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hellog〜英語史ブログ / 2021-08-11

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2021-08-11 Wed

#4489. 1763年,英語が北米大西洋岸の長いストレッチを押さえた年 [history][french][map][canada]

 Trudgill (23) が,1763年を英語の世界的拡大を語る上で重要な年とみている.1763年の英語史上の意義とは何か.

Then in 1763 a very significant event occurred: Britain gained control of the Cape Breton Island area of Nova Scotia, which had remained in French hands until then. This meant that for the first time the English language had effected a complete takeover of a very long contiguous stretch of the east coast of the North American continent: There was now an English-language presence all along the coast from Newfoundland in the north, right down to the border between Georgia and (Spanish-controlled) Florida in the south.


 そう,イギリスが,そして英語が,北米大西洋岸の長いストレッチを押さえた年だったのである.「長いストレッチ」を確認するのには,ボンヌ図法の地図を用いるとなかなか効果的 ((C)ROOTS/Heibonsha.C.P.C) .

Atlantic Coast of North America (1763)

 この年は,世界史でいうところの七年戦争(1756--1763年; Seven Years' War)が終結した年である.イギリスが財政支援するプロイセンと,オーストリア・ロシア・フランスなどとの間の戦争で,プロイセンのフリードリヒ2世の好指揮などにより前者が勝利した.この戦争には英米植民地戦争という側面もあり,北アメリカとインドにおいて両国が激突した.
 この北アメリカでの戦いはフレンチ・インディアン戦争 (French and Indian War) とも呼ばれるが,英仏の角逐について『世界大百科事典 第2版』の解説がとてもわかりやすい.

比喩的にいえば,点(交易所)をつなぐ線(水路)で半弧状にイギリス植民地を包囲したフランス植民地と,これを面(農業地)の拡大によってのみこもうとしたイギリス勢力とが,オハイオ川流域で衝突して起こった重商主義戦争で,これにこの地方のインディアン諸部族がまきこまれた.


 初期の戦局ではフランスとインディアンの軍が優勢を保ったが,1758年にイギリスのピット首相が強力な指導力を発揮するに及び,戦局は逆転.イギリスがケベックやモントリオールを奪取し,勝敗が決せられた.そして,1763年のパリ講和会議により,フランスは北アメリカにおける領土を失うことになった.こうしてイギリスはカナダを含めた北アメリカ(の大西洋岸のことではあるが)の支配権を獲得した.
 これ以前にも,イギリスは1713年に New Brunswick を獲得しており,1732年に Georgia の植民も成功させている.1740--50年代には Nova Scotia に本国から移民を多く送り込んだ.さらに1758年には Prince Edward Island を占拠している.そして,最後に上記のように1763年に Nova Scotia を,そして Cape Breton Island を獲得し,上記の「長いストレッチ」がつながったわけだ.
 上記の英仏植民地戦争の帰趨と,結果としての各言語の勢力分布は,およそ一致していると考えてよい.ただし,イギリスの支配下に入ったケベックでは,言語文化としてはフランス的な要素が色濃く継承され現在に至っているなど,例外もないわけではない.もう1点挙げれば,「#1733. Canada における英語の歴史」 ([2014-01-24-1]) で触れたように,上記戦争中に Nova Scotia などから追放されたフランス系の人々住民がアメリカ南部の Louisiana などへ移住しており,現在でも彼らの子孫たちが Louisiana で Cajun (< Acadian) と呼ばれるフランス語の変種を話している.

 ・ Trudgill, Peter. "The Spread of English." Chapter 2 of The Oxford Handbook of World Englishes. Ed. by Markku Filppula, Juhani Klemola, and Devyani Sharma. New York: OUP, 2017. 14--34.

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最終更新時間: 2021-10-01 10:24

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