hellog〜英語史ブログ     前の日     次の日     最新     2021-12     検索ページへ     ランダム表示    

hellog〜英語史ブログ / 2021-12-10

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

2021-12-10 Fri

#4610. marriage, carriage, verbiage [spelling][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][noun][suffix][sound_change]

 ふと思いついた疑問.marriage/ˈmærɪʤ/ と carriage /ˈkærɪʤ/ は2音節で発音されるが,同じ <-iage> の綴字をもつ verbiage /ˈvəːbiɪʤ/ は3音節で発音される.なぜなのだろうか.
 -age はフランス語の名詞を作る接尾辞に由来する.さらに遡るとラテン語 -āticum (中性形容詞語尾)にたどりつく.英語では13世紀から見られ,14--15世紀以降,多用されるようになった.フランス語由来であるから,英語でも当初は強勢を伴って /-aːʒ/ と発音されていた.14世紀にフランス語から借用された中英語形の mariage, cariage も,フランス語にほど近い /mariˈaːʒ/, /kariˈaːʒ/ ほどの3音節の発音だったはずである.
 しかし,時とともにこの2語は「英語化」していった.音変化のルートを想像するに,(1) 強勢が第1音節に移り,(2) 第2,第3音節から強勢が奪われて -iage は /-iɪʤ/ となり,(3) 同部分がさらに弱化・短化・同化を経て /-ɪʤ/ となったのだろう.単語全体としてみれば3音節から2音節に短くなったことになる.
 一方,verbiage は3音節を保っている.上記のルートでいえば (1), (2) までは経たが (3) は経ていないという段階である.この単語は marriage, carriage よりもずっと遅く18世紀にフランス語から借用されてきたために「英語化」が十分に進んでいないということなのだろう.
 ちなみに同じ <-iage> をもつ triage /ˈtriːɑːʒ, triˈɑːʒ/ も18世紀にフランス語から借用された語だが,「英語化」のルートでは (1) の段階にあるか,あるいはまだルートに乗っていない段階にあるといえるだろう.
 <-iage> という綴字に対応する発音の種類は,借用年代と緩く連動しつつ,多様である.

Referrer (Inside): [2021-12-11-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2024 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2023 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2022 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2021 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2020 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2019 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2018 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2017 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2016 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2015 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2014 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2013 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2012 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2011 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2010 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2009 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12

最終更新時間: 2024-12-16 08:44

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow