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昨日の記事 ([2015-09-20-1]) に引き続いての話題.16世紀に hem, 'em が不在,あるいは非常に低頻度という件について,EEBO (Early English Books Online) のテキストデータベースを利用して,簡易検索してみた.検索結果は,動詞 hem を含め,相当の雑音が混じっており,丁寧に除去する手間は取っていないものの,16世紀からの例は確かに極端に少ないことがわかった.
16世紀前半からの明確な例は,Andrew Boorde, The pryncyples of astronamye (1547) に現われる "doth geue influence to hem the which be borne vnder this signe" の1例のみである.16世紀前半の300万語ほどのサブコーパスのなかで,極めて珍しい.'em に至っては,16世紀後半のサブコーパスも含めても例がない.
16世紀後半のサブコーパスでも,hem の例は少々現われるとはいえ,さして状況は変わらない.F. T., The debate betweene Pride and Lowlines (1577) なるテキストにおいて "for they doon hem blame", "For which hem thinketh they should been aboue" などと生起したり,Joseph Hall, Certaine worthye manuscript poems of great antiquitie reserued long in the studie of a Northfolke gentleman (1597) という当時においても古めかしい詩のなかで何度か現われたりする程度である.
一方,17世紀サブコーパスの検索結果一覧をざっと眺めると,hem の頻度が著しく増えたという印象はないが,'em が見られ始め,ある程度拡張している様子である.後者の 'em の出現は,アポストロフィという句読記号自体の拡大が17世紀にかけて進行したことと関係するだろう (see 「#582. apostrophe」 ([2010-11-30-1])) .
hem, 'em の歴史的継続性という議論については,問題の16世紀にもかろうじて用例が文証されるということから,継続性を認めてよいだろうとは考える.口語ではもっと頻繁に用いられていただろうという推測も,おそらく正しいだろう.しかし,なぜ文章の上にほとんど反映されなかったのかという疑問は残るし,17世紀以降に復活してきた際に,すでに共時的には them の省略形と解釈されていた可能性についてどう考えるかという問題も残る.この話題は,いまだ謎といってよい.
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最終更新時間: 2024-10-26 09:48
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