1588年,Philip II 率いるスペイン無敵艦隊 ( the Spanish Invincible Armada ) が Elizabeth I 率いるイングランドに敗北を喫した事件は,歴史上に名高い.この事件により,ヨーロッパにおける政治・軍事・交易の大国たるスペインの威信が揺らぐこととなり,代わってイングランドが国際情勢に影響力をもつようになった.
海戦の背景には,当時の複雑な政治情勢があった.まず Catholic Spain にとって Protestant England をカトリック国へ回帰させることは至上の課題だった.また,England が the Spanish Netherlands の独立を支持したことも Philip II を怒らせた.そのほか,England が海賊行為をもって大西洋貿易に絡んできたことも Philip II にとっては我慢ならないことであった.
Philip II は二年がかりで艦隊を作り上げ,1588年,いざ England へと出航させた.ところが,準備不足だった.スペイン艦隊は the Spanish Netherlands に戦略基地となるはずの港をしっかり確保しないままにイングランド海域に突っ込んでしまったのである.攻め損なったスペイン艦隊は逆に北海へ敗走させられ,スコットランドを回ってスペインへの帰路につかざるをえなかった(地図参照).こうして,スペイン艦隊は戦略ミスによりあっけなく敗退した.
この事件がもつ英語史上の意義は,英語を携えたイングランドが国際的な競争力を回復した点にある.百年戦争後の100年間で,かつてフランスにもっていた領土をすべて失ってしまったイングランドは,すっかり自信をなくしていた.そこへ今回の起死回生の大国スペイン打倒である.競争力と自信を取り戻したイングランドは,今後,堂々とアメリカへの進出を果たしてゆく.これが数百年後の英語の世界化への足がかりになったことはいうまでもない.
海戦の詳細については,British History in depth: The Spanish Armada が参考になる.
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