真摯に仰ぐ姿勢は,きわめて珍しいことです.研究者からの YouTube 等の新メディアでの発信が当たり前になってくる時代は,まだ数年先のことかもしれませんが,間違いなく到来するだろうと思っています.
 井上・堀田は職業 YouTuber ではありません.動画内で堀元さんが「YouTuber は怒りと憎しみを食って大きくなる生き物だ」「視聴者を騙せ」と述べているような方向性を追い求める生き方は不可能です.私たちが目指しているのは,学問の魅力で世の中の人々の知的好奇心を刺激することです.プロ YouTuber のアドバイスはありがたくちょうだいしつつ,基本は学問のおもしろさを元気に長く伝えていく継続性こそが大事なのだろうと,改めて認識した次第です.
 「ゆる言語学ラジオ」のお二方には,言語学という分野をここまで盛り上げ,さらに私たちを収録にお呼びいただいた旨,改めて深く感謝します.抱腹絶倒のコントの裏にある YouTuber 論を,ぜひ皆さんも視聴して味わってみてください.

Referrer (Inside): [2026-07-23-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-15 Wed

#6288. heldio で khelf 寺澤志帆さんによる3回シリーズ「寺澤志帆さんの『英語語源辞典』読み方講座」が始まりました --- bear 「産む」の項目を徹底解説 [notice][kdee][hel_education][helkatsu][khelf][terasawashiho][voicy][heldio][kenkyusha]



 今朝の Voicy heldio より,3日間にわたる「『英語語源辞典』読み方講座」となる対談シリーズが始まっています.本日の初回は「#1872. 寺澤志帆さんの『英語語源辞典』読み方講座 (1) --- bear 「産む」の項目を徹底解説」です.
 khelf メンバーの寺澤志帆さんが,シリーズ「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」にて「384. bear「産む」についてさらに深堀り」と題する記事を投稿されたことは,「#6281. 「英語語源辞典でたどる英語綴字史」の khelf 寺澤志帆さんが『英語語源辞典』の読み方解説を始められています!」 ([2026-07-08-1]) でご紹介したとおりです.これは,『英語語源辞典』通読挑戦者の第一人者である lacolaco さんが,先立つ6月中に,同様の試みをいち早く実践されていたものを受けての,寺澤さんとしての試みでした.今回の対談は,事情により lacolaco さんのご参加はかないませんでしたが,寺澤さんの上記記事に基づいて,ラジオ版として口頭で「読み方講座」を実践していただくという趣旨で企画したものです.
 講座のなかでは,「産む」を意味する bear2 の項目を超精読していきます.1つひとつ記号や略記が意味するところを丁寧に解説し,語源情報を読み解く上で必要となる英語史の前提知識を補いながら進みますので,迷子になることはありません.項目を読み終える頃には,皆さんもほぼすべての情報をほぼ完璧に理解できており,他の単語の項目を読み解く際のスキルも手にしているはずです.
 『英語語源辞典』より,今回注目している bear2 の項目を画像化したものを,版元である研究社の許可を得て,以下に掲載します.お手元に同辞典をお持ちでない方は,こちらをご覧になりながら,今朝の「読み方講義」の本体をじっくりお聴きください.明日,明後日とシリーズは続いていきますが,捕捉や深掘りのアフタートークとなる予定です.ご期待ください.


ダブリン・ギネス収録会



 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

Referrer (Inside): [2026-07-25-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-14 Tue

#6287. 「なぜさんたんげん目撃マップ」の全都道府県制覇まであと9県 [notice][nazesantangen][nazesantangen_witness][nhkpb][helkatsu]

nazesantangen_mokugeki_map_20260713.png



 去る6月10日に刊行されて以来,熱い盛り上がりを見せている新刊『英語語源で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書,通称『なぜさんたんげん』)ですが,リアル書店での発見報告を募る「なぜさんたんげん目撃マップ」企画が,連日目を見張る勢いで進展しています.全国の読者・応援者の方々が日々寄せてくださる草の根の目撃情報には,著者として感謝に堪えません.なかには書店さんの許可を得て,素晴らしい書棚の写真を撮ってくださる方も少なからずいらっしゃり,地図を開いてピンを立てるたびに胸が熱くなります.
 さらに心強いことに,NHK出版の営業の皆さんも,全国の書店訪問の最前線から書棚の写真をお送りくださっています.応援読者さん×全国の書店さん×NHK出版営業さん,という3者の熱量が噛み合った結果,昨晩時点の集計で,全国津々浦々の書店に計93本ものピンが立つに至りました.100本の大台も見えてきましたね.
 ここで目撃マップの凡例(ピンの色)を整理しておきましょう.

 ・ 赤ピン:書棚写真あり(有志の皆さんによる書店さんの許可を得ての写真撮影あり)
 ・ 青ピン:書棚写真なし(テキストのみのご報告のケース,あるいは私が写真をアップできていないケース)
 ・ 茶ピン:NHK出版営業さんが回られた書店さん(写真つき)
 ・ 黄ピン:書店さんご自身による書棚の SNS 広報等
 ・ 「文」アイコン:本書が入っていると直接・間接に確認できた図書館

 さて,先日の記事「#6271. 「なぜさんたんげん目撃マップ」の第1次全国制覇達成!」 ([2026-06-28-1]) でお知らせした地方レベルでの全制覇に続き,目下の目標は第2次全国制覇,すなわち47都道府県完全制覇です.昨晩時点の最新データによれば,全都道府県制覇まで,あと9県というところまで迫っています.その9県は,以下の通りです.

 ・ 東北:青森県,岩手県,秋田県,山形県
 ・ 中部:富山県
 ・ 中国:島根県
 ・ 九州:佐賀県,熊本県,宮崎県

 ぜひ該当する県民の方,あるいはビジネスや旅行でこれらの地を訪れた方は,地元のリアル書店を覗いて情報をお寄せいただけますと幸いです.SNS(主に X)にて #なぜさんたんげん目撃マップ あるいは単に #なぜさんたんげん のハッシュタグを付して街と書店の名前をつぶやいていただくか,あるいは毎朝お届けしている Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の任意の配信回のコメント欄より,お知らせください.私が必ず捕捉してピンを立てに伺います.
 書店での写真撮影に関しましては,「#6257. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画が走り出しています」 ([2026-06-14-1]) でも触れたとおり,必ず事前に書店員さんへ一言お声がけをいただき,そのご指示に従っていただきますようお願いいたします.撮影が難しい状況であれば,テキストのみのご報告でも十分に貴い情報となります.ご協力のほど,よろしくお願い致します.
 もちろん,すでに多くのピンが立っている都道府県においても,さらに密度を濃くして地図を面で埋め尽くしていきたいと考えていますので,日本のどこからでも目撃情報をお待ちしています.「英語史をお茶の間に」流通させるためのこの壮大な知的お祭りを,引き続き皆さんとともに楽しんでいければと願っています.
 これまでの「目撃マップ」企画に関する関連記事も合わせてご覧ください.

 ・ 「#6257. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画が走り出しています」 ([2026-06-14-1])
 ・ 「#6267. 「なぜさんたんげん目撃マップ」へピンが多く立ってきています!」 ([2026-06-24-1])
 ・ 「#6271. 「なぜさんたんげん目撃マップ」の第1次全国制覇達成!」 ([2026-06-28-1])
 ・ 「#6275. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画で何をしようとしているのか?」 ([2026-07-02-1])

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow