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hellog〜英語史ブログ / 2015-04-11

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2015-04-11 Sat

#2175. 伝統的な意味変化の類型への批判 [semantic_change][semantics][reanalysis]

 「#473. 意味変化の典型的なパターン」 ([2010-08-13-1]),「#2060. 意味論の用語集にみる意味変化の分類」 ([2014-12-17-1]),「#2102. 英語史における意味の拡大と縮小の例」 ([2015-01-28-1]) などで,伝統的な意味変化の類型をみてきた.とりわけどの概説書にも出てくる意味変化の4種は,[2010-08-13-1]で取り上げた,一般化 (generalization),特殊化 (specialization),悪化 (pejoration),良化 (amelioration) である.この伝統的な分類では,最初の2つが指示対象の範囲の拡大縮小という denotation の軸に関わり,後の2つが主観的評価の高低という connotation の軸に関わっている.2つの軸のみでスパッと切れる切れ味の良さが受けてきたのだろう,意味変化といえばこの4種が必ず言及される.
 確かに非常に分かりやすい類型ではあるが,この4種のいずれにも当てはまらない意味変化は数多く確認されており,しばしば批判にさらされてきたのも事実である.例えば,著名な例である count one's beads における beads (cf. 「#1873. Stern による意味変化の7分類」 ([2014-06-13-1])) の経た意味変化は,4種のいずれにもあてはまらない.伝統的な類型は,まるで包括的でなく,漏れが非常に多いという批判は免れない.また,ある意味変化が特殊化でもあり悪化でもあるなどのように,2つの区分に同時にあてはまってしまう例も少なくない.これは,類型自体に問題があることを物語っている.
 もう1つの批判として,一般化や悪化などの用語は,語の意味変化の前後における旧語義Aと新語義Bとの明示的意味あるいは含蓄的意味の対応関係を名付けた静的なラベルにとどまっている,というものがある.実際には意味変化そのものは動的な過程であり,真に知りたいのはその過程がどのようなものであるかであるはずだ.これについて上記のラベルは何も教えてくれない,と.(関連する議論として,「#2101. Williams の意味変化論」 ([2015-01-27-1]) を参照.)
 この点を指摘する批判者の1人である Fortson (650) は,この動的な過程とは再分析 (reanalysis) にほかならないと断言する.再分析は言語使用者の心理的な過程であり,それ自身,所属する文化に依存するという点で社会的な性質も帯びている.したがって,変化の前後の意味を互いに関係づける様式は,4つほどの概念でまとめられるほど単純ではなく,むしろ著しく多様なはずである.この事実を見えなくさせてしまう点で,固定化した伝統的な類型は役に立たない.Fortson (652) の主張は次の通りである.

. . . a fundamental flaw of most categorizations of semantic change is that they rest upon the assumption that an old meaning becomes the new meaning, that there is some real connection between the two. As these and other examples show, however, this assumption is false; a connection between the new and old meanings is illusory. The set of meanings in a speaker's head is created afresh just like all the other components of the grammar. It may legitimately be asked how it is, then, that one can seem so often to find a connection between an old and a new meaning. In the case of metonymic change, the question makes little sense. Metonymic changes are so infinitely diverse precisely because . . . the connections are not linguistic; they are cultural. This has in some sense always been known, but when metonymic extension is defined in terms of an "association" of a word becoming the word's new meaning, we can easily forget that the "association" in question is not linguistic in nature.


 Fortson は,意味変化のメカニズムにあるのは再分析という非連続的な過程であると断じており,伝統的に主張されてきた意味変化における意味の連続性を否定している.Fortson のこの見解は言語変化の子供基盤仮説に立脚しており,それがどこまで正しいのかはわからないが,伝統的な意味変化の類型に何か足りないものを感じるとき,それに対する議論の1つを提供してくれている.

 ・ Fortson IV, Benjamin W. "An Approach to Semantic Change." Chapter 21 of The Handbook of Historical Linguistics. Ed. Brian D. Joseph and Richard D. Janda. Blackwell, 2003. 648--66.

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