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hellog〜英語史ブログ / 2021-10-30

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2021-10-30 Sat

#4569. because が表わす3種の理由 [pragmatics][semantics][speech_act][cognitive_linguistics][performative_hypothesis][conjunction][conceptual_metaphor]

 because は理由を表わすもっとも普通の接続詞だが,具体的な用例を観察してみると,そこに表わされている理由の種類にも様々なものがあることが分かる.ここで因果関係の哲学に入り込むつもりはないが,語用論や認知言語学の観点に絞って考察してみるだけでも,3種類は区別できそうだ.Sweeter (77) からの例文を挙げよう.

 (1) John came back because he loved her.
 (2) John loved her, because he came back.
 (3) What are you doing tonight, because there's a good movie on.

 3文における because が表わす理由の種類は明らかに異なる.(1) はもっとも普通で,現実世界の因果関係が表わされている.ジョンは彼女のことを愛していた,だからジョンは戻ってきたのだ.これを仮に「現実世界の読み」と呼んでおこう.
 しかし,(2) の because の役割は,現実世界の因果関係を表わしているわけではない.ジョンが戻ってきた,そのことが理由でジョンが彼女を愛するようになったという読みは成り立たない.この文の言わんとするところは,ジョンが戻ってきた,そのことを根拠としてジョンが彼女を愛していたのだと話者が悟った,ということだ.because 節は,話者がジョンの愛を結論づける根拠となっている.この趣旨でもとの文を拡張すれば,"I conclude that John loved her, because he came back." ほどとなろうか.これを仮に「認識世界の読み」と呼んでおこう.
 (3) は,主節が命題を表わす平叙文ですらなく疑問文なので,because が何らかの命題に対する理由であると解釈することは不可能だ.そうではなく,「今晩何してる?」と私が尋ねている理由は,いい映画が上映されているからであり,映画に誘おうと思っているからだ.もとの文を拡張すれば,"I am asking you what you are doing tonight, because there's a good movie on." ほどとなる.主節が表わす発話行為 (speech_act) を行なっている理由が because 以下で示されているわけだ.これを仮に「発話行為世界の読み」と呼んでおこう.
 3文において because 節が何らかの理由を表わしているとはいっても,その理由が属する世界に応じて「現実世界の読み」「認識世界の読み」「発話行為世界の読み」と各々異なるのである.3つのパラレルワールドがあると考えてよいだろう.because は3つの世界を股にかけて活躍している接続詞であり,この語を混乱せずに使いこなしている話者もまた3つの世界を股にかけて言語生活を営んでいるのである.

 ・ Sweetser, E. From Etymology to Pragmatics. Cambridge: CUP, 1990.

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最終更新時間: 2022-07-03 10:31

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