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昨日の記事「#1219. 強意語はなぜ種類が豊富か」 ([2012-08-28-1]) で参照した Peters は,初期近代英語の強意副詞の異常な拡大について調査している.この時代は,強意副詞の拡大が英語史上もっとも激しかった時期である.しかも,その供給源が従来は典型的だった locality, dimension, quantity を表わす語よりも,quality を表わす語へと移っていったというのが特徴的であるという (Peters 271) .
OED での調査によると,強意副詞拡大の第1のピークは,1590--1610年にあり,次のような語が含まれる (Peters 272) .
ample, capitally, damnable, damnably, detestable, exquisitely, extreme, grievous, grossly, horribly, intolerable, pocky, rarely, spaciously, strenuously, superpassing, surpassing, terribly, tyrannically, uncountably, unutterably, vehemently, villainous, violently
第2のピークは1650--60年にあり,ほぼすべて借用語がソースとなっているのが特徴的だという.これにつていは,簡便な一覧が与えられていなかった.
では,なぜ初期近代英語で強意副詞が拡大したのだろうか.Peters は,供給源である語彙の多様性(借用語も含め)と口語的な文体の文章が増えてきたという事実を指摘している (273) .昨日指摘したように,強意語には常に自己刷新ともいうべき諸作用が働いている.そのような内圧がかかっているところへ,初期近代英語期に,借用語の流入と口語的な文体の出現という外圧が加わった.言語内外の要因が組み合わさり,とりわけこの時期に強意副詞が拡大したのではないか.
同時期の借用とその副詞への影響については,特に以下の記事を参照.
・ [2009-08-19-1]: 「#114. 初期近代英語の借用語の起源と割合」
・ [2010-08-18-1]: 「#478. 初期近代英語期に湯水のように借りられては捨てられたラテン語」
・ [2012-01-06-1]: 「#984. flat adverb はラテン系の形容詞が道を開いたか?」
・ [2012-07-12-1]: 「#1172. 初期近代英語期のラテン系単純副詞」
・ Peters, Hans. "Degree Adverbs in Early Modern English." Studies in Early Modern English. Ed. Dieter Kastovsky. Mouton de Gruyter, 1994. 269--88.
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最終更新時間: 2024-10-26 09:48
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