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昨日の記事[2010-01-06-1]で,1588年のスペイン無敵艦隊のあっけない敗北が遠く後の英語の世界化に貢献したことに触れた.興味深いことに,スペインのあっけない敗北が英語の世界化に貢献したもう一つの例がある.1898年の米西戦争 ( the Spanish-American War ) である.
1895年,キューバがスペインからの独立を目指して反乱を起こした.スペインの横暴な抑圧に対し,アメリカはキューバを支持し,スペイン軍のキューバからの撤退を議会で決議した.1898年4月24日,スペインが宣戦布告.だが,戦いは一方的だった.スペイン領フィリピンの海戦では,準備不足のスペイン艦隊はアメリカ艦隊にあっけなく敗退.一方,キューバのほうでも,アメリカの猛攻によりスペイン艦隊は再度あっけなく敗退した.こうして,早々と7月17日には決着がついていた.
戦後処理のパリ条約で,スペインは (1) Cuba から手を引き,(2) Guam と Puerto Rico をアメリカに割譲し,(3) the Philippines の統治権を2千万ドルでアメリカに移譲した.アメリカはこうして遠く西太平洋に領土を保有することとなり,国際的な影響力を高めることとなった.
ところで,16世紀末と19世紀末の二度にわたるスペインのあっけない敗北を英語の拡大の歴史と結びつける視点を提供したのは,[2010-01-05-1]で紹介した島村氏である .
国際舞台におけるスペインの敗退が英語と英米文化の拡張と拡散に果たした役割は,皮肉なことに非常に大きい.これは歴史の偶然がもたらした結果であるが,「歴史」とは,畢竟,そうしたものではなかろうか.(37)
ひるがえって現在の米国.スペイン語を母語とする Hispanic 系の人々がスペイン語(文化)を国内外に拡張・拡散しており,一部の英語(文化)の担い手にとって脅威となっている.スペインの逆襲とでもいうべきだろうか.Spanish と English の因縁は,無敵艦隊の16世紀末以来,21世紀にまで続いている.
・ 島村 宣男 『新しい英語史?シェイクスピアからの眺め?』 関東学院大学出版会,2006年.
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最終更新時間: 2024-10-26 09:48
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