今年度も朝日カルチャーセンター新宿教室にて,英語史のシリーズ講座を月に一度の頻度で開講しています.新シリーズは「歴史上もっとも不思議な英単語」と題して,毎回1つ豊かな歴史と含蓄をもつ単語を取り上げ,『英語語源辞典』(研究社)などの文献を参照しながら,英語史の魅力に迫ります.
春期クールの第3回は,来週末の6月21日(土) 17:30~19:00 に開講される予定です.タイトルとして「autumn --- 類義語に揉み続けられてきた季節語」を掲げています.なぜ「秋」を意味する単語には autumn と fall があるのでしょうか? 両者は何がどう異なるのでしょうか? 他の季節名 spring, summer, winter の各々の語源は? それぞれに動詞用法がありますが,その意味は? 英語には昔から四季があったの? 季節をめぐる疑問は尽きません.今回の講座では autumn を中心に季節に関わる語彙の歴史をひもときつつ,英語話者集団の季節感の変遷をたどります.
また,6月18日(水)に発売予定の『英語語源ハンドブック』(研究社)の「テーマ別」セクションにて,まさに今回取り上げる季節語4語が立項されています.講座ではこちらの記述にも注目する予定です.『ハンドブック』発売直後の講座となりますので,同書そのものについてもいくつかお話しできればと思っています.ご関心のある方は,受講の際に,ぜひ『英語語源辞典』および『英語語源ハンドブック』を傍らに置いていただければ.
受講形式は,新宿教室での対面受講に加え,オンライン受講も選択可能です.また,2週間限定の見逃し配信もご利用できます.ご都合のよい方法で参加いただければ幸いです.講座の詳細・お申込みは朝カルのこちらのページよりどうぞ.皆様のエントリーを心よりお待ちしています.
(以下,後記:2025/06/16(Mon))
本講座の予告については heldio にて「#1478. 6月21日の朝カル講座では季節語に注目します --- 発売直後の『#英語語源ハンドブック』も大活躍するはず」としてお話ししています.ぜひそちらもお聴きください.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
5月24日(土)に,今年度の朝日カルチャーセンターのシリーズ講座「歴史上もっとも不思議な英単語」の第2回として「through --- あまりに多様な綴字をもつ語」が,新宿教室にて開講されました.Voicy heldio にて「#1448. 5月24日の朝カル講座では through に注目します」で予告した通りです.
この第2回講座の内容を markmap というウェブツールによりマインドマップ化して整理しました(画像としてはこちらからどうぞ).復習用にご参照いただければ.
一昨日の夜,6月18日に研究社より発売予定の『英語語源ハンドブック』の共著者・校閲協力者である唐澤一友氏,小塚良孝氏,福田一貴氏,堀田隆一の4名が京都は丸太町の鳥どころの個室に集い,『英語語源ハンドブック』(研究社)について語る会を催しました.
この会合は『英語語源ハンドブック』の情報が公開されて以来,著者3名を含む関係者が初めて対面で一堂に会する貴重な機会となりました.しかも,目の前には出来たてホヤホヤの,製本された『英語語源ハンドブック』の実物が置かれていました.この生の手触り感は,5月20日の「予約爆撃アワー企画」の時とはまた異なる,格別の興奮を私たちにもたらしました.そして,この興奮の様子を heldio にて実況生配信した次第です.ライヴでお付き合いいただいたリスナーの皆さん,ありがとうございました.その翌朝(=昨朝),そのアーカイヴ版を「#1469. 『英語語源ハンドブック』の著者対談@京都」として配信しました.32分ほどの音声配信となります.ぜひお時間のあるときにお聴きいただければ.以下では,その配信内容をかいつまんで紹介し,共著者らの語る『英語語源ハンドブック』の魅力と狙いを hellog の読者の皆さんにもお伝えしたいと思います.
本書の企画の根幹をなすアイデアは,「新JACET8000」の最頻1000語を対象とするという点にあります.この着想は,共著者の1人,小塚氏によるものです.従来の語源本が,TOEIC 対策やボキャビルを主眼とし,中上級者向けの難解な単語やラテン語系の接頭辞・接尾辞を中心に扱ってきたのに対し,本書はむしろ逆のアプローチを取ります.というのは,私たちが目指したのは,特定の学習者層に限定されない,すべての英語学習者のために開かれつつ,とりわけ英語教師に資する「虎の巻」となるような一冊だったからです.小学校から大学に至るまで,どの教育段階においても必ず触れるであろう基本的な単語群.その語源を探ることこそが,英語という言語の根幹への理解を深める最も確実な道筋だと考えたのです.
しかし,このアプローチは執筆者にとって大きな挑戦でもありました.予めリストアップされた1000語のなかには,語源的に特筆すべき変化に乏しい単語や,そもそも語源がはっきりしない単語も含まれます.「書けそうな単語を集めてくる」既存の語源本とは異なり,私たちには「逃げ道」がないのです.唐澤氏が「力が試される」と述べていたように ,与えられた素材をいかにして魅力的な語りの俎上に載せるか,まさに英語史研究者としての力量が問われる作業だったのです.
その挑戦から生まれた工夫の1つが,各見出し語に必ず付されている「キャッチコピー」です.たとえば so のような,一見すると語源的な広がりを語りにくい単語に「様々な単語に組み込まれている」,あるいは soft に「五感への意味の広がり」といったコピーを付していくのです.この短いキャッチコピーは,読者の知的好奇心を刺激する導入として機能するだけでなく,私たち執筆者自身が各単語の核心を捉えるための指針ともなりました.ときに編集者の方からも厳しくも温かい指摘を受けながら,一つひとつのキャッチコピーを練り上げた過程は,苦しくも創造的な営みでした.
本書のもう1つの大きな特徴は,種本ともいえる『英語語源辞典』 (kdee) との補完的関係性にあります.KDEE が専門家向けに,印欧祖語から古英語への形態的な流れを中心に記述しており,意味変化については必ずしも網羅的ではなかったのに対し,『英語語源ハンドブック』ではその点を意識的に補っています.なぜその意味が生まれたのか,その背景にある社会や文化の変化にまで踏み込んで解説することを試みました.また,大母音推移 (gvs) やグリムの法則 (grimms_law) といった英語史の基本的な音変化や,綴字の変化についても,KDEE では前提知識として省略されがちな部分を,ハンドブックでは丁寧に解説しています.「英語史入門と専門的な語源研究の世界とを橋渡しする一冊」として仕上がったといえます
400ページを超える分量ながらも,持ち運びやすい比較的コンパクトな判型,目的の単語を探しやすい「ツメ」の採用など,ハンドブックとしての物理的な使いやすさにもこだわりがみられます.巻頭には英語史概説,巻末には英語史の用語解説も付されており,これ一冊で英語史の基礎知識がある程度身につくように設計されています.
校閲協力者の福田氏は,読んでいるうちに自然と『英語語源辞典』の使い方もわかってくるとも評しています.本ハンドブックは「調べる」辞書であると同時に,物語として「読む」本でもあります.毎日1つか2つ,項目を読み進めるだけで,英語の世界がより深く,立体的に見えてくるはずです.英語史の専門家が集い,一般の読者に向けてここまでアクセシブルな形で語源の魅力を伝えようとした本は,これまでになかったものと自負しています.
発売まであと10日ほどです.私たち関係者一同も引き続き,様々な形で本書の魅力をお伝えしていきたいと思います.昨日の記事「#5885. 7月19日(土)「深堀り『英語語源ハンドブック』徹底解読術 出版記念・鼎談」を朝日カルチャーセンター新宿教室にて開催」 ([2025-06-07-1]) で取り上げたとおり,1ヶ月ほど後には,共著者らによる出版記念講座の開催も予定しています.今後も,ぜひ『英語語源ハンドブック』をとりまくイベント全体にお付き合いいただければ幸いです.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
5月15日(水)の正午,研究社公式HPにて近刊『英語語源ハンドブック』の案内が掲載されました.これを受けて,同日18:20より Voicy heldio にて本書の共著者の1人として興奮の生配信をお届けしました.ライヴでお聴きいただいたリスナーの皆さんには感謝致します.その生配信は,翌日5月16日(木)の朝の heldio で「#1447. 緊急生配信(のアーカイヴ) --- 6月18日に『英語語源ハンドブック』(研究社)が出ます」として配信しました.30分ほどの熱いトークとなっています.以下は,その要旨となります.
本日(5月15日)正午,「緊急生配信」を行いました.聴いていただけましたでしょうか? なぜ「緊急」だったかというと,私たちの長年の夢がついに形になったからです! その興奮をいち早くお伝えすべく,急遽マイクの前に座った次第です.
新しい本が出ます.本日正午ついにその情報公開が解禁されました.その名も『英語語源ハンドブック』(唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力))です.英語のタイトルは Handbook of English Etymology,略して HEE と呼んでいこうと思っています.この本が,約1ヶ月後の6月18日 (水)に研究社より発売されることになりました.
この本は,英語史を専門とする5名の研究者が総力を結集して作り上げた,前代未聞の1冊です.JACETの基本語1000語を取り上げ,その意味・語形・発音の変化や,単語間に隠されたつながりを,英語史の視点から徹底的に解説しています.研究社の紹介文にもあるように「見慣れた単語から,英語が四次元的に見えてくる」はずです.
どのような方々に読んでいただきたいかといえば,答えは様々ですが,以下の5点を挙げておきましょう.
1. 英語の語源を純粋に楽しみたい方
2. 英語の授業で使える「ネタ」を探している先生方(これが企画の最初のコンセプトでした)
3. 本格的に語源でボキャビルしたい方
4. 英語の「なぜ?」の背景を知りたい方
5. そして何より英語史の基礎を学びたい方
巷には語源に関する本はたくさんありますが,本書の最大の特徴は,英語史研究者が専門的な知見に基づき,信頼できる情報をできる限りやさしく解説している点にあります.
同じ研究社からは,本格的な『英語語源辞典』 (kdee) も出版されていますが,今回のハンドブックは,その専門的な世界への親切な「つなぎ役」になってくれると信じています.ハンドブックで語源の考え方や英語史の基礎に触れれば,より詳しい『英語語源辞典』の世界も楽しんで味わうことができるようになるでしょう.
発売までの約1ヶ月間,この hellog はもちろん,heldio その他の媒体でも共著者の方々との対談なども交えながら,この本の魅力を次々に発信していく予定です.ぜひ,SNS などでハッシュタグ #英語語源ハンドブック を活用して一緒に盛り上げていただけると幸いです.
最後に,なぜ私がこれほど興奮しているかというと,この本こそが「英語史をお茶の間に」広めるための,最大のチャンスだと信じているからです.この1冊を通じて,英単語の魅力はもちろん,英語という言語のもつ壮大な歴史とロマンを感じていただきければ.
皆さん,ぜひこちらより予約注文をお願いいたします! ご自宅に1冊,職場や学校の図書館にももう1冊.この本が,日本の英語学習・英語教育に新しい風を吹き込むことを確信しています.
来たる2025年6月18日(水),唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力)『英語語源ハンドブック』(研究社)が発売される予定です.5月21日以来の歴代記録として,Amazon 新着ランキングで「英語」部門にて第1位,「語学・辞事典・年鑑」部門にて第2位を獲得しています.こちらの Amazon ページ(あるいは以下のQRコード)より,ぜひ予約注文をお願いいたします.
昨日の記事「#5869. ari さんによる『英語語源ハンドブック』の「試し読み」の熱烈レビューに感謝」 ([2025-05-22-1]) で,heldio/helwa のコアリスナー ari さんより,発売前の書籍のレビューをいただいた旨を報告しました.
なんと ari さんよりもさらに1日早く,5月16日のうちに最速レビューを投げていただいたコアリスナーがいらっしゃいました.mozhi gengo さんです.研究社からの公式な情報公開が5月15日の正午でしたので,とんでもないスピードで反応いただいたことになります.mozhi gengo さんに感謝! 「#210. 待望の書籍現る!英語語源ハンドブック」をお読みください.
mozhi gengo さんは,強い言語愛をお持ちで,とりわけヒンディー語を始めとするインド事情に詳しく,日々熱心に note 記事を公開されています.今回は,ご自身も愛用されている『英語語源辞典』(研究社)に触れつつ,近刊書『英語語源ハンドブック』(同じく研究社)とともに「親子本だと言ってよい」と表現されています.これはまさに的を射た評価です.この関係を念頭に,「子」に相当する『英語語源ハンドブック』がどのような役割を果たすのかについて,mozhi gengo さんは次のように記しています.
少し読んでみると,専門家が英語語源辞典を開いて,丁寧にその語にまつわるストーリーを分かりやすくコンパクトに話してくれているような印象を受ける.
これは,共著者が本書を通じて読者の皆様にお届けしたかった体験そのものです.専門的な知見を背景としつつも,それをいかに分かりやすく,そして魅力的なストーリーとして語るか.この意図を汲み取っていただけたことを,大変嬉しく思います.「まさに語源好きにとっての決定版!」そして「これはもう手に取るのが待ちきれない」とまで評価してくださったことは,何よりの励みとなります.
記事の最後では「著者の先生たちの対談も近日あるようなので,ぜひ heldio をチェックしよう」と,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」での本書の取り上げにも期待を寄せてくださっています.さすが heldio/helwa のコアリスナーさん! ご期待に沿えるよう,様々な企画を検討していきたいと思います.
『英語語源辞典』は,英語の歴史や英単語の語源を深く探求する上での頼もしい相棒であり続けることは間違いありません.その一方で,『英語語源ハンドブック』は,いわば経験豊富な案内人が基本英単語の魅力を語り聞かせてくれるような存在になれればと考えています.「親子本両方とも手に取っていただければ幸いです.
来たる2025年6月18日(水),唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力)『英語語源ハンドブック』(研究社)が発売される予定です.5月21日以来の歴代記録として,Amazon 新着ランキングで「英語」部門にて第1位,「語学・辞事典・年鑑」部門にて第2位を獲得しています.こちらの Amazon ページ(あるいは以下のQRコード)より,ぜひ予約注文をお願いいたします.
ほぼ一ヵ月後の2025年6月18日(水),上掲の本が出ます.英語史研究者3名と,同じく英語史研究者である校閲協力者2名による,英語の語源本です.タイトルは『英語語源ハンドブック』で,英語名は A Handbook of English Etymology です.略して「HEE」.
この近刊書については,一昨日,研究社のHPの近刊コーナーにて公式に情報公開されました.研究社近刊『英語語源ハンドブック』よりご確認ください.部分的に「試し読み by YONDEMILL」も可能となっています.ぜひ覗いてみて,いな,精読してみてください.
JACETの基本語1000語を中心に取り上げ,英語教員にとっての虎の巻となることを念頭に執筆しています.英語史概要や用語解説などもついており,全体で450ページのハンドブックとなっています.英語の学習や教育に携わるすべての方にとっての必携書となればと期待しています.
以下,公式の紹介文より引用します.
見慣れた単語から,英語が四次元的に見えてくる!
約1000の基本語について、意味・語形・発音の変化や、単語間の隠れた絆などを徹底解説。基本語の多くは、長い歴史の中で元の姿から大きく変わっており、だからこそ、その歴史を紐解くことで各語の本質に一気に迫ることができる。見出しの1000語以外にも、同じ語根に基づく語や類義語など、関連語を豊富に収録。なじみの単語が意外な原義をもっていたり、これまで結びつけたこともなかったような単語と単語が実は有機的に結びついていたり──知識は広がり、深まり、つながっていく!
こんな方にオススメ!
■英語の語源を楽しみたい
■英語の授業のネタを探したい
■本格的に語源でボキャビルがしたい
■英語の不規則性の背景を知りたい
■英語史の基礎を学びたい
情報公開日だった一昨日の18:20より,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて,この近刊を告知する生配信を行ないました.そのアーカイヴ版を昨日の heldio で配信しましたので,「#1447. 緊急生配信(のアーカイヴ) --- 6月18日に『英語語源ハンドブック』(研究社)が出ます」よりお聴きいただければ(本編30分ほど).
当面,本ブログでも,その他のメディアでも,向こう一ヶ月は『英語語源ハンドブック』の話題が多くなってくると思います.ぜひご注目ください.SNS などではハッシュタグ #英語語源ハンドブック にて応援していただけますと幸いです.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
月曜日に Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて,khelf(慶應英語史フォーラム)の寺澤志帆さんと対談し,寺澤さんが最近始められた「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」という企画を紹介していただきました.今回の記事でも,その企画について改めてご案内します.
寺澤さんが始められたのは,私が日頃「世界一の英語語源辞典」として言及している推薦書・愛読書で,研究社より出版されている『英語語源辞典』 (kdee) を通読しながら,英語綴字史的に興味深い項目をコンテンツ化して紹介していくというシリーズです.寺澤さんご自身のHPで,ブログ記事のような形で発信されています.
これに似た企画,どこかで聞いたことがありますよね.そう,heldio/helwa のリスナー lacolaco さんが,に1年以上前から「英語語源辞典通読ノート」の企画を始めており,hel活 (helkatsu) 界隈では評判となっています.寺澤さんの企画は,その流れを汲んでの第2弾といえます.
lacolaco さんが総合的な観点からおもしろい語源の話題ををピックアップされているのに対し,寺澤さんはご自身の専門である英語綴字史の観点に絞って興味深いトピックを拾い出しています.綴字と発音の乖離 (spelling_pronunciation_gap) は英語史の定番の話題です.その点で,寺澤さんの通読シリーズは英語史の中心的テーマに迫ろうとする試みとなります.
寺澤さんは5月1日からこの企画を開始しており,今後はご自身のペースで定期的に続けていくとのことです.私も過去にこの『英語語源辞典』を通読してみようと試みたことがあるのですが,最初のページで深掘りしすぎてしまい,これは無理だと早々に諦めました.あの分厚い辞典を最初から最後まで読み通すというのは,まさに無謀とも思える試みです.だからこそ,それを実際に始められている寺澤さんや lacolaco さんの熱意には脱帽します.
さて,具体的にどのような記事が公開されているのでしょうか.例えば,この間の金曜日には ab(h)ominable の項目が紹介されていました.この語は現代英語では abominable と綴られますが,かつては abhominable のような h が入った形も存在しました.『英語語源辞典』では,この h があるものとないものが別々の項目として立てられており,その歴史的な変遷が示されています.これはまさに寺澤さんが専門的に研究している語源的綴字 (etymological_spelling) の話題です.寺澤さんは,『英語語源辞典』の記述をベースにしつつ,必要に応じて OED なども参照しながら,深掘り解説を加えています.
『英語語源辞典』を通読し,それをウェブ上で公開するというユニークな取り組みは,lacolaco さんに続き寺澤さんも始められたことで,ちょっとしたブーム(?)になりつつありますね.一般的に辞書は引くものであって通読するものではないと考えられていると思いますので,出版元の研究社さんも驚かれているのではないでしょうか.
本ブログ読者の皆さんも,ぜひ寺澤さんによる新企画「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」を末永く応援していただけますと幸いです.この企画を開始したきっかけの話題を含めた,寺澤さんとの heldio 対談について,「#1443. 「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」 by khelf 寺澤志帆さん」よりお聴きください.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
4月26日(土)に,今年度の朝日カルチャーセンターのシリーズ講座「歴史上もっとも不思議な英単語」の初回として「she --- 語源論争の絶えない代名詞」が,新宿教室にて開講されました.予告記事として「#5829. 朝カル講座の新シリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」が4月26日より月一で始まります」 ([2025-04-12-1]) でお知らせした通りです.
この第1回の内容を markmap というウェブツールによりマインドマップ化して整理しました(画像としてはこちらからどうぞ).復習用にご参照いただければ.
たまに振り返ってみるシリーズです.これまでの『英語語源辞典』推し活履歴は,以下の記事をご参照ください.
・ 「#5210. 世界最強の英語語源辞典 --- 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)」 ([2023-08-02-1])
・ 「#5261. 研究社会議室での3回にわたる『英語語源辞典』をめぐるインタビューが完結」 ([2023-09-22-1])
・ 「#5436. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年3月15日版」 ([2024-03-15-1])
・ 「#5522. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年6月9日版」 ([2024-06-09-1])
・ 「#5553. 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)の新装版 --- 「いのほた言語学チャンネル」でも紹介しました」 ([2024-07-10-1])
今回は2024年7月11日以降の推し活履歴を時系列に一覧します.2024年度の朝カル講座「語源辞典でたどる英語史」の関連が多いので,これについては特にこちらの記事群ご覧ください.ほかには kdee タグのついた記事群も参照.
・ 2024年07月26日 heldio で「#1153. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (8) --- khelf 藤原くんと king の項を精読する」が公開される.
・ 2024年07月27日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」が開講される.
・ 2024年08月24日 heldio で「#1182. 【緊急のご報告】研究社『英語語源辞典』新装版が重版決定!」が公開される.
・ 2024年08月24日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第5回「英語,ラテン語と出会う」が開講される.
・ 2024年09月28日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第6回「英語,ヴァイキングの言語と交わる」が開講される.
・ 2024年09月08日 khelf 主催の「英語史ライヴ2024」の英語史クイズにて,研究社のご提供により『英語語源辞典』が景品とされる.
・ 2024年09月08日 khelf の『英語史新聞』第10号と号外にて,『英語語源辞典』制作にかかわる貴重なエピソードが紹介される.
・ 2024年09月20日 『はじめての英語史』と『英語語源辞典』が読売新聞朝刊のサンヤツ広告に掲載される.
・ 2024年09月23日 heldio で「#1212. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 --- 「英語史ライヴ2024」より」が公開される.
・ 2024年10月21日 heldio で「#1240. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 (2) --- KDEE の編集方針を理解しよう」が公開される.
・ 2024年10月26日 heldio で「#1236. mine を『英語語源辞典』で読み解く」が公開される.
・ 2024年10月26日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第7回「英語,フランス語に侵される」が開講される.
・ 2024年11月14日 heldio で「#1264. 『英語語源辞典』通読はキツい,無理!」が公開される.
・ 2024年11月16日 heldio で「#1266. chair と sit --- 『英語語源辞典』精読会 with lacolaco さんたち」が公開される.
・ 2024年11月30日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第8回「英語,オランダ語と交流する」が開講される.
・ 2024年12月21日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第9回「英語,ラテン・ギリシア語に憧れる」が開講される.
・ 2024年12月26日 heldio で「#1306. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 (3) --- 印欧語比較言語学の学史をたどる」が公開される.
・ 2025年01月25日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第10回「英語,世界の諸言語と接触する」が開講される.
・ 2025年02月08日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第11回「英語史からみる現代の新語」が開講される.
・ 2025年03月15日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第12回「勘違いから生まれた英単語」が開講される.
・ 2025年04月25日 heldio で「#1426. 『英語語源辞典』をランダム読み --- khelf メンバーとの思いつき企画」が公開される.
・ 2025年04月27日 heldio/helwa リスナーの ari さんが『英語語源辞典』で一人遊びするアプリを開発し,note 上で公表する:「#264 【KQ1】Voicy の KDEE の単語遊びを ChatGPT で体験してみた!」.アプリの改訂版は2日後のこちら:「#266【KQ2】ゴラクエを update して遊ぶ!!」.
・ 2025年05月01日 khelf の寺澤志帆さんが,連載「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」を開始する.
・ 2025年05月04日 heldio/helwa リスナーの lacolaco さんによる note 上の「英語語源辞典通読ノート」が順調に継続しており,crash まで達している.
khelf メンバーやヘルメイトさんとも力を合わせ,ものすごい活動になってきました.皆さんも,どのような形であれ,ぜひ KDEE 推し活にご参加いただければ!
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.
新年度が始まりました.今年度も「英語史をお茶の間に」広げていく活動,hel活 (helkatsu) を積極的に展開していくつもりです.hellog の読者の皆さんも,ぜひhel活にご協力いただければと思います.
今年度の目玉となる私のhel活の1つは,数年来続けてきた朝日カルチャーセンター新宿教室で,新しいシリーズ講座を始めることです.新シリーズのタイトルは「歴史上もっとも不思議な英単語」です.昨年度のシリーズ「語源辞典でたどる英語史」のテイストを受け継ぎ,『英語語源辞典』(研究社)などを参照しながら,英単語の語源を軸に英語史のお話しをしていきます.具体的には,毎回英語史の観点から興味深い日常単語を1つ選び,それを中心に据えつつ,そこから縦横無尽に話題を広げ,英語史を味わっていこう,という趣旨です.上記HPにも掲載されている正式な趣意文章は次の通りです.
「なぜこの英単語はこんな意味や綴字なの?」 本講座では,日常的でありながら特異な背景をもつ英単語のナゾ --- she の誕生秘話,混乱をきわめた through の綴字,季節語 autumn をめぐる競合と共存 --- に迫ります.『英語語源辞典』(研究社)を道しるべに,英単語と英語史の深淵を覗いてみましょう.
月一回の講座となりますが,初回講座は2週間後の4月26日(土) 17:30--19:00 となります.春期クール3回分のラインナップは次の通りです.
1. 4月26日(土):she --- 語源論争の絶えない代名詞
2. 5月24日(土):through --- あまりに多様な綴字をもつ語
3. 6月21日(土):autumn --- 類義語に揉み続けられてきた季節語
第1回は,3人称単数女性代名詞 she です.ごく日常的な単語ですが,その誕生には意外な歴史的背景があります.いったいどのような道のりを経て,この語は英語で使われ出したのでしょうか.she を中心にした関連語彙の歴史を語っていきます.
第2回は,歴史上516通りの綴字があったことで知られる前置詞・副詞 through に注目します.なぜこのように多様な綴字が生まれたのでしょうか.そして,どのようにして現代の綴字に落ち着いたのでしょうか.周辺の単語の話題も盛り込みながら,英語の綴字と発音の関係について考えていきたいと思います.
第3回は「秋」を意味する autumn にフォーカスを当てます.同じ「秋」を意味する単語に fall がありますが,何がどう異なるのでしょうか.これらの類義語はどのようにして生まれ,どのように使い分けられるようになったのでしょうか.他の季節語も合わせて考えていく予定です.英語の語彙の豊かさとその文化的背景を味わっていきましょう.
受講形式は,新宿教室での対面受講に加え,オンライン受講も選択可能です.また,2週間限定の見逃し配信もご利用できます.ご都合のよい方法で参加いただければと思います.講座の詳細・お申込みは朝カルのこちらのページからどうぞ.
『英語語源辞典』をお持ちになると,さらに受講が楽しくなるはずです.この機会にぜひ「語源の森」へと足を踏み入れてみませんか.皆様のエントリーを心よりお待ちしています.
(以下,後記:2025/04/24(Thu))
本講座の予告については heldio でも「#1420. 朝カル講座の新シリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」 --- 4月26日(土)より月一で始まります」および「#1425. 明後日の朝カル講座では she に注目します」と題してお話ししていますので,そちらもお聴きください.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
3月15日に,今年度の朝日カルチャーセンター新宿教室でのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の最終回となる第12回が開講されました.今回は「勘違いから生まれた英単語」と題して,「事故」によって生じた単語の具体例を挙げ,いつものように『英語語源辞典』やその他の資料を通じて,語源とは何か,単語とは何かという究極の問いに迫りました.
この第12回の内容を markmap というウェブツールによりマインドマップ化して整理しました(画像としてはこちらからどうぞ).復習用にご参照いただければ.
標記の4語は,いずれもラテン語で「体」を意味する corpus に遡る単語である.「#4096. 3重語,4重語,5重語の例をいくつか」 ([2020-07-14-1]) でも取り上げた堂々たる4重語 (quadruplet) の事例だ.
corpus /ˈkɔɚpəs/ (集大成;言語資料)は,中英語期に直接ラテン語から入ってきた語形で,現代では専門的なレジスターとして用いられるのが普通である.
corpse /kɔɚps/ (死体),およびその古形・詩形として残っている corse /kɔɚs/ は,ラテン語 corpus がフランス語を経由しつつ変形して英語に入ってきた単語だ.フランス語では当初 cors のように綴字から <p> が脱落していたが,ラテン語形を参照して <p> が復活した.英語でも,この語源的綴字 (etymological_spelling) の原理が同様に作用し,<p> が加えられたが,<p> のない語形も並行して続いた.
corps /kɔɚ/ (複数形は同綴字で発音は /kɔɚz/)(軍隊)は "a body of troops" ほどの語義で,フランス語から後期近代英語期に入ってきた単語である.綴字に関する限り,上記 corpse の異形といってよい.
<p> が綴られるか否か,/p/ が発音されるか否か,さらに /s/ が発音されるか否かなど,4語の関係は複雑だ.この問題に対処するには,各々の単語の綴字,発音,語義,初出年代,各時代での用法や頻度の実際を丹念に調査する必要があるだろう.また,それぞれの英単語としての語誌 (word-lore) を明らかにするにとどまらず,借用元であるラテン語形やフランス語形についても考慮する必要がある.特にフランス語形についてはフランス語史側での発音と綴字の関係,およびその変化と変異も参照することが求められる.
さらに本質的に問うならば,この4語は,中英語や近代英語の話者たちの頭の中では,そもそも異なる4語として認識されていたのだろうか.現代の私たちは,綴字が異なれば辞書で別々に立項する,という辞書編纂上の姿勢を当然視しているが,中世・近代の実態を理解しようとするにあたって,その姿勢を持ち込むことは妥当ではないかもしれない.
疑問が次々に湧いてくる.いずれにせよ,非常に込み入った問題であることは間違いない.
今回の記事は,ヘルメイトによる2件のhel活コンテンツにインスピレーションを受け,『英語語源辞典』と OED を参照しつつ執筆した.
・ lacolaco さんが「英語語源辞典通読ノート」の最新回で取り上げている corporate, corpse, corpus に関する考察
・ 上記 lacolaco さんの記事を受け,ari さんがこの問題について Deep Research を初利用し,その使用報告をかねて考察した note 記事「#224【深掘り】corsはどう変化したか。ChatGPTに調べてもらう。」
私自身も,一昨日の heldio 配信回「#1385. corpus と data をめぐる諸問題 --- コーパスデータについて語る回ではありません」で lacolaco さんの記事と corpus 問題について取り上げている.ぜひお聴きいただければ.
・ 日時:3月15日(土) 17:30--19:00
・ 場所:朝日カルチャーセンター新宿教室
・ 形式:対面・オンラインのハイブリッド形式(1週間の見逃し配信あり)
・ お申し込み:朝日カルチャーセンターウェブサイトより
今年度月に一度のペースで,『英語語源辞典』(研究社)を参照しつつ英語語彙史をたどる朝カルシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」を続けてきました.明後日3月15日(土)に開講される第12回は,シリーズ最終回となります.前回までに英語語彙史はおおよそ描ききったので,最終回は遊び心満載の「勘違いから生まれた英単語」で締めたいと思います.
他の言語も同様ですが,英語には本来なかった語,あり得なかった語が,勘違いを含む何らかの「事故」により,存在し始めるということがあります.単に語源不詳というわけではなく,広い意味でのエラーにより生じてしまった語,といえばよいでしょうか.既存の語からの類推 (analogy) によって生まれた語,解釈語源あるいは民間語源 (folk_etymology) に基づく語,幽霊語 (ghost_word) など「事故」のタイプは様々ですが,このように不規則な出自をもつ単語たちも,英語語彙に独特な貢献をなしてきたのです.今回の講座では,いつものように『英語語源辞典』やその他の辞書を参照しつつ,変わり者の単語たちと戯れたいと思います.
過去11回分については,各々概要をマインドマップにまとめていますので,以下の記事をご覧ください.
・ 「#5625. 朝カルシリーズ講座の第1回「英語語源辞典を楽しむ」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-20-1])
・ 「#5629. 朝カルシリーズ講座の第2回「英語語彙の歴史を概観する」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-24-1])
・ 「#5631. 朝カルシリーズ講座の第3回「英単語と「グリムの法則」」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-26-1])
・ 「#5639. 朝カルシリーズ講座の第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-04-1])
・ 「#5646. 朝カルシリーズ講座の第5回「英語,ラテン語と出会う」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-11-1])
・ 「#5650. 朝カルシリーズ講座の第6回「英語,ヴァイキングの言語と交わる」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-15-1])
・ 「#5669. 朝カルシリーズ講座の第7回「英語,フランス語に侵される」をマインドマップ化してみました」 ([2024-11-03-1])
・ 「#5704. 朝カルシリーズ講座の第8回「英語,オランダ語と交流する」をマインドマップ化してみました」 ([2024-12-08-1])
・ 「#5723. 朝カルシリーズ講座の第9回「英語,ラテン・ギリシア語に憧れる」をマインドマップ化してみました」 ([2024-12-27-1])
・ 「#5760. 朝カルシリーズ講座の第10回「英語,世界の諸言語と接触する」をマインドマップ化してみました」 ([2025-02-02-1])
・ 「#5774. 朝カルシリーズ講座の第11回「英語史からみる現代の新語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-02-16-1])
本講座の詳細とお申し込みはこちらよりどうぞ.『英語語源辞典』(研究社)をお持ちの方は,ぜひ傍らに置きつつ受講いただければと存じます(関連資料を配付しますので辞典がなくとも受講には問題ありません).
今度のシリーズ最終回については,heldio でも「#1381. 3月15日(土)の朝カル講座「勘違いから生まれた英単語」に向けて」でもご案内しています.ぜひお聴きください.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
2月8日に,今年度の朝日カルチャーセンター新宿教室でのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第11回が開講されました.今回は「英語史からみる現代の新語」と題して,様々な新語導入法を導入しつつ,具体的な現代の新語を紹介しました.また,歴史的な観点から現代英語の新語導入の特殊性に触れました.
現代の新語導入は他言語からの借用 (borrowing) にさほど依存しないという点で,英語史上特異な様相を呈します.一方,現代英語は,短縮 (shortening) という新しい語形成の型を獲得し,それへの依存度を高めてきました.直近100年ほどで,新語導入のトレンドが変わってきたと考えられます.21世紀の英語語彙は,どのように展開していくのでしょうか.
今回の講座は,対面で参加された方がいつも以上に多く,オンラインで参加された方からも質問をいただくなど,活発でインスピレーションに富む回となりました.感謝いたします.第11回の内容を markmap というウェブツールによりマインドマップ化して整理しました(画像としてはこちらからどうぞ).復習用にご参照いただければ.
・ 日時:2月8日(土) 17:30--19:00
・ 場所:朝日カルチャーセンター新宿教室
・ 形式:対面・オンラインのハイブリッド形式(1週間の見逃し配信あり)
・ お申し込み:朝日カルチャーセンターウェブサイトより
今年度の朝カルシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」が,月に一度のペースで順調に進んでいます.主に『英語語源辞典』(研究社)を参照しながら,英語語彙史をたどっていくシリーズです.
明後日2月8日(土)の夕刻に開講される第11回は,「英語史からみる現代の新語」と題して,いよいよ現代英語,すなわち20--21世紀の英語の語彙に焦点を当てます.
現代英語は,新語の洪水とも言える語彙の爆発的増加の時代を迎えています.デジタル技術の発展や社会の急速な変化に伴い,新たな単語や表現が次々と誕生していますが,その背後には歴史的に一貫した語形成の型が存在します.接頭辞や接尾辞の追加による「派生」,複数の単語を組み合わせる「複合」,既存の単語の「短縮」,フレーズの頭文字を取る「頭字語」などです.
今回の講座では,英語史の各時代の傾向にも注意を払いながら,現代英語における新語導入の特徴を浮き彫りにしていきます.特に上述のような語形成の多様な方法に注目し,それらどのように現代社会の変化や文化的潮流を反映しているのかを探ります.これらの語形成のプロセスを理解することは,現代英語の語彙のダイナミズムを読み解く鍵となるはずです.いつものように『英語語源辞典』などを参照しながら進めていきます.
本シリーズ講座の各回は独立していますので,過去回への参加・不参加にかかわらず,今回からご参加いただくこともできます.過去10回分については,各々概要をマインドマップにまとめていますので,以下の記事をご覧ください.
・ 「#5625. 朝カルシリーズ講座の第1回「英語語源辞典を楽しむ」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-20-1])
・ 「#5629. 朝カルシリーズ講座の第2回「英語語彙の歴史を概観する」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-24-1])
・ 「#5631. 朝カルシリーズ講座の第3回「英単語と「グリムの法則」」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-26-1])
・ 「#5639. 朝カルシリーズ講座の第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-04-1])
・ 「#5646. 朝カルシリーズ講座の第5回「英語,ラテン語と出会う」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-11-1])
・ 「#5650. 朝カルシリーズ講座の第6回「英語,ヴァイキングの言語と交わる」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-15-1])
・ 「#5669. 朝カルシリーズ講座の第7回「英語,フランス語に侵される」をマインドマップ化してみました」 ([2024-11-03-1])
・ 「#5704. 朝カルシリーズ講座の第8回「英語,オランダ語と交流する」をマインドマップ化してみました」 ([2024-12-08-1])
・ 「#5723. 朝カルシリーズ講座の第9回「英語,ラテン・ギリシア語に憧れる」をマインドマップ化してみました」 ([2024-12-27-1])
・ 「#5760. 朝カルシリーズ講座の第10回「英語,世界の諸言語と接触する」をマインドマップ化してみました」 ([2025-02-02-1])
本講座の詳細とお申し込みはこちらよりどうぞ.『英語語源辞典』(研究社)をお持ちの方は,ぜひ傍らに置きつつ受講いただければと存じます(関連資料を配付しますので,辞典がなくとも受講には問題ありません).
第11回については,Voicy heldio でも「#1345. 2月8日(土)の朝カル講座「英語史からみる現代の新語」に向けて」としてご案内していますので,ぜひお聴きください.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
1月25日に,今年度の朝日カルチャーセンター新宿教室でのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第10回が開講されました.今回は「英語,世界の諸言語と接触する」と題して,主に近代英語期の多種多様な言語からの語彙借用に注目しました.
近代英語期,イギリスは他の列強に遅れながらも世界進出を果たしました.イギリス帝国の形成過程で,世界中の言語との接触により膨大な「世界的語彙」 (cosmopolitan_vocabulary) を獲得することになり,英語語彙は格段に豊かになりました.この語彙的発展を受けて,19世紀半ばのイギリス帝国全盛期に Oxford English Dictionary の編纂が開始されることになりました.
今回の講座でも,対面およびオンラインで多くの方々にご参加いただきました.ありがとうございます.第10回の内容を markmap というウェブツールによりマインドマップ化して整理しました(画像としてはこちらからどうぞ).復習などにご活用ください.
egg 「卵」について本ブログをはじめとする各種メディアで何度か取り上げてきた.概観を得るために,まず『英語語源辞典』の記述を確認しておこう(OED の egg, n.' も参照).
記述の通り,古英語では本来的な ǣġ が用いられていたが,後期中英語より古ノルド語 (old_norse) 由来の egg がイングランド北部・東中部に現われ,本来形を置き換えていったというプロセスを経ている.また,Caxton の Eneydos (1490) の序文における,旧形と新形の共存・競合に関する英語史上有名な逸話についても触れられている.
egg をめぐるこの2つの話題について,これまで少なからぬコンテンツを作ってきたので,リンクをまとめておこう(ここ数ヶ月間,heltube こと「YouTube: heltube --- 英語史チャンネル」へのアクセスが増えてきているので,そちらを最初に挙げている).
(1) 古ノルド語由来の egg
・ heltube 「#182. egg 「卵」は古ノルド語からの借用語!」 (2025/01/18)
・ heldio 「#182. egg 「卵」は古ノルド語からの借用語!」 (2021/11/29)
・ hellog 「#340. 古ノルド語が英語に与えた影響の Jespersen 評」 ([2010-04-02-1])
・ hellog 「#2625. 古ノルド語からの借用語の日常性」 ([2016-07-04-1])
・ hellog 「#3982. 古ノルド語借用語の音韻的特徴」 ([2020-03-22-1])
・ hellog 「#4820. 古ノルド語は英語史上もっとも重要な言語」 ([2022-07-08-1])
・ inohota 「え?それも外来語? 英語ネイティヴたちも(たぶん)知らない借用語たち」 (2022/07/08)
(2) 新旧形をめぐる Caxton の逸話
・ heltube 「heldio #183. 卵を巡るキャクストンの有名な逸話」 (2025/01/19)
・ heldio 「#183. egges/eyren:卵を巡るキャクストンの有名な逸話」 (2021/11/30)
・ hellog 「#337. #337. egges or eyren」 ([2010-03-30-1])
・ hellog 「#4600. egges or eyren:なぜ奥さんは egges をフランス語と勘違いしたのでしょうか?」 ([2021-11-30-1])
・ hellog 「#4831. 『英語史新聞』2022年7月号外 --- クイズの解答です」 ([2022-07-19-1])
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
語源 (etymology) について,最近の記事として「#5737. 語源,etymology, veriloquium」 ([2025-01-10-1]) と「#5739. 定期的に考え続けたい「語源とは何か?」」 ([2025-01-12-1]) で考えた.今回は etymology という用語自体について検討する.
英単語 etymology は,ギリシア語に端を発し,ラテン語,古フランス語を経由して,後期中英語に入ったが,もともとは高度に専門的な用語である.『英語語源辞典』の etymology の項目を掲げる.
OED の etymology, n. では,部分的にフランス語から,部分的にラテン語から入ったものとして,つまり "Of multiple origins" として解釈している.それぞれの経路について,次のように述べている.
< (i) Middle French ethimologie, ethymologie (French etymologie) established account of the origin of a given word, explaining its composition (2nd half of the 12th cent. in Old French; frequently from early 16th cent.), interpretation of a word, that which is revealed by such interpretation (c1337), the branch of linguistics concerned with determining of the origins of words (1622 in the passage translated in quot. 1630 at sense 5, or earlier),
and its etymon (ii) classical Latin etymologia (in post-classical Latin also aethimologia, ethimologia, ethymologia) interpretation and explanation of a word on the basis of its origin < Hellenistic Greek ἐτυμολογία, probably < Byzantine Greek ἐτυμολόγος (although this is apparently first attested later: see etymologer n.) + -ία -y suffix3; on the semantic motivation for the Greek word see etymon n. and discussion at that entry.
語源的意味こそが「真の意味」であるとする考え方については,OED の 2.a.i. にて次の注意書きがある.
The idea that a word's origin conveys its true meaning (cf. discussion at etymon n.) has become progressively discredited since the 18th cent. with the increased study of etymology as a linguistic science (see sense 5). It is now sometimes referred to as the etymological fallacy.
注意すべきは etymology の学問分野としての語義である.OED の第3語義は「語源学」ではなく「品詞論」を指し,c1475 を初出として次のようにみえる.
3. Grammar. A branch of grammar which deals with the formation and inflection of individual words and their different parts of speech. Now historical.
現代的な「語源学」の語義は OED の第5語義に相当し,初出は1630年と若干遅い.
5. The branch of linguistics which deals with determining the origin of words and the historical development of their form and meanings.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 日時:1月25日(土) 17:30--19:00
・ 場所:朝日カルチャーセンター新宿教室
・ 形式:対面・オンラインのハイブリッド形式(1週間の見逃し配信あり)
・ お申し込み:朝日カルチャーセンターウェブサイトより
今年度の朝カルシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」が,月に一度のペースで順調に進んでいます.主に『英語語源辞典』(研究社)を参照しながら,英語語彙史をたどっていくシリーズです.
1月25日(土)の夕刻に開講される第10回は,冬クール(3回分)の始まりとして「英語,世界の諸言語と接触する」と題して,近代英語期における世界中の諸言語からの借用語にフォーカスします.
ヨーロッパの近代英語期は,大航海時代で幕が開きます.イギリスは,スペインやポルトガルなどの列強には遅れたものの,何とか世界展開の足かがりをつかみ,2世紀半ほどの時間をかけてイギリス帝国を作り上げます.七つの海を支配したイギリスは,この過程を通じて世界中の言語と接触することになり,世界的語彙 (cosmopolitan_vocabulary) という滋養が,英語という言語に大量に流れ込んでくることになりました.英語語彙は,語源を追いかけていくだけで世界一周できるほどの豊かさを得たのです.英語界最大の辞書である OED (= Oxford English Dictionary) の編纂企画が打ち上げられたのは,上記過程の機の熟したイギリス帝国の絶頂時代,19世紀後半のことでした.今回の講座では,英語語彙史上とりわけ激動の時代というべき,この近代英語期における言語接触に注目します
本シリーズ講座の各回は独立していますので,過去回への参加・不参加にかかわらず,今回からご参加いただくこともできます.過去9回分については,各々概要をマインドマップにまとめていますので,以下の記事をご覧ください.
・ 「#5625. 朝カルシリーズ講座の第1回「英語語源辞典を楽しむ」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-20-1])
・ 「#5629. 朝カルシリーズ講座の第2回「英語語彙の歴史を概観する」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-24-1])
・ 「#5631. 朝カルシリーズ講座の第3回「英単語と「グリムの法則」」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-26-1])
・ 「#5639. 朝カルシリーズ講座の第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-04-1])
・ 「#5646. 朝カルシリーズ講座の第5回「英語,ラテン語と出会う」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-11-1])
・ 「#5650. 朝カルシリーズ講座の第6回「英語,ヴァイキングの言語と交わる」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-15-1])
・ 「#5669. 朝カルシリーズ講座の第7回「英語,フランス語に侵される」をマインドマップ化してみました」 ([2024-11-03-1])
・ 「#5704. 朝カルシリーズ講座の第8回「英語,オランダ語と交流する」をマインドマップ化してみました」 ([2024-12-08-1])
・ 「#5723. 朝カルシリーズ講座の第9回「英語,ラテン・ギリシア語に憧れる」をマインドマップ化してみました」 ([2024-12-27-1])
本講座の詳細とお申し込みはこちらよりどうぞ.『英語語源辞典』(研究社)をお持ちの方は,ぜひ傍らに置きつつ受講いただければと存じます(関連資料を配付しますので,辞典がなくとも受講には問題ありません).
第10回については,Voicy heldio でも「#1325. 1月25日(土)の朝カル講座「英語,世界の諸言語と接触する」としてご案内していますので,ぜひお聴きください.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
12月21日に,今年度の朝日カルチャーセンター新宿教室でのシリーズ講座の第9回が開講されました.今回は「英語,ラテン・ギリシア語に憧れる」と題して,古典語への傾倒が顕著だった16--17世紀の初期近代英語期に注目しました.この時期,知識が増大し学問も発展したために新しい語彙が大量に必要となり,そのニーズに応えるべくラテン語やギリシア語の単語や要素が持ち出されたのでした.結果として,古典語に基づく借用語や新語がおびただしく導入され,英語語彙は空前の拡張を遂げることになります.
今回も,対面およびオンラインで多くの方々にご参加いただきました.ありがとうございます.講座の内容を,markmap というウェブツールによりマインドマップ化して整理してみました(画像としてはこちらからどうぞ).受講された方は復習用に,そうでない方は講座内容を垣間見る機会としてご活用ください.
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