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ヘルメイトの ykagata さんが,HatenaBlog 上で展開しているブログ 「blog.heartyfluid --- 勉強したることども」にて,「『英語語源ハンドブック』にこじつけて学ぶドイツ語」と題する魅力的なシリーズを始められている.昨日までに『英語語源ハンドブック』より a/an, baby, cake, dad/daddy, each を取り上げた5つの記事が公開されており,A to Z にかける野心が感じられる.(応援しています!)
8月11日に投稿されたシリーズ第2弾「『英語語源ハンドブック』にこじつけて学ぶドイツ語 #2 baby」より,英単語 baby の他言語への展開の様子をおもしろく読んでいたが,「余談:ゲルマン祖語 *barną 「赤ちゃん」について」の1節に目が留まった.「赤ちゃん」から転じて「子供」を意味するようになった単語として,*barną 系列のものは,現代標準ドイツ語では残っていないという.そこでは,むしろ *kinþą 系の Kind が早くから一般化したとのことだ.ところが,南ドイツ・オーストリア・スイスの一部方言では,*barną 系列の Bua (少年)や Bar/Bärn (子)が用いられているという.
英語史を学んでいると,ここでピンとくる.古英語で「子供;子孫」を意味する頻出語で中性名詞 bearn のことだ.OED によると,この語は中英語では主に barn として存続した(この語形には古ノルド語の同根語が関与している可能性がある)が,後の標準英語にはほとんど残らなかった.しかし,スコットランドでは bairn の形で歴史を通じて使用され続け,現代でも普通に用いられている.標準英語でも1700年以来,文学語として bairn がときに見られるが,これはスコットランド語法の借用と解釈するのがよさそうだ.
ドイツ語においても英語においても,「子供」を意味する類義語間の選択が,方言に応じて割れているというのがおもしろい.動物語や遊びの言葉など,子供が日常的に好むものの名前には方言差が出やすいとされるが,「子供」という語そのものにも類似した傾向があるのだろうか.
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最終更新時間: 2025-08-14 22:02
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