hellog〜英語史ブログ

#3290. アフリカの公用語事情[africa][official_language][language_planning][map]

2018-04-30

 昨日の記事「#3289. SwazilandeSwatini に国名変更」 ([2018-04-29-1]) で,日本人にとって馴染みの薄いと思われるアフリカの1国を取り上げたが,話題をアフリカ全体に広げてみても,やはり馴染みが薄いというところではないか.本ブログでも,「#2472. アフリカの英語圏」 ([2016-02-02-1]) などを書いてきたが,アフリカの扱いは全体的に弱かったと思い,今回はアフリカの公用語事情について紹介することにした.
 Ethnologue による2000年時点での調査によれば,アフリカには2058言語が使用されているという.これは,世界中の言語総数6,809の約30%割に相当する数である(ちなみにアジアが32%で1位であり,3位以下は太平洋地域の19%,南北アメリカの15%,ヨーロッパの3%と続く).アフリカ諸国はヨーロッパの植民地支配を被ってきた歴史をもち,その結果としてとりわけフランス語や英語が広く通じるという印象をもって見られるが,その公用語事情は非常に複雑である.公用語が単一が複数か.複数の場合,土着の言語はいかなる立場にあるか.言語政策の内実も国によって様々である.そもそも公用語の定義が国によって揺れている場合もある.以下は,1998年のデータに基づいた2002年の三好 (218--19) による各国・地域の公用語の一覧である.情報が古い可能性もあるので(例えば2011年に独立した南スーダンが入っていないなど),当面は概略として理解されたい.  *  *

 [ アラビア語公用語国・地域 ]

  ・ アルジェリア (Algeria)
  ・ エジプト (Egypt)
  ・ リビア (Libya)
  ・ モーリタニア (Mauritania)
  ・ モロッコ (Morocco)
  ・ スーダン (Sudan)
  ・ チュニジア (Tunisia)

 [ ポルトガル語公用語国・地域 ]

  ・ アンゴラ (Angola)
  ・ カボベルデ (Capo Verde)
  ・ ギニア・ビサウ (Guinea-Bissau)
  ・ モザンビーク (Mozambique)
  ・ サントーメ・プリンシペ (São Tom Príncipe)

 [ スペイン語公用語国・地域 ]

  ・ カナリヤ諸島 (Canary Islands)
  ・ 赤道ギニア (Equatorial Guinea)

 [ フランス語公用語国・地域 ]

  ・ ベニン (Benin)
  ・ ブルキナファソ (Burkina Faso)
  ・ コンゴ共和国 (Republic of Congo)
  ・ ガボン (Gabon)
  ・ ギニア (Guinea)
  ・ コートジボワール (Côte d'Ivoire)
  ・ マリ (Mali)
  ・ マヨット (Mayotte)
  ・ ニジェール (Niger)
  ・ レユニオン (Reunion)
  ・ トーゴ (Togo)
  ・ コンゴ民主共和国 (Democratic Republic of Congo)
  ・ セネガル (Senegal)

 [ 英語公用語国・地域 ]

  ・ ガンビア (Gambia)
  ・ ガーナ (Ghana)
  ・ リベリア (Liberia)
  ・ モーリシャス (Mauritius)
  ・ ナミビア (Namibia)
  ・ ナイジェリア (Nigeria)
  ・ シェラレオネ (Sierra Leone)
  ・ ウガンダ (Uganda)
  ・ ザンビア (Zambia)
  ・ ジンバブエ (Zimbabwe)

 [ アフリカ土着語公用語国・地域 ]

  ・ セイシェル (Seychelles):セイシェル・クレオール・フレンチ (Seychelles Creole French)

 [ 複数公用語公用語国・地域(アラビア語+土着語) ]

  ・ ソマリア (Somalia):アラビア語+ソマリ語 (Somali)
  ・ エリトリア (Eritrea):アラビア語+英語+ティグリニア語 (Tigrinya)

 [ 複数公用語国・地域(フランス語+土着語) ]

  ・ ブルンジ (Burundi):フランス語+ルンジ語 (Rundi)
  ・ 中央アフリカ (Central African Republic):フランス語+サンゴ語 (Sango)
  ・ マダガスカル (Madagascar):フランス語+マラガシー語 (Malagasy)
  ・ ルワンダ (Rwanda):フランス語+英語+ルワンダ語 (Rwanda)

 [ 複数公用語国・地域(英語+土着語) ]

  ・ ボツワナ (Botswana):英語+ツワナ語 (Tswana)
  ・ エチオピア (Ethiopia):英語+アムハラ語 (Amharic)+14の土着語
  ・ ケニア (Kenya):英語+スワヒリ語 (Swahili)
  ・ レソト (Lesotho):英語+レソト語 (Sotho)
  ・ マラウィ (Malawi):英語+チェワ語 (Chewa)
  ・ 南アフリカ共和国 (South Africa):英語+アフリカーンス語 (Afrikaans)+9つの土着語
  ・ スワジランド (Swaziland):英語+スワティ語 (Swati)
  ・ タンザニア (Tanzania):英語+スワヒリ語

 [ 公用語として土着語を含まない複数公用語国・地域 ]

  ・ カメルーン (Cameroon):英語+フランス語
  ・ チャド (Chad):フランス語+アラビア語
  ・ コモロ (Comoros):フランス語+アラビア語
  ・ ジブチ (Djibouti):アラビア語+フランス語

 ・ 三好 重仁 「第9章 2000の言語が話される大陸アフリカにおける言語政策概観」 河原俊昭(編著)『世界の言語政策 他言語社会と日本』 くろしお出版,2002年.217--24頁.
 ・ 宮本 正興・松田 素二(編) 『新書アフリカ史 改訂版』 講談社〈講談社現代新書〉,2018年.

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