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hellog〜英語史ブログ / 2020-03-22

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2020-03-22 Sun

#3982. 古ノルド語借用語の音韻的特徴 [old_norse][loan_word][borrowing][phonology][cognate][doublet][palatalisation][link]

 標題と関連して,Durkin (191--92) が挙げている古ノルド語借用語の例を挙げる.左列が古英語の同根語,中列が古ノルド語の同根語(かつ現代英語に受け継がれた語),右列が参考までに古アイスランド語での語形である.とりわけ左列と中列の音韻形態を比較してもらいたい.

OEScandinavianCf. Old Icelandic
sċyrta (> shirt)skirtskyrta
sċ(e)aða, sċ(e)aðianscatheskaði, skaða 'it hurts'
sċiell, sċell (> shell)(northern) skell 'shell'skel
ċietel, ċetel (> ME chetel)kettleketill
ċiriċe (> church)(northern) kirkkirkja
ċist, ċest (> chest)(northern) kistkista
ċeorl (> churl)(northern) carlkarl
hlenċelinkhlekkr
ġietangetgeta
ġiefangivegeva (OSw. giva)
ġiftgiftgipt (OSw. gipt, gift)
ġeard (> yard)(northern) garthgarðr
ġearwegeargervi
bǣtanbait 'to bait'beita
hāl (> whole)hail 'healthy'heill
lācnorthern laik 'game'leikr
rǣran (> rear)raisereisa
swānswainsveinn
(> no)naynei
blācbleakbleikr
wācweakveikr
þēahthoughþó
lēaslooselouss, lauss
ǣġ (> ME ei)eggegg
sweoster, swustersistersystir
fram, from (> from)frofrá


 古英語形と古ノルド語形について,いくつか特徴的な音韻対応が浮かび上がってくる.これらは,共通祖語から分かれた後に各言語で独自の音韻変化が生じた結果としての音韻対応である.その音韻変化に注目して箇条書きしよう (Durkin 193--98) .

 (1) 古英語では /sk/ > /ʃ/ が起こっているが,古ノルド語では起こっていない
 (2) 古英語では /k/ > /ʃ/ が起こっているが,古ノルド語では起こっていない
 (3) 古英語では /g/ > /j/ と /gg/ > /ddʒ/ が起こっているが,古ノルド語では起こっていない
 (4) 古英語ではゲルマン祖語の *ai > ā が起こったが,古ノルド語では起こっていない
 (5) 古英語ではゲルマン祖語の *au > ēa が起こったが,古ノルド語では起こっていない
 (6) 古ノルド語では *jj > gg が起こっているが,古英語では起こっていない
 (7) 古ノルド語では *ui > y が起こっているが,古英語では起こっていない
 (8) 古ノルド語では語末の鼻音が消失したが,古英語では消失していない

 音韻変化には条件のつくものが多いので,上記ですべてをきれいに説明できるわけではないが,知っておくと現代英語の語形に関する様々な謎が解きやすくなる.関連する記事を挙げておこう.

 ・ 「#2730. palatalisation」 ([2016-10-17-1])
 ・ 「#1511. 古英語期の sc の口蓋化・歯擦化」 ([2013-06-16-1])
 ・ 「#2015. seekbeseech の語尾子音」 ([2014-11-02-1])
 ・ 「#2054. seekbeseech の語尾子音 (2)」 ([2014-12-11-1])
 ・ 「#40. 接尾辞 -ly は副詞語尾か?」 ([2009-06-07-1])
 ・ 「#170. guesthost」 ([2009-10-14-1])
 ・ 「#169. getgive はなぜ /g/ 音をもっているのか」 ([2009-10-13-1])
 ・ 「#3817. hale の語根ネットワーク」 ([2019-10-09-1])
 ・ 「#3699. なぜ careless の反対は *caremore ではなくcareful なのですか?」 ([2019-06-13-1])
 ・ 「#337. egges or eyren」 ([2010-03-30-1])

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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最終更新時間: 2020-05-29 05:17

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