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英語の発音と綴字の乖離を埋める営みとしての spelling_pronunciation についてはこれまで多くの記事で扱ってきた.しかし,同じ目的での営みだが反対の方向を示す "pronunciation spelling" というべき現象については,一般にもあまり取り上げられることがない.
その理由は,ほとんどが非標準の綴字だからである.アメリカ英語で主に略式に用いられている lite ( = light) や thru ( = through ) は市民権を得ているほうではあるが,やはり与える印象は非標準的である.lite は低カロリーを売りにした飲料の商品名として用いられることが多いが,これは pronunciation spelling の一般的な傾向,"a trade-name or advertising campaign" (Crystal, p. 77) に用いられる傾向を示す例である.商品名は個性的でなくてはならず,みなの知っている標準的な綴字に埋没してしまっては困る.標準的な綴字から逸脱することで存在感をアピールし,名前を覚えてもらうという戦略だ.
Crystal (77) は,pronunciation spelling の例と考えられる各種の宣伝文句を挙げている.確かに,いずれも公告が出れば目に留まる確率が高そうだ.それぞれ何の商品・サービスか,何となく分かる.
- Miami for the chosen phew (advertising holidays)
- EZ Lern (US driving school)
- Fetherwate
- Hyway Inn
- Kilzum (insect spray)
- Kwiksave
- Heinz Buildz Kidz
- Loc-tite
- No-glu
- Resistoyl
- Rol-it-on
- Wundertowl
非標準綴字であるということは,いかがわしさを匂わすこともできる.[2011-07-05-1]の記事「海賊複数の <z>」で触れたwarez がその例となるが,これも "pronunciation spelling" の親戚といってよいだろう.
pronunciation spelling の例が spelling pronunciation に比べて少なく,非標準的とのレーベルを貼られがちなのは,発音に合わせて綴字を変えるということ自体が不自然だからである.綴字は常に保守的であるから,それに合わせて発音が変化することはあっても,その逆は起こりにくい.この不自然さが,一方で目を引く効果を生み出すのであり,他方でいかがわしさを演出するのである.
・ Crystal, David. The English Language. 2nd ed. London: Penguin, 2002.
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最終更新時間: 2024-11-26 08:10
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