hellog〜英語史ブログ

#5563. 古英語の変則動詞 (anomalous verbs)[verb][oe][conjugation][inflection][paradigm][suppletion][auxiliary_verb][be]

2024-07-20

 現代英文法では,動詞を規則動詞 (regular verbs) と不規則動詞 (irregular verb) とに分けるやり方がある.不規則動詞のなかでもとりわけ不規則性の激しい少数の動詞(例えば be, have, can など)は,変則動詞 (anomalous verbs) と呼ばれることがある.これら変則動詞の変則性は,歴史的にはある程度は説明できるものの,相当に複雑であることは確かであり,共時的な観点からは「変則」というグループに追いやって処理しておこうという一種の便法が伝統的に採用されている.
 古英語にも,共時的な観点からの変則動詞は存在した.willan (= PDE "to will"), dōn (= PDE "to do"), gān (= PDE "to go") である.古英語においてすら共時的に「変則」として片付けられてしまう,これらの異色の動詞の屈折表を,Hogg (40) より掲げよう.古くから変則的だったのだ.

Pres.willandōngān
1 Sing.wille
2 Sing.wiltdēstgǣst
Sing.wiledēðgǣð
Pluralwillaðdōðgāð
Subj. (Pl.)wille (willen)dō(dōn)gā(gān)
Participlewillendedōnde---
Past   
Ind.woldedydeēode
Participle---ġedōnġegān


 いうまでもなく bēon (= PDE "to be") も,古英語のもう1つの変則動詞である.この動詞については「#2600. 古英語の be 動詞の屈折」 ([2016-06-09-1]) を参照.

 ・ Hogg, Richard. An Introduction to Old English. Edinburgh: Edinburgh UP, 2002.

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