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近年,インターネットで使用される言語として英語のシェアが相対的に落ちてきている.ネット上のコンテンツがどの言語で記されているかについての統計を集めるのは難しいようだが,英語の使用が少なくなってきている傾向は間違いないようだ.
本来,インターネットは世界をつなぐのが売りだったはずだが,そこで有力な世界語たる英語が以前より使われなくなっているというのは,一見すると矛盾のように思える.だが,この下降傾向には根拠がある.
Graddol によると,以下のような要因があるという.
・インターネット人口では,非英語母語話者が増えてきている
・多くの言語をサポートするソフトウェアが増えてきている
・インターネットは世界のコミュニケーションではなく地域のコミュニケーションに使われている
・eコマースの対象は主に国内である
・多くの人が,インターネットを友人や家族とのコミュニケーションのために用いている
・インターネットは離散した言語共同体をつなぐ役割を果たしている
・ワンクリックで機械翻訳の機能を得られるようになってきた
・インターネットは,世界的には目立たない言語を学ぶ人にとって有益な情報源となっている
以上を眺めると,全体として,世界英語へ収斂してゆく英語化の方向ではなく,個別言語化や多言語化の方向を示しているように思われる.
インターネットの世界から現実の社会に目を移すと,生じていることは実は同じである.世界中の言語共同体において,英語学習熱こそ高いかもしれないが,英語が地元言語を置き換えるということは頻繁には起こっていないし,むしろ相変わらず個別言語を使い続けようとする方向や,英語を含めた多言語社会へ転換しようという方向のほうが目立つ.
世界における英語の社会言語学では,virtual と real の差はそれほど大きくないようだ.
・Graddol, David. English Next. British Council, 2006. Digital version available at http://www.britishcouncil.org/learning-research-englishnext.htm.44--45.
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最終更新時間: 2024-11-26 08:10
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