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今月は,品詞をめぐる議論を以下の記事で取り上げてきた.
・ 「#5763. 品詞とは何か? --- ただの「語類」と呼んではダメか」 ([2025-02-05-1])
・ 「#5765. 品詞とは何か? --- Bloomfield の見解」 ([2025-02-07-1])
・ 「#5771. 品詞とは何か? --- 分類基準の問題」 ([2025-02-13-1])
・ 「#5772. 品詞とは何か? --- 厳密に意味を基準にした分類は可能か」 ([2025-02-14-1])
・ 「#5773. 品詞とは何か? --- 厳密に機能を基準にした分類の試み」 ([2025-02-15-1])
品詞は,分類基準に何を据えるかで様相が大きく異なってくる.今回は,厳密に形態に基づいて分類するとどうなるかを考えてみたい.参照するのは,引き続き『新英語学辞典』の parts of speech の項である.
形態に基づく分類として最も分かりやすいのは,当該の単語が形態的に変化し得るか,しないかである.ラベルを貼るとすれば「変化詞」と「不変化詞」がふさわしい.
実際 Sweet は,この基準による品詞分類を提案した.それによると,伝統的にいうところの「名詞」「形容詞」「動詞」は,文法機能に応じて何らかの形態変化を示すので「変化詞」となる.一方,「前置詞」「接続詞」「間投詞」は原則として形態変化を示さないので「不変化詞」となる(Sweet ではここに「副詞」も加えられているが,副詞には比較変化があり得ることに注意が必要である).
続いて,Jespersen も形態的な基準により「変化詞」と「不変化詞」に分けた.「変化詞」には従来の「名詞」「形容詞」「代名詞」「動詞」が含まれ,「不変化詞」には従来の「副詞」「前置詞」「接続詞」「間投詞」が含まれる.
ただし,Sweet にせよ Jespersen にせよ,「変化詞」や「不変化詞」の各々の下位区分の基準については触れておらず,結局のところ従来の機能・意味的基準を暗に採用しているではないか,という批判は避けられない.
もちろん「名詞」には名詞独自の,「動詞」には動詞独自の形態変化があるので,その形態的振る舞いを拠り所にして下位区分していくことは可能である.ただし,その場合,例えば名詞と動詞を兼任する love という語の場合,これを同一語と捉えるのか,「文法的同音異義語」として異なる2語と捉えるのかという問題が生じる.この問題は伝統的な品詞分類においても生じており,特別な問題ではないといえばそうなのだが,そもそも品詞分類とは何のためにするはずだったのか,という原初の問題に立ち返る契機を与えてくれはする.
・ 大塚 高信,中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.
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最終更新時間: 2025-03-09 09:06
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