hellog〜英語史ブログ

#40. 接尾辞 -ly は副詞語尾か?[suffix][adverb][adjective][old_norse][-ly]

2009-06-07

 現代英語では, -ly が形容詞から副詞を作る典型的な接尾辞であることはよく知られている.nice - nicelyquick - quicklyterrible - terribly の類である.非常に生産的であり,原則としてどの形容詞にも付きうる.
 ところが,-ly は実際には名詞から形容詞を作る接尾辞として機能することもある.例えば,beastlycowardlyfatherlyfriendlyknightlyrascallyscholarlywomanly など.時間を表す,dailyhourlyweeklyyearly も同様である.副詞接辞にも形容詞接辞にもなりうるこの -ly とはいったい何なのだろうか.語源を探ってみよう.
 古英語の対応する接尾辞は -līċ である.līċ は単体としては「形,体」を意味する名詞である.これは現代英語の like 「?のような,?に似た」の語源でもある.-līċ が接尾辞として他の名詞に付くと,「(名詞)の形態をした,(名詞)のような」という形容詞的意味が生じた.現代英語では,-like の付く形容詞も存在するが,成り立ちとしては -ly とまったく同じだということがわかるだろう(例:businesslikechildlikelifelike).実際,形容詞語尾としての -like は -ly 以上に生産的であり,事実上どんな名詞にも付き得て,形容詞を作ることができる(例:doglikejerry-likesphinxlike).
 以上で,-ly ( < OE -līċ ) がまず最初に形容詞語尾であることが分かっただろう.それでは,副詞語尾としての -ly はどこから来たのか.古英語では,形容詞は与格に屈折させると副詞機能を果たすことができた(see [2009-06-06-1]).-līċ の付く形容詞の与格形は,語尾に <e> を付加するだけの -līċe であった.ところが,中英語期にかけて起こった語尾音の消失により,与格語尾の <e> が落ち,結果的に形容詞語尾の -līċ と同形になってしまった.さらに,恐らく古ノルド語の対応する形態 -lig- の影響により,中英語後期までに -līċ の最後の子音が弱化・消失し,現在のような -ly の形に落ち着いた.
 以上みてきたように,現代英語の -ly という接尾辞は,語源的には古英語の形容詞接辞 -līċ と副詞接辞 -līċe の両方に対応する形態である.中英語期にこの形態が確立してからは,形容詞接辞としてよりも副詞接辞としての役割のほうが大きくなり,大量の -ly 副詞が生まれた.そのような事情で 現代英語の -ly は典型的な副詞語尾とみなされることが多いわけだが,順序としては,まず形容詞語尾としての役割が先にあったことを押さえておく必要があるだろう.

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