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hellog〜英語史ブログ / 2018-04-18

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2018-04-18 Wed

#3278. 社会史あるいは「進出・侵略」の観点からの英語史時代区分 [periodisation][linguistic_imperialism]

 昨日の記事「#3277. 「英語問題」のキーワード」 ([2018-04-17-1]) に引き続き,英語帝国主義批判の立場から英語史を論じる中村に拠り,英語の「進出・侵略」という観点から,英語史を時代区分する案について考えてみたい.中村 (30) によれば,1350年を開始点とする英語史は5期に区分される.

 期間それぞれの時期の特徴
第1期1350〜1600[英語が]イングランドの「公用語」(「国家語」)となる時期
第2期1600〜1800海外に大々的に進出する時期
第3期1800〜1900帝国主義的性格を発揮し始める時期
第4期1900〜1945フランス語に代って「世界語」「(世界の)共通語」の地位を確立する時期
第5期1945〜「共通語」的性格と新・植民地主義的性格を推し進める時期


 各期の区切りの年代について,中村 (30--31) にしたがって付言しておこう.第1期の始まりは,イングランドがノルマンの支配から脱していく14世紀半ばに設定されている.その後,イングランドが独立国家となるテューダー朝の開始(1603年)をもって第2期へ移るという発想だ.また,イングランド人が母語である英語に自信を持ち始めるのも16世紀末である(cf. 「#2580. 初期近代英語の国語意識の段階」 ([2016-05-20-1])).
 第2期は三角貿易に代表される海外貿易が盛んとなり,イングランドが豊かになっていく時期である.植民地主義から帝国主義へ移行する時代で,とりわけ象徴的なのは7年戦争 (1756--63) だろう.歴史家トインビーは,この戦争を世界語としての英語の歩みの開始点とみている.
 第3期は,産業革命が進んできた1800年を便宜的な開始点としているようだが,工業化で蓄積した富を武器に,イギリスが帝国主義的な性格を発揮した100年間をカバーしている.標準英語が国民・国家の言語として教育されるようになり,非標準英語は軽視されるに至った.
 第4期は,帝国間の争いが激化し,その争いのなかから英語が大きく抜け出していく20世紀前半をカバーしている.覇権国家はイギリスからアメリカへと移行し,英語はフランス語を押しのけて世界語の地位を得る.それ以前にはフランス語のみで書かれていた国際条約が,ベルサイユ会議 (1919) ではフランス語のほか英語も使われるようになり,さらにワシントン会議 (1921) で締結された条約は,史上初めて英語のみで書かれた.
 第2次世界大戦の終了した1945年以降の第5期は,世界的に民族語復権の時代ではあるが,一方で英語が世界語としてますます利便性と通用度を高め,世界を操作する覇権言語となった.

 ・ 中村 敬 『なぜ,「英語」が問題なのか? 英語の政治・社会論』 三元社,2004年.

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最終更新時間: 2019-06-25 04:53

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