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昨日の記事「#1610. Viking の語源」 ([2013-09-23-1]) で,''Viking' = 「入り江に住む者」の説を紹介した.入り江とは,海が陸地に入り込んだ静かな湾のことである.この入り江の地理的特徴に注目して,渡部昇一先生が,ヴァイキングや日本人のような海洋民族の発生について,興味深い説を紹介している.
ヴァイキングがどうして来たかというと,あれはやはり耕す場所がないから,ある程度人口が増えると海に乗り出さざるをえなかったんだと思うんですね.おもしろいセオリーがあります.海洋民族というか,海に乗り出す民族というのは,必ず故郷には静かな小さな海があるというんです.ヴァイキングなんかもフィヨルドが細く長くて非常に静かですから,そこで船の操作を覚えて,いつの間にか海に親しみを持つんですね.そうして,ある時期にパーッと外へ乗り出す.ちょうど日本でも同じように瀬戸内海があったもんですから,ここで船に乗って訓練をして,あるときから和冦になって荒らし回ったりする.つまり静かな海がないところでは海洋民族はできないというんですね.アフリカだとかインドというのは,いきなり大洋に面しちゃうもんですから,海が圧倒的に強くて征服できない.結局,海洋民族にならない.海洋民族は必ず静かな海があるところで舟を操るのがうまくなってから出てくるという説があります.(59--60)
瀬戸内海とは規模は違うが,北海 (the North Sea) もある意味では内海である.ヴァイキングにとって,スカンディナヴィア西岸のフィヨルドの入り江は操船の訓練地だった.そこで基本的な技術を習得した後に,中級レベルの北海で実践し,さらに上級レベルの大西洋へも乗り出していった.
デーン人やノルウェー人の北海進出と,それに続くイギリス諸島およびノルマンディへの侵入の経路は,スカンディナヴィア人の故郷からの目線で眺めると,よく理解できる.湖の対岸に向かうがごとき船旅である.北海周辺の地図を時計回りに90度回転させれば,北海上の自然な航路を同定することができるだろう.
ブリテン島の東部・北部が文化的にも言語的にも北方的である理由が,地勢としてよくわかる.同様に,ブリテン島の南部が大陸的(フランス的)である理由,西部がとりわけ島嶼的(ケルト的)である理由も納得できるだろう.
・ 渡部 昇一,ピーター・ミルワード 『物語英文学史 --- ベオウルフからバージニア・ウルフまで』 大修館,1981年.
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最終更新時間: 2024-11-26 08:10
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