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[2009-09-20-1]で,children を引き合いにして 二重複数 ( double plural ) に言及した.古英語では,この語の複数形(より正確には主格・対格の複数形)は cildru だったが,やがて r を含んだ形態が単数形の基体 ( base ) であると異分析 ( metanalysis ) され,そこから -en という複数語尾により新しく複数形が作られたというのが,複数形 children の生成された過程である.
children のような二重複数の例は,歴史的には結構ある.非標準語法も含めて現代英語に残っているものとしては,bodices, breeches, datas, invoices, truces; brethren, kine などがある.いずれも /s/ や /n/ が複数語尾として付加されているが,歴史的にはそれらの語尾がない形ですでに複数形として機能していた.
brethren については,brother が宗教的な「同胞」という意味で用いられる場合の複数形であり,通常の brothers と自由変異をなすわけではない.また,brethren との類推 ( analogy ) と思われるが,アメリカ英語では宗教的文脈で sister(e)n も使われるという.
datas は,いわゆる外国語複数 ( foreign plural ) の例である.ラテン語やギリシャ語などに由来する借用語には,借用元言語での屈折を保ったまま英語に入ってくるものも少なくない.ラテン語から来た data はそれ自体が datum という単数形態に対する複数形態だが,もとのラテン語の屈折を知らない英語話者にとっては不透明な形態規則である.そこで,昨今では data 自体が単数形であると解釈されるようになってきており,新しい規則的な複数形 datas が生まれてきている.
二重複数をはじめ「二重○○」というのは,英語史ではよく取りあげられる話題である.二重過去形の might ([2009-07-03-1],[2009-06-25-1]),二重比較級の lesser ([2009-11-08-1], [2009-11-22-1]) などである.ここで注意すべきは,いずれの場合も,通時的には「二重」であるとみなせるが,共時的な感覚としては「一重」としてとらえられていることである.通時と共時を結ぶ接点に異分析という作用があるとすると,言語変化の力学において異分析の果たす役割は大きいといえる.
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最終更新時間: 2024-11-26 08:10
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