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英語のフランス語との付き合いは古英語最末期より途切れることなく続いている.フランス語彙借用のピークは「#2357. OED による,古典語およびロマンス諸語からの借用語彙の統計」 ([2015-10-10-1]) や「#117. フランス借用語の年代別分布」 ([2009-08-22-1]) で見たように1251--1375年だが,その後も,規模こそ縮小しながらも,借用は連綿と続いてきている.中英語以降の各時代のフランス語彙の借用については,「#1210. 中英語のフランス借用語の一覧」 ([2012-08-19-1]),「#1411. 初期近代英語に入った "oversea language"」 ([2013-03-08-1]),「#594. 近代英語以降のフランス借用語の特徴」 ([2010-12-12-1]), 「#678. 汎ヨーロッパ的な18世紀のフランス借用語」 ([2011-03-06-1]) を参照されたい.
今回は,現代英語におけるフランス借用語の話題を取り上げたい.Schultz は,OED Online を利用して,1900年以降に英語に入ってきたフランス語彙を調査した.Schultz がフランス借用語として取り出し,認定したのは,1677語である.Schultz の論文では,それらを14個の意味分野(とさらなる下位区分)ごとに整理し,サンプル語を列挙しているが,ここでは12分野それぞれに属する語の数と割合のみを示そう (Shultz 4--6) .
(1) Anthropology (11 borrowings, i.e. 0.7%)
(2) Metapsychics and parapsychology (11 borrowings, i.e. 0.7%)
(3) Archaeology (30 borrowings, i.e. 1.8%)
(4) Miscellaneous (46 borrowings, i.e. 2.7%)
(5) Technology (62 borrowings, i.e. 3.7%)
(6) La Francophonie (63 borrowings, i.e. 3.8%)
(7) Fashion and lifestyle (77 borrowings, i.e. 4.6%)
(8) Entertainment and leisure activities (86 borrowings, i.e. 5.1%)
(9) Mathematics and the humanities (92 borrowings, i.e. 5.5%)
(10) People and everyday life (154 borrowings, i.e. 9.2%)
(11) Civilization and politics (156 borrowings, i.e. 9.3%)
(12) Gastronomy (179 borrowings, i.e. 10.7%)
(13) Fine arts and crafts (260 borrowings, i.e. 15.5%)
(14) The natural sciences (450 borrowings, i.e. 26.8%)
20世紀のフランス借用語の特徴は何だろうか.1つは,Schultz が "the vocabulary recently adopted from French is characterized by its great variety, ranging from words related to everyday matters to highly specific terms in technology and science" (8) とまとめているように,意味分野の幅広さが挙げられる.食,芸術,自然科学が相対的に強いが,全体としてはマルチジャンルといってよい.ただし,マルチジャンルであることは中英語期のフランス借用語の特徴にも当てはまることから,これは英語史におけるフランス語彙借用に汎時的にみられる特徴といってもよいかもしれない.
注目すべきは,借用語のソースとして,標準フランス語のみならず,フランス語の諸変種やクレオール語なども含まれていることだ.カリブ諸島,カナダ,ルイジアナ,アフリカなどのフランス語変種からの借用語が少なくない.中英語期にも,中央フランス語のみならず,とりわけ初期にノルマン・フランス語 (norman_french) からも語彙が流入していたが,近代以降「フランス語」の指す範囲が拡がるとともに,借用元変種も多様化してきたということだろう.
現代世界の借用元言語としての英語を考えてみても,従来はイギリス標準英語やアメリカ標準英語がほぼ唯一の借用元変種だったかもしれないが,現在ではピジン語やクレオール語も含めた各種の英語変種が借用元変種となっている事実がある.それと同じことが,フランス語についても言えるということなのではないか.
・ Schultz, Julia. "Twentieth-Century Borrowings from french into English --- An Overview." English Today 28.2 (2012): 3--9.
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最終更新時間: 2024-10-26 09:48
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