hellog〜英語史ブログ

#401. 言語多様性の最も高い地域[world_languages][japanese]

2010-06-02

 [2010-05-29-1], [2010-05-30-1]の記事に引き続き,Ethnologue からの話題.Table 6. Distribution of living languages by country は,世界の諸地域を言語多様性の高い順に並び替えたものである.言語の多様性指数 ( diversity index ) とは,その地域における言語の密度といってもよいが,その地域からランダムに二人を選び出したときにその二人が異なる母語をもつ確率として定義される.取り得る最大の値は1で,このとき同じ母語をもつ人は皆無ということになる.最小値は0で,このとき皆が同じ母語をもつということになる.例えば,日本の多様性指数は,対象となっている224地域のなかでも下から数えた方が早く,202位で 0.028 という値である.日本は言語的に非常に同質的な国であるといえる.
 多様性指数のトップ10を見やすく抜き出してみよう.

RankCountryDiversity indexLiving languages
1Papua New Guinea0.990830
2Vanuatu0.974114
3Solomon Islands0.96771
4Central African Republic0.95982
5Democratic Republic of the Congo0.948217
6Tanzania0.947129
7Cameroon0.946279
8Chad0.944133
9India0.940445
10Mozambique0.93253


 Papua New Guinea を筆頭に,いずれの言語も 0.9 を優に超えているのだから,日本に住んでいる者からすると驚くべき言語的多様性の地域である.上位国では英語や英語ベースのピジン ( pidgin ) が共通語として使用されている地域が多いが,英語ならずとも何か共通語がないと国内コミュニケーションにすら齟齬をきたすという状況が想像される ( see [2009-10-21-1] ).南国好きの私は Vanuatu と Solomon Islands に訪れた経験があり,対外国人コミュニケーションが英語でなされることは体験していたが,国内コミュニケーションにも英語やピジンが活躍しているだろうことはこの数値から容易に推測される.だが,まさか言語多様性で世界2位と3位を誇る国だとは思っていなかった・・・.
 PNG の言語数 830 というのも想像を絶する.多様性指数と言語数は独立した数値なので,今度は言語数の多い順にソートした表を示そう.

RankCountryDiversity indexLiving languages
1Papua New Guinea0.990830
2Indonesia0.816722
3Nigeria0.869521
4India0.940445
5United States0.319364
6Mexico0.137297
7China0.509296
8Cameroon0.946279
9Democratic Republic of the Congo0.948217
10Australia0.124207


 やはり PNG がトップを走るが,言語数でいえば Indonesia が猛追している.Nigeria と India も確かに言語数の多い国として言及されることが多い.多様性指数と言語数の両方でトップ10に入っているのは,PNG, Democratic Republic of the Congo, Cameroon の3国である.
 いやはや,世界は広い.

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