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hellog〜英語史ブログ / 2023-04-19

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2023-04-19 Wed

#5105. 英語の後光効果 [linguistic_imperialism][language_myth][linguistic_ideology][sociolinguistics]

 一昨日の記事「#5103. 支配者は必ずしも自らの言語を被支配者に押しつけるわけではない」 ([2023-04-17-1]) で紹介した山本冴里(編)『複数の言語で生きて死ぬ』(くろしお出版,2022年)の第1章「夢を話せない --- 言語の数が減るということ」(山本冴里)に,有力な言語のもつ「後光のようなもの」について論じられている箇所がある (pp. 14--15) .

 言語そのものというより,言語に冠された後光のようなもの.それがX語の持つ力である.過去,東アジア世界では漢文が,ローマ時代の地中海地域と中世のヨーロッパではラテン語が,一七世紀~一九世紀のヨーロッパ知識人の間ではフランス語が,そしてイスラム世界ではアラビア語が光を帯びていた.そしていま,多くの地域で,眩しい光を放っているのは英語だ.日本でも,圧倒的な教育資源が,英語に注ぎ込まれている.「英語ができる」ことで発生する(かもしれない)利益への期待をあおる広告表現の多くは,おくめんもなく,英語を,輝く未来を保障〔ママ〕してくれるような魔法の鍵として描き出している.英語ができれば,人生がよりよい方向に変わる.仕事が見つかり収入が上がる.そんなイメージを散りばめた表現を,街角の広告に見かけたことはないだろうか.いわく,「英語ができれば人生はもっと楽しくなる!」(NHK通信講座),「英語の力は,世界とつながる力」 (AEON),「英語を,習いはじめた.商談が,動きはじめた」 (AEON),「いまこの国が求めているのは,英語が話せるあなたです」 (CLUB CUE),「英語で夢をカタチに」 (AEON) .
 イギリス政府が設立したブリティッシュ・カウンシル(主要事業は英語の普及)は,こうした事態に対してきわめて意識的である.ブリティッシュ・カウンシルは,イギリスが英語使用の規範として見なされる地位を誇り利用する.


 これは英語の「後光効果」の警告的な指摘にほかならない.「後光効果」とは『ブリタニカ国際大百科事典 小項目版 2015』によると次の通り.

ハロー効果,光背効果ともいう.人がもっているある特徴を評価する場合に,その人についての一般的印象やその人のもつ他の特徴によって,その評価が影響を受けやすい傾向をさす.たとえば,ノーベル賞を受賞した自然科学者の専門外の分野における社会的発言が権威をもって受入れられること.


 「英語には力がある」というときの「力」とは,英語に内在する力ではなく,あくまで人々が外側から英語に付与している力である.そこには人々の尊敬,憧れ,羨望,期待などがこめられている.英語自身が後光を発しているというよりは,人々がそこに後光を見ている,と表現するほうが適切だろう.人々は英語の後光効果 (halo effect) にかかっているのである.

 ・ 山本 冴里(編) 『複数の言語で生きて死ぬ』 くろしお出版,2022年.

Referrer (Inside): [2023-04-20-1]

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最終更新時間: 2024-05-02 08:37

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