hellog〜英語史ブログ

#2780. 海戦の歴史と近現代英語史[history][timeline]

2016-12-06

 古来,海戦は大きく歴史を動かしてきた.というのは,海戦はその時々の技術の粋を結集したものであり,文明どうしの衝突でもあるからだ.第二次世界大戦以後,空軍が戦いの主役となる以前は,強い海軍を保有し,交易路たる海を支配できることが,権力と富を手に入れるための条件だった.『海のひみつ』 (89) より,世界史に名の残る海戦をいくつか年表形式で示そう.

紀元前480年サラミスの海戦380せきのギリシャ艦隊が1200せきのペルシャ艦隊と戦って勝ちました。
紀元前31年アクティウムの海戦合わせて550せき以上のエジプトとローマの艦船がイオニア海で戦いました。ローマが勝利し,その結果帝政ローマが生まれました。
1279年崖山の戦いフビライ・ハンひきいる元が1000せき以上の南宋の艦船をはかいし,東アジアの南宋支配を終わらせました。
1571年レパントの海戦カトリック教国の同盟軍が,オスマン帝国の大艦隊を打ちやぶりました。
1588年アルマダの海戦130せきからなるスペイン艦隊が,イングランド艦隊との戦いで損害をこうむって北に逃げ,そこで強風によりかいめつじょうたいとなりました。
1776年ロングアイランドの戦いアメリカ独立戦争で最初の大規模な海戦は,経験不足のアメリカ軍がイギリス軍に敗北しました。
1805年トラファルガーの海戦ホレーショ・ネルソン提督にひきいられたイギリス艦隊が,ナポレオン戦争中にスペインのトラファルガー岬の沖でフランスとスペインの連合艦隊をやぶりました。
1916年ユトランド沖海戦第一次世界大戦中に,イギリス海軍とドイツ海軍がデンマーク沖で戦ったユトランド沖海戦は,艦船の大きさと数とで史上最大の海戦でした。
1942年ミッドウェー海戦第二次世界大戦の太平洋の戦いで最も重要とされる海戦で,アメリカと日本の海軍が戦いました。
1944年レイテ沖海戦第二次世界大戦における最後の大規模な海戦で,フィリピン沖でアメリカ軍と日本軍が戦いました。しずんだ艦船の数は史上最多です。
1950年仁川上陸作戦朝鮮戦争での海戦で,この戦いにおいて国連軍が勝利したことにより,大韓民国は首都ソウルをふたたび取りもどすことができました。


 1588年のアルマダの海戦以降,世界史的な意義をもつ重要な海戦のほとんどに,イギリスやアメリカが関わっていることがわかる.このことは,技術,文明,権力,富が,近代以降,英米両国に集結してきたこと,言語史としてみれば英語の重要性が高まってきたことと無縁ではない.世界のたどってきた社会的な歴史と言語の歴史は,水も漏らさぬほどの密接な関係とはいえないにせよ,少なくとも疎からざる関係にあったことは論を俟たない.
 とりわけ英語史に関わる海戦の話題としては,「#254. スペイン無敵艦隊の敗北と英語史」 ([2010-01-06-1]) と「#255. 米西戦争と英語史」 ([2010-01-07-1]) を参照.

 ・ スティーブ・パーカー(著),白山 義久(日本語版監修) 『海のひみつ』 小学館の図鑑 たんけん! NEO,小学館,2013年.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow