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地理的にかけ離れた2つのクレオール語が,非常に似た発展をたどり,非常に似た特徴を備えるに至ることが,しばしばある.Aitchison (233--34) によると,これを説明するのに "bioprogram" 説と "spaghetti junction" 説とがあるという.前者は Bickerton の唱える説であり,人間の精神には生物学的にプログラムされた青写真があり,クレオール語にみられる普遍的な特徴はそこから必然的に生み出されるとする (see 「#445. ピジン語とクレオール語の起源に関する諸説」 ([2010-07-16-1])) .一方,後者は,多くの道路が交差する spaghetti junction のように,ピジン語からクレオール語が発達する当初には,様々な可能性が生み出されるものの,可能な選択肢が徐々にせばまり,最終的には1つの出口へ収斂するというシナリオだ.
理論的には両説ともに想定することができるが,調査してみると,すべてのクレオール語が全く同じ経路をたどるわけでもなく,似た特徴が突然に発現するわけでもなさそうなので,spaghetti junction 説が妥当であると,Aitchison (234) は論じている.
spaghetti junction 説が言語変化の観点から興味深いのは,クレオール語の発達に関してばかりではなく,通常の言語変化に関しても同じように,この説を想定することができることだ.通常の言語変化にも様々な経路のオプションがあると思われるが,確率論的には,そこにある程度の傾向なり予測可能な部分なりが観察されるのも事実である.その意味では,それほど混み合っていない spaghetti junction の例と考えられるかもしれない.クレオール語の発達がそれと異なるのは,発達の速度があまりに速く,あたかも狭い場所に複雑多岐な spaghetti junction が集中しているようにみえる点だ.
通常の言語変化とクレオール語の発達の違いが,もしこのように速度に存するにすぎないのであれば,後者を観察することは,前者の早回し版を観察することにほかならないということになる.クレオール語研究と言語変化論は,互いにこのような関係にあるのかもしれず,そのために両者の連動に注意しておく必要がある.Aitchison (234) 曰く,
. . . the stages by which pidgins develop into creoles seem to be normal processes of change. More of them happen simultaneously, and they happen faster, than in a full language. This makes pidgins and creoles valuable 'laboratories' for the observation of change.
・ Aitchison, Jean. Language Change: Progress or Decay. 3rd ed. Cambridge: CUP, 2001.
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最終更新時間: 2024-10-26 09:48
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