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10月17日の読売新聞朝刊の投書欄に「カタカナ語 乱用やめて」と題する投書が掲載されていた.
文化庁の「国語に関する世論調査」では,外来語などのカタカナ語がどの程度理解されているかについても調査が行なわれました.「インバウンド」の意味を知っている人は4人に1人だったということですが,飾らず素直に「訪日外国人旅行者」と表現すればよいのです.「ガイドライン」も,「指針」と表記すればわかりやすいと思います.
近年,日本人はカタカナ語に惑わされすぎではないでしょうか.確かに,響きが格好いいので,人々が使いたがる傾向にあるのだと思います.実際,小池百合子・東京都知事などカタカナ語を志向する政治家もいます.
調査では「書き言葉も話言葉も正しく整えて使うべきだと思う」と回答した人が半数近くいました.カタカナ語の乱用をやめて,わかりやすい日本語を使いましょう.
英語の世界には,近代以降,連綿として続く "the complaint_tradition" (不平不満の伝統)がある.「最近の若者の言葉遣いはなっとらん!」「公人が○○のような語法を用いるなんてけしからん!」といった類いの物言いである(「#3239. 英語に関する不平不満の伝統」 ([2018-03-10-1]) を参照).日本語の世界にも,程度はやや穏やかではあるが同様の伝統があり,上記のような投書がその1例だろう.
「カタカナ語の氾濫」問題については,様々な立場があるだろう.私も軽薄なカタカナ語が日々増えてきているなと実感はするし,イラッと来ることもなきにしもあらずだが,一方で冷めた目で日本語ウォッチングという態度を取る自分にも気づく.前者は一日本語話者としての立場,後者は言語観察者としての立場であり,私個人のなかで両者が併存している.個人のなかでも時と場合によって見方が異なり得るのだから,個人間での感じ方・意見の相違があることは当然だろう.
私は「カタカナ語の氾濫」問題を解決するというよりも,「カタカナ語の氾濫」問題を議論してみることのほうが楽しいと思うタイプである.多分,頑張って解決すべき問題としてではなく,そのうち自然に解決される問題として見ているからだろう.議論して盛り上がりながら過ごしているうちに,あるカタカナ語はかつての反対者にも概ね受け入れられており,別のカタカナ語はかつての推進者にも忘れ去られているだろう.問題解決よりも重要なのは,なぜこのような議論が盛り上がるのかを考えたり,議論を通じて言葉の問題を意識化すること自体にあるのではないか.
なお,カタカナ語の問題について,日英語対照歴史言語学の観点から「#1999. Chuo Online の記事「カタカナ語の氾濫問題を立体的に視る」」 ([2014-10-17-1]) で私論を披露したことがあるので,ぜひご一読を.その他,「#1630. インク壺語,カタカナ語,チンプン漢語」 ([2013-10-13-1]) と「#2977. 連載第6回「なぜ英語語彙に3層構造があるのか? --- ルネサンス期のラテン語かぶれとインク壺語論争」」 ([2017-06-21-1]) も参照.
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最終更新時間: 2024-11-26 08:10
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