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hellog〜英語史ブログ / 2009-10-16

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2009-10-16 Fri

#172. 呼びかけ語としての Mr, *Mrs, Miss [lexical_blocking][title][address_term]

 英語では,特に名前を知らない相手の注意を引くとき,通常は名前に冠する Miss などの敬称を独立に使うことがある.だが,各々の許容可能性と丁寧さはまちまちである.
 Miss は丁寧だが,Mr はむしろ軽蔑的であり,Mrs はそもそも呼びかけには使えない.比較的新しい Ms も呼びかけには用いられない.この不統一はいったいどういうことだろうか.
 この問題は,三つ(あるいは四つ)の同列語を横並びで考えているだけでは解決せず,それぞれの代替語を考慮する必要がある.まず,男性に呼びかける丁寧な表現としては Sir がある.Sir はフランス語起源だが初出は1300年頃と古く,男性への丁寧な呼称としての役割を早々と占めていたので,後発の Mr は「丁寧」の地位を占められず,「非丁寧」の地位に甘んじるしかなかった.
 次に,Mrs には Madam という代替語が存在した.女性を丁寧でなく呼ぶのは常に不適切ということからか,男性の「丁寧」対「非丁寧」といった対立はなく,女性には Madam だけで用が足りる.したがって,Mrs が呼びかけとして用いられる余地はついぞなかった.
 最後に Miss には,呼びかけ語としての代替表現がない.したがって,Miss は自由に「丁寧」の呼びかけ表現として用いることができる.
 ある意味領域が先にある語によって占められていると,後発の語はそこから閉め出されてしまう --- この原理は lexical blocking と呼ばれ([2009-05-27-1]),最近では意味論や語用論などでよく論じられているようである.

 ・ Huang, Yan. Pragmatics. Oxford: OUP, 2007. 143.

Referrer (Inside): [2012-03-10-1] [2011-10-09-1]

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最終更新時間: 2019-04-29 09:08

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