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hellog〜英語史ブログ / 2019-09-29

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2019-09-29 Sun

#3807. アフリカにおける言語の多様性 (1) [africa][world_languages][typology]

 一説によると,世界の言語の約半数がアフリカで用いられているという.「#401. 言語多様性の最も高い地域」 ([2010-06-02-1]) で示されるように,アフリカには言語多様性の高い国々が多い.元来の多言語・他民族地域であることに加えて,近代以降,西欧宗主国の言語を受け入れてきたこともあり,アフリカの言語事情はきわめて複雑である(関連して「#2472. アフリカの英語圏」 ([2016-02-02-1]),「#3290. アフリカの公用語事情」 ([2018-04-30-1]) などを参照).
 歴史を通じてアフリカが著しい言語多様性を示してきたことに関して,昨年改訂された『新書アフリカ史』の第1章に,次のような説明をみつけることができる (34--35) .

アフリカで使用されている言語の分類で最もポピュラーなものは,アメリカの言語学者グリーンバーグの分類である.彼はアフリカの言語を,コンゴ・コルドファン,ナイル・サハラ,アフロ・アジア,コイサンという四つの語族に分類した.そのうち,もっとも広範囲に分布しているのはコンゴ・コルドファン語族(いわゆるバンツー系諸語はここに含まれる)である.この系統の言語には,スワヒリ語,リンガ羅語,ズールー語,ヨルバ語など,サハラ以南のアフリカの主立った言語はたいてい含まれている.
 こうして分類されたまったく別系統の言語が,アフリカではモザイク状に入り乱れて地域社会を形成している.その状況を指して「言語的混沌」と形容する言語学者もいるほどだ.何が混沌かというと,二〇〇〇を超える言語数もさることながら,同じ言語集団内で相互にコミュニケーション不能な方言グループが隣接していたり,まったく孤立した言語が遠く離れて類似していたりするからだ.そして一九世紀後半以降の植民地支配の進展と,それと二人三脚で浸透していったキリスト教の伝道活動は,ヨーロッパ列強の政治勢力による境界や,民衆の分断統治の手段として,もともと存在していた混沌状況をさらに深化させていった.
 アフリカ社会内部の事情からみると,この混沌状況をつくりだした原因ははっきりしている.それはアフリカ人が行ってきた不断の移住のせいである.彼らは,一族を中心にして,土地を求め牧草を求めて移住を繰り返してきた.ときには難民となりときには他集団を襲撃しながら,アフリカの大地を移動し続けたのである.その結果,さまざまな小言語集団や方言集団が分立した.そして相互に異なる言語集団が,交流する過程で再び言語を変化させつつ,全体としての地域ネットワークをつくりあげていった.


 ここでは,アフリカの言語的多様性の内的な主要因は「不断の移住」にあると述べられている.「不断の移住」が諸集団の「交流」を促し,今度はそれが言語の「変化」と様々な言語社会の「分立」とを促進したという理屈だ.この説明は分からないではないが,「交流」がむしろ諸言語の画一化につながるという主張もあることから,もっと詳しい解説が欲しいところである.
 社会における人々の移動性や可動性 (mobility) が諸言語・諸方言の差異を水平化する方向に貢献するという議論については,「#591. アメリカ英語が一様である理由」 ([2010-12-09-1]),「#2784. なぜアメリカでは英語が唯一の主たる言語となったのか?」 ([2016-12-10-1]),「#3054. 黒死病による社会の流動化と諸方言の水平化」 ([2017-09-06-1]) を参照されたい.

 ・ 宮本 正興・松田 素二(編) 『新書アフリカ史 改訂版』 講談社〈講談社現代新書〉,2018年.

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最終更新時間: 2019-10-22 18:30

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