hellog〜英語史ブログ     前の日     次の日     最新     2009-12     検索ページへ     ランダム表示    

hellog〜英語史ブログ / 2009-12-11

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

2009-12-11 Fri

#228. 英語変種のモデル (2) [variety][idiolect][elf][model_of_englishes]

 昨日の記事[2009-12-10-1]に引き続き,英語変種のモデルを掘り下げる.
 [2009-12-10-1]で示したモデルによれば,英語話者がある状況において用いる変種 ( variety ) は,"the common core" と六つのパラメータの値で記述できる.逆にいえば,"the common core of English" に六つのパラメータの値を掛け合わせると,ある一つの変種が定まる.
 だが,このように定まった変種の内部においても,まだ変種は現れうる.例えば,同じ話者が同じ環境・文脈で,意味的・語用的な差を含めずに,二つ以上の表現を選択肢としてもつ場合がある.Quirk et al. (30) は次のような例を挙げている.

He stayed a week or He stayed for a week
Two fishes or two fish
Had I know or If I had known


一方が他方よりも形式的である,などということが統計的にはあり得るかもしれないが,それほど明確な差ではない.この場合,六つのパラメータによって定められた変種の内部に,ミクロなレベルでの変種が潜んでいること ( varieties within a variety ) を示唆する.このミクロな変種内の構造は,以下のようにモデル化されている.

Varieties within a Variety

 ある一つの変種,例えば,イギリスの標準英語で,英語史の講義を口頭で比較的インフォーマルな言葉遣いおこなっている場合の英語変種を想定しよう.英語史の専門用語を用いる場合には,およそ固定化している用語が多いので,"relatively uniform" なミクロ変種を用いていることになる.しかし,講義は専門用語だけで進めるわけではなく,特にインフォーマルな言葉遣いで進めている場合には,くだけた話しを含めることもあるだろう.強調語を使う必要が生じたときに,very, indeed, not a little, really などの比較的多様な ( "relatively diverse" ) 表現が選択肢として考えられるが,これは講義者個人のもっている選択肢というよりは,講義者を含めた言語共同体で広く共有されている選択肢 ( "variation in community's usage" ) と考えるべきだろう.だが,講義者個人の口癖として very, very, very, very, veryto a gigantic extent といった変わり種の強調語を選択肢としてもっている場合 ( "variation in individual's usage" ) ,このいずれを用いるかは完全に個人的な選択の問題である.
 variety の所在を突き詰めると,結局,個人語 ( idiolect ) に行き着いてしまうようだ.

 ・Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Grammar of Contemporary English. London: Longman, 1972. 30--32.

Referrer (Inside): [2013-01-15-1] [2010-06-16-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2024 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2023 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2022 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2021 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2020 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2019 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2018 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2017 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2016 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2015 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2014 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2013 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2012 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2011 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2010 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2009 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12

最終更新時間: 2024-04-08 06:04

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow