hellog〜英語史ブログ

#5552. 宗宮喜代子(著)『歴史をたどれば英語がわかる --- ノルマン征服からの復権と新生』(開拓社,2024年)[review][toc][history_f_o\di[hel_education][language_change]

2024-07-09


寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.



 5月に開拓社より出版された一般向けの英語史書,宗宮喜代子(著)『歴史をたどれば英語がわかる --- ノルマン征服からの復権と新生』(開拓社,2024年)を紹介します.外面史と内面史の均衡の取れた7章からなる英語史書で,内面史については文法の話題が多いものの,標準的な内容はしっかり押さえられています.以下,章節のレベルまで目次を掲載します.



はじめに
第1章 紀元前7世紀からノルマン征服まで
  ケルト人のブリテン島
  ローマ人による支配
  ゲルマン民族の大移動
  七王国時代
  English (英語)と England (イングランド)
  アングロ・サクソン社会
  ケルト人の無念
  キリスト教の浸透
  デーン人の襲撃
  アルフレッド大王の善政
  ノルマン征服
第2章 古英語
  インド・ヨーロッパ語族
  文献の始まり
  名詞
  代名詞・数詞
  形容詞・副詞
  動詞
  前置詞
  文の構造
  本来語と借用語
  古英語はどんな言語だったのか
第3章 百年戦争と英語の復権
  英語の没落
  無関心が招いた衰退
  百年戦争
  黒死病と庶民
  英語の復権
  英国王室の系譜
第4章 中英語
  屈折の単純化
  名詞
  代名詞・冠詞・数詞
  形容詞・副詞
  動詞
  前置詞
  文の構造
  本来語と借用語
  分析的言語への道
第5章 ルネサンスから1900年まで
  社会の変化
  知的なラテン語と粗野な英語
  ルネセンスと言語
  シェイクスピアの演劇
  清教徒革命
  王立学会とフランシス・ベーコン
  科学革命の波
  ジョン・ロックの世界観
  規範主義の時代
  アメリカ大陸の植民地
第6章 近代英語
  大母音推移
  名詞
  代名詞・冠詞・数詞
  形容詞・副詞
  動詞
  助動詞
  前置詞
  文の構造
  本来語と借用語
  アメリカの英語
  近代英語はどこまで来たか
第7章 現代英語
  800年の歩み
  捨てたもの・残したもの
  冠詞
  法助動詞
  名詞
  内と外の論理
  人称化という事件
  文型
  直線の論理
  必要十分の美学
  時制と相の体系
  共感指向
  イギリス英語とアメリカ英語
  現代英語はどんな言語になったのか
おわりに 
参考文献
索引




 本書の最大の魅力は,最終第7章の節タイトルから示唆されるように,結局,千数百年の変化の結果,英語はどんなタイプの言語になったのか,という問いに対する著者なりの答えが与えられていることです.現代英語は主に近代英語期に生じた言語変化の結果として出力されたものですが,その言語変化の背景に何があったがのが重要な問いとなります.
 英語史書は多々出版されていますが,それぞれに独自性があります.いろいろ読み比べてみることをお薦めします.ぜひ「#5462. 英語史概説書等の書誌(2024年度版)」 ([2024-04-10-1]) をご参照ください.
 なお,今回紹介した本については,Voicy heldio にて「#1131. 宗宮喜代子(著)『歴史をたどれば英語がわかる』(開拓社,2024年)」でも取り上げています.そちらもぜひお聴きいただければ.



 ・ 宗宮 喜代子 『歴史をたどれば英語がわかる --- ノルマン征服からの復権と新生』 開拓社,2024年.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow