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hellog〜英語史ブログ / 2013-01-30

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2013-01-30 Wed

#1374. ヨーロッパ各国は多言語使用国である [bilingualism][world_languages]

 ヨーロッパには各国に定められた公用語があり,国民は一様にそれを母語として用いて暮らしている,という理解は一般的なのかもしれない.確かにスイスやベルギーなどの多言語使用国もあるが,概ね,イギリス=英語,フランス=フランス語,ドイツ=ドイツ語,スペイン=スペイン語のように,国家と言語が一対一で対応しているものと理解されているのではないか.
 しかし,これは誤りである.近代国家成立の過程で「1国家=1言語」という思想が一般的になり,現代もその余波のなかにあるが,事実には明らかに反している.ヨーロッパ各国は,世界のほぼすべての国や地域と同じように,紛れもなく multilingual である.アイスランド(や日本)のような例外中の例外ともいえる事実上の単一言語国はあるにせよ,である.
 Ethnologue などの世界の言語統計の資料でヨーロッパの項目を一見すればわかるとおり,ヨーロッパ各国では驚くほど多くの言語が行なわれている.逆に,言語名から探るにしても,ある言語がいかに多くの異なる国で行なわれているかがわかる.「1国家=1言語」が事実に反することは明らかである.ヨーロッパの各国と言語の対応をここで細かく挙げる必要はないだろうが,主要な対応をまとめておくと便利だろうと思われるので,Trudgill (121--22) の一覧を再現しよう.以下の表の見出しの言語は,通常,ヨーロッパの特定の国家と結びつけられる主要な言語だが,その言語は右に示す国でも少数言語として行なわれている.

German   Denmark, Belgium, France, Italy, Slovenia, Serbia, Romania, Russia, Ukraine, Kazakhstan, Hungary, Czechia, Poland
Turkish   Greece, Macedonia, Serbia, Bulgaria, Romania, Moldova, Ukraine
Greek   Italy, Macedonia, Albania, Bulgaria, Romania, Ukraine, Turkey
Albanian   Greece, Serbia, Montenegro, Macedonia, Italy
Hungarian   Austria, Serbia, Romania, Slovenia, Slovakia, Ukraine
Finnish   Sweden, Norway, Russia
Swedish   Finland
French   Italy
Polish   Lithuania, Czechia, Ukraine
Bulgarian   Romania, Greece, Ukraine
Danish   Germany
Dutch   France
Italian   Slovenia, Croatia
Russian   Estonia, Latvia, Lithuania, Ukraine
Ukrainian   Romania, Slovakia, Poland
Slovak   Hungary, Romania, Czechia
Czech   Poland, Romania, Slovakia
Slovene   Austria, Italy
Macedonian   Greece, Albania
Lithuanian   Poland
Rumanian   Greece, Bulgaria, Albania, Serbia, Macedonia


 次の表で見出しに挙がっているのは,どの国においても少数派である言語である.右側に,その言語が行なわれている国が挙げられている.

Sami (Lapp)   Norway, Sweden, Finland, Russia
Frisian   Germany, Netherlands
Basque   Spain, France
Catalan   Spain, France
Breton   France
Sorbian   Germany
Kashubian   Poland
Welsh   UK
Gaelic   UK


 上の最後にあるように,イギリスですら英語のほか Welsh や Scottish Gaelic が部分的に行なわれているし,インド亜大陸からの移民に由来する Punjabi や Bengali などの言語も行なわれている.そのほか,Yiddish や Romany などは,ヨーロッパ大陸の多くの国で少数言語として用いられている.
 おそらくヨーロッパで最も多言語の国の1つとして挙げられるのは,ルーマニアだろう.Ethnologue の Romania の項から分かるとおり,公用語の Romanian が人口の9割に用いられているものの,その他23もの言語が少数言語として行なわれている (Armenian, Aromanian, Bulgarian, Crimean Tatar, Czech, Eastern Yiddish, Gagauz, German (Standard), Gheg Albanian, Greek, Hungarian, Italian, Polish, Romani (Balkan), Romani (Carpathian), Romani (Vlax), Romanian Sign Language, Romany, Russian, Serbian, Slovak, Turkish, Ukrainian) .

 ・ Trudgill, Peter. Sociolinguistics: An Introduction to Language and Society. 4th ed. London: Penguin, 2000.

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最終更新時間: 2019-09-29 05:17

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