去る5月23日(土)に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて今年度の第2回となるオンライン講座を開きました.春期クール全体のタイトルは「歴史上もっとも不思議な英単語 語源を探って古英語・中英語原文の世界へ!」です.今回は,「again を探って中英語原文の世界へ」と題して,平凡ながらも豊かな歴史と含蓄をもつ単語 again に迫りました.具体的な中英語原文を抜き出し,文脈を押さえながら読み解くことで,この基本語の理解を深めようという趣旨です.参考としたテキストは前回に続き市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)です.
今回の講座でまず注目したのは,現代英語の again と前置詞 against の関係です.本来は同一語であり,両方とも副詞・前置詞として用いられていましたが,中英語期に副詞を示す属格語尾 -es が付与され,さらに1300年頃から謎の -t が添加されることで against が誕生しました.この -t の添加には,最上級語尾 -st との類推説(betwixt,amongst,amidst など)や異分析説が指摘されています.近代英語期に入ると,again が副詞,against が前置詞という棲み分けが生じるに至ったドラマも詳しく扱いました.
語源としては,古英語の ongēan (接頭辞 on- + -ȝeȝn)に遡り,原義は「まっすぐに,真正面に」でした.現代の g の綴字と発音は古ノルド語の影響を受けた北部方言に由来するもので,中英語期の南部方言では onyen のように y が優勢でした.かつては gainsay (否定する)などのように接頭辞としても活躍していましたが,現代ではその多くが衰退してしまっている点も興味深いところです.
講座の終盤では,初期中英語の第1級の史料でもある『ピーターバラ年代記』 (pchron) の1137年の記述より,中世イングランドの拷問シーンの原文を味読しました.その直前の部分に "agænes him hēolden" 「王に敵対して(城を)保持した」という表現が見え,今回注目した単語の前置詞用法が現われています.古英語の屈折体系が崩壊しつつある時期の英語の雰囲気がつかめたかと思います.
次回の講座は,6月27日(土)に「ghost を探って古英語原文の世界へ」と題して開かれます.次回も引き続き『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』より古英語のテキストを参照しながら,魅力的な言葉の歴史をひもといていきます.ご関心のある方は,ぜひ朝カルのこちらの公式ページよりお申込みください.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
去る5月23日(土)に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて今年度の第2回となるオンライン講座を開きました.春期クール全体のタイトルは「歴史上もっとも不思議な英単語 語源を探って古英語・中英語原文の世界へ!」です.今回は,「again を探って中英語原文の世界へ」と題して,平凡ながらも豊かな歴史と含蓄をもつ単語 again に迫りました.具体的な中英語原文を抜き出し,文脈を押さえながら読み解くことで,この基本語の理解を深めようという趣旨です.参考としたテキストは前回に続き市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)です.
今回の講座でまず注目したのは,現代英語の again と前置詞 against の関係です.本来は同一語であり,両方とも副詞・前置詞として用いられていましたが,中英語期に副詞を示す属格語尾 -es が付与され,さらに1300年頃から謎の -t が添加されることで against が誕生しました.この -t の添加には,最上級語尾 -st との類推説(betwixt,amongst,amidst など)や異分析説が指摘されています.近代英語期に入ると,again が副詞,against が前置詞という棲み分けが生じるに至ったドラマも詳しく扱いました.
語源としては,古英語の ongēan (接頭辞 on- + -ȝeȝn)に遡り,原義は「まっすぐに,真正面に」でした.現代の g の綴字と発音は古ノルド語の影響を受けた北部方言に由来するもので,中英語期の南部方言では onyen のように y が優勢でした.かつては gainsay (否定する)などのように接頭辞としても活躍していましたが,現代ではその多くが衰退してしまっている点も興味深いところです.
講座の終盤では,初期中英語の第1級の史料でもある『ピーターバラ年代記』 (pchron) の1137年の記述より,中世イングランドの拷問シーンの原文を味読しました.その直前の部分に "agænes him hēolden" 「王に敵対して(城を)保持した」という表現が見え,今回注目した単語の前置詞用法が現われています.古英語の屈折体系が崩壊しつつある時期の英語の雰囲気がつかめたかと思います.
次回の講座は,6月27日(土)に「ghost を探って古英語原文の世界へ」と題して開かれます.次回も引き続き『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』より古英語のテキストを参照しながら,魅力的な言葉の歴史をひもといていきます.ご関心のある方は,ぜひ朝カルのこちらの公式ページよりお申込みください.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

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6月12日,大修館書店より月刊誌『英語教育』より7月号が刊行されました.今年度,同雑誌において,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を展開しています.今回の第4回の記事は井上さんによる言語行為の日英差に迫っています.「「あぶない!」はなぜ Watch out! になるのか ―― 日常に転がるスピーチアクトの日英比較」です.
今回の井上さんの論考は,日常の何気ない表現に潜む語用論の話題をおもしろく掘り下げています.たとえば,誰かが転びそうになった際,日本語ではとっさに「あぶない!」という言葉が出ます.これは形式としては危険な状況の描写にすぎません.ところが,英語では同様の場面で Watch out! と表現するのが一般的です.日本語が状況を言うことで相手を動かそうとするのに対し,英語は相手にしてほしい具体的な行為を指示することで相手を動かそうとする傾向が見られます.この対比は「うるさい!」に対する Shut up! や Be quiet!,「じゃまだ!」に対する Move! などの日常表現,さらには山手線のホームの「降車位置」という表示に対する英語の Keep out という指示のあり方にまで通底しています.
なぜこのような言語行為 (speech_act) の違いが生まれるのかについて,井上さんは2つの切り口から整理されています.この最も重要なポイントについては,ぜひ雑誌を手に取って連載記事にてお読みください.
社会言語学 (sociolinguistics) 的に重要なのは,こうした違いを「日本人は察しの文化で,英語圏は直接的だ」といった国民性や民族性の違いに雑に単純化しないという点です.酒場でよく耳にする「日本は島国だからね」という言説への鋭いツッコミを披露されていますが,これには思わずニヤリとしてしまいました.
最後に,私も少しコメントを寄せています.近年,英語史の分野では歴史語用論の研究が非常に盛んです.今回のトピックはその角度から見ても示唆に富んでいます.英語は歴史を通じて直接的な行為の要求ばかりを好んできたわけではありません.たとえば,Will you be quiet? のように相手の意志の確認を通じて間接的に依頼や軽い命令を表わす言語行為の型も,後期中英語期以降のことではありますが,発達してきています.つまり,英語もまた直接命令するのではない「新たな間接性の型」を自ら開拓してきた歴史をもっているのです.共時的な社会言語学の知見と通時的な英語史の視点が交差する speech act は,エキサイティングな話題ですね.
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第4回 「あぶない!」はなぜ Watch out! になるのか ―― 日常に転がるスピーチアクトの日英比較」『英語教育』2026年7月号,大修館書店,2026年6月12日.44--45頁.

6月10日(水),NHK出版新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)が発売されました.大変ありがたいことに,皆さんの熱い応援のおかげで発売前増刷となり,発売後もご好評いただいています.心より御礼申し上げます.
本書の刊行に合わせて,このたび全国のリアル書店での本書の目撃情報を皆さんと共有し,ともに楽しむための新企画「なぜさんたんげん目撃マップ」を立ち上げました.
本企画は,全国のリアル書店を訪れた皆さんから「ここに『なぜさんたんげん』が並んでいた!」「こんな風に平積みされていた!」という目撃情報を寄せていただき,それをもとに著者が Google Map 上にピンを立てて「見える化」していくという試みです.私自身は現在,イギリスのスコットランドに滞在しているところですが,数千キロ離れた地からも,日本地図の上に次々とピンが立っていく様子を不思議な,かつ熱い気持ちで見つめています.
企画がスタートしてまだ間もない状況ですが,本日23:50の段階で,日本全国のあちらこちらの書店に計19本のピンが立っており,素晴らしい走り出しです.これまでにご報告をいただいた皆さん,本当にありがとうございます.地図は,直接 Google Map の URL からアクセスできるほか,こちらの 『なぜさんたんげん』著者公式HPからもジャンプすることができます.
hellog 読者の皆さんにも,地元や学校・職場近くや旅先のリアル書店へ足を運ばれた際には,ぜひ本書を探していただき,目撃情報をテキストや写真でご報告いただけますと幸いです.SNS へは #なぜさんたんげん目撃マップ とハッシュタグを付けて投稿していただけますと,著者が定期的に巡回して受け取ることができます.あるいは,毎朝お届けしている Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の任意の配信回のコメント欄より,お知らせいただく形でもけっこうです.
ただし,書店での写真撮影に関しましては,ぜひ留意していただきたいマナーがあります.撮影の可否や SNS へのアップロードに関する対応は書店さんによって対応が異なりますので,必ず事前に書店員さんへ「写真を撮ってよいですか」「SNS にあげても良いですか」と一言お声がけをいただき,そのご指示に従っていただきますようお願いいたします.ご報告はテキストのみでも十分ですので,気軽にご参加ください.
皆さんからお寄せいただく1本1本のピンが,本書を,そして英語史を日本全国へと広げていく大きな力となります.ぜひ,この発売後のお祭りをコミュニティの皆さんと一緒に楽しんでいければと願っています.皆様の積極的なご参加を心よりお待ちしています.
一昨日の heldio でも「#1839. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画を立ち上げました」として本企画をご案内していますので,そちらも合わせてお聴きいただければ.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)の版元のNHK出版より,本書に掲載されている古英語・中英語部分を読み上げた音声にアクセスできる特設ページが公開されています.著者による読み上げ音声をお聴きいただけます.
画面上の英文の上をクリック・タップしていただくだけで,簡単に音声を再生することができます.本書の第1章や第3章で登場する Gregorius hine afligde などの古英語文や,Ich was in one sumere dale といった中英語文の「生の響き」を,ぜひ耳から体験してみてください.
古英語や中英語といった古い時代の英語を学ぶ際,誰もが抱く最初の,そして最も素朴な疑問の1つが「どうして大昔の英語の発音がわかるのか」という点ではないでしょうか.録音機器など存在しなかった1000年も前の言語音をいかにして推定するのかという問いは,歴史言語学にとってきわめて本質的な課題です.
この問題については,本ブログでも「#5314. どうして古英語の発音がわかるのですか? --- YouTube で答える素朴な疑問」 ([2023-11-14-1]) や,そこから張られているリンク先の記事でも取り上げていますので,ご参照ください.当時の表音文字としてのローマン・アルファベットの綴字体系を分析すること,あるいは詩の脚韻や頭韻といった韻文の証拠を活用すること,さらには現代の諸方言に残る痕跡から比較言語学的に復元することなど,様々な文献学的・言語学的なアプローチを通じて,かつての発音に迫ることができるのです.
そのような緻密な研究の積み重ねによって明らかになった古音の響きを,今回の特設ページでは実際に再現しています.文字として眺めるだけではなかなか実感が湧きにくい中世の英語ですが,声に出して読まれた音を聴くことで,現代の英語やあるいは他のゲルマン諸語との有機的なつながりが見えて(聞こえて)くるはずです.
新書をお手元に置いていただき,各章の解説と合わせて音声を聴き進めていただけますと,英語の文法が歴史を通じていかにダイナミックに変容してきたか,その立体的な姿をより深く,納得して味わっていただけることと思います.
上記のNHK出版公式の読み上げ音声HPとは別に,本書に関する著者による公式のHPもオープンしており,そちらはすでに1000回を超えるアクセス数となっています.様々な形で本書の魅力を伝えていますので,ぜひどうぞ.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

昨日6月11日(木)の朝日新聞朝刊サンヤツ広告に,新刊の拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)が掲載されました.
発売前から略称・ハッシュタグ「#なぜさんたんげん」として広める活動を行なってきましたが,6月10日に発売日を迎え,本日は発売3日目となります.上掲のサンヤツ広告の効果もあると思いますが,ありがたいことに大変な反響をいただいております.Amazon 売れ筋ランキングの総合で,今朝,これまでの最高位となる第80位をマークしました.また,リアル書店においても,地域の偏りなく全国の書店でよく売れているとの報告が入ってきています.本書を手にとってくださった読者の皆様に,この場を借りて心より御礼申し上げます.
発売後も本書に関連する様々なお知らせや企画は盛りだくさんです.最新情報は,日々更新される『なぜさんたんげん』著者公式HP をご覧ください.最速レビューやご感想,NHK出版公式の公開関連コンテンツへのリンク,「なぜさんたんげん目撃マップ」企画の立ち上げなど,HP自体だけでも十分に楽しめる場となっています.
この本が広く世の中に受け入れられることによって,英語のルールに潜む壮大なドラマ,そして英語史そのものの魅力があまねく伝わればよいなと思っています.
引き続き,応援のほどよろしくお願いいたします!
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

昨日2026年6月10日に刊行された新著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)ですが,たいへんありがたいことに,発売初日から大きな反響をいただいております.手に取ってくださった皆様に,この場を借りて心より御礼申し上げます.
さて,本日はまだ本書を購入しようか迷っている方,あるいは「英語史という分野に興味はあるけれど,新書1冊を読み通せるか不安だ」という方にお届けしたいニュースがあります.昨日付けで,NHK出版公式のデジタルマガジンにて,本書の「序章」の全文が無料公開されました.記事のタイトルは「英語はどのようにして現在の姿になったのか──英語の歴史を遡る旅【英語史で解く英文法の謎】」です.
今回のデジタルマガジンで公開された「序章」は,本書に沿った「英語史概説」であり,本書全体の「地図」でもあります.壮大なる英語史のタイムラインを一望できる構成となっています.英語が独自の歩みを始める前の「印欧祖語」の時代から,5世紀の西ゲルマン諸民族のブリテン島渡来による「古英語」の誕生,1066年のノルマン征服がもたらした「中英語」の激変期,そして大母音推移や規範主義の台頭をくぐり抜けた「近代英語」を経て,21世紀の「現代英語」にいたるまでの1500年以上の旅路が,コンパクトに凝縮されています.
この序章を読んでいただくと,本書の狙いがよく分かると思います.本書を通読すれば,私たちが日頃学校文法で悩まされている「スペリングと発音の乖離」の謎や,なぜ feet や went のような不規則変化が残っているのかという素朴な疑問に対して,歴史的な視点から「なるほど,そういうことだったのか!」と腑に落ちる感覚を味わっていただけるはずです.英語という言語は,ゲルマン語の頑丈な骨格の上に,フランス語やラテン語の要素を幾重にも積み上げ,社会の荒波に揉まれながら増改築を繰り返してきた「巨大な建築物」なのです.
本書の目的は,単に過去の歴史的事実を羅列することではありません.一見すると不合理に思える英文法の「例外」や「謎」を歴史の流れの中に正しく位置づけることで,単語や文法の解解像度を上げ,納得しながら英語を学んでいただくことにあります.
まずはこの無料公開された「序章」をお読みいただければと思います.序章に続く本書の本体の部分,第1章から第4章で取り上げられる「謎解き」については,ぜひ全国の書店やオンライン書店にて,新書の実物を手にお楽しみいただければ幸いです.
1人でも多くの英語学習者、そして英語教育に携わる先生方のもとに本書が届き,英語を学ぶ楽しさがさらに広がっていくことを願ってやみません.SNS などでも、ぜひハッシュタグ「#なぜさんたんげん」をつけて応援していただけますと大変励みになります.どうぞよろしくお願いいたします.
NHK出版デジタルマガジンからは,他にも本書からの2つの部分がすでに公開されています.以下より訪れていただければ.
・ 5月11日公開,「紀元前からのこだわり?なぜ3単現の s をつけるのか【英語史で解く英文法の謎】」(本書の第1章第5節に相当)
・ 5月28日公開,「英語の「なぜ」には,驚くべき歴史と物語が潜んでいる【英語史で解く英文法の謎】」(本書の「はじめに」に相当)
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

ついに,この日を迎えることができました.長年本ブログを読み,応援してくださっている読者の皆さんに,まずは何よりも先にこの言葉をお届けしたいと思います.
本日2026年6月10日,拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書),通称・略称『なぜさんたんげん』が,公式に全国の書店で発売日を迎えました.月刊誌での2年間にわたる連載期間から数えれば実に長い道のりでした.担当編集者の方とは実に500通を超えるメールのラリーを重ね,時にはニュージーランド,オーストラリア,そしてスコットランドへの移動を跨ぎながら,原稿を書き直し,校正を続けてきました.それらがついに1冊の書籍として結実し,日本の皆さんの手元に届く瞬間を迎えたことになります.著者として実に深い感慨を抱いています.
そして本日,発売当日に当たり,もう1つ爆弾級のご報告を差し上げます.発売日の前日となる昨日6月9日の夕方,NHK出版より公式のアナウンスがありました.なんと「発売前増刷」が決定したというのです.
まだ全国の書店のレジを通っていない段階、つまり発売日前に増刷がかかるというのは,著者にとって名誉です.それはひとえに,SNS や note 等を通じて「hel活」 (helkatsu) を応援してくださっている皆さんが自発的に作り出した圧倒的な熱量と大波ゆえにほかなりません.著者として,これほど嬉しく心強い応援はありません.深く御礼申し上げます.
今日の発売に向けて,1ヶ月前から毎日のように hellog, heldio, SNS, YouTube 等で展開してきた発売前の広報は昨晩をもって無事に全日程を完走いたしました.これは,「著者が自分でできる最大限の広報をやってみたら,一体どこまで行けるか」を確かめる1つの挑戦でもありました.これほどまでにエネルギーを費やし,読者の皆さんと一緒になって駆け抜けた1ヶ月間は,どのような結果になろうとも「完全にやりきった」と言い切れるものです.この爽快なやりきった感があること自体で,私としては大成功だったと考えています.お祭りに付き合ってくださった皆さん,本当にありがとうございました.
さて,本日無事に発売日を迎えたわけですが,もちろん今後も hellog では『なぜさんたんげん』に注目していきます.本書で取り上げた24の英文法の謎について,さらに一歩深掘りした解説や考察を増やしていくつもりです.ここからは本を開きながら,じっくりと英語史の沼を一緒に歩んでいただければと思います.
本日以降,全国のリアル書店の店頭に,本書が並び始めているかと思います.もし書店の棚や新刊コーナーで本書を見かけましたら,写真付きでもテキストのみでも構いませんので,SNS 等で「#なぜさんたんげん」 のハッシュタグを付けつつ,教えてください.皆様からのリアルなご報告を,ドキドキしながらお待ちしております.
『なぜさんたんげん』著者公式HPも,最速レビューのコンテンツを含め,たいへん盛り上がっています.ぜひ訪れていただければ.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
いよいよ明日6月10日,私の最新刊「#なぜさんたんげん」こと『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』が発売となります.これまで本ブログ,Voicy heldio などで大々的に広報活動を展開してまいりましたが,すでに皆さんから温かいご声援やご期待の声を多くいただき,著者としてこれほど嬉しいことはありません.心より御礼申し上げます.
本日の hellog 記事では,発売が明日に迫った発売前最後のタイミングで,あらためて Amazon 予約特典についてご紹介したいと思います.今回の予約購入者に PDF で配布される書き下ろし特別編のタイトルは,「なぜ doubt のスペリングに b があるのか」です.この特典節は一般には出回らない限定コンテンツとなりますので,ぜひこの最後のタイミングで Amazon 予約を検討していただければ幸いです.
今回の書き下ろし特典節は,単なるおまけのコラムではありません.本書の本体とみごとに溶け込むスタイルで書かれており,とりわけ第3章第4節や第3章第5節との連携にご注目いただければと思います.実際に,入手されたら本書を印刷してページの間に折り込んでいただきたいくらいなのです.そのために,なんと配布される PDF は最初から「トンボ」付きの仕様になっているという,編集の田中菜乃香さんの芸の細かさにも要注目です.この仕掛けには私も深く唸らされました.
ここで,特典節 PDF の最初のページの冒頭部分を画像でチラ見せいたします.

いかがでしょうか.ここを入り口として,中身ではルネサンス期の知識人たちの「ラテン語かぶれ」の暴走が描き出されていきます.フランス語から入ってきた doute というシンプルなスペリングに対し,彼らが「由緒正しき語源形」であるラテン語 dubitare の存在とその知識をひけらかしたいがために,わざわざ発音もしない b をねじ込んだという,歴史の人間味あふれるドラマが展開します.
これはいわゆる語源的綴字 (etymological_respelling) の典型例ですが,特典節ではさらに暴走の極めつきである island の勘違いスペリングの謎や,なぜ発音がスペリングについていかなかったのかという深い議論へとつながっていきます.
本書をより深く,立体的に楽しむための強力な橋渡しとなる1節です.発売後にはこの PDF 特典は入手できなくなってしまいますので,まだ迷われている方は,ぜひ今すぐ Amazon の『なぜさんたんげん』のページ よりご予約ください.
それでは,明日の『なぜさんたんげん』の正式な船出を,皆さんと一緒にお祭りとして楽しんでいきましょう!
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
先日の記事「#6244. 『なぜさんたんげん』の担当編集者・田中さんと対談しています」 ([2026-06-01-1]) の続編です.
いよいよ発売日まであと2日と迫りました,NHK出版新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)に関する heldio 対談の続編をお届けします.今回は直近に配信された2回の対談回(Part 3 および Part 4)のエッセンスをぎゅっとまとめてご紹介したいと思います.
・ 第3回対談(6月4日配信),「#1831. 『なぜさんたんげん』総選挙の結果を編集者・田中菜乃香さんとともにレビュー」
・ 第4回対談(6月7日配信),「#1834. 新書『なぜさんたんげん』はベースとなった連載記事からいかに成長したか --- 編集者・田中菜乃香さんとの対談 Part 4」
まず,6月4日に配信した Part 3 では,5月下旬に実施した「24の疑問総選挙」の確定結果を,著者の私から編集の田中さんへ初めてサプライズシェアする,という企画を行ないました.96名もの方にご投票いただきまして,その節は皆さん本当にありがとうございました.
注目の第1位は,我々の期待と狙い通り,やはり「なぜ3単現の s をつけるのか」が38%の得票率でダントツのトップでした.もしこれが1位でなかったら本書のタイトルはどうなっていたんだという恐怖もありましたが,一安心です.驚いたのは2位以下のランキングで,第2位に「なぜ現在分詞と動名詞は同じ -ing で表されるのか」(21%),第3位に同率で「なぜ時・条件を表す副詞節では未来のことも現在形で表すのか」と「アルファベット最後の文字 z のミステリー」(19%)がランクインしたことです.
田中さんも指摘されていましたが,学校文法の定番である go/went のような理不尽度の高い具体的な疑問よりも,むしろ抽象度や玄人好みの高い問いが上位へ食い込んできたのは意外な結果でした.対談では,お互いの「推し疑問」についても初めて語り合っており,田中さんは自明すぎて普通は疑問にすら思わない数詞の「one, two の綴字と発音の謎」や「eleven, twelve の形」を挙げられ,さすがプロの編集者というべき鋭い視点に唸らされました.私は「I の大文字問題」や,「there is/are 構文」に一票を投じています.
続いて,6月7日に配信した Part 4 では,数年にわたる雑誌連載から新書へと編み直すプロセスにおいて,編集者と著者がどのような共同作業をしてきたのか,その舞台裏を赤裸々にトークしました.
元の雑誌連載は中学生向けに相当優しく書かれていたため,二字熟語を制限するなど日本語の言い回しを徹底的にチューニングしていましたが,新書化にあたっては大人向けの文体へと仕立て直す大がかりな文体調整を行ないました.そのなかで,単行本ならではの魅力として加わったのが,いくつかの「書き下ろし」コンテンツです.
とりわけ大きな柱となったのが,今回の新書で新たに追加された「there is/are 構文」に関する節です.これは田中さんからの「教科書における学習順序を意識したときに,中学2年生で習うテーマが穴になっているので,存在を表す構文について書いてほしい」という具体的なリクエストから生まれた,文字通りの書き下ろしです.後から付け足したピースであるにもかかわらず,英語における SVO の語順や主語の必須性といった収載済みの統語論的テーマとみごとに融合し,味わい深い節として仕上がりました.
さらに,Amazon 事前予約特典として用意した1節分の書き下ろし「なぜ doubt のスペリングに b があるのか」についても言及しています.実は,田中さんが私に最初にくださった連載の打診メールで,私が過去に書いた doubt に関するウェブ記事「圧倒的腹落ち感!英語の発音と綴りが一致しない理由を専門家に聞きに行ったら,犯人は中世から近代にかけての「見栄」と「惰性」だった.」を読まれていたことが触れられており,この思い出深いテーマが巡り巡って発売直前の特典として結実したという,言語史ならぬ「本の歴史」の美しい結末には深い感慨を覚えます.
この2回の対談を通じて改めて強く実感したのは,同じ1冊の本を対象にしていても,著者・研究者の目線と,プロのエディターとしての目線では,見ている角度やポイントが全く異なるということです.お互いの視点が火花を散らし,アドバイスを潤滑剤としながら融合したからこそ,2日後に世に出る新書が,このような形に成長してきたのだと確信しています.
音声配信では,文字通り2人の息づかいやプロフェッショナルとしての裏話が満載ですので,ぜひ heldio の音声を直接お聴きいただき,本を手に取る前のワクワク感を高めていただければ幸いです.どうぞお楽しみに.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

来週の6月10日(水),いよいよ私の新刊『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)が発売となります.これまでブログや Voicy heldio,各種 SNS 等を通じて広報活動を続けてきましたが,多くの皆様から温かいご声援や期待の声をいただき,著者としてこれほど励みになることはありません.心より御礼申し上げます.
現在,本書の魅力を多角的に伝えるために『なぜさんたんげん』著者公式HPを開設しているのですが,そこへ一足先に本書を手に取ってくださった研究者の方々や各界のインフルエンサーの皆様から,熱烈な応援コメントが続々と寄せられています.今回の記事では,その素晴らしいコメントをいくつかご紹介したいと思います.
まず,研究者の目線から「発売前最速ロングレビュー」を投げてくださったのが,『英文解釈のテオリア』などのご著書で知られる杏林大学の倉林秀男先生(@Kurab_H)です.先生は X のスレッドにて,「専門家が書くからこそ内容にも信頼の持てる1冊」と評してくださいました.英語史を「英語が現在の姿にたどり着いた数々のドラマを垣間見る」分野としてご紹介され,本書で描かれるそのダイナミズムに注目していただきました.ありがとうございます.
また,言語学界隈や各種メディアで絶大な影響力をもつ方々からの推薦も,本書の船出にとって大変に大きな力となっています.人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」のスピーカーである水野太貴さん(@yuru_mizuno) からは,「とりあえず there 構文の箇所を読んだのだが、英語史的な話以外に情報構造に関する解説もあった。ありがたい。」という,情報構造に着目したコメントをいただきました.さらに,『ある言語学者の事件簿』の著者である静岡理工科大学の谷口ジョイ先生 (@JoyTaniguchi) からは,「おもしろすぎて一気読み!社会言語学者としては、特に後半の話題を夢中で読んでしまいました」「ゼミでも読みます!」との過分なエールをいただきました.
このようなコメントによって,英語史に馴染みのない多くの「お茶の間」の読者にも,英文法の謎解きのおもしろさが届くことを期待しています.
そして,著者として何よりも嬉しいのは,日頃から英語史を広める活動(hel活)を共に行なっている英語史・中世英語英文学の研究者仲間からの温かいコメントです.上智大学の小河舜さん (@scunogawa) からは,「刊行まで残り1週間。心から楽しみです。」という心強い応援をいただきました.また,立命館大学の岡本広毅さん(@gouernourofgyng) は,「〈3単現のS〉サンタンゲン これはもはや共通言語」とのキラーフレーズで本書の核心を突いてくださいました.さらに,『英文解体新書』などの著者である北村一真先生 (@Kazuma_Kitamura) からも,「非常に明快で、講義を聞いているような感覚で読める」という嬉しい評価をいただいています.
また,応援第1号コメントをくださった翻訳・字幕の専門家である天野優未さん (@unt_yumi) には,「言語学を全然知らなかったり、英語に苦手意識がある方にもお勧めできる一般書」とおっしゃっていただきました.本書の最大の挑戦は,英語史の専門的な知見を活かしつつも,一般の読者や英語に苦手意識のある方々に向けていかにアクセシブルに書くか,という点でしたので,その狙いを多くの方々に汲み取っていただけたことは,無上の喜びです.
本日この場で紹介できたキラーフレーズは,ここ数日の間にSNS上で寄せられたメッセージの一部にすぎません.上記公式HPでは,このような応援者からのコメントをはじめ,NHK 出版デジタルマガジンで読める第1章第5節や「はじめに」の先行公開リンク,さらには投票総数96件を集めた「『なぜさんたんげん』24の疑問・総選挙」の最終結果にいたるまで,本書に関するあらゆる情報をワンストップで取りまとめて公開しています.本書発売前でも楽しんでいただけるHPに仕上がっていますので,ぜひ『なぜさんたんげん』著者公式HPをご訪問いただき,発売日に向けたお祭りの熱気をリアルタイムで体感していただければ幸いです.引き続き,特典付き(書き下ろし1節分)の Amazon からの予約注文のほど,どうぞよろしくお願いいたします.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
昨日の記事「#6236.heldio 5周年 --- データで振り返る heldio の進化」 ([2026-06-03-1]) に続いて,5月28日時点での Voicy のアナリティクスに基づく記事をお届けします.一昨日2026年6月2日は,heldio 5周年記念日であると同時に,実は helwa 3周年記念日でもありました.Voicy heldio 開始からちょうど2年目に当たる日に,プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」を開始したのでした.
helwa は週2回ベースで配信を始めましたが,途中から週3回ペースとなり今に至ります.3年間で積み上げてきた helwa の配信数は,449本に達しました.冷静に考えると,これはなかなか異常なペースです.普通の有料コミュニティであれば,数十本の限定雑談や月1回のイベント程度で終わることも多いかと思いますが,helwa は heldio とは異なるもう1つの英語史コミュニティへと成長してきました.
当初は,これほどニッチな学術分野で有料チャンネルを始めて本当に人が集まるのか,どのような雰囲気の場になるのか,大きな不安があったのも事実です.しかし,蓋を開けてみればそこは heldio 通常回の特典音源の置き場ではなく,日常的な英語史雑談,Discord 上での交流,オフ会ルポ,書籍の共同企画,学会の裏話など,多岐にわたる談義が繰り広げられる「英語史サロン」へと発展していきました.そして,helwa リスナーを増やすことを主目的とするのではなく,英語史を一緒に楽しむ仲間を作ることが最重要視される,そのような空間に育ってきたのです.
この3年間における最大の成果の1つは,音声配信チャンネルというオンラインの枠を飛び出し,オフ会や「英語史ライヴ」など,現実のコミュニティが実現したことでしょう.泊まりがけのオフ会も複数回開催され,その熱気はこのコミュニティから生まれた月刊ウェブマガジン Helvillian などで熱くレポートされています.英語史という実利の外側にある学問が,学生,社会人,教員といった幅広い層の垣根を越えて,純粋な大人の「居場所」となったことは,きわめて感慨深いことです.
しかし,helwa がもたらした最大の変革は,「英語史が雑談になった」という点に尽きるかもしれません.本来,英語史は大学の講義室や専門論文のなかに閉じ込められた世界でした.それがこのコミュニティでは,「その語源おもしろい」「その発音変化わかる」「それ英語史的な発想だよね」といった言葉が日常的に交わされています.オフ会での乾杯の挨拶もすっかり古英語の Wes hal! に定着しています.英語史が一部の専門家だけのものではなく,コミュニティの皆さんの間で一種の「生活言語」として根付いているといったらよいでしょうか.
常連文化,内輪ネタ,定番フレーズが自然発生するその空気感は,深夜ラジオ共同体にかなり近いものがあるように思っています.「英語史」という硬派なテーマなのに,やっていることは深夜ラジオというギャップが,何ともおもしろいところです.また,リスナーの皆さんが単なる受信者にとどまらず,コメントや note や SNS を利用した発信者となってhel活を推進し,英語史エコシステムを想像している点も,helwa の本質といえます.
英語史研究者としては「英語史って,本来こんなふうにワイワイ雑談する分野じゃなかったんですよ(笑)」と,嬉しい悲鳴を上げたいです.この helwa という舞台裏の熱量とエネルギー源があるからこそ,表舞台である heldio の5年間にわたる毎日更新も維持されてきたと思っています.3年間で醸成されたこの愛すべきニッチ共同体の文化を,今後もさらにディープに,そして楽しく発展させていきたいと考えています.
新たな月となりました.heldio リスナーの皆さんにおかれましては,heldio 5周年かつ helwa 3周年の機会に,ぜひ「英語史の輪 (helwa)」へご入会ください.helwa は毎週火木土の午後6時に配信しています.月額800円のサブスクで,初月無料サービスがありますので,まず試しにお入りいただければ.今月は helwa では『なぜさんたんげん』の裏話が多くなるはずです.
一昨日の helwa 「【英語史の輪 #0453】helwa 3周年 --- 英語史エコシステムが完成した」を,ぜひお聴きください.
昨日2026年6月2日,Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」は,おかげさまで5周年を迎えることになりました.丸5年間,毎日マイクやレコーダーに向かって英語史を語り続けてきたことになりますが,この機会に Voicy のアナリティクスから抽出されたデータを皆さんと共有しつつ,この5年間の heldio の進化を振り返ってみたいと思います.アナリティクスは5月28日時点のデータを用いています.
まず配信回数ですが,5年間で2,340本を配信してきました.これは毎朝6時の heldio 通常配信のほか,生配信や特別配信,そしてプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」の配信を加えた総数です.我ながら,英語史という単一テーマで,よく持ったと思います.単なる毎日更新にとどまらず,英語史というニッチな学術分野において,これだけの高頻度で5年間メディアが回り続けたというのは,リスナーの皆さんにとっても「え,そんな本数だったの!?」と驚かれるのではないでしょうか.
では,リスナーの皆さんにとって,heldio への「入口」となったのはどのような回だったのでしょうか.歴代の総再生回数および新規リスナー獲得数のランキングを見てみると,きわめて一貫した heldio の原点が見えてくるように思われます.
不動の歴代1位に君臨しているのは,記念すべき初回配信である「#1. なぜ A pen なのに AN apple なの?」(合計リスナー3,104人,新規獲得1,757人)です.これは完全に他を圧倒する入口回となっています.ここで重要なのは,この回が扱っているテーマが a/an の使い分けという,中学1年生で習う初歩的で素朴な疑問である点です.ここから分かるのは,heldio の原点がハードルの高い専門知識の講義ではなく,誰もが抱く学校英語への違和感や日常の小さな謎に寄り添う姿勢だったということです.
もう1つの興味深いデータとして,2022年の「#408. 自己紹介:英語史研究者の堀田隆一です」(新規995人)と,2024年の「#1171. 自己紹介 --- 英語史研究者の堀田隆一です」(新規989人)という,2回の自己紹介回がどちらもヒットしている現象が挙げられます.リスナーさんの関心が,英語史そのものだけでなく,それを語っているパーソナリティにも向いているものと理解してよいのでしょうか.その辺りが謎ではあります.
また,外部コミュニティとの接続という点では,人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」さんにお招きいただいた際の 「#705. ゆる言語学ラジオにお招きいただき初めて出演することに!」(新規609人)が爆発的な流入を生みました.「英語史をお茶の間に」というモットーが,専門界隈の外へと届いた象徴的な瞬間でした.さらに,純粋な歴史の話題だけでなく,「#729. なぜ英語を学ばなければならないの?」(新規558人)のように,英語教育や現代人の英語観を照らす類いの話題も,強い新規流入を呼び込んでいます.トップに近い配信回を眺めまわしてみると,結局のところ違和感を共有する「英語に関する素朴な疑問」(sobokunagimon)が核であったことが示されています.
一方で,年別の平均リスナー数の推移を見ると,数字の上では減少傾向にあるように見えます.これには様々な原因があると思いますが,Voicy と同一のコンテンツを,他の音声配信プラットフォームでも配信し始めたので,Voicy 単独でのリスナー数が減ったということが大きいように思われます.もう1つは,リスナー集団の中心がライト層からコア層へシフトしてきたようにも感じます.リスナー数が減少した分,チャンネルが成熟していったのではないかと私は分析しています.
実際に現在のアナリティクスによれば,「とても熱心なリスナー」が72.7%,「熱心なリスナー」が7.9%を占めており,全体の約8割が濃いリスナーを占める,そのようなチャンネルへと進化しています.そして,この超コア化・定着化を支える巨大な「地下アーカイブ」となっているのが,3年間で449本を積み上げてきた「英語史の輪 (helwa)」の存在です.ここでは,日常的な英語史談義,Discord 上での交流,オフ会報告,コアな研究雑談などが蓄積され,単なる有料配信メンバーの集団という以上の濃いコミュニティが形成されています.
リスナーさんたちの属性分析からも,heldio の独特な受容スタイルが浮かび上がってきます.まず,男女比が男性45.9%,女性43.8%(無回答10.2%)と,ほぼ五分五分で均衡しています.一般に,語学学習系番組は女性に偏りやすく,IT・学術雑談系は男性に偏りやすい傾向がありますが,heldio はその中間に位置しています.大人の知的雑談メディアとしてバランスよく受け入れられているものと考えています.
年齢層を見ると,30代が24.3%,40代が25.5%,50代が23.1%となっており,実に大人の30--50代で全体の約73%を占めています.まさに「学び直し」や通勤・家事の合間の知的時間を求める成熟したリスナー層です.さらに職業分布では,会社員が46.3%,自営業が12.5%を占め,英語教員や学生といった層だけでなく,実務の外側にある純粋な知的好奇心として英語史を楽しんでいる一般のビジネスパーソンが圧倒的多数派のようです.
さらに国内での地域的な広がりを見ると,東京が38.9%と最大ですが,大阪6.7%,神奈川6.0%,千葉3.9%,北海道3.6%と続き,全国(さらには海外)に薄く広く分散しています.大学の講義室であれば物理的な制約がありますが,インターネットの音声配信という特性を活かし,英語史の地方分散化が数字として実現しているのは,興味深いファクトです.
これらすべてのデータを総括するならば,この5年間は,「マスメディア的なリスナー数の拡大」ではなく「英語史に関心を寄せるリスナーの着実な増加」を示す時間だった,ということです.実利的な英語スキルのためではなく,「英語っておもしろい」「言葉って不思議だな」という感覚を共有し,英語について雑談する文化圏・公共圏がここに誕生したのです.
大学の研究者が専門分野を掲げてこのようなコミュニティを形成できたことは,稀な事例ではないかと思っています.これまで heldio を支え,一緒に知的な遊び場を作ってくださったリスナーの皆さんに,改めて心より感謝申し上げます.
これからも heldio は様々な進化を遂げていくものと思われます.直近では,今月6月10日発売予定の近刊 『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)をめぐるお祭り企画やイベントも目白押しです.
新たな月となりましたし,heldio 5周年のこの機会に,Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」への入会もぜひご検討ください.helwa は毎週火木土の午後6時に配信しています.月額800円のサブスクで,初月無料サービスがありますので,まず試しに覗いてみていただければ.今月は helwa でも『なぜさんたんげん』の話題が多くなるだろうと思います.
昨日の heldio 「#1829. heldio 5周年 --- データで振り返る heldio の進化」もお聴きいただければ.それでは,明日もいつも通り,朝6時に heldio でお会いしましょう.

近刊『なぜさんたんげん』について,様々なメディア,プラットフォームよりコンテンツを発信しており,関連情報が散在してしまっているので,それらをまとめるべく『なぜさんたんげん』著者公式HPを作成し,公開しました.
さて,件の近刊ですが,正式な書名は『英語語源で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)となります.発売日は今月の10日(水)で,あと8日となっています.発売前の Amazon 予約では,書き下ろし1節分の特典が付きますので,ぜひお早めにご予約ください.https://amzn.to/4tf4K5k
このたび公開しました『なぜさんたんげん』著者公式HPは,これまでの本書に関連するコンテンツをすべて1箇所に集約した「総合案内所」のような役割を目指して作りました.見どころとしては,NHK出版デジタルマガジンで無料公開が始まった「はじめに」などへの直接リンクのほか,これまで hellog, heldio, helnote (note),heltube (YouTube) などで発信してきた関連コンテンツを一覧できるように整理してあります.今後,読者による感想やレビューなどの情報も随時こちらへ追加・集約していく予定ですので,どうぞお楽しみに.
ここで1つ,昨日胸が熱くなる嬉しかった出来事を報告させてください.倉林秀男先生(杏林大学)へ出来たての見本本を謹呈したところ,早速 X(旧 Twitter)でのポストにて,温かいコメントをいただいたのです.先生からは,There 構文や時・条件の副詞節の現在形,そして3単現の s など,英語史の「美味しいところ」が盛りだくさんだと評していただいたばかりか「専門用語を殆ど用いずに説明されているのは,流石」との力強いお言葉までいただきました.ヒット書籍の著者であられる倉林先生から,本書の狙いを評価していただけたことは,著者として深い感謝と感動の念に堪えません.
発売10日前となる一昨日より,私は滞在先のスコットランド・アバディーンの地から,日々の美しい風景や現地レポートを交えた「1~2分のカウントダウン動画」を YouTube および X にて毎日配信しています.ノー編集,一発撮りならではの,著者の生々しいリアルな熱量をお届けできればと思っています.
すでに「よし,この本を読むぞ」と決意が固まっている読者の方におかれましては,迷わず今すぐ Amazon の予約注文ページ] より1クリックでご予約(特典付き)いただけますと大変に心強いです.
「もっと本書について知りたい」「これまでの情報を一気に確認したい」という方は,まずは本日公開した『なぜさんたんげん』著者公式HPをじっくりとご覧いただき,一読に値する書籍かどうかをご検討ください.
発売前にも後にも,関連コンテンツやリンクを著者公式HPに積極的に追加していきますので,ぜひこのたび公開した新HPをお気に入りにご登録ください.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
連日,6月10日に発売予定の新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版)に関連する記事を書いています.
今回は,NHK出版の本書担当編集者と著者が heldio で対談した様子をお伝えしたいと思います.発売前に,二人三脚で本を作ってきた編集者と著者が語り合う様子が公開されるというのも珍しいかと思います.これまで2回にわたって対談してきました.
・ 第1回対談(5月13日配信),「#1809. 一昨日の『なぜさんたんげん』予約爆撃アワー生配信をアーカイヴでお届け」(対談自体は終わりの30分ほどをお聴きください)
・ 第2回対談(5月30日配信),「#1826. 『なぜさんたんげん』の裏側をお話しします --- NHK出版編集者・田中菜乃香さんとの対談 Part 2」
今回は,直近に配信された第2回対談の主旨をご紹介します.
対談の大きな柱となったのは,本書のタイトル決定に至るまでの長い舞台裏です.5月11日の「予約爆撃アワー企画」の初速や Amazon での好調な動き,またNHK出版デジタルマガジンでの第1章第5節(まさに「なぜ3単現の s をつけるのか」の目玉の節)の先行無料公開が3万ページビューを突破したことなど,発売前の大きな反響を喜びつつ,その魅力の根源がタイトル周りの議論にあったことを振り返りました.
実は,タイトルが最終的に決まったのは3月末から4月初めという,かなりギリギリのタイミングであり,そこに至るまでには数百通りもの組み合わせを検討するプロセスがありました.編集の田中さんは,手探りだった本文の調整以上にタイトル周りで「自分を信じられるか」という疑心暗鬼に陥った瞬間があったと明かしてくれました.とりわけ,一時はタイトルから「3単現の s」という文言そのものを消去しようとした段階すらあった旨,触れられています.それは「サブタイトルに説明を付け足すのは長さに甘えているのではないか」という葛藤から生じた迷いでしたが,編集者と著者の間では盛り上がっていた意見に対して,社内の経験豊富な先輩たちのノウハウや蓄積に基づく異なる案が潤滑剤として加わったことで,最終的に現在の形に落ち着きました.このプロセスを通じて,この本を本当に必要としている層の読者は,自分に必要なのが「英語史」であるとは気づいていない,という原点に立ち返ることができたのは,編集者および著者にとって非常に大きな成果でした.
また,本書のもう1つの魅力として,文体調整と用語解説へのこだわりが挙げられます.中高生向けの連載をベースとしつつも,新書という大人向けのジャンルに仕立て直すにあたり,ある程度の専門用語もあえて交えるという挑戦を試みました.ただし,専門知識がない読者でも自然と読み進められるよう,丁寧な言い換え表現や解説は加えてあります.読者の代表としての編集者目線と,伝えたい熱意が先走りがちな著者・研究者目線という,2つのプロフェッショナルな視点が火花を散らしつつも,最終的に融合したからこそ,今回の形にこぎつけることができたのだと,改めて実感させられる対談となりました.
以上が第2回対談の概要となりますが,第1回・第2回ともに,ぜひ上記の音声配信を直接お聴きいただければと思います.編集者と著者の息づかいが伝わるかと思います.
近日中に対談の続編をお届けする予定ですので,どうぞお楽しみに.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

一昨日,NHK出版公式Xアカウントより,6月10日の発売を目前に控えた新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版)の出来上がり見本の写真が公開されました.
おかげさまで本書の勢いが増してきています.著者として,またこの20日間プロモーションに奔走してきた身として,ただただ驚きと感謝の念を禁じ得ません.
現時点の最新データですが,Amazon 新着ランキングの「英語」部門では,第1位をキープし続けています.これだけでも十分にありがたいことなのですが,さらに驚くべきニュースが飛び込んできました.「英語」部門の1つ上のカテゴリーである「語学・辞事典・年鑑」部門でも,ついに初めて第1位を記録したのです.
Amazon の「語学・辞事典・年鑑」という部門は,ありとあらゆる語学書や巨大な辞典類がひしめき合う巨大な要塞です.そこで1位を獲得したということは,皆さんの本書への期待が思いのほか大きいことを示しています.
ちなみに,この「語学・辞事典・年鑑」のさらに1つ上のカテゴリーは,もはや「本」全体です.そして,そのすべての「本」のなかで競う総合売れ筋ランキングにおいて,本書は発売前にもかかわらず,目下514位にまで躍進しました(一昨日お昼現在).なお,売れ筋ランキングの「英語学」部門では相変わらず2位に付けています.全体として,勢いは加速しているといってよいです.
発売前でのこの熱気は,英語史という分野が本当に「お茶の間」に届き始めていることを示唆します.まだ予約注文のボタンを押されていない方は,ぜひ歴史的瞬間の単なる目撃者ではなく共犯者となっていただければ! 皆さんと一緒に,発売日に向けてのお祭りをさらに盛り上げていければ幸いです.
Amazon からの予約で,特典(書き下ろしの1節)がついてきます.ぜひこちらからご予約ください → https://amzn.to/4tf4K5k
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

一昨日の5月28日(木),英語史をテーマとする日本(世界でも?)唯一の月刊ウェブマガジン Helvillian 6月号が公開されました.通算第20号となる節目の号です.前号の紹介記事で「次号はいよいよ第20号の大台に乗る」と期待を寄せていましたが,こうして実際に形になり,継続の重みと有志ヘルメイトの皆さんの自発的なエネルギーに改めて深い敬意を表します.
今号の「表紙のことば」を担当されたのは taku さんです.ダイバーの taku さんが,ダイビングと英語史の共通点をアクロバティックに指摘されています.実は私もダイバーなのですが,「ダイビング×英語史」は考えたことがなかったので,今回 taku さんのことばを読んで目から鱗が落ちました.taku さんにお寄せいただいた表紙の写真はもちろん海面下の絶景.表紙デザインは,編集委員のお一人 Galois さんが手がけられました.
続く本編は,この1ヶ月のあいだに主に note 上で公開されたヘルメイトさんたちの記事群の抜粋一覧です.6月10日に発売予定の拙著 #なぜさんたんげん こと『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)を応援してくださる記事も多く含まれており,感謝に堪えません.
まず ari さんによる記事は,今月も圧倒的な質と量で,お馴染みの「ari 節」が安定的に炸裂しています.マカロンと増大辞をめぐる語源の話題から,『なぜさんたんげん』カウントダウン企画をマンガで応援する「英子さんたんげん」シリーズまで,縦横無尽のhel活振りです.
Grace さんは「新・家庭の常備「薬」なぜさんたんげん」と題する記事のなかで,近刊についてすでにウェブ公開されている部分のみを手がかりに,著者が近刊にこめた意図を鋭い洞察で暴いてくれています.著者として早くも身ぐるみを剥がされてしまったと感じています.恐るべし Grace 節!
今号の特筆すべき点として,kendama_player さんが note で初投稿を果たされたことが挙げられます.「ROAD TO 英語学・英語史」と題して,ご自身の英語史との出会いを振り返られています.新たな書き手の登場にコミュニティの広がりを感じ,嬉しい思いです.
lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート」は D ゾーンを順調に走行中で,今回は dental から desert までの単語をカバーしています.lacolaco さんが切り開いた「辞書を通読する」という道は,後に他のヘルメイトも歩むことになり,最も堅実で強力なhel活コンテンツに成長しました.そのような同志の1人が,あまねちゃんです.今号から『英語語源辞典』を気軽に通読する新シリーズを立ち上げられ,abacus から abyss に至るまで4本の記事を連発されています.この辞典通読ムーブメントの連鎖には,驚きを禁じ得ません.
mozhi gengo さんの寄稿の多さと視野の広さにも,相変わらず圧倒されます.インド英語の「クセ」に関する話題や,vacuum の <uu> という不思議な綴字の謎,さらには英領インド側から見たイギリスにとってのペルシャという歴史的な話題にまで筆が及んでいます.ペルシャ語の hastam が英語の I am に対応するという比較言語学的な指摘など,知的好奇心を大いに刺激されます.
教育・普及の観点からは,sorami さんの中学生向け英語語源クイズが第8弾・第9弾へと到達し,ラテン語の紹介や数の接頭辞を取り上げています.またみーさんの「小学生と学ぶ英語史」シリーズは128回に到達し(実際には本日までに140回に届こうというところ),継続力にただただ脱帽するばかりです.
佐久間さんは,日本歯科医史学会の特別講演のお知らせや,『語源で学ぶ医学英単語ハンドブック』を通じた医学英語教育の新たな地平についての議論により,医学の世界と言語研究の成果の交差点を探る希有なhel活を展開されています.
ykagata さんは,毎日連続投稿100回を優に超える活躍振りで,「ドイツ語×英語史」の話題を中心としつつ,いまや最も幅広いテーマでhel活を展開するヘルメイトとなっています.「「プチプチ」のドイツ語」や「カルビーのパッケージ仕様変更についてのドイツ語圏での報道を読む」など,タイトルだけ見ても読まざるを得ない記事が並びます.番外編として「『紀元前からのこだわり?なぜ3単現の s をつけるのか』にこじつけて学ぶドイツ語」も投稿されています.
umisio さんの記事群は,今号でも鋭い批評性とユーモアが同居しています.川上語録の深掘りシリーズ最終回,国語の教科書や大河ドラマをめぐる歴史の考察,さらには「「英語史で解く英文法の謎 なぜ[3単現のs]をつけるのか」というタイトルのなぜ」シリーズも開始されました.
専門的な英語史の窓としては,川上さんによる「古英語の規範意識」および「重なる三単現 s」の2本の論考が,誌面に重厚な学術的深みを与えています.私自身も,新刊書の予約をめぐる御礼や,応援マガジンの始動について微力ながら記事を寄せさせていただきました.
巻末は Grace さんによる「あゆみ」と,編集委員4名による第20号到達までの道のりを振り返っての「編集後記」で美しく締めくくられています.
このように通算第20号は,記念の号にふさわしく,質量ともに過去最高水準の充実ぶりとなっています.有志の皆さんのエネルギーによって紡がれるこの知的空間を,ぜひ時間をかけてゆっくりと味わっていただければ幸いです.
「読むだけでなく,自分もこのhel活の輪に加わってみたい」という方は,ぜひプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」の扉を叩いてみてください.ともに学び,ともに創る喜びが,そこには溢れています.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

一昨日5月27日(水)の午前7時,NHK出版デジタルマガジンにて,嬉しいお知らせが一般公開されました.来たる6月10日に刊行を控えている拙著『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)の,まさに心臓部とも言える「はじめに」の全文が,発売に先駆けてウェブ上で読めるようになっています.
私たちが中学校の英語の授業で誰もが一度は衝撃を受け,ときに呪文のように唱えさせられた摩訶不思議なルールの数々.「複数の名詞には s をつける」「主語が3人称・単数で現在の文のときは動詞に s をつける」.ふだん日本語で不自由なく意思疎通できている私たちからすれば,「なぜこんな不要なルールばかりあるのだろう」「理不尽だ」と感じてしまうのも無理はありません.実際,テストの引っかけ問題のようにして s をつけ忘れ,減点された苦い思い出から,英語そのものを嫌いになってしまった少年少女も少なくないはずです.
しかし,ここで声を大にしてお伝えしたいのは,皆さんがかつて嫌いになったのは学校での「受験科目としての英語」であって,英語本来の姿ではないということです.英語は本来,そのことばを使ってきた人々の長い長い歴史の表出,すなわち「言語」にほかなりません.英語の歴史をひもといていけば,一見すると理不尽で不規則な活用にこそ奥深い歴史と「答え」がしっかりと潜んでいるのです.あの頃に抱いた素朴な疑問を深く深く追求していくことで,教科書の向こう側にある英語の本当の姿,驚くべき物語を皆さんにお示ししたい --- そんな熱い想いと勢いを込めた「はじめに」の全文を,ぜひこちらの NHK出版デジタルマガジン特別公開ページより直接お読みいただければと思います.
また,同じNHK出版デジタルマガジンにて,去る5月11日に先行公開された本書の第1章第5節にあたる記事「紀元前からのこだわり?なぜ3単現の s をつけるのか【英語史で解く英文法の謎】」は,おかげさまで3万回PVを突破する大反響をいただいています.本書の副題に含まれている「3単現の s」にまさに迫る内容となっておりますので,今回の「はじめに」と合わせて,ぜひご一読ください.
何はともあれ,本書を読み終わったとき,皆さんのなかには新鮮な英語観が築かれていることと思います.「もう一度英語を学んでみようかな」という気持ちになっていただければ,著者としてこれ以上の喜びはありません.
発売日の6月10日まであと12日となりました.まだ本書をご予約いただいていない方は,ぜひこの機会に,特典(1節分の書き下ろし)もついてくる Amazon での予約注文をお勧めいたします.皆さんの熱い応援をよろしくお願いいたします.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

5月22日(金)よりスタートしていました,6月10日発売の新刊『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』の発売前大イベント「『なぜさんたんげん』24の疑問・総選挙」 (in Slido) ですが,5月26日(火)の 23:59 をもちまして,予定通りに投票を締め切りました.最終的な投票総数は96件にのぼりました.深夜のラストスパートにかけて票を投じてくださった皆さん,そしてSNS等でこのお祭りを一緒に盛り上げてくださったすべての方々に,著者として心より御礼申し上げます.ありがとうございました.
一昨日お届けした中間報告の記事「#6238. 今晩投票締切 --- 『なぜさんたんげん』24の疑問・総選挙,現在大激戦中」 ([2026-05-26-1]) では,2位グループの凄まじいデッドヒートの様子をお伝えしましたが,その後,どのような結末を迎えたのでしょうか.お待たせいたしました.ここに最終結果の確定順位と得票率を,降順にてご報告いたします.皆さんの「推し疑問」がどこに着地したのか,ぜひお確かめください.
1位:問5. なぜ3単現の s をつけるのか (38%)
2位:問9. なぜ現在分詞と動名詞は同じ -ing で表されるのか (21%)
3位:問7. なぜ「時・条件を表す副詞節」では未来のことも現在形で表すのか (19%)
3位:問21. アルファベット最後の文字 Z のミステリー (19%)
5位:問20. どのように単語ごとのアクセントの位置が決まるのか (18%)
6位:問1. なぜ英語の語順は SVO なのか (16%)
6位:問3. なぜ存在を表すのに There is/are .... という構文を使うのか (16%)
6位:問4. なぜ疑問文に do が現れるのか (16%)
9位:問2. なぜ英語の文には主語が必要なのか (15%)
9位:問8. なぜ仮定法では if I WERE a bird となるのか (15%)
11位:問15. なぜIは大文字で書くのか (11%)
11位:問24. 単数の they とは何か (11%)
13位:問12. なぜ go の過去形は went になるのか (10%)
13位:問17. なぜ know や high には発音されない文字があるのか (10%)
15位:問6. なぜ will を使って未来を表すのか (8%)
15位:問14. なぜAの読みは「アー」ではなく「エイ」なのか (8%)
17位:問13. なぜ形容詞の比較級には -er と more があるのか (6%)
17位:問16. 「マジック e」とは何か (6%)
19位:問18. なぜ one, two はこのスペリングでこの発音なのか (5%)
19位:問22. なぜ英語には類義語が多いのか (5%)
19位:問23. なぜ英語には省略語が多いのか (5%)
22位:問19. なぜ eleven, twelve というのか (4%)
23位:問11. なぜ child の複数形は children になるのか (3%)
24位:問10. なぜ foot の複数形は feet になるのか (2%)
いかがでしょうか.最終結果を眺めてみますと,中間発表からの数時間でさらなるドラマが生まれていたことが分かります.
まず,栄えある第1位に輝いたのは「問5. 3単現の s」でした.得票率38%で,他を寄せ付けない圧倒的な強さで王座に君臨しました.まさに本書のタイトルにふさわしい,英語学習者にとって最大の謎であることが証明された形です.
そして,最も注目すべきは2位以下の大激戦の結末です.中間報告で21%の同率2位に並んでいた三つ巴の争いから,頭一つ抜け出したのは「問9. -ing」でした.単独2位を死守したその背景には,文法上の役割が異なるのに形が同じであることへの,根深いモヤモヤ感があったのでしょうか.一方で,受験英語の定番「問7. 時・条件の副詞節」は,後半で怒涛の追い上げを見せた「問21. 文字 Z のミステリー」に捕らえられ,19%で同率3位という結果になりました.Z の謎がここまで上位に食い込んでくるとは,正直なところ著者としても予想していませんでした.文字・綴字史のロマンが皆さんに伝わったということなのかもしれません.
対照的に,英語史の定番中の定番である「問12. went の謎」 (10%) や「問11. children の謎」 (3%),「問10. feet の謎」 (2%) といった不規則変化の面々は,最終的にも下位グループに沈むことになりました.これらは一見すると風変わりな不規則変化にすぎませんが,その向こう側には壮大な英語史のカラクリが潜んでいます.本書では,その奥深さが伝わるのではないかと期待しています.
今回の総選挙で上位にランクインした話題については,本書の発売を待つことなく,今後の Voicy heldio にて「先出し深掘り解説」としてお届けしていく予定です.どの疑問の背後にどのようなダイナミックな歴史が隠されているのか,ぜひ楽しみにお待ちください.
今回の総選挙を通じて,皆さんと一緒に英語史のビッグウェーブをさらに高く大きくできたことを,重ねて感謝いたします.6月10日の新書発売に向けて,ここからさらにお祭りムードを加速させていきます.
特典(1節分の書き下ろし)もついてくる Amazon での予約注文にて本書をご予約いただければ.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

5月22日(金)よりスタートした,6月10日発売の新刊『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』の発売前の大イベント『なぜさんたんげん』24の疑問・総選挙」 (in Slido) ですが,最終投票日の本日までに多くの票(お1人3票まで)を投じていただいています.すでにご投票いただいた皆さん,本当にありがとうございます.
投票締切は本日5月26日(火) 23:59 です.残り時間が少なくなってきましたが,今朝の 00:10 現在の最新中間結果(得票率)を,皆さんにどこよりも早く公開いたします(Slido では投票済みの方は現時点での結果を見ることができる仕様です).
24項目のスタンダードな「英語に関する素朴な疑問」が,現在どのようなデッドヒートを繰り広げているのか,まずはその生々しい順位と得票率をご覧ください.
1位:問5. なぜ3単現の s をつけるのか (37%)
2位:問7. なぜ「時・条件を表す副詞節」では未来のことも現在形で表すのか (21%)
2位:問9. なぜ現在分詞と動名詞は同じ -ing で表されるのか (21%)
2位:問20. どのように単語ごとのアクセントの位置が決まるのか (21%)
5位:問4. なぜ疑問文に do が現れるのか (19%)
6位:問8. なぜ仮定法では if I WERE a bird となるのか (18%)
7位:問3. なぜ存在を表すのに There is/are .... という構文を使うのか (16%)
7位:問21. アルファベット最後の文字 Z のミステリー (16%)
9位:問2. なぜ英語の文には主語が必要なのか (15%)
10位:問17. なぜ know や high には発音されない文字があるのか (14%)
11位:問1. なぜ英語の語順は SVO なのか (12%)
12位:問12. なぜ go の過去形は went になるのか (8%)
12位:問15. なぜIは大文字で書くのか (8%)
12位:問16. 「マジック e」とは何か (8%)
12位:問24. 単数の they とは何か (8%)
16位:問6. なぜ will を使って未来を表すのか (7%)
16位:問22. なぜ英語には類義語が多いのか (7%)
18位:問13. なぜ形容詞の比較級には -er と more があるのか (5%)
18位:問14. なぜ A の読みは「アー」ではなく「エイ」なのか (5%)
18位:問18. なぜ one, two はこのスペリングでこの発音なのか (5%)
21位:問11. なぜ child の複数形は children になるのか (4%)
22位:問10. なぜ foot の複数形は feet になるのか (3%)
22位:問19. なぜ eleven, twelve というのか (3%)
22位:問23. なぜ英語には省略語が多いのか (3%)
いかがでしょうか.現時点での中間結果を見て,著者としても非常に興味深い発見がいくつもあります.
まず首位を独走しているのは,本書のタイトル・副題にも掲げ,先日のNHK出版デジタルマガジンの無料公開記事(すでに3万回閲覧突破)でも反響を呼んでいる「問5. 3単現の s」です.37%という圧倒的な得票率で,王者の風格を漂わせています.
しかし,凄まじいのは2位グループのデッドヒートです.受験英語の呪文の代表格「問7. 時・条件を表わす副詞節」,役割は異なるのに同形の「問9. -ing」,不規則きわまりない英単語の「問20. アクセントの位置」に関する3つの疑問が21%という同率の数字で並び,激しく火花を散らしています.確かに,英語学習者の皆が感じてきたモヤモヤが集まっている感じがします.
一方で,英語史ネタの定番ともいえそうな「問12:went の謎」 (8%) や「問10:feet の謎」 (3%),「問11:children の謎」 (4%) といった不規則変化のトリオが,現時点では意外にも下位グループに甘んじています.これはまだ,これらの不規則変化の向こう側に潜む壮大な英語史のカラクリが世の中に知られていないということなのか何なのか.
改めて,今回の総選挙の投票期間は,本日26日(火)の 23:59 までです.投票が締め切られましたら,近々に最終結果の大発表を Voicy heldio にて行います.そして,上位に輝いた疑問については,本書の発売前に先出し深掘り解説を行ないたいと思います.
まだ投票を迷っている皆さん,あるいはすでに投票を終えた皆さん,あなたの,あるいはあなたの知り合いの方々の3票が投じられれば,この大混戦の2位グループから頭一つ抜け出させることも,下位に沈んでいる推しの疑問を上位にごぼう抜きさせることも十分に可能です.どの話題が上位をさらっていくのかは,残り数時間の皆さんの投票にかかっています.
アカウント不要,匿名で1タップで即完了する投票会場はこちらです↓
・ Slido の投票会場
今晩の投票締切に向けて,皆さんと一緒に英語史のビッグウェーブをさらに高く大きくしていければと思います.皆さんのラストスパートのご投票を心よりお待ちしています.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
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