hellog〜英語史ブログ     ChangeLog 最新     カテゴリ最新     1 2 3 4 次ページ / page 1 (4)

helmate - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2026-09-01 05:00

2026-08-30 Sun

#6334. 英語史の月刊ウェブマガジン Helvillian の2026年9月号が公開されました [helwa][heldio][notice][helmate][helkatsu][helvillian][link][nazesantangen]



 有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 9月号が,8月28日に公開されました.通算第23号となります.
 今号は,Galois さんによる秋の涼しさを感じさせる見出し画像とともに,早速本編の寄稿ラインナップが始まります.
 今号も圧倒的な記事量を誇る ari さんからスタートです.犬に絡めたシリウスの話題に始まり,ベルギーの街ブリュッヘと結びつけた英語史のネタ,チーズフォンデュをめぐる一件(タイトルからは何のトピックか分かりませんが,そこは読んでのお楽しみ)など,いつもの通り縦横無尽です.拙著『なぜさんたんげん』と関連付けた記事や,heldio や Helvillian に注目したファンサイト「Helvillain Heal」を公開されたとの報告までなされ,まさに八面六臂のhel活振りです.
 mozhi_gengo さんは今号でも多作です,迂言的な do の文法化から,turnstileurchin の語源,ヴェルネルの法則とグリムの法則を絡めたヒンディー語探訪まで,比較言語学的な視点が冴えわたっています.「青椒肉絲の美味しい店」と関連づけたトピックも要注目です.
 辞書通読勢も健在です.lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート」は D ゾーンの dice, dictionary, die まで到達しています.あまねちゃんはこの1ヶ月で通読ノートを第6弾から第9弾まで一気に4本更新し,ひそかに同辞典の「読み解き」にまで手を広げています.August の語源を遡る回や古英語 guma に迫る回も見逃せません.
 教育現場からは,sorami さんの中学生向け語源クイズが第14弾,第15弾を数え,和製英語や不定冠詞 a/aninterestedinteresting の使い分けといった実践的なテーマを取り上げています.みーさんの「小学生と学ぶ英語史」も引き続き絶好調で,kendama_player さんも英語史におけるヴァイキングの位置づけに関する仮説の紹介や,服部義弘先生への heldio オープンマイク企画の予告など,教育と研究の橋渡し役を果たしてくれています.
 ドイツ語と英語史の定点観測を続ける ykagata さんは,rainsalad の語源記事に加え,連載「『英語語源ハンドブック』にこじつけて学ぶドイツ語」が開始から1年を迎えたことを報告しています.ドイツ語 gleich 「同じ,すぐに」と英語 alike が同語源であること,そして Zum Wohl 「乾杯」の Wohl と古英語 Wes hal 「乾杯」の hal が実は別語源だという指摘と考察は刺激的でした.川上さんは「英語と歴史」シリーズを続けられ,「英語のなぜ」やってます通信も積み重ね,地道な連載の強みを見せつけています.
 Grace さんは festival という語の成り立ちと「花子」の記号論を論じ,Lilimi さんは仏検準1級の2次試験を振り返り,しーさんは「1000年前にタイムトラベルするなら何を持っていくか」というユニークな視点から「たべっ子どうぶつ」を語り,佐久間さんは梅毒がかつて「フランス病」と呼ばれた歴史を紹介するなど,語学と歴史のはざまを行き来する寄稿が並びます.こじこじ先生の3篇のオリジナル曲も,今号に彩りを添えています.
 umisio さんは今号も多く寄稿しています.学校教育での英語史導入の可能性を論じた記事に始まり,「伏線(未)回収」論シリーズも展開しています.酷暑のなかで頻発する「ボケ」への対処法を熱く語る一篇も,umisio さんらしい肩の力の抜けた味わいです.巻末は,Grace さんによる「あゆみ(2026年9月)」と,umisio さんによる「編集後記(2026年9月)」で締めくくられています.
 今号もまた,寄稿者それぞれの視点から英語史の奥深さを味わえる充実の号に仕上がっています.ぜひ Helvillian 9月号をじっくりとお楽しみください.そして,この hel活の輪に加わりたいと思われた方は,ぜひ Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」へお越しください.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-08-28 Fri

#6332. heldio で3回にわたり静岡大学名誉教授・服部義弘先生にインタビュー [voicy][heldio][notice][gvs][bibliography][open_mic][helkatsu][helmate]

 Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 のオープンマイク企画の一環として,heldio/helwa コアリスナーの kendama_player さんが,大学院時代の恩師である静岡大学名誉教授・服部義弘先生(専門は英語音韻論・英語史)にインタビューをしてくださいました.
 服部先生といえば,日本の英語音韻論および英語史研究を長年牽引されてきた重鎮です.その服部先生が heldio にご出演いただけるとは,驚くやら嬉しいやらで,私も感激いたしました.kendama_player さんがヘルメイトとして素晴らしいご縁をつないでくれました.企画は3回にわたる対談となっており,すでに heldio にて配信済みです.リンクを以下に掲げますので,ぜひお聴きください.

 ・ 「#1909. 静岡大学名誉教授・服部義弘先生に聞く! --- ご経歴,そして堀田との関係は?」



 ・ 「#1912. 静岡大学名誉教授・服部義弘先生に聞く! --- 大母音推移は本当にあったのか?」



 ・ 「#1915. 静岡大学名誉教授・服部義弘先生に聞く! --- お薦めの英語史の本は?」



 初回配信回では,服部先生のご経歴とともに,服部先生と私との学術的な関係について触れていただきました.お話しの中で言及された論著やシンポジウムの情報を,年代順に整理して掲載しておきます.

 ・ 中野 弘三・服部 義弘・小野 隆啓・西原 哲雄(監修) 『最新英語学・言語学用語辞典』 開拓社,2015年.
 ・ 堀田 隆一 「英語史における音・書記の相互作用 --- 中英語から近代英語にかけての事例から ---」近代英語協会第34回大会シンポジウム「英語音変化研究の課題と展望」(青山学院大学),2017年6月24日.
 ・ 服部 義弘・児馬 修(編) 『歴史言語学』 朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.
 ・ 堀田 隆一 「英語における may 祈願文の発生と発達」『歴史言語学』第8号(日本歴史言語学会編),2020年.67--80頁.
 ・ 堀田 隆一 「英語の発音と綴字の乖離と GVS」 日本音声学会主催 第35回音声学セミナー(青山学院大学京都大学),2025年9月28日.

 第2回では,英語史における音変化としては最も著名な大母音推移 (gvs) の話題を掘り下げていただきました.服部先生が対談のなかで言及・示唆された文献一覧は以下の通りです.

 ・ Jespersen, Otto. A Modern English Grammar on Historical Principles. Part 1. Copenhagen: Munksgaard, 1909.
 ・ Sapir, Edward. Language. New York: Hartcourt, 1921.
 ・ Smith, Jeremy J. An Historical Study of English: Function, Form and Change. London: Routledge, 1996.
 ・ Minkova, Donka and Robert Stockwell. "Phonology: Segmental Histories." A Companion to the History of the English Language. Ed. Haruko Momma and Michael Matto. Chichester: Wiley-Blackwell, 2008. 29--42.
 ・ Stenbrenden, Gjertrud Flermoen. Long-Vowel Shifts in English, c. 1150--1700: Evidence from Spelling. Cambridge: CUP, 2016.
 ・ 服部 義弘 「第3章 音変化」服部 義弘・児馬 修(編) 『歴史言語学』朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.47--70頁.
 ・ 米倉 綽・中村 芳久 (編) 『英語学が語るもの』 くろしお出版,2018年.

 対談のなかで服部先生は,大母音推移を構成する個々の音変化が一貫した連鎖反応として生じたわけではないとする「バラバラ説」を支持されつつも,Sapir のいう drift(駆流)の概念を引き合いに出しながら,全体としては大きな音変化の潮流をなしていたと捉える見解を示されました.一方で,現代の英語教育・英語学習の観点から見れば,GVS を一枚岩の現象として整理して捉えることにも十分に教育的利点がある,と柔軟な視点から述べられていたのが印象的でした.
 第3回では,服部先生選りすぐりのお薦め英語史書を挙げていただきました.英書と和書の,専門性の高い推薦書です.

 ・ Mugglestone, Lynda, ed. The Oxford History of English. Oxford: OUP, 2006.
 ・ Hogg, R. M. and D. Denison, eds. A History of the English Language. Cambridge: CUP, 2006.
 ・ Fulk, R. D. A Comparative Grammar of the Early Germanic Languages. Benjamins, 2018.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
 ・ 寺澤 芳雄・川崎 潔 (編)  『英語史総合年表 --- 英語史・英語学史・英米文学史・外面史 ---』 研究社,1993年.

 とりわけ『英語史総合年表』の選書にはしびれました.重厚かつ多角的に英語史の歩みを鳥瞰できる名著です.本書は現在でも入手可能ですので,関心を抱いた方はぜひ書棚に揃えてみてください.
 服部先生,刺激的なお話を本当にありがとうございました.ぜひ次回は,kendama_player さんも含めて3人で直接お会いして,さらに深くお話ししたいと思いました.ありがとうございました!

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-08-21 Fri

#6325. heldio オープンマイク企画 --- 英語史のアウトリーチ活動「hel活」の新たな段階として [voicy][heldio][helkatsu][outreach][helmate][helwa][open_mic]



 8月9日に,Voicy heldio で「#1897. heldio オープンマイク」と題する配信回をお届けした.
 英語史をお茶の間に届けるべく,2021年6月に開始した Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」は,おかげさまで5年を超え,1日も休まず毎朝の配信を続けてこられた.本ブログ「hellog~英語史ブログ」については,2009年5月以来,かれこれ17年以上にわたって毎日更新を継続している.この間,各種メディアでの発信,YouTube「いのほた言語学チャンネル」,雑誌連載,書籍の執筆,市民講座の開講など,英語史の裾野を広げるアウトリーチ活動,すなわち「hel活」 (helkatsu) に注力してきた.
 しかしながら,率直に告白すれば,私ひとりの力で毎日休まず新たなコンテンツを生み出し続けることには,物理的・時間的な限界が訪れつつある.近年は各種プロジェクトが目白押しで,日々の発信に追われるあまり,インプットが枯渇し,カラカラの状態になっているのである.アウトプット過多による質の低下は,何より私自身が日々痛感している.heldio について番組の継続を断念するか,あるいは配信頻度を下げるか,悩む日々が続いていた.
 そこで heldio について思いついたのが,マイクをコアリスナーの皆さんに開放する「オープンマイク企画」である.折しも Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」や月刊ウェブマガジン Helvillian では,熱心なリスナー(「ヘルメイト」と呼んでいる)の皆さんが主に note などのプラットフォームで自主的なhel活を繰り広げてくださっている.私ひとりで抱え込むのではなく,英語史を愛するリスナーの皆さんに番組制作の一翼を担っていただく体制へと移行できないかと考えたのである.
 当初は向こう1,2年をかけた中長期的なマイク委譲計画を思い描いていたのだが,7月下旬に helwa 内で協力を呼びかけたところ,わずか数週間のうちに驚くべきスピードで企画が動き出した.ヘルメイトの皆さんが自発的に対談やインタビューなどの音声コンテンツを次々と制作・提供してくださり,瞬く間にチャンネルを支えていただく体制が整ったのである.この熱気と実行力には,ただただ圧倒され,感謝の念に堪えない.
 オープンマイク企画には,大きく3つの狙いがある.第1に,私自身にかかっていた負担を適度に緩和すること.第2に,ヘルメイトの皆さんのフレッシュな熱量と多彩な知見を番組に吹き込むこと.そして第3に,発信者の多様化によってリスナーにとっても飽きのこない,より重層的で魅力的なチャンネルへと進化させることである.
 Voicy に代表される音声配信は,本来誰もが発信者となりうるウェブ時代のメディアである.英語史のアウトリーチ活動も,研究者からの一方通行の啓発という段階を終え,コミュニティ全体で楽しみながら知を共有するフェーズに入りつつあると考えている.私自身もメインのパーソナリティとして発信を継続しつつ,ヘルメイトの皆さんとともにこの場をサステイナブルに育てていきたい.日頃お聴きいただいているリスナーの皆さんにも,ぜひコメントなどでオープンマイク企画を応援していただき,さらには helwa への参加を通じてチャンネル制作の輪に加わっていただければ.よろしくお願いします.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-08-17 Mon

#6321. ari さんによる heldio/helwa ファンサイト「Helvillain Heal」が登場 [notice][helkatsu][helwa][heldio][link][helmate][helvillian][oe_text]


Helvillain_Heal_by_arisan_20260813.png



 昨今,hel活の熱気が各所で高まりを見せているが,また1つ,まことにありがたく貴重なウェブサイトが誕生した.8月14日,heldio/helwa のコアリスナーでhel活界隈でも精力的に活動されている ari さん さんが,heldio/helwa のファンサイト「Helvillain Heal」を開設してくださった.ari さん,ありがとうございます!
 このサイトは,私の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」,およびプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」を応援する有志(= ari さん)によって編集・公開されているポータルサイトである.サイトトップの案内にもある通り,リスナーコミュニティ「Helvillian の中でも,こっそりと行動する Helvillain の館」というコンセプトだそうだ.Helvillian ではなく Helvillain であるところに注目である(ダジャレなのだが,一応これを述べておかないと,微妙すぎて読者が混乱する恐れがある).
 サイトを覗いてみると,現時点で大きく分けて2つの主要コンテンツが整理されている

 ・ Voicy heldio での古英語・中英語音読回へのリンク集:heldio で配信してきた古英語・中英語のテキストを読み上げる「音読回」が,学びやすいように整理されている.素朴に古英語や中英語の音声に触れてみたい学習者にとって,絶好のガイドとなる.
 ・ 月刊ウェブマガジン Helvillian 各号へのリンク集:有志ヘルメイトの皆さんが制作してくださっている英語史とhel活に関する月刊ウェブマガジン Helvillian について,創刊号から最新号に至るまでの表紙画像および各記事へのリンクがずらりと並んでいる.

 過去の記事でも触れてきた通り,Helvillian の毎号の充実ぶりには目を見張るものがある.このようにバックナンバーも含めて一覧・アクセスできる環境を整えていただき,hel活コミュニティ全体にとっても大きな財産となる.まさに「英語史をお茶の間に」広めるhel活の真骨頂だ.
 有志ヘルメイトの ari さんによ自発的な広報・アーカイブ活動が,こうして素晴らしい形を取って立ち上がったことに,身近な者として深い感謝と敬意を表したい.このような仲間の情熱に支えられながら英語史の輪が広がっていくのを実感するのは,本当に嬉しい.
 このサイトの今後の更なる展開やコンテンツの拡充も,大変楽しみにしている.hellog 読者の皆さんも,ぜひ「Helvillain Heal」を訪問し,ブックマークの上,日々の英語史の学びに活用していただければ.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-08-02 Sun

#6306. 英語史の月刊ウェブマガジン Helvillian の2026年8月号が公開されました [helwa][heldio][notice][helmate][helkatsu][helvillian][link][nazesantangen][dubline_guinness_recording_session]



 7月28日,有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 8月号が公開されました.通算第22号となります.
 まず,編集委員の Galois さんによる素晴らしい表紙デザインが目を引きます.今号の「表紙のことば」を担当されたのは,佐久間さん(helwa のハンドルネーム「無職さん」)です.上海の外灘(ワイタン)に建つ旧中国税関の時計塔を取り上げ,イギリス帝国の領土拡大と英語の世界進出の歴史を重ね合わせて解説してくれています.ロンドンの Big Ben をモデルとし,かつて「ウェストミンスターの鐘」を響かせていた時計塔が,現在では革命歌「東方紅」を奏でているという歴史の皮肉は,まさに英語史が世界史の一部であることを思い出させてくれます.専門家である佐久間さんは,日本歯科医史学会や救急蘇生法教育の歴史に関する記事も寄稿されています,
 今号の収載記事も,多種多様で魅力的なラインナップが揃っています.前号に引き続き熱を帯びているのが『なぜさんたんげん』関連の記事です.ari さんによる「英子さんたんげん」や「3単現」関連の記事,しーさんによる「日本語で読もう!『なぜさんたんげん』」,あまねちゃんさんによる「載りそうで載らなかったトピックを想像してみた」シリーズなど,多角的なアプローチで『なぜさんたんげん』を盛り上げています.
 語源や英語史の深掘り記事も百花繚乱です.mozhi gengo さんは plaster, pairing, bear などいつもながらに様々な語源を取り上げられていますが,他のヘルメイトのhel活と互いに影響を与え合う話題選びも目立ち,「hel活の輪」を体現しています.同じように,ykagata さんの houseghost やドイツ語に絡めた多様なコンテンツも,「hel活の輪」を回し続ける動力源です.lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート D」は職人技の域に達していますね.sorami さんの「中学生向け英語語源クイズ」,川上さんの「homework と housework の違い」をはじめとする素朴な疑問系のトピック,みーさんによる「小学生と学ぶ英語史」シリーズなど,教育現場や日常に即したコンテンツが目白押しです.
 さらに,Lilimi さんの『古文と漢文』読書記,rei さんの ghost から spirit への「helwa 論」,こじこじ先生によるオリジナル曲の披露,kendama_player さんによる英語史講座報告など,ヘルメイト個々の関心と創造性が炸裂しています.
 新刊書,宮嵜 由美・八木橋 宏勇(編)『響き合うことばと社会』(開拓社)を記事で紹介された Grace さんは,「helwa のあゆみ」も執筆されています,北千住オフ会での Baugh and Cable 精読会や,急遽開催され大盛況となった「ダブリン・ギネス収録会」の熱気が記録されています.
 そして,研究者論や helwa 論にも関心の強い umisio さんによる「編集後記」は必読です.井上逸兵先生の「ゆる言語学ラジオ」出演に端を発した酷暑の「ボケ」大ブームと,ari さんの極上 note 記事「青椒肉絲の美味しい店」をめぐりリスナーや私の大混乱をユーモアたっぷりに語ってくれています.
 今号の目次を取りまとめてくださった Lilimi さん,そして編集委員の Galois さん,Grace さん,umisio さん,本当にありがとうございました.
 hellog 読者の皆さんも,ぜひ Helvillian 8月号を開いて,この熱気あふれる学びの場を体験してみてください.そして,この熱いhel活の輪に加わりたいと思われた方は,ぜひ Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」 へお越しください.その日からあなたもヘルメイトです!

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-08-01 Sat

#6305. B&C の第65節 "The Application of Native Words to New Concepts" (3) --- Taku さんとの超精読会 [bchel][oe][borrowing][semantic_change][christianity][lexicology][latin][loan_word][link][voicy][heldio][anglo-saxon][history][helmate][helwa]



 Baugh and Cable の精読シリーズ,第65節を読み進め,議論を重ねています.helwa の仲間たちとともにテキストを念入りに読み解いた北千住オフ会での音声を,Voicy heldio にて公開しております.今回もナビゲーターとして全体を引っ張ってくださったのは,お馴染みの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)です.「#1889. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (65-3) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」をぜひお聴きください.
 今回は,キリスト教的な「説教する」「祈る」といった宗教的行為を表わす動詞・名詞において,ラテン語からの直接の借用を避け,アングロサクソン人が元々持っていた本来語の意味を転用させたが扱われています.精読した本文の該当箇所は1文のみで,以下の通りです(Baugh and Cable, p. 86).

Instead of borrowing the Latin word praedicāre (to preach), the English expressed the idea with words of their own, such as lǣran (to teach) or bodian (to bring a message); to pray (L. precāre) was rendered by biddan (to ask) and other words of similar meaning, prayer by a word from the same root, gebed.


 今回注目したのは1文のみですが,the English の定冠詞がもつ意味・意義に注目し,著者の英語史や言語変化に対する姿勢を読み解くというエキサイティングな議論が展開しました.改めてキリスト教の布教と用語の問題,それから読書会に立ち会われたヘルメイトからの質問などについても検討し,豊かな議論の時間を過ごすことができました.
 これまでの B&C 超精読会のアーカイブは,体系的にまとめられており,いつでもさかのぼって学習することができます.「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) に全回へのリンクが整備されておりますので,未聴の回がある方はぜひご参照ください.原書を手元に用意し,音声を副読本のように活用することで,英語史の原典購読の醍醐味を味わっていただけるはずです(使用テキストは最新の第7版ではなく第6版となっております).また,このような精読の輪の中に加わり,一緒に学びを深めたいとお考えの方は,ぜひ Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」へお越しください.8月の helwa もちょうど本日からスタートです.刺激的で充実した学びの時間が待っています!


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-29 Wed

#6302. B&C の第65節 "The Application of Native Words to New Concepts" (2) --- Taku さんとの超精読会 [bchel][oe][borrowing][semantic_change][christianity][lexicology][latin][loan_word][link][voicy][heldio][anglo-saxon][history][helmate][helwa]



 Baugh and Cable の第6版をじっくりと読み解いていく「超」精読シリーズの続編です.前日に引き続いて,helwa のオフ会で収録した熱気あふれる音声を Voicy heldio にて共有いたします.今回も解説の進行役を務めてくださっているのは,helwa/heldio でお馴染みの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)です.ぜひ「#1886. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (65-2) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」をお聴きいただければと思います.
 今回の該当箇所では,ラテン語のキリスト教概念を導入するにあたり,英語がどのような本来語を用いてこれらを表現しようとしたのか,その具体例が多数挙げられています.外来語をそのまま取り入れるのではなく,すでにある自言語の語彙を組み合わせて翻訳借用したり,意味を拡張させたりする手法が観察されます.今回精読した英文3文を提示します(Baugh and Cable, p. 86).

Patriarch was rendered literally by hēahfæder (high father), prophet by wītega (wise one), martyr often by the native word þrōwere (one who suffers pain), and saint by hālga (holy one). Specific members of the church organization such as pope, bishop, and priest, or monk and abbot represented individuals for which the English had no equivalent and therefore borrowed the Latin terms; however, they did not borrow a general word for clergy but used a native expression, ðæt gāstlice folc (the spiritual folk). The word Easter is a Germanic word taken over from a pagan festival, likewise in the spring, in honor of Eostre, the goddess of dawn.


 キリスト教宣教団にとって,イングランドの布教のためには,ラテン語の用語を使わずに,土着の人々の言語である古英語を最大限に活用する必要があったにちがいありません.精読会では,この観点を踏まえて突っ込んだ議論が繰り広げられました.皆さんにも一緒にお考えいただき,heldio のコメント欄よりご意見やご質問を寄せていただければと思います.
 この B&C 精読会配信回のバックナンバーは,すべて整理されて保存されています.「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) に過去の配信回がリスト化されていますので,復習や聞き返しにご活用ください.テキストを片手に音声を聴き進めることで,英語史の理解が着実に深まっていきます(読書会では最新の第7版ではなく第6版を使用していますので,お持ちの版をご確認ください).
 さらに,「この濃密な読書会の空間に直接参加してみたい」という方は,ぜひ Voicy のプレミアムリスナー限定チャンネル「英語史の輪 (helwa)」へのご参加をご検討ください.皆さんとともに英語史を深掘りする有意義な時間を共有できます.


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-27 Mon

#6300. B&C の第65節 "The Application of Native Words to New Concepts" (1) --- Taku さんとの超精読会 [bchel][oe][borrowing][semantic_change][christianity][lexicology][latin][loan_word][link][voicy][heldio][anglo-saxon][history][helmate][helwa]



 英語史の名著,Baugh and Cable のテキスト(第6版)を,helwa のメンバーと「超」精読していくシリーズです.先日土曜日の午後に開催された豊かな読書会の音声を,そのまま Voicy heldio でお届けします.いつものように helwa/heldio の盛り上げ役の Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)に読書会をリードしていただいています.「#1884. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (65-1) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」をお聴きください.
 今回は,"The Application of Native Words to New Concepts" と題する節を読み始めています.前節までにみてきたように,古英語期にはラテン語からの借用語が多く流れ込んできました.しかし,ラテン語の影響の大きさはは,そのような直接の借用語だけをみているだけでは,正確につかめません.ラテン語は,英語本来語にも目に見えにくい間接的な影響を少なからず与えているのです.精読対象となった英文を以下に掲げます(Baugh and Cable, pp. 85--86).最初5文をじっくり読んでいきます.

The words that Old English borrowed in this period are only a partial indication of the extent to which the introduction of Christianity affected the lives and thoughts of the English people. The English did not always adopt a foreign word to express a new concept. Often an old word was applied to a new thing and by a slight adaptation made to express a new meaning. The Anglo-Saxons, for example, did not borrow the Latin word deus because their own word God was a satisfactory equivalent. Likewise, heaven and hell express conceptions not unknown to Anglo-Saxon paganism and are consequently English words.


 この B&C 超精読シリーズの過去回は,すべてアーカイヴに保存されており,いつでもお聴きいただけます.「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) にリンクがまとまっているので,ご参照ください.バックナンバーみ聴いた上で,この英語史の古典的テキストを一緒に読んでみたいという方は,ぜひ本書をお手元にご用意ください(最新版は第7版ですが,読書会では第6版を読み進めているので,ご注意ください).また,「超精読会に自分も加わりたい」という方は,ぜひ Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネルである「英語史の輪 (helwa)」へお越しください.限りなく豊かな時間を過ごすことができます.


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-13 Mon

#6286. 「ダブリン・ギネス収録会」 --- helwa の価値が最大限に発揮された完全オンライン土曜日 [heldio][helwa][helkatsu][helmate][dubline_guinness_recording_session][note][kdee][hee]


ダブリン・ギネス収録会



 一昨日の土曜日,7月11日の午後,アイルランドはダブリンの地より Zoom で繋ぎ,Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」のメンバー(ヘルメイト)の皆さんとともに半日を費やすオンラインでの「ダブリン・ギネス収録会」を敢行しました.急な呼びかけであったにもかかわらず,入れ替わり立ち替わりで延べ20名近くのヘルメイトの皆さんにお集まりいただき,盛況のうちに幕を閉じることができました.ご参加くださった方々,そしてチャット等で場を盛り上げてくださったギャラリーの皆さんに,この場を借りて心より御礼申し上げます.ありがとうございました.
 滞在先のダブリンでは朝の6時(日本時間の午後2時)からスタートし,気がつけば日本時間の夜11時まで,実にみっちり9時間にわたる濃密な時間でした.もともとは少人数での小さな対談会を調整していたのですが,オープンなオンラインイベントとして企画を立ち上げたところ,驚くべきフットワークの軽さで多くのヘルメイトのご都合がカチリと噛み合い,嵐のような収録会の決行に至りました.前々から周到に準備された企画よりも,こうした突発的なお祭りのほうが不思議とうまくいくケースがあるのですが,今回はまさにその例でした.
 今回の収録会では良質な対談回をたくさん収録することができましたが,その「取れ高」以上に私にとって貴い財産となったのは,ヘルメイトの皆さんと深く歓談し,親睦を深めることができたことです.結果として,今回の収録会の最大の意義はそこにあったと思っています.
 収録会のメニューを時系列で振り返っておきましょう.まず午後2時過ぎのオープニングに続き,kendama_player さんの英語史講義報告の対談から始まりました.3時過ぎからは,khelf(慶應英語史フォーラム)の寺澤志帆さんをゲストに迎え,『英語語源辞典』 (kdee) の bear の項目をじっくりと読み解く対談を行ないました.普段は私自身が解説する側に回ることが多いのですが,寺澤さんの明快な語り口を,ひたすら聞き役に回って味わうという体験は,たいへんに新鮮な時間でした.解説を聴くうちに次々と新しいアイディアが湧き出し,大いに知的好奇心が刺激されました.
 4時過ぎからは上智大学の小河舜さんにお越しいただき,昨日の記事でも触れた「地球ことば村オンラインサロン」より配信された最新動画に絡めて「英国地名×英語史」をテーマに熱く語り合いました.さらに5時過ぎからは,刊行から1年が経ち,物書堂さんからアプリ版もリリースされた『英語語源ハンドブック』 (hee) の使用感について,ご参加されているヘルメイトの皆さんにマイクを回しながら語り合うコーナーを設けました.
 6時からは,本日の目玉企画である川上さん持ち込みの「聞かせて!『なぜさんたんげん』のなぜ」の heldio 生配信を90分枠で敢行しました.私の側の機器の不調により,途中で生配信が途切れるというトラブルがありましたが,『なぜさんたんげん』をご担当いただいたNHK出版の編集者・田中菜乃香さんにもご出演いただくことができました.著者に向けられた鋭いツッコミに対し,著者は頭をフル回転させ,言葉を整理しながら喋る,きわめて消耗的ながらも価値のある時間となりました.後半の生配信未配信部分は別途録音してあるため,後日,アーカイヴ配信したいと思っています.ぜひご期待ください.
 その後は主にギネスビールを片手に,ヘルメイトの皆さんとの Zoom 上での懇親会へと移りましたが,ari さんykagata さんを中心とした「なぜさんたんげんカウントダウン企画」(そして,ari さんによる4コマ漫画シリーズ「英子さんたんげん」)を振り返る回顧展の対談も収録しました.最後には,ヘルメイトの皆さんから総括のコメントをいただきました.
 半日の収録会を通じて私が確信したのは,このコミュニティ「英語史の輪 (helwa)」が,単なるクローズドな音声配信のチャンネルではなく,「学びと継続をお互いに支援し合う最強の環境」に育ってきているという事実です.毎日記事を書く方,独自の新しい勉強法を開発される方,そして何より,対談収録中に驚異的な集中力を発揮して体系的なライヴ議事録を書き残してくださった orangemorishita さんのような存在.各メンバーによる活動が有機的に結びつき,お互いの学びのモチベーションを高め合う文化が形成されてきています.寺澤志帆さんが最後に投げかけてくれた「純度100パーセント」というキラーフレーズが,まさにこのコミュニティの本質を言い当てていました.
 今回の「ダブリン・ギネス収録会」で収録した濃密な対談や振り返りの数々は,今後の heldio 通常回で配信していく予定です.第1弾は,すでに昨日の朝に「#1869. コアリスナー kendama_player さんが,前橋市立図書館で英語史講座を開かれました」としてお届けしました.ぜひ hellog 読者の皆さんも,今後の配信にご期待いただければ.
 そして,もしこの「純度100パーセント」の学びの熱気や,お互いに刺激を与え合うコミュニティの空気を直に体験してみたいと思われた方は,ぜひプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」へのご参加をご検討いただければと思います.毎週火・木・土の午後6時に,heldio レギュラー配信とは一味違うテイストの話題をお届けしています.月額800円のサブスクリプション配信ですが,初月無料のサービスも用意されていますので,一歩足を踏み入れ,数週間その環境に浸っていただければ,なぜこれほどまでに今「hel活」(helkatsu) が盛り上がっているのか,その理由が必ずお分かりいただけるはずです.hellog 読者の皆さんを helwa でもお待ちしています!

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-08 Wed

#6281. 「英語語源辞典でたどる英語綴字史」の khelf 寺澤志帆さんが『英語語源辞典』の読み方解説を始められています! [notice][khelf][kenkyusha][kdee][lacolaco][helkatsu][hel_education][helmate]


terasawa_shiho_kdee_series_384.png



 7月4日,khelf メンバーの寺澤志帆さんが,シリーズ「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」にて「384. bear「産む」についてさらに深堀り」と題する記事を投稿された.
 タイトルからは普段と変わりない投稿かと思いきや,記事を読んでみると何かが異なる.そう,『英語語源辞典』の読み方解説が丁寧になされているのだ.記号の使い方や略記の説明,そして専門家の視点からの追加的解説が施されており,それに沿って読み解いていくと,辞典初心者にとっても,動詞 bear 「産む」の項目に記述されている語誌の詳細が理解できるようになっているのだ.
 しかも,続けて7月6日には,同じ読み解き解説の趣旨で「386. beast ―『英語語源辞典』読み解き解説第2弾―」も投稿されている.
 実は2週間ほど前に,『英語語源辞典』通読挑戦者の第一人者である lacolaco さんが,同じような試みをいち早く実践されていた.すでに hellog でも「#6268. 「英語語源辞典通読ノート」の lacolaco さんが『英語語源辞典』の読み方解説を始められています!」 ([2026-06-25-1]) で紹介した通りである.直接 lacolaco さんの desire -- deskdespite, develop, device の2つの記事をお読みいただきたい.
 『英語語源辞典』通読の試み自体が勇気ある挑戦といえるが,通読挑戦者たちが自らこの辞典の(読み解きを含めた)おもしろさを広く伝えるために,読み解き方を易しく解説してくれるとは,なんという辞典愛であり語源愛だろうか.
 同辞典を持っているけれども,希望するほどには読みこなせず,使いこなせていなかった,という方は少なくないだろう.この辞典は高価だが,専門性が高く信頼できる代物なので一旦入手すれば一生モノである.だからこそ,多くの方々に使いこなして欲しい.ぜひ辞典を開きつつ,先日の lacolaco さんの記事や今回の寺澤さんの記事をじっくりと読み,語源辞典の懐の深さを味わっていただきたい.
 私自身もこれまでに『英語語源辞典』の読み方解説に類することを試みてきたが,必ずしも体系的に行なってきたわけではない.それでも役に立つだろうとは思われるので,ぜひ「#6232. 『英語語源辞典』を読みこなせるようになりたい方へ」 ([2026-05-20-1]) に掲載されているリンク集より,各コンテンツをたどっていただければ.

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

Referrer (Inside): [2026-07-15-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-07 Tue

#6280. B&C の第64節 "Influence of The Benedictine Reform on English" (3) --- Taku さんとの超精読会 [bchel][oe][benedictine_reform][christianity][lexicology][borrowing][latin][loan_word][link][voicy][heldio][anglo-saxon][history][helmate][philology]



 昨日に続き,英語史の古典的名著 Baugh and Cable (第6版)を helwa の熱心な仲間たちと1文ずつ解剖していく超精読会の実況録音シリーズです.Voicy heldio の配信と連動しながら,名著の行間から立ち上る歴史の息吹を再現する試みを続けています.
 今朝の heldio 最新回では,第64節 "Influence of The Benedictine Reform on English" の締めくくりとなる後半部分 (p. 85) の精読をお届けしています.今回も,精読のリード役は,helwa/heldio コミュニティに欠かせないヘルメイトであり,同志である Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)です.
 昨日までに見てきたように,ベネディクト改革期に英語へ流入したラテン語借用語の多くは,本を通じて導入された書物的・学術的な用語でした.本日のターゲットとなる英文では,これらの単語が当時の古英語の語彙体系においてどのような位置づけにあったのか,そして文献学的な視点から借用時期をどのように特定・推定すべきなのか,というテーマが議論されます.ラテン語形のまま用いられており完全に同化しなかった単語のリストを眺めながら,文献上の沈黙をどのように解釈すべきかという,文献学や歴史言語学の方法論に関する問題にまで踏み込んで議論しています.ぜひお付き合いください

It would be possible to extend these lists considerably by including words that were taken over in their foreign form and not assimilated. Such words as epactas, corporale, confessores, columba (dove), columne, cathedra, catacumbas, apostata, apocalipsin, acolitus, absolutionem, invitatorium, unguentum, cristalla, cometa, bissexte, bibliothece, basilica, adamans, and prologus show at once by their form their foreign character. Although many of them were later reintroduced into the language, they do not constitute an integral part of the vocabulary at this time. In general, the later borrowings of the Christian period come through books. An occasional word assigned to this later period may have been in use earlier, but there is nothing in the form to indicate it, and in the absence of any instance of its use in the literature before Alfred it is safer to put such borrowings in the latter part of the Old English period.


 この B&C 超精読シリーズの過去回のリンク集へは,「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) からアクセスできます.ぜひ過去回も含めてお聴きになり,本書の精読を通じて,豊穣なる英語史の世界に足を踏み入れていただければ.


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-06 Mon

#6279. B&C の第64節 "Influence of The Benedictine Reform on English" (2) --- Taku さんとの超精読会 [bchel][oe][benedictine_reform][christianity][lexicology][borrowing][latin][loan_word][link][voicy][heldio][anglo-saxon][history][helmate][helwa]



 前回の関連記事 ([2026-06-19-1]) に引き続き,Voicy heldio の収録会の形をとりながら,英語史の名著,Baugh and Cable のテキスト(第6版)を,helwa の志高き仲間たちとともに徹底的に精読していく会の記録をお届けします.この熱気あふれる読書会の音声をそのままお届けする heldio 配信シリーズは,コアなリスナーの皆さんの応援に支えられて,ゆっくりとではありますが順調に進んでいます.
 今朝配信の heldio 最新回では,引き続き第64節の精読を進めています.本日のブログ記事はこの音声配信とリンクした内容となります.今回も,helwa/heldio のコミュニティを熱く盛り上げてくださっているヘルメイトであり,コアリスナーの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)に,精読をリードしていただきました.
 前回の heldio 配信「#1846. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (64-1) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」では,ベネディクト改革がもたらした宗教関係のラテン借用語に焦点を当てました.今回はさらにその外側に広がる書物的・学術的な語彙へと突入します.古英語期の借用語といえば,キリスト教伝来に伴う初期の日常的・一般的なラテン借用語が想起されますが,ベネディクト改革期にラテン語から流入した語彙の性質はそれらとは一線を画しています.きわめて学術的な専門用語が目立つようになるのです.今回の精読のターゲットとなった英文を以下に掲げます (p. 85) .植物名や医学用語,動物の名称など,当時の知識階級が本を通じて導入した語彙の数々を味わいました.

But we miss the group of words relating to everyday life characteristic of the earlier period. Literary and learned words predominate. Of the former kind are accent, brief (the verb), decline (as a term of grammar), history, paper, pumice, quatern (a quire or gathering of leaves in a book), and term(inus), title. A great number of plant names are recorded in this period. Many of them are familiar only to readers of old herbals. Some of the better known include celandine, centaury, coriander, cucumber, ginger, hellebore, lovage, periwinkle, petersili (parsley), and verbena.9 A few names of trees might be added, such as cedar, cypress, fig, laurel, and magdala (almond).10 Medical terms, like cancer, circulādl (shingles), paralysis, scrofula, plaster, and words relating to the animal kingdom, like aspide (viper), camel, lamprey, scorpion, and tiger, belong apparently to the same category of learned and literary borrowings.

9 A number of interesting words of this class have not survived in modern usage, such as aprotane (wormwood), armelu (wild rue), caric (dry fig), elehtre (lupin), mānrūfie (horehound), nepte (catnip), pollegie (pennyroyal), and hymele (hop-plant).
10 Most of these words were apparently bookish at this time and had to be reintroduced later from French.


 この B&C 超精読シリーズの過去の足跡については,すべてアーカイヴに網羅されており,いつでもバックナンバーにアクセス可能です.各回へのナビゲーションは,「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) をご覧ください.この超精読シリーズを通じて知的好奇心をくすぐられた方は,ぜひ本書をお手元にご用意の上,この音声を道しるべに精読体験を味わっていただければ幸いです.さらに,「ただ聴くだけでなく,自分も対面やオンラインの現場に飛び込んでリアルタイムに議論の輪に加わりたい!」という熱量をお持ちの方は,ぜひ Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネルである「英語史の輪 (helwa)」へのご参加をご検討ください.月額800円,初月無料のサブスクです.


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-07-01 Wed

#6274. 英語史の月刊ウェブマガジン Helvillian の2026年7月号が公開されました [helwa][heldio][notice][helmate][helkatsu][helvillian][link][nazesantangen]



 去る6月28日,「英語史をお茶の間に」届けようと日々奮闘している有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 7月号が公開されました.通算第21号となります.
 今号のキャッチコピーは「まだまだ続く,#なぜさんたんげん そしてhel活の波」です.6月10日に世に送り出された新著『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)に関連する記事や熱い応援記事が,前号に引き続き,誌面を埋め尽くしています.
 まずは ykagata さんによる「表紙のことば」から覗いてみましょう.瀬戸内海から四国をめぐる旅の記憶とともに,ドイツ語の "Straße von Hormus" (ホルムズ海峡)が英語 street に対応するという興味深い話題を展開してくれています.広い海峡を「ストリート」と呼ぶ言語的なおもしろさを,旅の実感と結びつける筆致はさすがです.ykagata さんは他にも「[古英語]名詞屈折表が stān で始まる本,始まらない本」など,英語史に直接・間接に関わる魅力的な記事を多数寄稿されています.
 今号の収載記事をいくつかカテゴリー別に紹介していきましょう.
 何といっても今号のお祭りの中心は『なぜさんたんげん』です.ari さんによる「英子さんたんげんシリーズ」は,普段のユーモアとダジャレのセンスが凝縮された4コマ漫画で,『なぜさんたんげん』のエッセンシャル版としての期待が集まっています.Grace さんの「『なぜさんたんげん』目撃の巻」は,書店での劇的な「昇格」の瞬間を淡々と描き出し,多くのリスナーの涙を誘う秀逸なドキュメンタリー「石巻の奇跡」を世に送り出しました.さらに umisio さんは「告白・懺悔」と題して,自身が過去に「3単現の s」に疑問を抱かなかった理由を深く掘り下げるシリーズを連載されています.
 一方,お祭りの熱気の中でも淡々と学びを進めるレギュラー陣の記事も輝いています.その代表格が,listener kawakami さんによる「Prologue to Eneydos を読むシリーズ」です.Caxton の印刷技術と英語史の深淵に迫るこの硬派な連載は,編集委員の umisio さんをして「浮かれた頭を冷やしてくれる,ウェーランドの経済学言論の講義のようだ」と言わしめるほどのシリーズとなっています.私自身も,専門家の観点から,これが貴重な中英語精読シリーズになっているものと評価しています.
 語源やクイズの分野も百花繚乱です.mozhi gengo さんは「Beryl と同語源の日本語は○○」やヒンディー語の借用語コラムなど,圧倒的な知識量で独自の深掘りを展開されています.lacolaco さんによる「英語語源辞典通読ノート D」は,着実に歩みを進める職人技の鑑です.『英語語源辞典』の読み方解説も加わり,ますます有用性が高まっています.sorami さんの「中学生向け英語語源クイズ」は,学校の授業ですぐに使える実践的な内容とすぐれた出題センスが相変わらず光っています.
 さらに,前橋市での英語史講座を満員御礼のなかで終えられた kendama_player さんの熱い報告記事や,あまねちゃんによる「オフ会感想」と『英語語源ハンドブック』1周年記念記事,こじこじ先生の楽曲「不規則動詞戦争」,みーさんによる「小学生と学ぶ英語史」シリーズなど,各世代や地域におけるhel活のリアルな息吹が伝わってきます.佐久間さんの「日本語由来の医学英語」も専門家らしい視点を与えてくれます.
 巻末の「あゆみ」では,Grace さんが北千住オフ会の定着や helwa 開設3周年の軌跡をきれいにまとめてくださいました.そして umisio さんによる「編集後記」は,今号の多様な熱量をユーモアたっぷりに総括してくれています.
 最後になりますが,今号を編み上げてくださった編集委員の Lilimi さん,Galois さん,Grace さん,umisio さんには深く感謝いたします.そして,素晴らしいコンテンツを寄稿してくださったヘルメイトの皆さんも,本当にありがとうございました.
 hellog 読者の皆さんも,ぜひこの熱気溢れる Helvillian 7月号のページを訪れて,じっくりと味わってみてください.そして,自分も日頃のhel活の成果をこのウェブマガジンに載せてみたい,英語史の輪に加わりたい,と思われた方は,ぜひ Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」への参加をご検討いただければと思います.helwa にお入りになった瞬間から,あなたもヘルメイトです.一緒に英語史をお茶の間に届けていきましょう!

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-28 Sun

#6271. 「なぜさんたんげん目撃マップ」の第1次全国制覇達成! [notice][nazesantangen][nazesantangen_witness][helkatsu][helmate]

nazesantangen_mokugeki_map_20260628.png



 発売からほぼ18日が経ちました.新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書,通称『なぜさんたんげん』)のプロモーションとして,Google マップ上で展開してきた「なぜさんたんげん目撃マップ」企画にて,ついに第1次全国制覇(地方レベルでの全制覇)を成し遂げました.
 実際の達成は6月24日のことだったのですが,日本全国すべての地方(北海道,東北,関東,中部,近畿,中国,四国,九州・沖縄)にヘルメイトの皆さんの熱い視線が届き,ピンが灯りきりました!
 このスピードでの地方レベル全制覇は,在外の著者1人の力では到底成し遂げられませんでした.まさに「応援読者×全国の書店様×NHK出版営業さん」という三位一体の熱量が,見事なパスを繋ぎ続けた結果にほかなりません.
 まずは,ヘルメイトの皆さんの草の根の力がありました.未来屋書店石巻店での素晴らしいドラマを note で熱く語ってくださった Grace さんの「石巻の奇跡」をはじめ,khelf 藤平さん作の特製POPを携えて三省堂書店岐阜店にアプローチしてくれたあまねちゃんの見事なパスなど,全国の有志による「hel活」 (helkatsu) がすべての起点となりました.
 そして,その熱量を受け止めてくださった全国の書店員の皆さんの熱い共感に,最大の敬意を表します.三省堂書店岐阜店の書店員さんの「中学生の時のなんで??を思い出した」というコメントに代表されるように,「丸暗記の呪縛を解く」という本書の思想に深く共感し,一等地で平積みしてくださっている現場の力には感謝しかありません.直近でも,くまざわ書店エキア北千住店などが素早く連動し,棚を盛り上げてくださいました.書店員の皆さんにおかれましては,ぜひ以下の note 記事もご参照ください.



 さらに,この動きを公式の武器として全面バックアップしてくれたのが,NHK出版営業部の皆様の総進撃です.前線から,まだピンの立っていなかった中国・四国地方を中心に14件ものピン写真をドカドカっと送り届けてくれたプロの組織力と熱量には脱帽するばかりです.この週末の連続新聞広告などの強力な空中戦も含め,この本を届けようとするプロフェッショナルなエネルギーを感じました.
 さて,お祭りのような初速の盛り上がりを経て,本書は次のステージへと進みます.明日6月29日は,待望の第2刷出来となります.全国の書店の棚が再び『なぜさんたんげん』で燃え上がります.ここからは,英語の丸暗記の圧力に苦しんでいる一般の学習者や教育現場に,英語史から救いを届けるフェーズに入ります.
 そして,目指すは第2次全国制覇.すなわち都道府県レベルでの完全制覇です.東北,中国・四国を含め,まだ白地図のまま残っている県がいくつもあります.ぜひ,お近くの書店で本書を見かけましたら,「#なぜさんたんげん目撃マップ」のハッシュタグとともに,heldio のコメント欄や X 投稿などで目撃情報をお寄せください.引き続き,皆様の熱い応援をよろしくお願いいたします!

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

Referrer (Inside): [2026-07-14-1] [2026-07-02-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-26 Fri

#6269. なぜ新刊書『英語史で解く 英文法の謎』のタイトルに「英語史」を含めたのか --- ykagata さんの批評的考察 [nazesantangen][note][helkatsu][helmate][review]



 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)が好評発売中である.おかげさまで各地の書店でもよく売れている模様で,著者として嬉しい限りである.
 さて,先日6月20日付けで,heldio/helwa のコアリスナーでヘルメイトの ykagata さんが,ご自身の note にて実に読み応えのある批評的考察記事を公開してくださった.タイトルは「「語源」の本でなく「英語史」の本が書店に並ぶこと」である.この記事が,英語史の非専門家である読者の視点から書かれたものとは信じられないほどに鋭く,かつ温かい賛辞に満ちており,私は深く感激した.本日の記事では,この ykagata さんの note 記事を紹介しながら,hellog 読者の皆さんにもぜひご一読を促したいと思う.
 ykagata さんの考察の主眼は,今回の新著のメインタイトルに,敢えて「語源」ではなく「英語史」という硬派なキーワードが掲げられたことの歴史的・出版史的な意義にある.近年の出版界における「語源」ブームの商業的な軽薄さに緩やかな警鐘を鳴らしつつ,地味で硬派な「英語史」こそが市民権を得ていくのかもしれない,力をもつ本当のムーブメントになっていくのかもしれない,という実に刺激的な予言が展開されているのだ.
 とりわけ,著者の私自身が読みながら文字通りに打ち震えたのが次の3箇所である.
 まず1点目として,編集者として表題にずばり「英語史」を掲げる決断をしたNHK出版の編集者,田中菜乃香さんは慧眼だった,という指摘である.
 2点目に,その決断に至る背景には,著者の堀田による「hel活」すなわち英語史のアウトリーチ活動の長年の積み重ねが欠かせなかった,と言及してくださっている点である.
 そして3点目に,「英語史だなんていって一般読者に分かってもらえるだろうか」と躊躇していた英語史関係者自身が,今後堂々と「英語史」を謳う契機として,今回の本の出版が重要な出来事なのではないか,と寿いでくださっている点である.出版史上,表題に「英語の歴史」を掲げる新書は寺澤盾先生の名著などがあるけれども,「英語史」をずばり掲げた新書はきわめて珍しいのではないか,という出版史的な縦のパースペクティブにも唸らされた.実際,その通りなのだ.
 これまでは一般向けの書物のタイトルにするには「硬すぎる」と敬遠されがちだった「英語史」であるが,これからはもっと多くの関連書が安心してこの名前を題名に冠して出てこられるようになるのではないか,という予言は本当に力強く,勇気づけられる.
 著者として,また1人の英語史研究者として,この評価を最大の賛辞と感謝をもって受け入れたい.ぜひ ykagata さんの note 記事をじっくりと味わっていただければっc.

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-25 Thu

#6268. 「英語語源辞典通読ノート」の lacolaco さんが『英語語源辞典』の読み方解説を始められています! [notice][voicy][heldio][helwa][inohota][kenkyusha][link][kdee][lacolaco][helkatsu][hel_education][helmate]



 英語史を広める活動「hel活」 (helkatsu) の周辺が実に熱くなっています.本ブログでも要注目としてたびたび紹介してきた,heldio/helwa のコアリスナーでヘルメイトの lacolaco さんが,「英語語源辞典通読ノート」シリーズにて,目下 D の項目をひた走っています.
 驚くべきは,その圧倒的な継続力のみならず,そこに込められた「hel活」スピリットの進化にあります.最新の2つの記事,すなわち6月13日公開の desire -- desk,および6月20日公開の despite, develop, device を拝読し,胸が熱くなりました.
 この最新の2回において,lacolaco さんは貴重で有用な,新しい試みを始められています.前者では desk を,後者では device をサンプルとして取り上げ,『英語語源辞典』初心者に向けて,同辞典の読み方をきわめて丁寧に解説してくれているのです.同辞典特有の専門記号,略称,句読点などの1つひとつにまでこだわり,それが何を意味しているのかを噛み砕いて説明しているセクションは,『英語語源辞典』を所有していながらも,専門的すぎて使いこなせていなかった多くの方々にとって福音となるはずです.
 これは,1ヶ月ほど前の hellog 記事「#6232. 『英語語源辞典』を読みこなせるようになりたい方へ」 ([2026-05-20-1]) における問題提起を受けての,lacolaco さんによる見事なイニシアチブであり,実践です.さらに先立つ「いのほた言語学チャンネル」の研究社ロケ回でも話題となったように,『英語語源辞典』は世界最高峰の辞典でありながら,一般読者がその価値を本格的に享受するためには「読み解き方の手ほどき」がどうしても必要でした.まさにそのギャップを埋める体系的なガイドを,1人のヘルメイトが自らの note で,これほどハイレベルな形で実現してくれたわけです.これぞ草の根から湧き上がる純粋なhel活であり,hel活コミュニティのつながりが生んだ貴い果実です.
 この丁寧な解説は,同辞典の魅力と威力をお茶の間に届ける素晴らしい踏み台となるはずです.一般の英語学習者の皆さんにとどまらず,同辞典の出版元である研究社の方々をはじめ,英語史の研究・教育に携わる専門の関係者の皆さんにも,大いに注目していただきたい画期的な試みです.ぜひ lacolaco さんのノートを訪問し,『英語語源辞典』の読み方解説を味読してみてください

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

Referrer (Inside): [2026-07-08-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-23 Tue

#6266. 「石巻の奇跡」 --- 『なぜさんたんげん』と英語史が浮かばれた日 [notice][nazesantangen][helkatsu][hel][helmate]

 6月10日(水),NHK出版新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)が発売され,おかげさまで全国各地より温かい反響をいただいています.今回は,先日宮城県の未来屋書店石巻店で起きた,ある胸の熱くなる実話を枕にして,英語史という学問分野の地位の変遷について考えてみたいと思います.
 ことの始まりは,熱心な「ヘルメイト」(英語史を広める活動をしている仲間)の1人である Grace さんが発売直後に同書店を訪れた際,拙著が入荷直後のラックの最下段,「日陰の棚」にひっそりと置かれているのを目撃したことでした.Grace さんはその様子を note に投稿され,それに感銘を受けた私がさらに note で応答,すると今度は Grace さんが本書のレビューをお書きになるという流れで,それこそ本書が目立つ特等席へと「昇格」を果たすという,劇的なドラマが展開しました.
 この一連の「棚の昇格」をめぐる応酬は,単なる人情話や一著者の嬉しかった報告にとどまらない,きわめて象徴的な意味を帯びています.ぜひ,以下の note 記事のダイナミックな流れを直接ご覧いただければと思います.

 ・ 6月13日の Grace さんによる note 記事「『なぜさんたんげん』目撃の巻」
 ・ 6月19日の堀田による note 記事「石巻の奇跡――『なぜさんたんげん』がラックの最下段から「昇格」した日」
 ・ 6月20日の Grace さんによる note 記事「心に刻みたい「英語史が教えてくれること」」

 この「ラックの最下段(日陰)から,教養新書棚の正面(表舞台)への昇格」という物理的な移動の軌跡は,昨今の「英語史」という学問分野そのものが辿ってきた,そして向かっていくメタファーのように思われます.
 これまで英語史という分野は,実用英語や記述文法,あるいはTOEIC対策といった華やかな「表舞台」の影に隠れ,いわば書棚の「最下段」のような扱いを受けることが少なくありませんでした.「そんな古い言葉の歴史を知って何になるのか」「試験に出ないから不要だ」という実利主義の波に押され,日陰の道を歩まざるを得なかった時代が長かったのです.
 しかし,現代の英語学習者が抱く「なぜ3単現には s がつくのか」「なぜ go の過去形は went になるのか」といった素朴な「なぜ」にもっとも上手に答えを与えられるのは,多くの場合,英語史の知見なのです.暗記の呪縛から学習者を解放する力をもつこの学問,そして言語と歴史の深い教養を内包するこの学問が,いつまでも最下段に眠っていてよいはずがないのです.
 今回の石巻での出来事は,全国の「hel活」(英語史を広める活動)の仲間たちの草の根の熱意が書店員さんの心を動かし,学問をついに表舞台へと引き上げている象徴です.背景には,もちろん,多くの英語史研究者によるたゆまぬ研究・教育・啓蒙活動の努力があったことも事実です.
 読者の皆さんとともに,この英語史の表舞台への登場を静かに愛でつつ,今後とも「英語史をお茶の間に」浸透させていくことをここに改めて宣言したいと思います.

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-19 Fri

#6262. B&C の第64節 "Influence of The Benedictine Reform on English" (1) --- Taku さんとの超精読会 [bchel][oe][benedictine_reform][christianity][lexicology][borrowing][latin][loan_word][link][voicy][heldio][anglo-saxon][history][helmate]



 昨日に引き続き,英語史の名著,Baugh and Cable のテキスト(第6版)を,helwa の志高き仲間たちと徹底的に腑に落としていく「超精読会」の記録です.この熱気あふれる現場の音声をそのままお届けする Voicy heldio の配信シリーズも,おかげさまで息長く続いています.
 今朝配信の heldio 最新回では,新しい節の冒頭を精読する回をお届けしています.「#1846. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (64-1) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」 です.本日のブログ記事はこの最新音源と密接にリンクした誌上実況中継となります.
 今回も,helwa/heldio のコミュニティを熱く盛り上げてくださっている重要ヘルメイトであり,コアリスナーの Taku さんことhttps://www.ntu.ac.jp/research/kyoin/kodomo/gakoukyouiku/kaneta_t.html">金田拓さん(帝京科学大学)に,水先案内人として精読をリードしていただきました.
 さて,今回からはいよいよ "Influence of The Benedictine Reform on English" と題された新セクションへ突入します.前回まで追ってきた「ベネディクト改革」という歴史的うねりが,実際の英語の語彙にどのような変化をもたらしたのか,具体的な借用語 (loan_word) のリストとともに検証していくことになります.今回の精読のターゲットとなった英文を以下に掲げます(Baugh and Cable, pp. 84--85).第64節の冒頭から,およそ30分弱をかけて計6文の細部を解剖していきました.

The influence of Latin upon the English language rose and fell with the fortunes of the church and the state of learning so intimately connected with it. As a result of the renewed literary activity just described, a new series of Latin importations took place. These differed somewhat from the earlier Christian borrowings in being words of a less popular kind and expressing more often ideas of a scientific and learned character. They are especially frequent in the works of Ælfric and reflect not only the theological and pedagogical nature of his writings but also his classical tastes and attainments. His literary activity and his vocabulary are equally representative of the movement. As in the earlier Christian borrowings, a considerable number of words have to do with religious matters: alb, Antichrist, antiphoner, apostle, canticle, cantor, cell, chrism, cloister, collect, creed, dalmatic, demon, dirge, font, idol, nocturn, prime, prophet, sabbath, synagogue, troper.


 この B&C 超精読シリーズの過去の足跡については,すべてアーカイヴに網羅されており,いつでもバックナンバーにアクセス可能です.各回へのナビゲーションは,「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) をハブとしてご利用ください.英語史のロマンに知的好奇心をくすぐられた方は,ぜひ本書をお手元にご用意の上,この音声を道しるべに深い読書体験を味わっていただければ幸いです.さらに,「ただ聴くだけでなく,自分も対面やオンラインの現場に飛び込んでリアルタイムに議論の輪に加わりたい!」という熱量をお持ちの方は,ぜひ Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネルである「英語史の輪 (helwa)」へのご参加をご検討ください.知的なお祭りをともに楽しめる仲間を,いつでもお待ちしております.


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

Referrer (Inside): [2026-07-06-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-18 Thu

#6261. B&C の第63節 "The Benedictine Reform" (7) --- Taku さんとの超精読会 [bchel][oe][benedictine_reform][christianity][link][voicy][heldio][anglo-saxon][history][helmate]



 英語史を学ぶ者にとってのバイブルとも言える Baugh and Cable の名著(第6版)を,helwa の志高きメンバーとともに1文ずつ(いな,1語ずつ)じっくりと読み解いていく「超精読会」を,半定期的なペースで重ねています.この濃密な読書会の空気感をそのままお届けする Voicy heldio の音声配信シリーズも,気づけば継続中です.開始から3年近くが経過しましたが,歩みは着実に進んでおり,現在は第63節の後半戦に突入しています.
 今朝の heldio にて,その最新の配信回を公開いたしました.「#1845. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (63-7) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」です.本日のブログ記事はこの音声配信とがっちり連動する形でのアップデートとなります.
 今回も,heldio/helwa コミュニティを牽引するヘルメイトでありコアリスナーの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)に,ナビゲーターとして精読を力強くリードしていただきました.現場に集まった数名のギャラリーとともに,テキストの奥底に潜む歴史的背景を掘り起こすような,いつもながらのディープな読みを堪能する時間となりました.
 今回の読書会でターゲットとした英文を以下に提示します(Baugh and Cable, pp. 83--84) .第63節の幕引きに近い箇所から,およそ40分もの時間をかけて計6文を緻密に読み解いていきました.10世紀後半のベネディクト改革の英語史上の意義を堪能してください!

One of the objects of special concern in this work of rehabilitation was the improvement of education---the establishment of schools and the encouragement of learning among the monks and the clergy. The results were distinctly gratifying. By the close of the century the monasteries were once more centers of literary activity. Works in English for the popularizing of knowledge were prepared by men who thus continued the example of King Alfred, and manuscripts both in Latin and the vernacular were copied and preserved. It is significant that the four great codices in which the bulk of Old English poetry is preserved date from this period. We doubtless owe their existence to the reform movement.


 この B&C 読書会のこれまでの軌跡については,すべてアーカイヴ化されており,いつでも過去回へアクセスが可能です.各配信回へのナビゲーションリンクは,過去の記事「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) にまとまっていますので,ぜひそちらをご参照ください.知的好奇心を刺激された方は,ぜひご自身でも本書を入手され,この超精読会の音声をガイドブック代わりにお聴きいただければ幸いです.また「聴くだけでなく,対面やオンラインの現場でリアルタイムに議論に加わりたい!」という熱意をお持ちの方は,ぜひ Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネルである「英語史の輪 (helwa)」の門を叩いてみてください.皆さんのご参加を心よりお待ちしております.


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2026-06-04 Thu

#6247. helwa 3周年 --- データで振り返るプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 [voicy][heldio][helwa][notice][helkatsu][helmate][hel_education]



 昨日の記事「#6236.heldio 5周年 --- データで振り返る heldio の進化」 ([2026-06-03-1]) に続いて,5月28日時点での Voicy のアナリティクスに基づく記事をお届けします.一昨日2026年6月2日は,heldio 5周年記念日であると同時に,実は helwa 3周年記念日でもありました.Voicy heldio 開始からちょうど2年目に当たる日に,プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」を開始したのでした.
 helwa は週2回ベースで配信を始めましたが,途中から週3回ペースとなり今に至ります.3年間で積み上げてきた helwa の配信数は,449本に達しました.冷静に考えると,これはなかなか異常なペースです.普通の有料コミュニティであれば,数十本の限定雑談や月1回のイベント程度で終わることも多いかと思いますが,helwa は heldio とは異なるもう1つの英語史コミュニティへと成長してきました.
 当初は,これほどニッチな学術分野で有料チャンネルを始めて本当に人が集まるのか,どのような雰囲気の場になるのか,大きな不安があったのも事実です.しかし,蓋を開けてみればそこは heldio 通常回の特典音源の置き場ではなく,日常的な英語史雑談,Discord 上での交流,オフ会ルポ,書籍の共同企画,学会の裏話など,多岐にわたる談義が繰り広げられる「英語史サロン」へと発展していきました.そして,helwa リスナーを増やすことを主目的とするのではなく,英語史を一緒に楽しむ仲間を作ることが最重要視される,そのような空間に育ってきたのです.
 この3年間における最大の成果の1つは,音声配信チャンネルというオンラインの枠を飛び出し,オフ会や「英語史ライヴ」など,現実のコミュニティが実現したことでしょう.泊まりがけのオフ会も複数回開催され,その熱気はこのコミュニティから生まれた月刊ウェブマガジン Helvillian などで熱くレポートされています.英語史という実利の外側にある学問が,学生,社会人,教員といった幅広い層の垣根を越えて,純粋な大人の「居場所」となったことは,きわめて感慨深いことです.
 しかし,helwa がもたらした最大の変革は,「英語史が雑談になった」という点に尽きるかもしれません.本来,英語史は大学の講義室や専門論文のなかに閉じ込められた世界でした.それがこのコミュニティでは,「その語源おもしろい」「その発音変化わかる」「それ英語史的な発想だよね」といった言葉が日常的に交わされています.オフ会での乾杯の挨拶もすっかり古英語の Wes hal! に定着しています.英語史が一部の専門家だけのものではなく,コミュニティの皆さんの間で一種の「生活言語」として根付いているといったらよいでしょうか.
 常連文化,内輪ネタ,定番フレーズが自然発生するその空気感は,深夜ラジオ共同体にかなり近いものがあるように思っています.「英語史」という硬派なテーマなのに,やっていることは深夜ラジオというギャップが,何ともおもしろいところです.また,リスナーの皆さんが単なる受信者にとどまらず,コメントや note や SNS を利用した発信者となってhel活を推進し,英語史エコシステムを想像している点も,helwa の本質といえます.
 英語史研究者としては「英語史って,本来こんなふうにワイワイ雑談する分野じゃなかったんですよ(笑)」と,嬉しい悲鳴を上げたいです.この helwa という舞台裏の熱量とエネルギー源があるからこそ,表舞台である heldio の5年間にわたる毎日更新も維持されてきたと思っています.3年間で醸成されたこの愛すべきニッチ共同体の文化を,今後もさらにディープに,そして楽しく発展させていきたいと考えています.
 新たな月となりました.heldio リスナーの皆さんにおかれましては,heldio 5周年かつ helwa 3周年の機会に,ぜひ「英語史の輪 (helwa)」へご入会ください.helwa は毎週火木土の午後6時に配信しています.月額800円のサブスクで,初月無料サービスがありますので,まず試しにお入りいただければ.今月は helwa では『なぜさんたんげん』の裏話が多くなるはずです.
 一昨日の helwa 「【英語史の輪 #0453】helwa 3周年 --- 英語史エコシステムが完成した」を,ぜひお聴きください.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow